酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年01月20日(金) 『ファニーフェイスの死』 林真理子

 1960年代、東京。モデルのゆい子と出会った恵子は、ゆい子と東京の魔力に溺れていく・・・。

 こういうひとつの華々しい時代があったのだなぁと映像が頭に浮かぶ。こんな毒々しい輝きを放った時代をリアルに見てみたいと思った。

「思い出話って、すればするほど命が削られていくみたい。たった今、そんな気がしたわ」

『ファニーフェイスの死』 2005.11.25. 林真理子 中公文庫



2006年01月19日(木) 『わくらば日記』 朱川湊人

 昭和30年代、ワッコちゃんは姉さまにくっついて生きていた。美しくて儚げで不思議な力を持つ姉さま。姉さまの名前は鈴音(りんね)。これはワッコちゃんが見た、ワッコちゃんが大好きな姉さま鈴音の力による不思議な数々の物語・・・

 んー、朱川湊人はどんどんと高みに昇って行かれている感じ。物語がますます透明感を増してきました。そして懐かしくも優しい。舞台は昭和32年。レトロな昭和。まだ生まれていなかったこの頃のことを、この話を読むと思い浮かべる事ができるのは何故なのかしら。
 ワッコちゃんが語り部となって姉さまの力で様々な事件に関わった様子が描かれています。これはシリーズ化しているようで、まだまだ続編があるみたいなので楽しみです。

「自分が信じられていることに、誇りを持ちなさい。信じられたからには、もう自分一人の体ではないのだと思いなさい」

『わくらば日記』 2005.12.25. 朱川湊人 角川書店 



2006年01月18日(水) 『ライト・グッドバイ』 東直己

 ススキノの馴染みのBAR<ケラー>で呑んでいた俺は、奇妙な客とすれ違った。中途半端な長髪で、妙にフケっぽい感じの中年男・・・。こんな奇妙な男と親友になれ、と昔馴染みのえらそーな退職刑事に頼まれた。奴が言うには、奇妙な男は殺人容疑者だと言うのだ・・・

 いやーっ(嬉)、いいですねー。東さんの<俺>シリーズは。にっこにこ。あいかわらず東さんは過激だケレドモ(苦笑)、北海道に根を張って、自分の立ち位置でしっかと戦ってることがわかるから大好きですv まぁほどほどにワルでかなりのエロなとこも隠し味と言うことで。今回の事件も今の世の中にありがちでフィクションフィクションしてないのですよねぇ。ため息。

「楽しかったんだろ、きっと。酒飲んで、バカ話するのが」

『ライト・グッドバイ』 2005.12.10. 東直己 早川書房



2006年01月17日(火) 『英雄先生』 東直己

 松江で高校教師をしている池田は、プロボクサーの夢を断念し、東京から戻ってきた。ボクシングを辞めたとされる噂から英雄先生などと呼ばれているが、実際は教え子のGカップ娘タマキに手をだしてやりまくっているようなオトコである。そんなふうにいい加減になんとなく日々を生きる池田が、タマキの友だちアケミが誘拐されたことで大きな事件に巻き込まれていく・・・!

 東直己さんが珍しく北海道ではない場所・松江を舞台に物語を展開させられました。でもちゃーんと大切な北海道での事件が大きなファクターとなって出てくるあたり、やっぱり北海道を愛する道産子作家さんでありました。いつも以上にエロイかもしれないくらいで失笑しました。ウフフ。
 こういう宗教がらみの事件というのは、他人事ではないのかもしれません。なにかを信じたいと願う人の心を弄ぶなんて許しがたいことですけど・・・。

 セックスとは、もちろん、単に射精だけのももではない。相手が、服を全部脱ぎ。その体を、こちらに全面的に委ねる、そういう特殊な出来事だ。相手を受け入れ。相手に差し出し、そして抱き合い、お互いの感触や、存在や、ニオイまでも経験する、特別な出来事だ。そして、性器の、あるいは体全体の快感。相手に対するいたわりと、感謝と、愛情・・・・・・あるいは親密感がこみ上げる、セックス。

『英雄先生』 2005.12.20. 東直己 角川書店



2006年01月16日(月) 『えんじ色心中』 真梨幸子

 なんと言うか、とてもデリケートな小説でした。そしていくつかのかなりキツメの辛口書評を拝見し・・・私はそこまでこの作品が悪くないと思っていることに気づきました。作者が仕掛けた罠も、悲しいラストも嫌いじゃない。だからって決して大好きだーvって言えるようなタイプのものではなくて。心にズーンって残るのですよね。悲しいなぁ、と言う感じ。ああ、せつないなぁ。

 人は、どうして生きるの。
 どうして、死んではいけないの。
 どうして、殺してはいけないの。
 生きる意味って。死ぬ意味って。殺す意味って。

『えんじ色心中』 2005.11.15. 真梨幸子 講談社



2006年01月15日(日) 『一週間のしごと』 永嶋恵美

 恭平は、拾い癖のある幼馴染・菜加に振り回されて生きていた。ある土曜日、渋谷に出かけた菜加は、あろうことか小さな男の子を拾ってきた! 誘拐罪に問われかねない菜加のため奔走する恭平と菜加の弟の克巳。ドタバタするうちに恭平の同級生・忍まで巻き込んでしまい・・・

 いやぁ、まさしくホロ苦い青春ミステリでありましたv 菜加の性格に問題はあるものの、恭平や克巳が振り回されてしまうだけの魅力がありました。こういう少し苦さの残る青春ミステリーってステキです。
 この本への感想を見てまわってて、タイトルの一週間がロシア民謡だと気づかされました。そうか。そうだよね〜。これに気づくと章タイトルの妙に唸ります。うむうむ。なるほどー。

「半分は当たってるけど、半分ははずれ。穴があいてるんじゃなくて、穴をあけてあるの」

『一週間のしごと』 2005.11.30. 永嶋恵美 東京創元社



2006年01月14日(土) 『グイン・サーガ』56〜60

 軍師アリに翻弄され、トンデモナイ伝説を残しかねない寸前のイシュトヴァーンは、思い立ってナリス様のもとへウマを走らせる。あの美しいひとと再会し、イシュトヴァーンは、魔道師ヴァレリウスのおかげでアリが影でやってきた罪の全てを知ることとなる・・・。思うようにならない身体を抱え、隠居するはずだったナリス様はイシュトヴァーンの登場で、ヴァレリウスと共にレムス国王に対し反逆の意志を固める。ナリス様とイシュトヴァーンの再会は、世界を大きく動かしてしまうのか・・・?

 うー、すごかった。すごかった。もう本当にここまで読んできてヨカッタと心から感謝してしまうくらい面白さ惜しげなく増量中! こういうふうに今までの謎や積み残した大風呂敷は納まるべき場所へ納まっていくものなのねぇ。世界を手にしようと暗躍するグラチウスと淫魔ユリウスがB級存在でありながら、なかなか好物となってきた。あんなふうな汚れ役は必要不可欠。グインは本編では名前だけがあちらこちらに登場。外伝ではユリウスにたぶらかされたシルヴィアちゃんとマリウスを探しまわっておいでだわよ(笑)。さてさてナリス様の寿命はいつ尽きる?(←死ぬと決め付けた)

『グイン・サーガ56 野望の序曲』(※天野喜孝さんのイラストよ、さらば)
『グイン・サーガ57 ヤーンの星の下に』
『グイン・サーガ58 運命のマルガ』
『グイン・サーガ59 覇王の道』
『グイン・サーガ60 ガルムの報酬』



2006年01月12日(木) 『砂漠』 伊坂幸太郎

 仙台の大学に入った北村は、鳥井・南・東堂・西嶋と知り合う。クールで熱くならない(なれない)北村、軽佻浮薄な鳥井、不思議な力を持っている南、美女で無愛想な東堂、・・・表現のしようのないブットビ男・西嶋。彼ら5人は自分が何者であるかわからない不安定な砂漠のオアシスのような時代を駆け抜ける。そして彼らは、社会という砂漠に旅立って行く・・・

 んー、かなぁ〜り自分的に解釈して書いちゃいました(笑)。これね、いいんですよ。伊坂幸太郎さんが「いい」ことなんて周知なのですケレドモ、それでもコノ砂漠は「いいっ!」と声を大にして言いたいの。もう最後のほうは泣きましたもん。本を読んで初泣きですよー。感動で。妙な5人が運命のように出会い、さまざまな出来事を体験しながら4年間を過ごす・・・ああ、青春って素晴らしい。きらきらっ。こういう若者達がいてくれるならば、日本はだいじょうぶ。現実にいてくれるのかなぁ・・・(不安)。西嶋くんは最強キャラでした。こんな奴に惚れる女がまたスゴイ。

「北村だったら、絶対やらないでしょ、悔しくても」
「そもそも、悔しく思わないだろうね。ボウリングの点数が悪くても、別に気にしない」
「わたしもそう。でも、じゃあ、何のことなら必死にやるのか、って思わない? 結局さ、いざという時にはやる、なんて豪語している人は、いざという時が来てもやらない」

『砂漠』 2005.12.15. 伊坂幸太郎 実業之書日本社



2006年01月11日(水) 『みずうみ』 よしもとばなな

 窓から顔を出して知り合った(笑)中島くんと一緒に暮らすようになったちひろ。母を失ったばかりのちひろと心に傷と闇を抱える中島くんは、すこしずつ丁寧に時間をかけてかけがえのない存在となっていく・・・

 うわー、これぞ吉本ばななって感じだ〜と感動してたら、違和感が。え、ばななさんはいつからよしもとばななに変化しちゃったんだろう(知らない)。村上春樹とか吉本ばなななんてのは最初は食わずギライだったものだケレドモ、読んでみたらすごかった、すみません、ごめんなさい、私が悪うございましたって感じですね(笑)。久しぶりのばなな節はせつなくて深くて透明で、やられたなぁ。そして相変わらず登場するヒロインが底なしにセックスが好きらしく、共感しつつおおいに笑えました。なんて素直な人なんだv>ばななさん

「今日は、昔よくないことがあった日みたいで、なんだか落ち着かないんだ。僕の頭と体は妙に記憶力がよくて、いやな記念日には絶対に調子がおかしくなるんだ。」

『みずうみ』 2005.12.8. よしもとばなな フォイル



2006年01月10日(火) 『女郎蜘蛛 伊集院大介と幻の友禅』 栗本薫

 銀座で伊集院大介はタイムスリップしたかの思いに囚われた。和服を着た艶やかな美女が杖をつきながら歩いていく姿に惑わされ、ストーカーのように思わず彼女の後を追いかけてしまった。その和服美女から彼女の母にまつわる《幻の友禅》の行方を調べて欲しいと依頼され、大介は魔界都市京都へ向う。名探偵が事件を呼ぶのか。名探偵がそこにいるから事件が起こるのか・・・?

 んー、久々の伊集院さんとの遭遇って感じでそれだけで(それでいいのか)トッテモ嬉しかったですv 今現在、栗本薫さんのライフワーク『グイン・サーガ』を読みすすめている最中で、その“あとがき”から栗本薫さんの様々なことを知りました。私は伊集院大介との出会い=栗本薫との出会いみたいなもので(『魔界水滸伝』は過去に途中で(出版のインターバルの長さにイラついて)放り出した経験があった)このグインを書いている時に伊集院さんは産声をあげていたのですねぇ。しみじみ。伊集院大介シリーズは、ライバル・シリウスとの対決が一番読み応えあるのですケレドモ・・・会えないより会えたほうがいいから、って感じ(笑)。
 今回は妖艶な毒婦(妖婦)が現れて、スタートから伊集院さんは惑わされっぱなし。まるで映像を見ているような心持で読みました。そう言えばどうしてドラマ化とかされないのかしら。栗本さん御自身がやりたいから? 

『女郎蜘蛛 伊集院大介と幻の友禅』 2005.12.20. 栗本薫講談社



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