酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年11月19日(土) 『きみの友だち』 重松清

 小学生の時の友だち。中学生の時の友だち。高校生の時の友だち。・・・私にとって私と言う個人が友だちを得たのは高校生になれてからだった。それ以降は様々な時代に様々なカタチで友だちが出来た。そう思えば、小学生や中学生の時の私は友だちの意味ナンテわかっていなかった気がするわ。自分が自分である時に気づいてハジメテ友だちを得る事ができたのよね。
 この重松清さんの『きみの友だち』はそういうほろ苦い事を思い出させてくれました。相手にとって自分が自分らしくあれること。そうでないならば友だちではない。ひとりでトイレに行くことや、ひとりで御飯を食べること。そういうことを寂しいとか恥ずかしいナンテ思っていた遠い日の自分が愚かにも微笑ましくて。友だちって理屈じゃないものね。いい物語です。トッテモv

「わたしは『みんな』って嫌いだから。『みんな』が『みんな』でいるうちは、友だちじゃない、絶対に」

『きみの友だち』 2005.10.20. 重松清 新潮社



2005年11月18日(金) 『孤宿の人』 宮部みゆき

 江戸より9つの少女‘ほう’が、讃岐の国の金毘羅参りに出向かされた道中で、連れの女中に捨てられた。丸海藩で途方にくれる‘ほう’は、様々な人と出会い、流人の加賀殿のお屋敷で働く事になる。生きながら鬼、悪霊と恐れられた加賀と天涯孤独な‘ほう’との心の触れ合い。しかし加賀殿は・・・

 鳥肌が立ちました。宮部みゆきと言う人の凄さをまたしても知らされたと言う感じです・・・。小さな少女を主人公に据え、いったいどのような展開を見せるのかと思いましたが。すごすぎる。これは文句無く今年のマイナンバー1だなぁ。この物語を読んでいない人がいるならば、是非に読んでください。そう御願いしてしまいますね。宮部みゆきを越える人は出てこない。宮部みゆきだからこそ描けた物語だわ。感服。

「しかし、これは本当におまえの名前なのだろうか」

『孤宿の人』 2005.6.21. 宮部みゆき 新人物往来社



2005年11月17日(木) 『セリヌンティウスの舟』 石持浅海

 ダイビングで死にそうになった6人は、6人で死を乗り越えたゆえに強い絆を持った。年齢も性も職業もバラバラな6人だったが、たまに集まりダイビングを楽しんでいた。ある日、ダイビングのあといつもの呑み会に突入し、目覚めるとひとりの女性が死んでいた。これは自殺か、他殺なのか。警察は自殺と判断したが、残された5人は彼女の死の真相について探りはじめるのだが・・・。

 まだこの物語について読んだ人たちの感想を見ていないのですが、読後どんな感想を持たれたのかしら。そこがトッテモ気になるところ。死にそうな目にあって、それを一緒に乗り越えた人たちの独特の絆もしくは連帯感ってものは理解できます。だからその絆ゆえに死が登場するって私には違和感でありました。とても純粋なのだろうケレドモ、だからって・・・。純粋ではあっても歪だなぁ。この作家さんの描写が爽やかさんなので読まされてしまうケレドモ、こういう死に方を選ぶ人間のことは理解できないからいやだったなぁ。

『セリヌンティウスの舟』 2005.10.25. 石持浅海 カッパ・ノベルス



2005年11月16日(水) 『誰よりもつよく抱きしめて』 新堂冬樹

 月菜の夫は不潔潔癖症で不完全潔癖症に苦しめられていた。そのためふたりの間にセックスはない。月菜は愛すればこそ、抱きしめてもらえない苦しみに翻弄される・・・

 男と女の愛のカタチなんて、その組み合わせの数だけあるのだろうなぁ。愛する人と一緒に生活できても、セックスどころか抱きしめてももらえない。それって蛇の生殺し状態だわ。ふたりの苦しみや決断に結構感情移入しながら読みました。ラストは私的には「ありえねー」なのですケレドモ、物語としては美しくてよかったです。ふふふふふ。

『誰よりもつよく抱きしめて』 2005.9.25. 新堂冬樹 光文社



2005年11月15日(火) 『白魔の湖』 響堂新

 南極大陸のヴォストーク湖で掘削作業が行われていた。この湖は100万年もの間そのままの状態。はじめて人間によって調査が行われていた。太古の水が採取され、そこに光る粒?が含まれていた。その発見以降、おそろしい事態が引き起こされ・・・

 アハハ。おもしろーいv ありがちなSFホラーっぽいのですケレドモ、なかなか楽しんで読ませていただきました。未知との遭遇って人間には恐怖であり、魅力でありますからねぇ。ただラストはどうだろう。そして誰もいなくなった、の方がゾクゾクしたと思うのですけどねぇ。残念っ。

『白魔の湖』 2005.10.8. 響堂新 角川春樹事務所



2005年11月14日(月) 『探偵は黒服』 藤田宜永

 銀座で殺人事件発生。第一発見者は、被害者がかつて勤めていたクラブの黒服だった。第一発見者で被害者と知り合いだったために警察に疑われた黒服・福光は独自に調査をはじめたところ、連続殺人とエロアニメとの関連に気づき・・・

 かつて(バブル以前)銀座に勤めていた女性はものすごい勉強家だと聞いたことがありました。若く美しく賢くなければ銀座では働けないというイメージだったケレドモ、今では銀座もたいしたことばくなってるのねぇ・・・。この物語の展開はどうなのかしら。もっとこんがらがってるかと想像したいたので、ちょっぴり肩透かしでした。不感症の彼女は魅力的なのになー。

『探偵は黒服』 2005.10.30. 藤田宜永 角川書店



2005年11月13日(日) 『包丁人轟桃次郎』 鯨統一郎

 流れ流れた板前・轟桃次郎は、美人女将の彩乃の店<ふく嶋>に流れ着く。<ふく嶋>は、大手の<加賀屋>に買収されそうになっているが、孤軍奮闘中。ひょんな流れから<ふく嶋>をかけて桃次郎と<加賀屋>の一流板前陣が料理対決することになった。料理対決のたびに発生する殺人事件。しかも殺されるのは許せない犯罪者たちだった・・・!?

 うーん、鯨さんはヤッパリいいですねぇ(うっとり)v なかなかブラックホラーでありますよ、これは。でもさらりと読ませるのでグロまではいっていません。際のとこでうまいこと料理しています。桃さんはいったい何者なのか。ここに流れてきた前のことや、これから流れていく先のことも物語で読みたいものでありまする。トッテモおすすめv

『包丁人轟桃次郎』 2005.10.31. 鯨統一郎 早川書房



2005年11月11日(金) 『激流』 柴田よしき

 修学旅行先の京都でバスの移動中にひとりの少女・冬葉が姿を消した。その自由時間の時に一緒に行動していた美弥は、二十年経って不可思議なメールを受け取る。『わたしを覚えていますか? 冬葉』・・・そして、美弥とあの時の仲間たちは引き寄せられるように集まり、それぞれに事件に巻き込まれていく。

 柴田よしきさんの新刊が出ない、と思っていたら出ましたっ! 修学旅行の自由時間に7人で行動していて、バス移動でひとりの少女が忽然と姿を消してしまう。こんなショックングな目に遭ってしまうと京都が嫌いになりそうです。京都って本当に不思議な場所ですよね。魔界都市と言われるのも頷ける魔力があると言うか。少女がふっと消えてしまっても不思議じゃない気がしますもんねぇ。京都に住まれていた柴田さんならではの風景が浮かぶような導入で分厚い本だと慄いていたのにスンナリ引きずりこまれてしまいました。うまいよなぁ。
 内容の面白さは読んでいただくとして(笑)、私は7人の中で貴子がトテモ気になります。貴子を軸に貴子の物語を描いて欲しいくらいですね。貴子になにがあったのか。貴子はどうなってしまうのか。それが最後まで気にかかってしまいました。
 しかし、柴田さんはさまざまな想いを物語に描きこまれていました。印象的なのは「あたまがおかしい」人のこと。繰り返し「あたまがおかしい」と言う言葉が使用されていて、実生活でなにか大変なことがおありだったのだろうなぁと。一方的になんだかんだと言い寄られてしまうのでしょうね。人気作家さんも大変だ。

『激流』 2005.10.31. 柴田よしき 徳間書店



2005年11月10日(木) 『アンボス・ムンドス』 桐野夏生

 「桐野さんっておそろしい女(ひと)だなぁ」・・・。短篇なのにズッシリくる内容を読んだ後の感想がそれ↑でした。桐野さんはブレイク前から好きで、骨太な根性ある体育会系のイメージを持っていました。だから有名になるにつれて、その女優さんばりの美貌(女優さん以上と言う噂も)を拝見した時に背筋が寒くなった覚えがあります。忘れられないシャープな美が、こんなおどろおどろしい人間の闇を切り裂いていらっしゃると思うと、ますます惚れてしまいますよぅ。怖くておそろしい。ううう。
 なんて言えばいいのかしら。駆け抜けていらっしゃる感じをいつも受けます。人の感想うんぬんはどうでもよくて(勝手にそう思ってるだけですケレドモ)書きたいことを天衣無縫にマシンガンのように書き殴っている、そんな感じと申しましょうか。こういう作家さんを私は他に存じ上げませんね。ゾクリとするオーラを放っていらっしゃるんだろうなぁ・・・。魔女だな。

『アンボス・ムンドス』 2005.10.15. 桐野夏生 文藝春秋
 



2005年11月09日(水) 『風の盆幻想』 内田康夫

 富山県八尾町で風の盆祭りの前に老舗旅館の若旦那が死んだ。警察は自殺で片付けたが、名探偵・浅見光彦と迷作家・内田康夫が現地へ飛び調べ始めたのだが・・・

 軽井沢のセンセ(笑)の物語は、いつも知らないいろんなことを教えてくれるので読むようにしています。わかりやすいの。トッテモv 今回は、名前でしか知らなかった「風の盆」祭りについて知ることが出来ました。こういう状況になっているのかー。全国的に有名なお祭りも大変なのね。あ、だからこそ大変なのか。
 こういう長いシリーズものは、良し悪しよりも習慣で読んでしまいます。もはや登場人物はオトモダチ気分v 個人的には、出版社によって浅見さんの扱う事件の色が違う事が面白かったりするのですケレドモ。ふふふ。

『風の盆幻想』 2005.9.25. 内田康夫 幻冬舎



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