酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年07月30日(土) 『もう一人の私』 北川歩実

「月の輝く夜」
 中学生の幹哉は十四郎と言うハンドルネームで年齢(など)を偽り、パソコン通信をスタート。しかも英語塾の教師・馬島のパソコンで。その上、知り合った月世界という女性に恋をしてしまうのだが・・・

 うわー、大事件発生! やられたかもしれません〜。パソコン通信ものってのは栗本薫さんの『仮面舞踏会』を越えるモノなどないと思っていたのです。でも、これって短篇ながらすっごい面白い〜v 願わくば肉漬けをして長編にして読ませていただきたいくらい。もっともっと書き込んでって気持ちでいっぱいでした。北川さんのチャブダイ返しは一回じゃないもんなぁ。
 もうひとつ「ささやかな嘘」も秀逸。これも長編で読みたいと唸らされた物語です。長編も面白いけれど、短篇もうまい。おそるべし、北川歩実。

 わたしのこと、覚えていてください。

『もう一人の私』 2000.9.30. 北川歩実 集英社



2005年07月29日(金) 『影の肖像』 北川歩実

 理系雑誌の編集者・作間は、仕事相手であり幼馴染の千早の周りでいくつもの不審な殺人事件が起こることに惑わされてしまう。そして事件の背景には『クローン人間が生まれた日』という小説の存在があり、作者が殺される。そして作者は作間の・・・

 うーん、すごい。マイブームとなりつつある北川歩実さん作品読了二冊目です。今回も展開といい、チャブダイ返しといい、お見事としか言いようがないなぁ。
 物語の流れのキィのひとつに難病患者を抱える人間の葛藤そして暴走があり、読んでいて痛々しいんですよね。自分がこの人の立場だったらどうするだろう?と想像すると、同じような事しないとは言い切れなくて。北川歩実さんは発想だけでなく、人間模様までキッチリ描かれているので(時としてもどかしいくらいに)とても面白いと思います。これも個人的にはかなりオススメだわ〜。

 大切な人の命を救うため − 果たしてどこまでが、許される行為なのだろうか。

『影の肖像』 2000.4.10. 北川歩実 詳伝社



2005年07月28日(木) 『透明な一日』 北川歩実

 22歳の僕と19歳の彼女の結婚。周囲の反対は覚悟していたが、まさか彼女の父親が記憶障害になっているとは!? 彼女の父親は記憶の蓄積が出来ず、娘の事すら12歳のまま成長を認知できていない。そんな父親と彼らの周りで次々と殺人事件が発生し・・・

 「うわーっ」と最後にマジに叫んでしまったシロモノ。うーむ、まだまだ未読の素晴らしい作品はこの世に溢れかえっているのだろうなぁ。いったい残りの人生でどれでけの素晴らしい物語を読めるのだろうか(困惑)。
 それくらいこの『透明な一日』のギッシリ詰まった内容の濃さとチャブダイひっくり返しには、ただただ「え?」「えっ?」「ええ〜っ?」でありました。周りにも北川さん読んでる仲間はいたかしら? あまり聞かない気がしますが、きっと読んでる人も多いはず。この『透明な一日』は文庫化もされているし、是非ご一読を。私とおんなじぐらいかそれ以上に騙されまくってください。

『透明な一日』 1999.7.30. 北川歩実 角川書店



2005年07月27日(水) 『腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿』 西澤保彦

 櫃洗市のさまざまな場所に出没する「市民サーヴィス課 櫃洗市一般苦情係」。年齢不詳のお役所人間らしい男が腕貫をはめて、エラソーに待っている。ふらりと相談した人たちは、腕貫男から手掛かりをもらい・・・

 西澤保彦ファンの末席を汚すものとして、ファンクラブの掲示板から誕生した腕貫探偵には思い入れが無茶苦茶強い!のであります。西澤先生に腕貫が似合う話から、とんとんとんからりんっと腕貫探偵なるものが登場し(掲示板の会話で)、本当に西澤先生が物語りにしてくださったというファン垂涎の探偵っ! そしてまた西澤先生らしい小憎らしいいところが、予想をおおいに覆してくれちゃった探偵像でした! たぶんファン全員唖然としたんじゃなかろうか。だから西澤ファンをやめられない。いい意味で裏切り続けてくださるお方です(らぶ)v
 西澤節がさりげなく展開されまくり。言い回しや言葉のテンポの妙があいかわらずよいですのう。たまらんー。これは短篇なので西澤保彦未体験の方も是非ぜひゼヒっ!!! 超花◎オススメでーすv

 純也は胸中そっと、いわゆるぎっくり肩をやってしまった友人に感謝の祈りを捧げた。ありがとう泰地、ありがとう友よ。思いがけずこうして筑摩地さんに会え、しかもお話できちゃったりするなんて。これは夢か幻か。こんな千載一遇の機会を与えてくれたおまえからどうしてハヤシライスを奢ってもらえようか。つーか、おれが今度きみに奢ってあげます。ハヤシライスとは言わず、特選和牛ステーキコースでもなんでもっ。

『腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿』 2005.7.25. 西澤保彦 実業之日本社
 



2005年07月26日(火) 『神様ゲーム』 麻耶雄嵩

 物語紹介(もしくはあらすじ)省略。感想「なんじゃ、こらー!!」でありました。びっくりした。こんなもんをミステリー・ランドに持って来てよいのか? フィクションをフィクションとして読む力をオチビさんたちに養って欲しいとは心底思いますよ。ケレドモ、これはいかがなものか? うーん(悩)。
 ミステリー・ランドってチャレンジャーだよなぁとほとほと感心します。相手が子供だからという容赦は一切なしですもん。全部ではないものの、かなり読んできているけれど、これはダントツの異色作と言うか、問題作と言うか。あなたはあのラストをどう解釈しましたか? 

『神様ゲーム』 2005.7.6. 麻耶雄嵩 講談社



2005年07月25日(月) 『陽気な幽霊 伊集院大介の観光案内』 栗本薫

 新聞記者の伊庭公にそそのかされ、ミステリーツアーに借り出されてしまった伊集院大介とアトムくん。行き先は京都。イベントてんこ盛りのツアーで伊集院大介が見切った真実とは・・・

 栗本薫さんの伊集院大介シリーズは、切っても切っても金太郎飴ってわかってはいるけれど、読まずにはいられないデス。ダイスキな昔馴染みですからねv
 伊集院大介シリーズも‘重い’モノと今回のようにライト感覚なものに割り切ってらっしゃる感じを受けます、近年。それはそれでいいのかもしれないけれども、やはりスタートである重いドロドロしたものを読みたいですね〜。そして伊集院さんが苦悩し、憔悴しまくるような(笑)。
 昨今流行のミステリーイベントを栗本薫らしい毒舌でスパッとたたき切っている、そんな物語でありました。

『陽気な幽霊 伊集院大介の観光案内』 2005.5.30. 栗本薫 講談社



2005年07月24日(日) 『極点飛行』 笹本稜平

 日本で問題を起こしたパイロット・桐村彬は南極で飛んでいる。南極大陸内陸部での飛行は常にリスクが大きく、そのぶん実入りも大きい。彬は日系実業家の通称‘アイスマン’という男に誘われ、とてつもなく大きな陰謀に巻き込まれていく・・・

 うーんと、とっても分厚い物語をどんなふうに纏めようか考えたのですが、頭の中がぐしゃぐしゃになっちゃったので簡単に(笑)v この手の冒険小説って舞台も内容も全く想像がつかないので純粋に「すーごーいー」と思いつつ楽しめます。さながらアクション映画を観ている気分で。ハラハラもするし、楽しかったなぁ。

 どんな運命であれ、それは結局、自らの意志で選んだものなんだよ

『極点飛行』 2005.6.25. 笹本稜平 光文社



2005年07月23日(土) 『クドリャフカの順番 「十文字」事件』 米澤穂信

 古典部は、『氷菓』事件をもとに文化祭用文集を作成。ところが刷り上った冊数が2百部! 予定数三十部がいきなり二百部・・・。古典部の4人はそれぞれのやり方で売り込み作戦開始。時を同じくして予告状とともに「十文字事件」発生。狙われた部から、部の頭文字のモノが紛失していくのだ? この事件の解明に暁には文集も売れる!と踏んだ古典部なのだが・・・

 いやー、米澤穂信さん「キテ」ますね〜。これは完全に行くでしょう。独特の青春時代を絡めた日常の謎ってあなどれないから。まだまだシリーズは続きそうで(事件もあれこれ発生しそう)非常に楽しみなシリーズとなりました。
 認知度の低い廃部寸前だった古典部が、手違いで文集を二百冊も刷り上げてしまう。この二百札をカウントダウンしながら減らしていく手法が好物v 緊迫するわー(笑)。奉太郎の姉上殿がもっと事件をややこしくするのかと思いましたが、残念ながら今回おとなしくされてました。次回に期待v

『クドリャフカの順番 「十文字」事件』 2005.6.30. 米澤穂信 角川書店



2005年07月22日(金) 『愚者のエンドロール』 米澤穂信

 省エネ男・折木奉太郎は、千反田えるの「わたしとても気になります」のひとことで2年生F組の文化祭用ビデオ製作に関わる事となる。奉太郎はなりゆきで関わったのか、はたまた誰かの大きな力に寄って動かされたのか?

 古典部の面々が、えるちゃんの‘わたし気になります’攻撃にやられ、自主制作映画のストーリーづくりに加担。省エネを撤回した奉太郎の推理は冴え渡り?って感じでしょうか。
 いるんですよねぇ。こういう力があるくせに出したがらない奴って。出し方がわからないのかもしれない。それを引き出すのが姉だったり、えるちゃんだったりするのかな。
 前回と今回はイラストが違っていて残念。個人的には『氷菓』の上杉久代さんのイラストが好き。物語にもぴったりだと思う。

『愚者のエンドロール』 2002.8.1. 米澤穂信 角川スニーカー文庫



2005年07月21日(木) 『氷菓』 米澤穂信

 折木奉太郎は、「省エネ」人間・・・だったはずだが、姉の巧妙なコントロールに操られ、廃部寸前の古典部へ入部。名前だけ登録し、幽霊部員のつもりだった奉太郎の前に千反田えるという少女が現れ、古典部に入部。この千反田というお嬢様、不思議を不思議として方って置けない性分のようで、何故だか奉太郎は巻き込まれていき・・・

 高校時代を舞台にされると弱いですね。こんなふうに爽やかな青春を謳歌している彼らを見ると眩しいです。後ろ暗い青春ぶっちぎってましたから(笑)。これは米澤さんお得意のボーイ・ミーツ・ア・ガールなんでしょうね。たったひとりの少女のために事なかれ主義を崩されてしまう主人公。あぁ、青臭くてよいですっ。好みから言うと奉太郎のねぇちゃんが一番グーvでありましたが。

『氷菓』 2001.11.1. 米澤穂信 角川スニーカー文庫



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