酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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「この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君。」 ・・・ってな訳で(意味なし)、観に行って参りましたv 何を驚いたかと言うと、パンフレットが既にソールドアウトだったこと。ビックリ! このトンデモナイ物語を映像化するにあたり、作り手(俳優陣も含め)は賛否両論を覚悟しての上だろうと思いました。どうしたって「イメージが違う」と言われること必至。そして私自身の個人的感想も・・・やっぱりなにか違う。昭和初期のレトロな感じはよく出ていたケレドモ、うーん、スケールの壮大さが削がれていた気がしました。でもまぁ充分鑑賞に堪えうるシロモノではありますケド。 配役について言えば、これはもう個人の好みとなってしまいます。堤さんはウマイ俳優さんですが、京極堂ではありません(断言)。シャープさ(見た目も含めて)が無い。そして最愛の木場の旦那。宮迫ファンに申し訳ないけれど、宮迫さん使うなら、くずつながりでグッサンにしてよう〜って悲鳴。体つきがグッサンの方が近いんじゃないかなぁ。でかくてガッシリ。これが木場修の最低ラインだ!! うーん、配役について物申せば言葉が濁流となって押し寄せるので、この辺りで自粛。 映画を通して感想を述べるならば、関口役の永瀬さんがウマカッタ。彼は役者としては群を抜いてました。危ない際に生きている関口君をあぁも見事に演じ切るとは、永瀬正敏おそるべし。あと作者の某先生(大笑)もやたら出演されていましたケド・・・あれはほんのワンシーンで「え?」くらいの露出に控えられた方がよろしかったのでは????? 老婆心ながら、肥えすぎた某作者はあまり観たくなかったデス。 映像化して作品を肥える、違う、越えるって至難の業なのだなぁとつくづく感じ入った映画鑑賞なのでありました。ま、1000円だったからいいけど。
2005年07月18日(月) |
DVD『洗脳』 ※ネタバレあります。 |
優秀な兄の自殺にショックを受けたスティーブの一家は、穏やかな田舎町に引っ越した。両親と妹とともに心機一転はじめようと思うスティーブだが、編入したハイスクールは見事にグループ分けされていた。特権階級‘ブルーリボン’というグループは成績優秀、品行方正と思われたが、ときどき思いがけない暴力性を見せるのだった。最初にスティーブに声をかけてくれたギャビンがブルーリボンに取り込まれ、スティーブにも魔の手が伸び・・・
いや〜、B級ホラーサイコウ〜! ブラボー!! アメリカの片田舎を舞台にマッドな教師が洗脳をしまくっていると言うもの。目に妙なチップを入れ込んじゃって興奮するとロボットみたいに動きがぎこちなくなって暴発。健全な高校生に興奮するなって方が無理だよー。笑えるぅ〜。 ハイスクールが舞台で、さまざまな高校生が登場し、ワクワクしちゃう。誰でもない自分を探している頃の若者達って見苦しいほど生き生きしててトッテモ素敵。青春だー。ホラーだけど〜。
2005年07月17日(日) |
『うなぎ鬼』 高田侑 |
倉見勝は借金返済にあえいでいるところを社長に救われる。見た目はごつく強面な勝だが、性格はおとなしく小心者。社長は勝の見た目を利用し、どんどん危ない仕事をさせる。ある日、勝は中味を知らないものをただ運ぶだけでいいという仕事を引き受けるのだが・・・
うーん(悩)、これってホラーなのかな。これをしてホラーと言うのであれば、人間の性根のおぞましさや醜さこそがホラーと言うことになってしまう。今の社会に溢れている予想もつかない犯罪を鑑みれば、やっぱり人間がホラーなのかもしれないな・・・。 破滅型の人間の典型の勝が落ちていく地獄。自業自得ではあるけれど、可哀想というか、なんと言うか。面白いというより、ひたすら後味の悪い物語でした。でも読みきったんだからそれなりに面白かったと言うことか。
『うなぎ鬼』 2005.6.20. 高田侑 新潮社
2005年07月16日(土) |
『シリウスの道』 藤原伊織 |
辰村祐介は38歳、広告代理店勤務。ワケあり十八億、新規競合に参加することになる。仕事とプライベートと過去。辰村を中心にさまざまな思惑が動き始める・・・
うーんと、むずかしいので内容は簡略に(簡略すぎるケド)。むずかしいと言っても、内容はさほど新しいものではないし、筋道も読めてしまう。いおりん、どうしちゃったのかなぁ。無理して新しさに挑む事もないような気がする。 勿論、天下の藤原伊織。面白いんですよ。ハラハラもすればドキドキもさせてくれる。でも読み手と言うのは強欲なもので、その作家さんの今まで以上を求めるきらいがあるから・・・。蚊トンボの方が意外性あったかもしれないなぁ。 辰村と女ボスとのオトナな恋愛模様はトテモトテモ素敵でした。これくらいの年齢になると、簡単に引っ付いたりしない。そこが味があっていいんですよねぇ。インスタントな恋愛は育たないって経験から知っているのね、きっと。うふふ。 なんじゃそら、な感想でした。
でもいつまでも逃げまわってちゃ、自分も自分の周りも、なにも変わりはしないの。
『シリウスの道』 2005.6.10. 藤原伊織 文藝春秋
2005年07月15日(金) |
『ぶたぶたの食卓』 山崎存美 |
山崎ぶたぶた。ピンクのバレーボール大のぬいぐるみだが、人間らしい(笑)。今回はぶたぶたさんが食べ物に関する物語にいろんな関わり方をする。料理中に火で焼け焦げませんように、と言うのはどうやら万人の心配らしい(大笑)v
うーん、癒されるぅぅぅ・・・なぁーんて書くと、全日本ぶたぶた普及委員会会長に怒られます(大笑)。ぶたぶたさんの物語って、煮詰まっているとふいっと掬い上げてくれるような、優しさや救いや癒し(ハッ、殺される・・・)を感じます。なんとかなるよね、みたいな気分に持ち上げてもらえるような、そんな感じ。 ピンクのバレーボール大のぶたのぬいぐるみが動いていたら、話したり、食べたり、飲んだり、料理したりしたら・・・それだけでウフフフと笑えてしまう。会長にまんまと布教され、布教する立場に回った者として、これからもたくさんのぶたぶたさんにお目にかかりたい。いろんな姿を見せるぶたぶたさんは、もしかすると007のような諜報部員なのかも。きっと日本人を油断させて観察しているのね。あんなスパイになら騙されてもいいなぁ。
『ぶたぶたの食卓』 2005.7.20. 山崎存美 光文社文庫
2005年07月14日(木) |
『MORNING GIRL』 鯨統一郎 |
仮想現実物語の流行作家のスティーヴは、スペースアイランド‘飛翔’で不眠を感じていた。人体コンディショナー・エドナに相談に赴くが、期待した回答は得る事が出来ず、睡眠学者のダイアンのところへ行く。不思議な事にスティーヴとダイアンは互いに欲情をする。‘飛翔’では性行為が禁止され、性欲抑制処置を施されているはずなのに・・・
この物語を開くと「‘訳者’まえがき」が目に入ります。なんでもこの物語はアメリカに住む知人から送られてきたもので、無名作家の未発表原稿だったとか・・・。それを鯨統一郎さんが訳し、鯨さんの名で発表となったらしいです。うーん、これを額面どおり素直に信じていいものかどうか。謎の人、鯨統一郎だからなぁ(笑)。 物語はほぼ会話形式なのでスラスラ読めるし、なんとなく展開も読めるのではないでしょうか。物語を読んだだけでは鯨さんのものか外国の無名作家のものか判断しかねますケド、鯨さんらしいっちゃーらしいのですけどねぇ・・・。最後にとりあげる言葉もどこかで聞いたっぽいし(笑)。うーん(悩)
「世の中には偶然などというものはないのだよ」
『MORNING GIRL』 2005.7.1. 鯨統一郎 原書房
2005年07月13日(水) |
『夏の吐息』 小池真理子 |
「パロール」 1年前、叔母夫婦の居酒屋で亜希子は「古賀」という男と知り合った。付き合っていた男と別れたばかりの亜希子は古賀と話すことに興味を感じていた。ある夜、ふらりと入ってきた男が古賀に「センセイ!」と声をかけ、古賀が詩人であることを知り・・・
この『夏の吐息』はどれもトテモよくて、なにを選ぼうか悩んでしまいました。どの物語にも自分の心の欠片を見る様で。その中でこの「パロール」をチョイスしたのは、テーマが‘言葉’だったから。 言葉というものは難しくて、たった一言を読み違える事もあれば、何げない呟きを邪推されることもあります。言葉が通じ合うというのは、とても感性の近い人、もしくは言葉をやりとりしあって信頼を得た人に限るのかもしれないなぁ、なんて思ってしまうほど。自分のサイトで好き放題言葉の洪水をダダ漏れさせているけれど、私を私として受け止められているかどうか、不安だったりしますね。 話している時に、ピンッvと心に響いて通じ合える人とめぐり合うこともあります。そういう人ばかりだといいのだけれど・・・
自分が語りかけたのと同じ量、同じ質の言葉を相手に求めても、戻ってくることは少ない。ならば沈黙を受け入れるしかない、と思っていても、沈黙の中に意味がある以上、やっぱりそこには言葉が続々と生まれ、出口を見失って膨張し、破裂しそうになってくる。
『夏の吐息』 2005.6.15. 小池真理子 講談社
2005年07月12日(火) |
DVD『8mm.』(EIGHT MILLIMETER) |
私立探偵のトム・ウェルズは生真面目で依頼人からの信頼を得ていた。漏れては不味い依頼をする上流階級の人間が多い。ある日、大富豪の未亡人となった女性から依頼を受ける。赴いたトムは未亡人から夫の遺品となった8mmのフィルムを見せられる。それは少女が監禁され、暴行され、殺される・・・所謂スナッフだった。未亡人の少女の生死を知りたいという要望に答え、少女の足跡を辿りはじめるトムだったが、辿り付いた先は人間の性の欲望のおぞましい世界だった・・・
うーん、これも1,000円で購入した割には御釣りが出そうなくらい出来のいい作品でした。そう言えば公開当時なにかと物議をかもした記憶がありました。ニコラス・ケイジの作品を劇場へ出向いてまで見ようとは思わないもので見逃していました。しかし、最近の映画はそれなりに内容もしっかりしているし、映像も素晴らしいなぁ。DVDなので特典映像も盛り込まれていて監督の副音声で2回観ちゃいましたよ。 トムは普通の心優しき男なのだけれど、スナッフ8mmを観てしまったことで本能を破壊される、と言うより、奥底に眠っていた荒々しい本能を呼び覚まされてしまう。トムの行動がどんどん常軌を逸脱していって、そこには苦悩もあって、そこらあたりが従来のヒーローモノとは一線を画しています。その部分がこの作品を成功させていると思いました。 セックスに関しては、本当に生きている人間の数だけ嗜好があると思うのですね。大概は密室で二人で密やかに行われる。でも例外も結構あるみたい(笑)。いつも思うのだけど、互いが納得しているのであればそれはそれかと。でも暴力だったり、相手をねじ伏せたり、そうなると犯罪でしかありませんよね。そういう嗜好を持って生まれた人間も哀しいけれど存在する。でもそういう嗜好の持ち主はフィクションで満足するか、世を捨てていただかないと。 老いてもセックスに執着する爺さんがあまりにも哀れでグロくて、巻き込まれちゃったトムってホントにお気の毒。
2005年07月11日(月) |
DVD『TATARI』(House On Haunted Hill) |
昔、精神に異常をきたした犯罪者を収容した病院があった。そこでは狂った医師が医学の名の元に夜な夜な人体実験を繰り広げていた。生きたまま切り裂かれる収容患者たち。暴動が起こり、火事が発生。生き残ったのはたった5人。そして現代、呪われた‘館’に5人の男女が招待される。呪われた館で一晩生き残れたら一億円が手に入る・・・!?
3枚で3,150円というリーズナブルさに惹かれ購入。これが意外と面白かったのであります。館ものなんて出尽くした感があって、勿論この映画もそんなに大きな新しいショックはないものの、丁寧にホラーを追求していて厭きさせなかったですね。残虐な人体実験が繰り広げられた廃墟病棟、それが館にリニューアルされても漂う不気味さは消えやしない。怨念ってあるのかしら、とついつい思ってしまう。 狂った医師ってのが本当に‘いっちゃって’て、その狂気が一番怖かったかもしれません。結局は呪いも怨念も元を正せば人間がなにか極悪非道なことをしたから生まれるのでしょう。怖いのはやはり人間。
2005年07月10日(日) |
『風神秘抄』 荻原規子 |
平安時代末期、16歳の草十郎は腕は立つが人との付き合いが苦手。ひとりで笛をふくことが気が楽だった。平治の乱の際、主と決めた義平が獄門、その首を曝されているのを見たときおおいなる絶望に襲われる。その時、魂鎮めの舞を舞う少女・糸世の姿に見惚れ、惹き付けられるまま笛を吹き始める。糸世の舞と草十郎の笛が寄り添った時、世界が動いた・・・?
これは最高に面白かったです! 荻原さんの作品の中でナンバー1に好きと言い切ってしまうほど素晴らしい。草十郎と糸世の惹かれあいのもどかしさも良いし、何故だか草十郎が話せるカラスの鳥彦王のキャラ最高。この鳥の王ってのが今までの物語と微妙にリンクしてるv こんなカラスなら話したいくらいキュート。 そして「熊野」なんですよね。本当に今年はこの「熊野」(そしてきっとカラス)が私の読書のキィとなりそうな予感。自分なりに調べたい事がたっくさん出てきました。世界遺産、行ってみるか・・・。 分厚いし、時代モノなので敬遠されがちかもしれませんが、上質なファンタジィです。かなりオススメ。これだけのモノってなかなか読めるものじゃないと心から大絶賛。
「この世界でも異界でも、すべてのものごとはもとにもどすことなどできない。一度起きてしまったら、あらたにその先へすすめることしかできぬ。一見、もとのさやに収まるかに見えることがあっても、そこには必ず差異が生まれるのだ」
『風神秘抄』 2005.5.31. 荻原規子 徳間書店
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