酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年07月09日(土) 舞台『HEDWIG AND THE ANGRY INCHI』三上博史 大阪千秋楽

 去年の6月9日に観た三上博史さんの舞台はかなり衝撃的でした。去年の感想を見ていたら、「もう一度観たい」と結んであり、その夢が叶ったのですね(嬉)v
 三上博史のHEDWIGは進化していました。去年以上にパワフルに切なく。舞台というのはナマモノなのだなと思います。きっと演じていて同じ舞台はない。今回の様に一年ぶりの再演となると改善され、タイトにグレイドアップ。衣装も全く違い、三上さんの体型も微妙に違っていました(笑)v 「あ、ここ去年と違う」という場面が嬉しくて。ダンスがかなり変わっていたし、増えていたかな。ベースとなるエロエロさは変わりなし、いや、より過激になっていたかもしれない。台詞で「恥ずかしい」と言うところを「はずい」と言ってしまって、三上博史本人がちょこっと顔を出すも嬉しいハプニング。「暑い」と「恥ずかしい」がいっしょくたになっちゃったんだと言ったり、客をいじったり、あしらったり。
 たぶんリピーターが多いと言うことで「お約束」的なとこがたくさんあって、もしかすると初めて見た人たちには寂しい瞬間だったかもしれない〜。また一年後にHEDWIGに会えるといいな。三上さんの役者生命を考えると、イメージの定着が怖いかもしれないけれど、あまりにもはまり役だから。この舞台を目撃できている事に心から感謝。
 アンコールに7度くらい答えて出てきてくれて、最後にもう一度歌ってくれた時には総立ちの観客大興奮。三上博史のHEDWIGは一度観たら病み付きですv



2005年07月08日(金) 『セイジ』 辻内智貴

 大学四年生の「僕」がひと夏を過ごしたドライブイン‘HOUSE475’。そこで僕は不思議なセイジさんと言う男性とセイジさんの周りに集う人たちと忘れがたい日々を送る・・・

 や、参りました。陸の魚、そういう人種の気持ちが少しわかる気がするだけに心に深く深く響いてしまいました。人生を生きるということが、毎日を生きるということが、決して楽しく美しいばかりではないから。どんなにそれがせつないことであっても前へ前へ生きていかなければならないのだろうけど・・・

「・・・・・・俺たちの、行きっパナシの人生はよ、そうやっていつも、置き忘れたものを追いかけて追いつけない、まぬけな旅だよ・・・・・・」

『セイジ』 2002.2.20. 辻内智貴 積信堂



2005年07月07日(木) 『蝶狩り』 五條瑛

 桜庭調査事務所の所長兼所員の「わたし」は探偵と言う聞こえはいいが、実際は法に触れないことならなんでも引き受けるナンデモ屋。私のもとに来るやっかいな調査。様々な事件を解決しながら、「わたし」は大きな事件に巻き込まれていく・・・

 短篇がリンクして大きな物語となっていく。こういうカタチは読みやすく、わかりやすい。ちょっとした時間に一編だけ読めると言うのは嬉しいものv
 五條瑛さんは全てを追いかけられていないけれど、非常に興味のある作家さんです。文章が相性がいいと言うか、単純に言えばシンプルに好みなのです。軽いハードボイルドなとこもグー。男も女もそういう矜持を忘れちゃいけないよね・・・。
 角川さんが好んで映像化しそうな物語なので期待して待っていよう。キリエを誰が演じるか見物だわー。

『蝶狩り』 2005.5.30. 五條瑛 角川書店



2005年07月06日(水) 『蒲公英草子 常野物語』 恩田陸 

 『光の帝国』で陸ちゃんが、ぎゅうぎゅうに詰め込んでしまった素敵なキャラたちの中から、「大きな引き出し」の春田一家の先祖(に当たると思うのだけど。時代から考えると)が登場します。後は読んでください。やはりネタバレになるようなことは一切書けないわ〜。
 こういう物語を読んで必ず思い出すのは、筒井康隆さんの『七瀬シリーズ』だったり、飯田譲治さんの『NIGHT HEAD』だったり、宮部みゆきさんの『龍は眠る』だったりします(他にもいっぱい)。もともとそういう‘不思議な力’モノにはえらく弱いので今回の『蒲公英草子』も無条件に大好きですv 普通の人とは違う大きな力を持って生まれた人間は、物語の世界では必ず息をヒソメテ密やかに生きています。でもどうしても不思議ななにかが畏怖として感知され、迫害あるいは利用されてしまう。せつなくて哀しくて心に痛いけれども、読まずにはいられない。そういう物語なんですよね・・・。

『私は運命を信じています。でも運命は変わります。運命を待っているだけではどうにもなりません。こちらも歩いていかなければならない。これが私の信条ですね』

『蒲公英草子 常野物語』 2005.6.10. 恩田陸 集英社 



2005年07月04日(月) 『酔っ払いは二度ベルを鳴らす』 東直己

 うふふふふ。北海道在住の酔っぱ作家・東さんの酒にまつわるエッセイ。短くて笑えて身に覚えがあって(苦笑)酔っ払いにはオススメエッセイです。私はたまたま酔いどれ作家さんにかわいがっていただいてますが、あのお方にも是非こういうの御願いしたいものにございます。酔いどれは酔いどれの悲哀をこよなく好物とするのでありますから。ちょっとした移動時間に読めるエッセイって重宝する〜。

『酔っ払いは二度ベルを鳴らす』 2005.6.30. 東直己 光文社文庫 



2005年06月30日(木) 『切れない糸』 坂木司

 アライクリーニング店の息子・新井和也は父の急死により店を手伝う事になる。商店街の中にあるアライクリーニングは地域密着の昔ながらのお店。母親、アイロン職人のシゲさんとパートの松竹梅トリオのオバサマたち、そして関わる地域の人たちやお客さんたちと関わりつつ、少しずつ成長していく・・・のだが、そこには気になる不思議があちこちに出没し、喫茶ロッキーを手伝っている友人の沢田に助けられ、解決していく。

 坂木司さんのひきこもり探偵シリーズでは、主人公が人としてあまりにも未熟で読んでいて「ぶっとばす!」と何度イライラしたことか(苦笑)。でもそこが素敵(はぁと)ってな人たちも多かったので、ごく個人的な私のひとりごとってことで。でも今回の物語の和也と沢田はなかなかよい男の子です。特に和也に好感が持てました。沢田のことはもっともっと掘り下げて欲しかった! シリーズ化されるならば、今後の展開に期待ですねv アイロン職人のシゲさんも素敵だった〜(ここにはぁとウフ)
 クリーニングに出せば綺麗になって戻ってくる・・・なんて認識しかもっていないのだから、読んでいて恥ずかしくなりました。大人の女としてこれくらいの知識は持っておかなくちゃ、と見当違いな読み方をしちゃったのでありました。

 でも、気持ちがついていかない

『切れない糸』 2005.5.25. 坂木司 東京創元社



2005年06月28日(火) 『ともだち刑』 雨宮処凛

 「あなた」が気になっていた「わたし」は、「あなた」が笑ってくれればそれで嬉しい。でもいつのまにか「あなた」によって「わたし」の存在はどんどんどんどん貶められていき・・・

 参っちゃったなぁ。「わたし」が好意を寄せていた「あなた」(同性)にいじめを受け続ける過去の物語と、おとなになった現在の「わたし」の物語が交互に語られ、最後に「わたし」がとんでもない行動に走ってしまう・・・?と言う様な、かなり悲惨な重苦しい物語です。なんと言うかネバネバまとわりつく空気が読み終わっても取れない感じ。
 いじめという行為は加害者と被害者では心に残る傷が違う。想像力を持って加害者になるか、想像力を持たず加害者になるか。いずれにしてもその罪は変わらないし、いずれの神経の持ち主はろくなもんじゃない。力や言葉で人を押さえつけようとする人間はいつかどこかでしっぺ返しを喰らっちゃう気がするわ。

『ともだち刑』 2005.3.18. 雨宮処凛 講談社



2005年06月25日(土) 『スパイラル・エイジ』 新津きよみ

 美樹は高校時代の友人・雪乃と再会。共に40代。偶然で済むはずの再会だったが、雪乃がマンションへ転がり込んでくる。彼女は人を殺していた。雪乃に情をかけたばかりに、不倫相手の妻・暁子の殴りこみに雪乃が対応してしまう。しかも雪乃は妊娠していた! 三人の女たちの人生と激情がそれぞれに絡まりあい、そして・・・

 うー、なんだか心にイタイ物語でございました。化粧品のCMなどで「アンチ・エイジング」などと言われていますが、女性にとって衰えや変化は深刻な問題になっています。ええっ。スパイラル・ポイントという言葉があるそうで(こちらは知らなかった)女性ホルモンが減少する時期(37歳〜39歳)をさすらしい。体型の変化が顕著になる・・・そうかー、そうなのかー。
 三人の女たちが登場して、キィとなるのは殺人者で妊娠している雪乃。でも一番捉えどころの無い女性です。雪乃を挟んで美樹と暁子が闘うと言う感じなのですが(直接的ではなく・・・)、うーむぅ、終り方がちょっと。そこでその人が持っていっちゃうの?みたいな肩透かしをくらいました(笑)。メインの三人だけでなくとにもかくにも老いと向き合う女たちの物語です。重かった!

『スパイラル・エイジ』 2005.5.30. 新津きよみ 講談社 



2005年06月24日(金) 『優しい音楽』 瀬尾まいこ

「がらくた効果」
 同棲相手のはな子は好奇心旺盛でいろんなものに手を出す。どうせまたおかしながらくたを持って帰ったのだろうと思った章太郎だったが、はな子が今回「拾ってきちゃった」ものは可動式、佐々木さんと言うおじさんだった・・・!?

 「優しい音楽」と「タイムラグ」は個人的にはあんまり・・・。「優しい音楽」はちょいとイタイし、「タイムラグ」は設定が好きになれなかった。もちろん文章がいいのでキチンと読ませていただきましたけれども。でも「がらくた効果」はよかった〜。拾われてきた佐々木さんと馴染んでいく章太郎がいいの、とっても。人との関わりは本当に大切なものなのですねv

「おかしかろうが、今私たちの生きている社会の中で回っていくことこそ、大事なことですよ」

『優しい音楽』 2005.4.30. 瀬尾まいこ 双葉社



2005年06月22日(水) 『てるてるあした』 加納朋子

 佐々良(ささら)に一人の少女が降り立った。一生懸命勉強して合格した高校に行く事も出来ず、両親の失敗で放り出されてしまった雨宮照代。イマドキの少女にしては古風な名前の少女が少女の人生が、佐々良の町でどう変化していくのか。佐々良の町はどんな不思議が起こっても不思議じゃない町だから・・・

 加納朋子さん、すごい。貪るように空いた時間に読んでいたのですが、最終に近づくにつれて涙を堪えるに必死でありました。人が変わっていける素晴らしさや、関わる人の優しさ・厳しさに気づける幸福。自分の心の目を開いてしっかりと見ようとすれば、ツマラナイなんて言っている人生が変わっていくかもしれません。この本は2005年の大当たりかもしれないなぁ。超オススメです。

 「変わった」という言葉が誉め言葉になるか否か。もしくは「頑張れ」という言葉が純粋な励ましとなるか否か。すべては自分次第なのだ、という気がする。

『てるてるあした』 2005.5.25. 加納朋子 幻冬舎



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