酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年04月22日(金) 『名探偵症候群』 船越百恵

 13日の金曜日、仏滅。しかし相原茅乃には関係ないっ。32歳にして恋人からプロポーズを受けるのだ! 勢い込んでデートに出かけた茅乃に彼氏が言った言葉は「別れよう」のひとことだった・・・。傷心の茅乃に母からの無情な指令。幼馴染で永遠のライバル花連の結婚パーティへ彼氏を連れて出席すること! 別れたばかりでどーすりゃいいのよ、とほほ。そして急遽あつらえた(笑)素敵な恋人‘役’と田舎へ向うのだが、そこで事件が発生し、茅乃は名探偵宣言をして!?

 とんでもなくハイテンションな始まりで、最初はとまどいがちでした。これはひょっとすると相性悪いか?・・・と思いつつ読みすすめると結構面白く読了できましたv コメディちっくで最後のほうは笑いながら読んでましたvv なかなか面白く読めると思いますよ?

『自分で自分のことを嫌いだなんて言ったらダメだよ。自分のことは、自分で好きになってあげないと、誰も好きだなんていってくれないよ』

『名探偵症候群』 2005.3.30. 船越百恵 カッパ・ノベルス



2005年04月21日(木) 『夜夢』 柴田よしき

 柴田よしきさんが1999年から2002年の間ホラー・アンソロジーに発表された作品(短篇)を、月夜の下の不思議な人たちの語りを通して幻想的なひとつの物語に再生されています。ホラーであるゆえに死や終わりや絶望を感じさせる短篇たちを再生させるって柴田さんの大きさを感じました。中でも気に入ったホラーはエロチックさが際立った哀しい女の物語・・・

「夕焼け小焼け」
 哀しい女の血と宿命の物語。これは思い浮かべる赤い風景にゾクゾク鳥肌が立ちました。ほんと女って哀しい。せつない・・・

 いざ捨てられる段になったら、そんな取り澄ました顔でいられやしないやしないんだから。女ってのはそういうもんなの。男と寝る時にね、代償を求めない女なんてのはこの世にいないんだよ。お金じゃなければ愛、愛じゃなければお金。そのどっちもいらないなら、腰が抜けるほど気持ちいい思いさせなって、女ってのは貪欲に思う動物なのさ。

『夜夢』 2005.3.20. 柴田よしき 詳伝社

 



2005年04月18日(月) 『とっても不幸な幸運』 畠中恵

 新宿にある『酒場』と言うバーには店主もヘンな男だが、常連客たちも一癖も二癖もある(笑)。ある日。店主の娘が100円ショップで“とっても不幸な幸運”などというネーミングの缶を持ち込んでくる。この缶を開けると・・・

 舞台が『酒場』というバー。それだけで嬉しくなってしまう。店主の娘が持ち込んだ妙な缶がもたらすものは不思議なことばかり巻き起こす。店主や店主の娘や常連たちに起こるファンタジー。店主が作るフーズも美味しそうなのですが、それをもっともっと詳しく書いて欲しかった! 美味しそうなだけに残念で。

「人間歳を取ると、時間にも体験にも重みが出る。ずしりと心にこたえるものが、増えるんだよ」

『とっても不幸な幸運』 2005.3.30. 畠中恵 双葉社 



2005年04月17日(日) 『孔雀狂想曲』 北森鴻

 雅蘭堂、東京下北沢の片隅にある骨董品屋。越名集治の店はいつも開店休業の風情。迷い込んでくるのは訳ありの妙な事件ばかり・・・

 久しぶりに雅蘭堂の物語を読み返しました。店主・越名集治のキャラクターがとても好き。ただ冬狐堂の物語に出張ってる時と感じがちょこっと違う気がするのだけど・・・私だけかしら。妙齢の美女相手だとちょっとええかっこしいぃなのかな(笑)。どの事件も好きだけど「幻・風景」が一番好きかもしれない。何かを創りだす人の魂について書かれていて納得しちゃうから。

 特に何事かを創造する立場にある時、周囲を傷つけ、引き裂くことでしか行為をなしえない魂が、確かに存在するのである。驚くほどの繊細さと、傍若無人、そして不遜とが一つの魂の中に矛盾することなく同居しているといってもよい。

『孔雀狂想曲』 20051.25. 北森鴻 集英社文庫



2005年04月16日(土) 映画『CONSTANTINE』

 ヘビィ・スモーカーのジョン・コンスタンティンは、人間界に紛れ込んでいる地獄の住人を地獄へ送り返すエクソシスト。幼い頃から見えざる者が見え、恐怖に怯え苦しんだコンスタンティンは自殺をはかった過去がある。肺癌で余命いくばくもないコンスタンティンの望みは自分の悪魔祓いの実績が認められて天国へ行くこと。コンスタンティンの壮絶な運命は・・・

 公開初日に行って参りました! 行かないわけにはいかんっ。期待満々で観たら面白くて圧倒されて、二回続けて観てしまいました。二回目には一回目で気づかなかった話のリンクが見えたり、登場人物の細やかな感情の変化すら見てとれたり。最高に楽しめましたねっ。早くDVDにならないかな〜。速攻で買って何度でも観ちゃうと思うわー。ゴージャスな映像を是非にご堪能くださいましv あ、エンドロール最後の最後まで席を立ってはダメですよ!! 一番最後に「あっ」という映像が出ますのでv
 さて、まじめな話。この宗教観の違いは根深いものだと思いました。自殺は罪であり、地獄行き。これを本当に信じている人にはヘビィかもしれません。天国とか地獄なんてことはわからないけれど、自殺が罪深い事だけはわかります。あとヘビィスモーカーの人も観ていてキツイかもしれない。あれって煙草産業からクレームこないのかしら・・・。



2005年04月14日(木) 『とげ』 山本甲士

 南海市市民相談室で働く倉永は市民からの苦情に振り回される日々。ある日、有名な苦情おばさんから池でワニを見たから捕獲しろと電話が入る。倉永はそこからどんどんとトラブルに巻き込まれ、巻き込まれ、巻き込まれて、そして・・・

 これでもか!というくらいトラブルに巻き込まれ、どんどん破綻していく倉永。確かアメリカ映画でそんな路線があったなーと思いつつ読んでいたらラストが意外な方向にv これって面白い〜。この方は初読みだったのですが、気に入っちゃいました。巻き込まれ型小説の前2作も読んでみたいと思っています。楽しみ。
 ちなみにどうして読もうと思ったかと言うと、表紙のアロワナに惹かれたからです。アロワナ大好き〜。ピラルクも〜。

「松浦さん。あんたも独身のうちは多少ちやほやされたこともあったかもしれんけど、仕事はやりがいがなかったんやろ。窓口業務はわがままな市民相手に嫌な思いすることが多いし、デスクワークも何のための書類か判らんようなもんばっかり作らされる。そうかというて現場に出て汚れた作業服着るのも嫌。ああ、私はこんなとこにおるべき人間やないのにと、いっつも思てる。それが態度に出てしまうさかい、職場で浮いてしまう。そやけどなあ、あんたみたいなレベルの人間は、役所でも民間企業でも、掃いて捨てるほどおるんや。自分だけが悲劇のヒロインみたいに思てなよ」

『とげ』 2005.3.20. 山本甲士 小学館



2005年04月13日(水) 『うそでしょう!』 『学歴詐称』 松村比呂美

 子供が同じ中学に通っていることから仲良しの主婦の驚きの犯罪(「うそでしょう!」)。夫の会社の妻たちが集う場でライバルに差をつけられるvと喜んだのも束の間・・・(「学歴詐称」)

 注目している松村比呂美さんの短篇を2編読むチャンスに恵まれました。ご本人のブログで「オチ」に関することを書かれているのを拝見して興味深かったのですが、本当に見事に落としてくださいます。ラストでの「あっ」と言う意表をつかれた感が心地よいの。2編とも女って哀しいと感じました。またヤラレタ(苦笑)。
 短篇というものは力がないと描けない世界だと思っているので、この2編には参りました。さまざまな賞を受賞されている松村比呂美さん。是非是非短篇を集めて本にして読ませて欲しいです〜。

『うそでしょう!』 『学歴詐称』 松村比呂美



2005年04月12日(火) 『新・世界の七不思議』 鯨統一郎

 ジョゼフ・ハートマンは古代史の世界的権威。来日し、早乙女静香に京都案内をしてもらうべくわくわくしていたが、静香の都合で延ばし延ばしに・・・。しかし、静香に連れて行かれた場末のバーで宮田六郎なる男と静香の歴史的解釈のバトルを見て、ここで過ごすも悪くない気になってしまう(笑)

 やー、面白かったです〜。『邪馬台国はどこですか?』の姉妹編ですよー。世界の七不思議を宮田六郎が鮮やかな新解釈で高名な歴史学者を煙に巻く。美貌の歴史学者・静香に振り回されるジョゼフ。平凡なサラリーマンに翻弄される静香。六郎の新解釈は面白いですv カシスシャーベット食べたい。

『新・世界の七不思議』 2005.2.25. 鯨統一郎 創元推理文庫



2005年04月11日(月) 『BAD KIDS』 村山由佳

 工藤都は写真部部長の女子高生。問題写真ばかり発表しては生活指導に睨まれている。実は都、20歳年上プロカメラマンとの恋愛に苦しんでいた。自分で自分を制御できず、振り回されるように自然体で行動する都は、ラクビー部の隆之に目をつける。彼は絶好の被写体だった。そして都は隆之の密かな想いをファインダー越しに気づいてしまう。隆之が想いを寄せているのはチームメイトの宏樹。しかも宏樹は亡き隆之の兄の恋人と付き合うようになり・・・

 とても読みやすい気持ちのいい青春小説でした。エキセントリックな都と自分の友達へのコイゴコロに苦悩する隆之との友情とも愛情とも言える優しい関係がすごーく素敵だと思いました。高校生の頃って、本当に感情や肉体が別々に制御不能で苦しかった事をさーっと思い出しちゃいました。まっすぐに生きる苦しさを乗り越えて欲しいと願ってしまうわ。あの日に帰りたい、すこしだけそう思ってしまったのでした。

 あたしは何でも、ちゃんと子の目で選ばないと気が済まないの。自分にとって本当に値打ちのあるものしか、要らない。

『BAD KIDS』 1997.6.25. 村山由佳 集英社



2005年04月10日(日) 『澁谷綺譚』 林 信克

 渋谷でオカッパの美少女に出会うといいことが起きる・・・不思議な都市伝説のような噂が飛び交うが、それはアゲハと言う天才シンガーを売り出す戦略だった。そんな中、女の子達が次々と失踪し、渋谷で異変が相次ぐのだが・・・

 うーん、惜しい。題材は揃ってる。都市伝説、美少女、桜、ドラッグ、洗脳、そして猟奇的連続殺人事件・・・なのにもうひと味足りなくて。残酷さや不気味さかしら。面白くなりそうと期待しすぎたのでちょっとだけ消化不良。残念。

『澁谷綺譚』 2005.1.1. 林 信克 第三書館



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