酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2005年02月11日(金) 『背の眼』 道尾秀介

 ホラー作家の道尾は、白峠村へ旅に出た。そこでは‘神隠し’が発生し、数人の子供たちが消え、天狗の仕業と噂されていた。道尾は散歩に出た河原で不気味な声を聞き、怖くなり東京へ逃げ帰る。そして友人の真備に相談に行くと・・・

 『九月が永遠に続けば』を読んだので、そのまま『背の眼』を読みました。怖いのかミステリーなのかどっちかに固めて欲しかった。ホラー要素を求めて読むと肩透かしと言ったところかしら。出てきた問題も片付かないまま終っているし・・・。続くってことなのかな? 

『背の眼』 2005.1.20. 道尾秀介 幻冬舎 

 



2005年02月10日(木) 『九月が永遠に続けば』 沼田まほかる

 水沢佐知子は、別れた亭主の再婚相手・亜沙美の連れ子のボーイフレンドと付き合っていた。自分から愛する夫を奪った亜沙美への自虐的な面当てだったかもしれない。その男が事故死(殺人?)し、愛する息子が忽然と消えてしまった。これは罰なのか? 罠なのか?

 噂ではアノ桐野女史が絶賛したとか。そう言われてみれば内容の厳しさは桐野テイストに近いかも。これは第5回ホラーサスペンス大賞受賞作品で、作者さんは大人の女性らしい。こういうきわどい内容を描ききるには、ある程度の年齢や人生経験がないと難しいだろう、と思った。でも、どうしたってこのテの作品は書く人も映像を意識しているだろうし、読む方も映像を想像しながら読んでしまう。桐野女史の『OUT』すら映像化した放送業界は、この内容ですら映像化するんだろうなぁ・・・。なかなか問題作。より過激なものを人は求めるのか。
 
 なぜそのことを考えてやらなかったのか。自分自身がその年齢だったときには、平静を装ったうわべの下で、ほんの些細な出来事のひとつひとつに心が引き攣り、<性>に対する病的な憧れや恐れやおさえきれない衝動がいつも渦巻いていたではないか。

『九月が永遠に続けば』 2005.1.25. 沼田まほかる 新潮社



2005年02月09日(水) 『野ブタ。をプロデュース』 白岩玄

 修二は人当たりのよさで軽妙な人気者。ある日、転校してきた小谷信太のいじめられ要素てんこ盛りに驚いた。見て見ぬふりをしていた修二が、ひょんなことから信太=野ブタ。をプロデュースし、人気者に押し上げようとする・・・

 うまいです。この人(白岩玄さん)! 会話のテンポよさや今時の少年少女たちが非常にわかりやすい。そしてラストはキチンと落としてアッと驚かせてくれる。この落とし方のうまさ残酷さ切なさに「うーむ」と唸りました。こんな才能が出てくるのだなぁ。感動。

 言葉は人を笑わせたり、楽しませたり、時には幸せにすることもできるけれど、同時に人を騙すことも、傷つけることも、つき落とすこともできてしまう。そしてどんな言葉も、一度口から出してしまえば引っ込めることはできない。

『野ブタ。をプロデュース』 2004.11.30. 白岩玄 河出書房新社



2005年02月08日(火) 『推理小説』 秦建日子

 発生した殺人事件を忠実にトレースした『推理小説』の続きを落札せよ・・・

 うーん(悩)。秦建日子さん初の小説と言う事で興味深く読ませていただきましたが、やはり映像化を意識した(もしくはその世界の方だからどうしてもそうなってしまうのか)物語と言う感じでした。要するに映像化もしくは舞台化間違いなし。それならばこれを読むことなく映像で「どうなるのぉ〜」とハラハラしたかったですね。『共犯者』の時のように突っ込みながら(笑)v
 登場人物のキャラクターがそれぞれキチンと思い浮かぶところも脚本家ならではって感じでした。中でも無駄に美人な刑事・雪平夏見を誰が演じるかが私の中では既に大問題。そのキャスティングによっては見ないかもしれないくらい重要だ!

『推理小説』 2004.12.20. 秦建日子 河出書房新社



2005年02月07日(月) 『瑠璃の契り 旗師・冬狐堂』 北森鴻

 宇佐見陶子は、ある事情から同業者たちに貶められそうになっていた。そしてその気の強さゆえに親友カメラマンの横尾硝子に会いたくなかった・・・

 陶子は「冬狐堂のプライドにかけて」とちょっと笑える台詞を真剣に言います。今回何度か言っていたようだけど、きっと自分に言い聞かせているのね。陶子の身に降りかかっている現実問題に陶子や硝子の過去が絡んでくる。生きているってことは過去の上に成り立っているものなのね。那智も含め、この3人のイカシタ突っ張った美女たちが私はとても好きですv
 今回の物語の中では「瑠璃の契り」が最高に気に入りました。偶然が必然に思える出会いってあるから。しかし、いい女同志の絆って妙に艶めいた色っぽいもので素敵だわ。くふふ。

「酒なくて、なんで浮世がすごされようか」

『瑠璃の契り 旗師・冬狐堂』 2005.1.15. 北森鴻 文藝春秋



2005年02月06日(日) 『雨恋』 松尾由美

 沼野渉、30歳。公私共に停滞期と感じていた頃、引っ越しすることになる。ばりばりキャリアの叔母が海外赴任中、品川のマンションの家守(笑)である(※最近に読んだ本と勝手にリンク)。マンションの管理費だけ払ってくれればよいと言う叔母の太っ腹な提案には裏があった。そして雨の多かった、その秋に渉は切ない想いをする・・・

 『スパイク』に並びました。いやー、やられた。一筋縄ではイナカイ松尾由美さんの描く恋模様は、ダイレクトにストレートに私のハートをぶち抜いてくださりましたぁ〜。きゃー。まずは装丁の文字がとても素敵。雨という漢字の中の4つの雨だれマークのひとつが涙なの。これはうまい。
 松尾由美さんの不思議なトーンには出逢った頃から魅せられたまま、と言う感じです。うまいと言うか、なんと言うか、いやはや・・・読んでみてとしか言葉にならないわ。これはマイ2005酔わされてブッギリ不動でしょう。はぁ。ハート射抜かれ腑抜け中。

 あんなこと言われないほうがよかった、そう思った。残酷な言葉ー言った人はそんなつもりはなくても、聞いたほうにはそうとしか受けとれない言葉ってあるでしょう。

『雨恋』 2005.1.25. 松尾由美 新潮社 



2005年02月05日(土) 『よろづ春夏冬中(あきないちゅう)』 長野まゆみ

 装丁のキュートさにめろりvで読んでみたら面白かったです! しかも、装丁の絵も作者の長野まゆみさんによるものと知り吃驚。長野まゆみさんで彼方此方調べて彷徨っていたら、昔イラストに惚れて通っていたサイトさんが長野まゆみさんの物語の主人公達をイメージして描かれていたことに気づき、またまた吃驚!! こういう出逢いはとってもワクワクうきうき。
 不思議な短篇集は全て男が男を求める物語。すごーく自然でさらりとしていて、ごく普通の素敵な恋愛ものと言う感じ。おそらくリアルでもゲイのカップルってこんなふうに自然で当たり前なのだろうなぁと思います。あまりにもボーイズラブとかってデフォルメしすぎてるんじゃないかしらん。愛する者が異性であろうと、同性であろうと、人を想う気持ち、恋する気持ちは同じだわー。よいの。とても。言葉の使い方が(やりとりが)無茶苦茶いいのデス。
 どの物語も非常に好みでしたが、「タビノソラ」と「雨過天青」は秀逸。不思議な綺麗な音楽を聞くような心持で読んでみて欲しいですぅーv

 さあねえ、タマシイの容器(イレモノ)はいろいろだからね。

『よろづ春夏冬中(あきないちゅう)』 2004.10.10. 長野まゆみ 文藝春秋



2005年02月04日(金) 『やさしい死神』 大倉嵩裕

 「季刊落語」の編集部編集長・牧大路と部下の間宮緑。変わり者の凄腕編集長・牧には名探偵の横顔があり、緑も好むと好まざると事件に巻き込まれていく。

 このシリーズも3作目になるのですね。落語に詳しくない私でも高座のシーンでは本当に落語を聞いているような錯覚に囚われてしまいます。たまたま先日落語家さんとお話させていただく機会がありましたが、普段も魅力的だ!と思わせる軽妙な話っぷりでいらっしゃいました。芸を磨くって生きてる全てが勉強なのかもしれませんねぇ。
 牧編集と緑が巻き込まれる騒動は、オチが素敵。一番「おお」と唸らされたのは「無口な噺家」でした。懐の大きな人物の計り知れない魅力と実力を堪能できました。すごいv

『やさしい死神』 2005.1.20. 大倉嵩裕 東京創元社



2005年02月03日(木) 韓国ドラマ『真実』 ※感想にネタバレあります!

 議員の娘シニと議員のお抱え運転手の娘ジャヨンの男ヒョヌを巡る壮絶な闘いの物語である。

 ・・・16時間のドラマを私が要約するとこうなりました(笑)。職場の先輩に無理矢理見なさいと渡された韓国ドラマ。「短いから」と聞いて安心していたら16時間! それでも短い方らしいです(苦笑)。しかし、おそるべし、韓国ドラマ。見始めたら、ちゃんと最後まで見てしまいましたヨ。
 大金持ちの頭の悪い娘が、使用人の美しく賢い娘に当り散らす。カンニングを強要する。挙句に替え玉で有名大学を受験させる。自分の思い人が彼女に惹かれると徹底して阻止する。いやぁ〜笑えるほどに面白すぎる決まったまんまの展開。お約束どおり、美しい娘は男を射止め、金持ち娘はますます極悪非道になっていく・・・
 交通事故に記憶喪失と韓国ドラマ定番の流れもきっちり踏まえていて驚きました。ただあんな終わり方はないよなーとひとりブーイングの嵐だったのです。韓国ではものすごい視聴率のトレンディドラマということらしく、日本のサスペンス劇場の延長版って感じばかり受けた私にはカルチャーショックなのでありました。いやそれなりにとっても面白かったんですけどネ。でも、もうこんな長いドラマはごめんだわ。本が読めないもの〜。



2005年02月02日(水) 『いじわるペニス』 内藤みか

 29歳の咲希は二股をかけられた挙句、捨てられた過去に傷つき、本気で恋愛をする勇気を失っていた。それでも身体は男が欲しい。咲希は、ウリセンの22歳の由紀哉に入れ揚げるようになった。しかし、この男、勃たないのだった・・・

 新潮ケータイ文庫で脅威の70万アクセスを果たしたと言われる話題の官能小説を読んでみました。女子の描くエロ話としては面白くさらっと読めました。
 でも、あのラストはどうなんだろう? 私は結局のところ全ては自分に跳ね返ってくるものだと思って生きているのですね。だから、そんなウリセンの男に本気になった自分をキッチリと見つめて欲しかった気がする。あんなことをしても傷は深まるばかりだわ。・・・なんてことを書きながら、もしも自分がウリセンやホストの男に本気になって、咲希のような目に遭った時に似たようなことをしでかすのかもしれないなぁとは思っちゃう。ほんと身につまされた。せつないなぁ。哀しいなぁ。

 本当なら、たった一晩だけの後腐れない関係のはずなのに、私が「恋愛」を彼に望んでしまっていたのだ。

『いじわるペニス』 2004.10.20. 内藤みか 新潮社



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