遠距離M女ですが、何か?
井原りり



 『弱法師』

本当に古い話になるのだが、ひよこの目の前を最初に横切った生き物をひよこが親だと思い込むように、わたしに刷り込まれた人たち。

田舎の高校の新入生だったわたしに、高校と中学はこんなにも違ってて、まったくの別世界であるということを教えた人たちがいる。


わたしはまず、演劇部に迷い込んでしまったのだ。


その人々のほとんどが今は東京にいる。
芝居を続けているのはたった一人だけだが……。

「今、これを練習中だから、本は自分で買っといで!」

白い地に朱色と灰色の明朝体縦書き2列の新潮文庫。

   三島由紀夫
   近代能楽集

わたしの持っている本の中で、英和辞書の次にぼろぼろなのが、これじゃないか?


藤原竜也が蜷川の演出で『弱法師』の主役をやるという。

戦後の焼け跡をさまよう美貌の青年。

そして、彼は盲目だ。

併演の『卒塔婆小町』も楽しみだ。

ムスメを誘ったら、意外にも「藤原なら『バトルロワイヤル』の頃から好きだったから、行く」という。

珍しいこともあるものだ。







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2005年04月04日(月)



 トウシューズ

机上の整頓も部屋の片付けもできないあたしなので、失せ物が見つかるのにも時間がかかる。

が、一昨日消えた携帯がちゃんと近所のスーパーの警備室に届いていた。

こんなにすぐに亡くしたモノが見つかるなんて!

めったにないから、とてもウレシイ。

総合サービスカウンターへ来い、と言われ、名前と住所を聞かれたあとで、警備員のおじさんが来るまで待てという。

その間、あたしの若い友人がてきぱきと働いてるところを見ていた。

薔薇色リボンのトウシューズみたいなハイヒールがきれいだ。

くるんくるんの巻き髪もなんてキレイなんだろう。


若いオンナを本当にまぶしく思った。
嫉妬ですらなく、ただまぶしいのだ。


従業員が一人、休憩から戻ってきた様子。

せっかくだから、彼女とお茶を飲もう、と思った。


「今日の休憩、何時から?」聞くと
「あと5分くらいで休憩です」という。

ぐっ、たいみん〜!


携帯を受け取ったらすぐ帰るつもりで財布だけ持ってきたが、中身は空っぽ。

「ATMに行きます?」
だなんて、気が利くようにもなったんだな。

若いオンナが細いカラダに似合わず、もりもりとランチをたいらげるのを見ながらお茶を飲んだ。


昔むかし、みんなそれぞれ、いろんな恋をしていた。

彼女は札幌の中学校を卒業すると、家庭教師と駆け落ちをして、あたしの町に来た。

家庭教師は某大手保険会社のサラリーマンになっていたが、ヒモみたいに彼女を働かせてぐうたらするようになっていた。

愛想が尽きたところへ、年下の少年から告白され、心が動いた。

その年下の少年は、彼女の美貌にはあこがれたが、彼女から逆に愛され、依存されるようになると、彼女を捨てた。


年下の少年は、もっと年下の少女と出来ちゃった結婚をして、今じゃあ父親だ。

札幌からこんなところまで来て、いろんな恋をして、でも、今もまた恋をして、そうやって一日は暮れていくのだ。






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2005年03月17日(木)



 フレグランス

香水アレルギーではないが、今まであまり関心を持ってこなかった。

いはらから、与えられた贈り物が「香水」。

そばにいなくても、わたしを包んで、見えない鎖にがんじがらめにされて発情している。






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2005年03月16日(水)



 Jazz Live

今、jazz屋にいる。

テーブルあるし、照明も真っ暗ではないので、まあ、臨場感は伝わらないまでも日記の更新は可能。

ピアノトリオ。

夫が来るのを待っているのだが、待ち人いまだ来たらず。

「焼くや藻塩」って感じではないが、焼き牡蠣を肴に黒ビールをちょいと呑む。

出さなきゃいけない手紙がまだ書いてない。

来週はまた忙しいのに、どうする?






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2005年03月05日(土)



 上京情況報告

わたくしのA面をご存知の方に、告知。

A面からアクセスなさってくださいませ。

今月、二泊三日で上京します。







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2005年03月03日(木)
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