夏撃波[暗黒武闘戦線・歌劇派]の独白

2002年04月29日(月) すべてを燃やし尽くした

 4月28日。ついに公演最終日を迎えた。
 11時半、内山公園に集合。柔軟体操の後、発声練習。公園のなかで、われわれのいる場所だけが異質だった。「それは痛ましい光景だった。しかも私はそれに加わっていたのだ」なんて、昼の公園で言うべきセリフではないからな。で、公園から軽く走ってアトリエに入る。

 「今日で最後か」なんて考えるとさみしいけど、もう思い切ってやるだけだ。メークを始めると、いつものことながらドンドン濃くなっていく。最終と思うとなおさら濃くなって、金ラメも顔や頭に塗りたくった。何だか俺、劇画チックだよな、メークも演技も。でも、こんなのもアリかなって思う。
  
 昼の公演は、観客20人を切って、ちょっとさみしかった。でも、観に来て下さった方には関係のないこと、われわれの出せるすべてを出し尽くすしかないのだ。
細かい点ではいろいろあったが、パワーを落とすことなく最後まで突っ走った。芝居が進むなか、汗が次々と目に入り、痛かったけどね。

 そして、千秋楽。開場前、外には大勢の人々が集まってきていた。観客50名、アトリエのキャパぎりぎりの動員だ。まずはベランダ芝居からスタート、そのあと楽屋に引っ込む。胸は高なり、極度に緊張してきた。でも、俺、この緊張感が結構好きなんだよ。
 幕前、オープニング、1場と流れていく。1場から2場への転換中、暗転の中を俺は客席通路を突っ切って奥に引っ込まなくちゃいけないんだ。だけど、通路にお客さんがいて簡単には奥に行けない状態。暗いので、実際何が起きているのか、よくはわからないのだが、とにかく人をかき分けて外に出た。ぶつかってしまった人には、どうもすみませんでした。事情が事情なので、どうかご容赦下さい。
 2場が進行するのを奥で聞きながら、3場の登場に備える。「笙子」のセリフをぶったぎるように登場、「おい、ここに魚住、魚住葉介ってやつはいるか」。弾丸のように飛びまわる。滝のように流れる汗をあたりに飛び散らして、最後まで爆走した。
 
 ついに公演すべてが終了した。今回、友人や同僚も大勢観にきてくれた。前回共演した「河童塾」の人たちも。何よりもまずお客さんに感謝、感謝。そして、演出、スタッフ、共演者の皆さんにも。
 打ち上げでは、いつもにましてビールがうまかった。流した汗の分だけ、体はビールを要求してるみたいだった。と、向こうから「詩のボクシング(愛知県大会)」実行委員の桑原さんがやってきて握手を求められた。「なかなかの熱演でしたね。また、『詩のボクシング』にも出てリベンジして下さいよ」などと話しかけられた。
 ここで「詩のボクシング」について簡単に説明しておこう。自作の詩を思い思いの方法で朗読し、それを審査員にジャッジしてもらい、演者同士で勝負を競い合う、というものだ。「書かれた詩」「活字になった詩」ではなく、「声に出して詠まれた詩」「声を通じて多数の人に発信された詩」を、文学の観点やパフォーマンスの観点やいろんな方向から評価するのだ。
 去年、俺も愛知県大会の予選に出たんだが、惜しくも予選落ち。でも、詩人の楠かつのり氏からは「面白かった」と言っていただいた。「ちょっとやりすぎ」とも言われたけどね。
 話は横道にそれたけど、夜はアッという間に更けていったよ。2時くらいに帰宅して、その後はちょっと記憶もおぼろげ。

 4月29日。久しぶりの完全休養日。意外と疲れは感じてない。ってことは、やばいのは明日か。明日からまた3日間はお仕事さ。

 あ〜あ、終わっっちまったんだな。ものすごくさみしいよ。まるで恋人が死んでしまったかのようにね。そう、まだ、信じられないんだ。今もずっと夢を見続けてるような気がしてさ。
 でも、現実に俺はまだ生きているんだ。何も見えない明日に向かって走り続けていこう。



2002年04月27日(土) けがの功名?

 それは、27日昼の公演、オープニングから1場への転換中(暗転での)に起こった。舞台内の柱に激突。顔面を強打し、目のすぐ下を切って出血の惨事。暗転明けに所定の場所に着いたものの、痛いのと流血とで気が気でなかった。でも、1場を何とかしのいで、2場への転換中に客席奥に去る。鏡に映る自分の顔は痛々しかった。血はにじんではきていたが、何とか止まりかけてもいた。起きてしまったものは仕方がない。これもプラスに考えることにした。幸いというべきか、今回の私の役柄はチンピラ。傷痕が特殊メークに見えなくもない。凄みを増したであろう顔で3場に突入、最後までとにかく突っ走った。
 27日夜公演の出来は、自分ではそれまでの8回のなかでのベスト・プレーだと感じた。とにかく気持ちよかった。このまま千秋楽に突入だ。けがには十分注意を払いながら、明日もまた熱い芝居を見せてやるぜ。今公演をまだ観てない人は絶対に見逃さないように。それじゃ、劇場で待ってるぜ。
 



2002年04月26日(金) ハートに火をつけて

 今日は午前中で仕事を終え、その足で自宅近くの「クイック整体」へ向かう。体をほぐしたあと自宅に戻ってからは、心をほぐすために音楽を聴く。元ちとせの曲を聴いてると癒されてきたが、思わず眠ってしまいそうになる。テンションをあげようと思い、ドアーズの曲に切り替える。「ハートに火をつけて」等の曲を聴き、曽根攻から九条英一にスイッチを入れ替える。出がけに頭髪をセットし、金ラメもつけた。気持ちを盛り上げて稽古場に向かう。
 後半初日、楽しんではいるものの、前半初日とはまた違った緊張感があった。開場前のベランダ芝居があって、少し遅れての開場。やはりお客さんが入ると、力も入り、緊張も高まってくる。幕前、オープニング、1場と続き、2場の前に客席奥に引っ込む。「舞台の袖」で3場の登場に備える。
 何だかんだ言っても、3場は俺が芝居のテンポを作って全体をリードしていかなくてはならない。芝居全体のテンポをリードしていく役回りは、前回公演(河童塾との合同公演)ではなかった経験だ。3場の登場では、緊張のあまり声が喉に張り付きそうになったが、渾身の力をふりしぼってその場を何とか乗り切った。

 今日は、私の知り合いが多数観に来てくれた。暗転で場面がガラッと変わるのが驚きだったそうだ。それを聞いて、俺は心のなかでガッツポーズをする。
 それからまたこんな感想もあった。「曽根さん、普段とはガラッと変わるね」「曽根さんを怒らすとかなり恐いかもしれないね」・・・。普段の俺は、ごく真面目な、どちらかと言えば温厚な人間、と周りからは思われていることだろう。それ自体誤りではないが、俺もいろんな面を持ち合わせている。だからって普段の俺がいきなり九条みたいなチンピラになったりはしないが。いろんな人格になりきれる、それが芝居というものなのだ。
 さまざまに変身しながら、俺は舞台で輝き続けていく。
 



2002年04月25日(木) ゴールデン・ウィーク以降

 世間はそろそろゴールデン・ウィーク。なかには10連休なんていう人もいるみたいだけど、俺の職場はこの時期カレンダー通りの休みだ。今のところ、遠出の計画はない。
 明日から3日間は公演後半。悔いることのないよう、1回1回を大事にしていきたい。ボルテージを最大に、いや無限大にまで高めて、圧倒的な存在感を示したい。

 公演が終了して翌29日は、きっと1日中寝て過ごすことになるだろう。30日、1日、2日は、通常の仕事の日だが、やるべきことはすべて終えて、4連休を迎えよう。
 3日からはそうだな、久しぶりに乗馬クラブにでも行こうかな。映画も観に行きてえよな。それから芝居も、今度は観る側で楽しみたい。
 気になる公演がいくつかある。まず、ゴールデン・ウィーク中では、クセックACTの「人生は夢」がある。これは絶対観に行こうと思っている。観ればきっと俺のなかのラテンの血が騒ぐことだろう。利賀演劇フェスティバルにも行きたいところだが、今回はパスしよう。
 連休後には、「ジャブジャブサーキット」「B級遊撃隊」「てんぷくプロ」「翔航群」「プロジェクト・ナビ」「燐光群」等がある。「柄本明・大久保鷹二人芝居」も気になるし、京劇も観に行きてえなあ。全部行ったら、金なくなっちゃうから何かはあきらめるだろうけど。でも、俺たちの公演後には、とにかく遊びまくりたい。
 公演前にはあまり弾けないでいたギターその他の楽器でも遊んだり、CD聞いたり、遊ぶ材料には事欠かない俺でもある。
 そう言やあ、俺、作家も目指すんだったな。

 今後の人生が開かれるためにも、今公演を実り多きものにしていきたい。



2002年04月24日(水) 「・・・宇宙の果て・・・」をもう一度

 今公演前半が終了し、月曜・火曜と稽古はお休み。ゆっくりできたのはうれしかったが、芝居のことは気になった。今日の稽古が待ち遠しかった。明後日からの後半戦、どんどん調子に乗っていくぜ。

 稽古がなかった昨日は、前回公演(河童塾との合同公演)「僕らは宇宙の果てを見た」のビデオ鑑賞を自宅にて行った(一人で見た)。ビデオに映る自分の姿を見て気恥ずかしく思った。白日の下にさらされた自分の姿のなかにアラはいくらでも見つけられそうであった。それでも、後半のある部分では我ながら演技が光ってると感じられたところもあった。あれから俺はうまくなったのだろうか。自分ではよくわからないことも多いが、本番の舞台を経験することにより俺自身の演技は底上げされていってるように思う。
 それにしても懐かしいよな。思い出は後から後からわき出てくる。たまたま本屋(今池のウニタ書店)でみつけた「新人募集」のチラシ。そこには「芝居は舞台で覚える主義」「あなたのキャラクターで思う存分輝いて下さい」などと書かれていた。何だか自分に合いそうな気がして、問い合わせをし、稽古場を訪れた。秋公演の顔合わせが行われる直前のことであった。オーディション代わりの創作一人芝居なんかもやったっけ。すぐにキャスティングがあり、連日の稽古が始まった。苦しいことが多かったはずなのに、今となっては心はずむような思い出ばかりだ。今回の公演も、振り返った時にすごく楽しかったと感じられるようにしていきたい。そして、お客さんを終始圧倒していく熱い芝居を見せていこうと思う。



2002年04月22日(月) 裏切り

 今だから言えること。俺、今公演の稽古、ものすごく辛かったんだ。そんなこと、演出や共演者、あるいはスタッフの方々にはバレバレだろうけど。
 でも、皆さんのおかげで本番を迎えることができました。本番になって、俺、楽しくてしょうがないんだ。実際本番になってすごく変わったし。きっと周りは驚いているんじゃないだろうか。別に欺いていたんじゃない。稽古では無意識のうちに躊躇してたんだと思う。結果として周囲を裏切り、自分自身をも裏切る形(いい意味で)になったのではなかろうか。これからまだまだ後半戦も控えている。どんどん周りを、そして自分自身を裏切っていきたい。
 裏切るということでは、もう一点。今回、俺はぐいぐい押していく芝居ということで通してきた。ある意味でテンションの高さでしか勝負していないとでも言おうか。そのことを評して菱田さんが確かこんなふうに言った。「ああいう芝居はpH-7では許されるが、『ジャブジャブサーキット』などでは許されないだろうな」。俺、実は『ジャブジャブ』の芝居も結構好きだったりするんだ。いつかはしっとりした芝居もやってみたい、なんてことを考えていたりもする。今はあまり深く考えずに、ある意味で一つの方向でしか演じていない、とは思う。でも、その点においても今後俺は周囲を裏切っていきたいと思っている。「曽根って不器用だとばかり思ってたけど、意外とあんな芝居もできるんだ」なんてことを、いつか菱田さんに言わせてみたい。
 まあ、とにかく後半の5ステージを見応えのあるものにしていきたい。

 ところで、「しゃおりんの日記」の最新ページ読んだけど、おいおい、何だよ、あれは。「曽根さんは疲れるとため息しかつかなくなる」って。「アザラシ、てめえ、余計なこと言うなっつったろ〜」。



2002年04月21日(日) 何事もなかったかのように

 4月公演の前半が終了し、ホッとひと息。いい感じで後半につなげそうだ。
 家路につく私の前にラーメン屋のだしの匂いがしてきて、誘われるかのように暖簾をくぐった。店内に入ってみると見知った人間は一人もおらず、ましてや「もしや曽根攻さんではないですか?」などと言って近寄ってくる者もいない(いるわけねえだろ)。日常に戻れば全く無名の人間だ(別に、演劇の世界で有名、と言いたいわけではないが)。明日になれば、職場の日々の仕事に追われることになる。
 でも、これでいいのだ。日常と非日常の世界を行き来しながら、バランスがとれればそれでよい。夢幻のごとく通り過ぎていく時間のなかで、私は自分さえ知り得なかった自分というものに出会うことになるのだ。何事もなかったかのように時は儚く過ぎ去っていく。
 考えてみれば、人生にしたところで、永遠の時間の流れのなかでは夢幻であり、とるに足らないものであろう。それでも、私は一瞬一瞬をかけがえのない時間ととらえ、輝いていきたいと思う。



2002年04月20日(土) 嵐を呼ぶ男

 公演初日は何とかなったものの、自分としてはガチガチだったし、反省点は多かった。でも、初日が明けて、ホッとできたことはよかった。
 で、今日は公演2日目。しかも2回公演だ。とにかく最初からボルテージを上げて飛ばしていくつもりだった。昼公演では、後先考えずに飛ばしまくった。終わってみると息も絶え絶え、でもすごく気持ちよかった。菱田さんからは駄目出しもあったけど、それは課題として肯定的に受け止めることができた。
 昼公演直後は体もきつかったけど、1時間ほど間をおいて疲労回復。しゃおりんに「もうため息はつかない」と宣言し、臨戦態勢に入った。夜公演も絶対にテンションを下げたくはなかった。夜公演では、余分な力が抜けてよかったと感じた。テンションも下がってはいなかったと思うのだが、どうだろうか。

 今日は、昼・夜ともに知り合いが見に来ていた。あらかじめ予約してくれた人の他に、当日精算券を渡しておいた人が見に来てくれた。私の職場(福祉施設)にボランティアで来てた人だったが、本当に見に来てくれるとは思っていなかったので非常にうれしかった。しかもプレゼント(クッキー)付きで。あ、誤解なきよう言っておきますが、プレゼントとかさ、あまり気を遣っていただかなくても、公演を見に来ていただけるだけで十分ですからね。まあ、気が向いたら花束など持ってきてくだされば・・・。
 私の知り合いは皆、異口同音に「普段の曽根さんとは全然違いますね」と言っていた。そりゃそうだろ、九条みたいなやつが福祉施設の職員だったらホントに困っちゃうからな。日常との落差があればあっただけ楽しいってこともあるね。
 
 さてさて、明日もまた2回公演だ。明日の公演よりも私ゃ、明後日の職場への出勤のほうが心配だ(果たして疲れを残さず出勤できるのか)。だからと言って決して手を抜くことはない。明日もまた、アトリエに嵐を呼ぶぜ!
 



2002年04月19日(金) ゴングは打ち鳴らされた

 闘いは、始まった。公演初日は無事終了。明日の昼までしばしの休憩だ。
 ボクシングの試合で言えば、1ラウンド終了。コーナーで丸いすに腰掛けながらセコンドの指示にうなずいている、ってところか。
 セコンド(?)の菱田氏が言う。「お前、今日テンション高いな」「2ラウンド以降息切れしないようにな」。俺はほくそ笑み、心の中でつぶやいた。「な〜に、心配には及ばねえ」「2ラウンドは猛烈なラッシュをかけて、泡ふかせてやるのさ」。
 1ラウンドで感覚はつかまえたから、どんどん調子に乗っていくぜ。判定勝ちなんてケチなことは言わねえで、KO勝ちを狙っていこうじゃねえか。完膚無きまでに打ちのめしてやるのさ。
 すぐに第2ラウンドのゴングが打ち鳴らされるだろう。その前に、ラウンド・ガールよ、出て来やがれ〜。



2002年04月18日(木) 燃え尽きるまで

 明日は、公演初日。
 とにかく今の自分が出せるだけのものを出し切って勝負するよりしょうがない。明日は半日休みを取ったことだし、気分を盛り上げて万全な態勢で小屋入りしよう。もうここまできたら、演ずることが快感と感じられるようにするだけだ。緊迫したボクシングの試合のように、10ステージを完全燃焼して見応えのある舞台にしていきたい。
 「明日」がもう「今日」に変わろうとしている・・・。


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