2005年11月06日(日) 「古事記」角川書店・編 |
「古事記」 角川書店・編
角川文庫のビギナーズ・クラシックスというシリーズ。
原文と訳が分けて書かれていて、訳だけ読んだらあっというまに読める量。
古事記の隅々まで網羅しているわけではなく、あくまでも入門書。
随所に写真やイラストも掲載されており、古めかしい雰囲気一切無し。
戦前の尋常小学、と言われる時代の教科書押し絵が載っていたり。
古墳や遺跡の写真が白黒ながらも、想像をかき立てる。
巻末には歴代天皇の表、遺跡の住所録等があり、資料としても活躍しそう。
内容は、有名所の説話をピックアップしているので、他の古事記関係書物を読んだ人は物足りない…かも。
しかし、訳は堅苦しくないし、すぐ横に原文置いてあるから、古文の勉強に持ってこい。
…古事記にしろ今昔物語にしろ、なんで学生の時に出会ってなかったのかなぁ。
あの頃に興味持って読んでいたら、古典の点数相当よかっただろうに。
余談になるが、「伊勢物語」はエロ話だと聞いて、気合い入れて口語訳したなぁ(笑)
でも、ぜんぜんエロ話じゃない、と落胆した覚えがある。
あの時代は慎ましやか〜な性表現ですからなぁ。「一夜を共にした」とかそんなんだし。
それに比べると、古事記はすさまじい。
しつこいでしょうが「吾が身は成り成りて…」の一文。
あれを高校古典でやってくれ、そしたら皆興味津々だっつうの!!
至るところで皆ラヴラヴですからなぁ。出会って速攻結婚とか。
可愛い娘見つけたら、「んじゃ、明日きみんち行くよ」とか。
すごいよなぁ、昔の人の貞操観念。
神代期はほとんどオススメ。
いわゆる国造りのイザナミ・イザナギの話から、アマテラス大御神の岩戸隠れ、因幡の白兎や大国主の命、そしてニニギの命の天孫降臨。
神様の時代の話は、おもしろ可笑しく読めるのに対し、天皇時代になると、色恋沙汰メイン。
その中でも、悲恋ものが泣ける。
次期天皇の座を捨ててまで、妹との禁断の愛に走ったり。
天皇の思い人と駆け落ちしたあげく、追っ手に追われる身となったり。
こういう辛い恋の仲で、感情を詠んだ歌が作られ、和歌に発展するのですな。
古典嫌いは大分解消したけど、今もって和歌は許容範囲外。
ちなみに、ヤマトタケルが、ミヤズヒメというお姫さんに詠んだ歌がまたえげつ(?)ない。
「ひさかたの 天の香具山 利鎌に さ渡る鵠
弱細 手弱腕を 枕かむとは 我はすれど
さ寝むとは 我は思へど
汝が著せる 襲の裾に 月立ちにけり」
―久しぶりに会った愛しい人よ、君の腕を枕にして一緒に寝たいと思ったが、君の上着の裾には経血が…。
なにをズバリとおっしゃいますか、あなた様!!
私も乙女の端くれ、驚きましたよ。この歌には。
そして、お姫さんは「ホント長い間待ちましたよ、だから月が立つのもごもっとも」と返してる。
うむぅ…あけすけとしておりますなぁ。歌にするところがまだなんとも…。
というか、当時の人はまだ、月経を不浄とは見なしてないのでしょう。
平安時代には、女官にお宿下がりがあったんだっけか…いわゆる生理休暇。
あら。ちょっと生々しい話に脱線してきましたので、この辺で。
とりあえず、いろんな話の原点になっている日本の神話。
これの入門編にしてはいかがでしょうか。
神様達のてんやわんや、天皇一族の恋愛事情、これらが現代の現人神に通じてるって考えると、皇室のニュース見る目も変わりますよ(ちょっと規定ギリギリな表現だな…)
なんにせよ、我が日本国最初の物語ですので、一度はご覧アレ。
まんが日本昔話に負けずとも劣らない面白さです。