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海老日記
管理人(紅鴉)
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2007年07月26日(木)
伯爵日記・二十四のベクトル


「当たり前のことを言うけれど、あんまり可哀相な目で見ないでくださいよ」
「内容によるね、言ってみ?」
「うん、なんというか、考えの深い人浅い人っていう言葉があるでしょう。でもですよ、色んな人の話を聞いてると、やっぱりみなさん、生きている分の哲学をお持ちで、誰にも譲らない部分ってのを、持ってるようなのですね」
「うん」
「すごくいい加減なようで、誰にも負けない歌を持ってる人。みんなから抜けてるといわれながらも、ひたすら熱心に勉強する人。友達作るのがうまい人、友達作らなくたって孤高でいられる人。きっと、他人を浅いと思うのは……何かが違うんですね」
「うん」
「ごめんなさい。自分で言っててなんだかなあ、です」
「そんな風に考えるってことは、伯爵もそのベクトルに深みを増したんじゃない?」
 ああ、なるほど。
「君、すごいですね」
「うん、そうだよ」


 



2007年07月24日(火)
伯爵日記・佐々木女史の疑問


 佐々木女史が海老銃のホームページを見ていることが判明した。
「なんで7回にもわたって私なん?」
「いえ、たまたま思い出したから。佐々木女史って、一回生の頃とかなりキャラ変わりましたよね」
「そう?」
「はい、昔は不思議ちゃんキャラだったはずなのにね」
「そうやっけ?」
「そうだったんですよ。少なくとも僕にはそう見えていましたよ」
「幻覚ちゃう?」
「現実でした」


「でも、一番の疑問はね、このZ伯爵って誰よ」
「……いや、いたじゃないですか、僕と同じ伯爵って呼ばれてる人」
「誰それ?」
「何とぼけてるんですか」
「幻覚ちゃう?」
「幻覚ちゃう」
「そんなの、知らんよ」
「んなわけ……」
 でも、いたという証拠がないことに、ちょっとびびった火曜日の昼。

 



2007年07月22日(日)
伯爵長編・カンテラ伯爵と透明人間Z・7


「そう言えば、佐々木女史。以前話した僕のそっくりさんって今はどうされているのですか?」
 佐々木女史は言われて気づいた、という風な貌だった。
「ああ、Z伯爵? あん人は学校やめて東京に役者の勉強に行ったよ」

 昔なら濃いなあ、とか思ったのだろうけれど、大学生を四年ほどやってると、そういう選択も世の中にはアリなんだということもわかるようになった。
「そうですか……結局喋ることなかったなあ、そっくりさんだったのに」
「うん、ドッペルってたやんね」
 そんな動詞聞いたこともない。


「そう言えば、佐々木女史は最近目立つ服着ませんね」
「うん、まあ毎日あんな服着るわけじゃないし……。そういう伯爵こそ作務衣着いへんやん」
「着潰して破れちゃったのです。着すぎて直せないくらいになっちゃって」
「お気に入りやったんやね」



 僕は何故か佐々木女史と親友になるのだけれど、その友人のZ伯爵とは何の関係も持たずに終わった。
 見た目は激しく変わっていたけれど、正体を知ることができず。
 もし会話をしていたら、どんな風になっていたのだろう。
 そんなことを、たまに考える。


 昔、もしああしていたら。
 最近、そんなことを考えることが多い。