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海老日記
管理人(紅鴉)
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2007年07月16日(月)
伯爵長編・カンテラ伯爵と透明人間Z・3

 というわけで、普通のことをすると余計に変に見えるような変わり者が世の中には多いようで。



 そういう人間のことを考えると、透明人間と同じだな、なんて風に捉える。
 何が透き通ってるのかはわからないけれど。



 
 そんなことを考えながら食堂でカレー食べてると、後ろから声がした。
「不言実行と有言実行って両立できるのかしら?」
 ……こいつ何言ってるんだろう?
 っていうか、誰?


 後ろを見ると、黒い膝丈まである上着を着た女の子だった。
 なんだこの子、全然透き通ってないぞ。っていうか、濃い。
 もしかしてそっち系の子か?

「あの、何言ってるんですか?」
「この頃私のこと見てたけれど、何?」

 会話文に会話文で返されてしまった。

 しかし気に障るほどに僕はそんなに彼女のことを見ていたのだろうか?




 そんなこんなで、僕は佐々木女史と友達になったのだった。

 



2007年07月13日(金)
伯爵長編・カンテラ伯爵と透明人間Z・2


 僕にとって透明人間のイメージは、普通の格好が逆に目立つ。である。

 コートに帽子サングラス。包帯で体を包み肌を見せないようにしているという何かを隠しているさまがとても怪しい。普通であろうとしていることが疑わしさを持たせるという逆転がおもしろいなあ、と思いながら透明人間の挿絵を見ていた小学生のころ。
 変な人間ほど、自分のことを普通だと思いたがるという原理に気づいた中学生時代。

 だから、僕は透明人間というものについて考えるとき、むしろ彼らは人の目に着きやすいように頑張るんじゃないのか、なんて考えたりした。


 



2007年07月12日(木)
伯爵長編・カンテラ伯爵と透明人間Z


 透明人間っぽい人がいる。

 いつも黒い膝まで丈のある上着を着て、一人で昼食を食べている。
 靴は紫、髪は茶色い。世に言う、ゴシックな服装だろうか。
 鞄は木目な感じ。そう言えば馬路村とかで木製鞄とか言うおしゃれなグッズが売られているという話を聞いた。たぶんそれ。
 そんなに見かけるわけでもないのだけれど、見かけた時はいつも一人で座っている。
 ぶっちゃけ、学校の中で2人以上で歩く人間ってそんなにいない。いつも誰かといる人間もいれば、いつも1人で歩いている。
 そんなのは、驚くほどのことでもないのだろう。
 

 

 学校外を歩いていて、その子を見つけたことがある。
 ものすごく普通な服を着て、ものすごく普通な人達とものすごく普通な顔をしておしゃべりしながら歩いていた。



 あの子、学校ではどうしてあんな奇抜な格好しているのだろう。
 今日もその子を見かけた。
 夏だと言うのに、いつもどおりの、膝まで丈のある黒い上着を着て、食堂でもくもくとカレーライスを食べていた。
 この子、こんな格好をしてどうして目立たないのだろう。
 むしろ目立ちすぎてわざわざ気にするような相手じゃなくなってるのかなあ。


 
 まるで、透明人間のようだった。
 

 普通の格好をしていたほうが、みんなの視線を集めるような美人なのになあ。
 伯爵的美感だけれども。