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海老日記
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2007年04月28日(土)
伯爵日記・カンテラ伯爵の悲嘆


「あなたはできるかもしれないけれど、私にはできないのよ。放っておいて」
 まさか三次元で生きていてこんなせりふを聞かされる日が来るとは思わなかった。
 きっとあの子は僕が優しい、慰めてくれる男だと信じてそんなことを言ったのだろう。確かに、僕は建前上あの子を放っておかないけれど、でも、正直面倒くさい相手にからまれたなあ、なんて思いながら彼女を慰めるのだ。


 僕はおかしいのだろうか。
 カンテラ伯爵にだって、表と裏くらいあるのに。



2007年04月27日(金)
伯爵日記・カンテラ伯爵と佐々木女史


 今日は久しぶりに佐々木女史と昼を一緒に食べた。

 昔はそれなりに頻繁に出会っていたが、僕が物部キャンパス。彼女が朝倉キャンパスという地理的なもの。僕があまり朝倉に行く用事がなくなってしまったこともあり、共通の時間というものが、減っていった。
 今日はたまたま朝倉に行き、別に呼んだわけでもないのだが、購買の前で佐々木女史に出会った。
「ああ、伯爵。久しぶりやね」
 佐々木女史は無感動な様子でそう言った。
「こんにちは」
 とりあえず、僕も普段どおりに挨拶から始めた。
 
 その後昼ごはんを一緒に食べて、すぐに解散。
 何を話したのかよく覚えていない。
 適当に、どうでもいい話題。(たとえば今日は朝地震があったとか、僕が今晩コンサートに出るんだけど来るか? とか)


 その後適当に用事を済ませて物部の研究室に戻り、こうして日記を書いている。
 次に朝倉に行ったら、また佐々木女史に会えるだろうか。

 会いそうな気もするけれど、たぶん、自分から会おうとまではしないだろうな、と考えたところで僕があくびをした。



 たとえばだけれど、 別々の道を進んで十年経って、それでも再会した時に別れた三分後みたいな会話ができるのが、いい友達ってやつなのかなあ。
 佐々木女史を見て、いつもそんなことを考える。

 



2007年04月21日(土)
伯爵日記・雷神


 私は神様なんてこの世にいるとは思っていません。
 そういうものは、人の心の中にしか、いないものです。

 まあ、そういう人間なんですけどね。



 さっき、夕立にあって、ずぶ濡れになりました。
 うひゃあ、なんて叫びながら雨宿り。
 たまたまポケットに入っていたハンカチで、体を拭いて、ため息ひとつ。



 雷鳴、ひとつ。



 雷が、鳴り、私は驚いて空を見上げて。


 けれど、そこには分厚い雷雲と大粒の雨。


 ふう、と深く息一つ。





 光が、一閃。






 空の向こうの方で、雷が横に走りました。


 普通、地面と空をつなぐものだと思っていた稲妻が、横に走りました。
 電気ですから、そういうこともあるのでしょう。



 でも、私にはそれが巨大な蛇に見えたのです。




 見えただけなのだけれども。

 それが私の神様ということに、今はしています。

 まあ、そんな人間ですから。