東京の真中に赤い塔。
雨の日も風の日も暑くても寒くても雷なんか落ちたりしても
ずっと尖がって今から先も立ちつづけている。
大怪獣に壊されないでね、333m。
死ぬまで借り続けている。
お金はレンタルとは言わない。
食う、住む、寝る、着るその他多数。
借りて借りながら一生を送る。
でも、そもそも自分のものなんて最初から
ないんだけど。
もうしばらくすると町につく証。
FMラジオから流れる流行の曲。
一曲ごとにラジオのパーソナリティが
曲紹介をしている。
でも英語。なのにその曲だけは
なぜか、日本に帰って出会える気がしてた。
数週間後日本でラジオから流れてきた
その曲は、なんだか違って聴こえた。
湿った空気、激しい雨じゃなくてしょぼしょぼ降る雨。
街にいろんな匂いが染み出してくる。
地面の土の匂い。日本料理屋のだしの匂い。古い家の黴た匂い。
雨に濡れ、急いで帰る彼女の髪の匂い。
湿ったおかげで匂いだす、
どぶ川の臭いも酷くなる。
東の空に黄色い満月。
地球に向いているほうが表ということになっている。
地球にあんな凸凹が顔だなんて思われたくないに違いない。
でも皆がそういうことにしているので
大女優並みの撮影ライトで美しく見せている。
ひょっとすると横顔かもしれないが。
大学に合格した娘を助手席に乗せて
ディーラーに向かう父。
普段殆ど家には居ない。こんな父でも娘と約束は
守ってくれた。
娘の顔が笑ってないのが、気になるが。
親子の車は国道を走る。
通学路、もう十五年も前に通らなくなった道。
歩いてみるとはっきりしない、その経路。
この道通って通っていたはずなのに。
無意識の三年間。
あの下り坂の右には幼稚園、左にはテニスコート。
自転車で走り抜けていた毎日。
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