2006年10月23日(月) |
**中間テスト終了** |
先週、中間試験が終わった。気にかかっているのは、前から何度か出ている成績不振の生徒のことで、どう考えても今回のテストはこの子には難しすぎるのだ。今回の出題担当の先生から原案が出た段階で、何度かもう少し簡単にして欲しいとお願いに行ったのだけれど、ほとんど変更してもらえず、私の教えているクラスにはかなり高度なテストになってしまった。今回の作成担当の先生のクラスは成績の良い生徒が揃っているため、ある程度、難しい問題にしないとやる気がなくなってしまうという理屈は理解するけれども、それを他のクラス、特に私の担当しているクラスのように得点が伸びない子達も同じ問題というのはかなり厳しい。もっとも、違う問題にしてしまうと最終的に内申点を出す際に不公平になってしまうので、これは仕方ないことなのだけれど、卒業単位を満たしていない生徒がいるので、今回ばかりはなんとかしてもらいたいというところだったのだ。
当人はどうかと言うと、テストの1週間前を切った頃にやってきて言った。 「先生、今からだと何をやっておけば赤点になりませんか」 今さら何を言うのか…と、ひどく脱力したし、今からなんとかなるような甘いテストではない。私は2学期が始まった段階で、授業中に、中間テストは難しいと再三に渡り口を酸っぱくして繰り返してきた。そしてそれを真剣に受け止めた生徒達は、かなり早い段階から授業内容の復習を完璧にして来ている。それでも不安になって、いくらなんでもそれは出ないよ…と私が思っている部分まで必死に勉強している。それに比べて、この卒業見込みも出ていないこの子は、この始末なのだ。まあ、この、良く言えば大らかな、悪く言えば自己認識のできない性格だから、この事態に陥っているわけなのだけれど。また、こういう甘えた言い方をする生徒というのは、毎年、必ずいて、その度に私は腹を立てながら、「とにかく範囲をできるだけやりなさい」と言うのだけれど、こう言うと、「もう今からやってもダメだ」と諦めてしまう子がほとんどなのだ。でも、まさかこの子の場合は諦めていられる身分立場ではないので、できるかぎりやってくるだろうと期待し、少なくとも30点は取って来るだろうと思っていた。ここで30点を取ってくれれば今の段階で卒業見込みが出るのだ。
そんなことを思って迎えたテスト当日。テスト問題を作った先生が各クラスに質問の受付に言って戻ってくるなり、私のところに来て言った。 「シェディルさん、ごめん。今回、平均点が赤点かも」 えーっ、冗談じゃないと焦る私。でも、まだ試験時間は20分も残っているので、ここからきっと頑張るだろうと心の中で応援しながら答案が戻ってくるのを待った。そして答案が戻って来たのを見ると、きちんと埋めてある答案がほとんどで、残りの20分で一気に解答したらしい。よかった、頑張ったんだね、皆。そしてまずは前回のテストでのトップ3を採点してみると、全員が90点以上だった。よかったと一安心し、次に、本当に心配で不安なあの子の答案を採点してみた。問題作成担当の先生も、1学期末に平常点はつけなくていいと言った先生も心配でやって来た。この子の答案は非常にあっさりとした答案で、半分以上が白紙状態だったので、すぐに採点完了。得点は24点。これではまだ卒業見込みが出せない。部分点をあげるにも書いていないのではどうにもならない。本人もそのことは十分に承知していることだし、その上での努力不足は明らかだ。なので、これはもうどうにもならない。教科主任と学年主任に報告すると、あとは課題を出して最終的に平常点を限度枠いっぱいまであげてなんとか卒業させましょうということになった。でも、それでも次のテストでは、過去3回のテストでも取ったことのない高得点を取ってくれなくてはならないので、実のところ非常に不安なのだ。
でも、明らかにこの子には難しすぎる問題だった。こう言ってしまっては何の解決にもならないのだけれど、この子には授業で使っているテキストは難し過ぎるので、恐らくは何をやっているのか全く理解不能だと思われる。前にも書いたことだけれど、この子の学力レベルは、この学校の高校での授業内容にはとてもついていけない。それが最高学年まであがってきてしまっている裏には、他の生徒達と別の課題を提出させることによって、それを平常点として評価したことの結果なのだ。つまりは他の生徒と違うことをしてきて、それを認めてもらうことで他の生徒と同じ扱いで進級してきているわけなのだけれど、その無理と歪が限界まで来てしまっている。卒業するには次の最後の試験で43点も取らなくてはならないのだけれど、昨年や一昨年、この子を教えていた先生達が言うには、この子は30点以上は取ったことがないのだそうだ。なんとかしてあげたいとは思うし、学力だけで生徒を評価するつもりはないけれど、それでも同条件で評価しないと他の生徒達がかわいそうだしで、板挟み状態になっている。本当はもっと早い段階で他の学校に行っていればよかったのだろうなあと思う。私の勤務先は中学もついているのだけれど、中学から高校にあがる際に、成績不振で落とされることがないため、こういうことは確かに起こりうるのだ。ただ、本当にここまで大変なことになってしまうことは少ないらしく、今まで聞いたことがない。
この生徒は、卒業後の進路のための出願も、卒業見込みが出ていないので何もできないでいる。確かに卒業後の進路は大切だということはよくわかるけれど、その卒業のハードルは、ちゃんと他の生徒と同条件で乗り越えるべきだと思っている。確かに高校時代は通過点の一つに過ぎないけれど、通過して初めて先が存在するものだ。そう思うので、ここはしっかり自力で努力して頑張ってほしい。ずるい手段は使わないけれど、頑張るなら毎日でも補習するつもりではいる。私のやる気とか親切心ではなくて、このクラスを担当してしまった以上は、この子に対しても責任があるので、なんとしても卒業はさせてみせる---と思っている。
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