冒険記録日誌
DiaryINDEX|past|will
2021年06月17日(木) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その16 |
丘の頂上までついたとき、トロイゼンの町からあがっていた煙が火事によるものだと気がついた。拙者は急いで町へ向かって駆け下りる。 故郷の町は壊滅状態だった。通りのあちらこちらには殺された住民たちの遺体が転がっているだけで、人気がなくなっている。ただ、霧雨の中、燃える家々がくすぶる音が聞こえるだけだ。 何がおこったのだ。 拙者は、急いで我が家へと向かったが、家は燃え尽き、母上の姿はなかった。生存者はいないかと向かった神殿の中で、まだ息のある神官パセウスを発見する。拙者が故郷を旅立つときに、彼が守護神を決めるように助言してくれたのを昨日のことのように思い出した。 じゃが、彼も深い傷を負っており、傍目にもその命が燃え尽きんとしていることはわかった。 「パセウス殿。拙者じゃ。アルテウスでござる」 「やっと戻ってきたか。だが、この町を救うのには遅すぎたな……」 彼は笑おうとして、口から血を流して咳き込んだ。 「いったい何がおこったのですか?」 「トロイ人が攻めてきたのだ……我らが神よ!どこにおられる?」 「母上は?母上はどうなったのです?」 だが彼はもう死んでいた。 霧雨は大粒の雨に変わり、嵐が激しくなってきた。 拙者は衣服を脱ぎ捨て、廃墟の真ん中で胸を張り裂けんばかりに叫んだ。 「冒険者は帰ってきた!神よ!いま、拙者にどんな言葉を待っているのでござるか!」 だが、神々からは何もいらえはなかった。破壊されつくされた町を再び見回す。雨はさらに強くなり、夕闇がせまってきている。拙者は故郷に帰ってきたのだ。 そして、東に1000マイルのかなたでは、娘が刃を研ぎ、時節の到来をまっていた。
完
いや待て。最後の一文はなんじゃ。 娘と言うのは、拙者こと、アルテウスとアリアドネの間に生まれた子のことじゃろうな。 では、刃を研ぎ、時節の到来を待つというのはどうゆう意味じゃろう。ワシに変わってトロイ人を打ち倒そうという事じゃろうか。 「……それは母の仇のお前に、復讐の刃を向ける日を待つという意味」 「あーあー!聞こえんなぁ!」 一瞬ヘルメスの声が聞こえた気がしたが気のせいだな。見たこともなき娘にそこまで恨まれる覚えはない!もしそうなら、どこまで救いがないのじゃ。 拙者、平和な八幡国で次の出番を待つことにするでござる。最後まで拙者の冒険を読んでくれた読者の皆様には、ただ感謝あるのみじゃ。 恐るべし、ギリシャ神話の世界よ。さらばじゃ!
by銀斎
2021年06月16日(水) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その15 |
目を覚ますともはや目慣れた船の上だ。もう夕日も沈む時刻らしく、空に星がいくつか瞬いておった。しかし、げぇむおーばーを迎えたい以上、3巻の冒険の最初の地点まで戻されたことは間違いなかった。それは確信があった。 なぜなら例によってあの忌々しい使者の神ヘルメスが拙者の傍に立ち、ニヤニヤ笑いを浮かべているのが見えたからじゃ。 「惜しかったなぁ、アルテウス。もう少しでエンディングまでいけそうなのにな。詰めが甘いんだな」 「うるさい!今回でお主と会うのは最後じゃ」 ヘルメスに拳をふりあげると、彼は軽く身を宙に浮かせ、カラカラと笑って手を振り上げた。とたんに派手な打ち上げ花火が何発も夜空をまう。 「今回で連載計50話達成おめでとう!いや、ここまで回がかさむとは、俺は思わなかったね!文字通りに神様もびっくりだ!ところで、今までに何度死んだのだい?いやぁ、回数が多すぎて俺はもう覚えてないんだ。頼むから教えてくれよ。おっと」 拙者の必殺の居合い抜きから発せられた剣の一撃は空振りに終わった。拙者は怒りに震える手を自重しながら剣を鞘に収めたが、そのころにはヘルメスはとっくに姿を消していた。 くそっ、神も仏もござらぬ。ゼウス神も守り神もこの巻の冒険には、まるで役にたたぬしな。
まずは、アリアドネを結婚式のために立ち寄った島へ置き去りにする。さらば、アリアドネ。また死者の国であおうぞ。 そのあとは船員の反乱を無事しずめ、アテネで父上の死を見届けると、遭難を繰り返しながら故郷へ戻る旅を続ける。たどり着いたトロイの宮殿で従兄のアグノステスを事故で死なせ、ニンフの島オギュギアで4年半を過ごしたあと、軍神アレスの神託によって従兄殺しの罪滅ぼしのためにオルビアにあるアレスの神殿かキルケの島へいく2択の場面になった。
船の上でしばし考える。これまで2回もアレスの島へ行く選択肢じゃったしな。今回はキルケの島に行こう。神話でキルケは邪悪な魔女と噂を聞いているが、対処方法は知っている。確かニンニクの花を編んで作った冠を被ればきゃつの魔法にかからないはずじゃ。 「待ちなさい!それはブラッドソードだったかしら、とにかく違うゲームブックの話しでしょ。他と混同しないように!」 突然、空に虹がかかり虹色のローブに身をまとった女神が目の前に舞い降りた。 「私は虹の神イリス。とっても重要人物よ。だってヘラ様からあなたへ重要な伝言をことづかっているもの。それまた重要なことなのよ。だってオリンポスの神々はあなたのこととっても気にしてるしそれにキルケはわたしたちはあまり好きじゃないのよ。とっても意地の悪い女なんだから。もしそんなのがあなたの好みなら否定はしないけど、わたしたちのほとんどはそうじゃないし実際」 「ちょと待つでござる。いいから用件だけいってほしいでござるよ」 この女神は話し始めると、とにかく長ゼリフなのだ。どのくらいかと言うと、1ページは自分のセリフで一気に埋めてしまう程なのじゃ。 とにかく彼女からモリーという草の根をもらって食べる。なんでもこれでキルケの魔法から、身を守られるらしい。 とりあえず、これで覚悟はできたのでキルケの住む島へ行き、魔女にあった。キルケに兄弟殺しの罪滅ぼしのために必要だといわれ、差し出された飲み物を我慢して飲む。キルケは拙者がなんともないのを見て不機嫌になった。やはり何か怪しげな薬を入れていたらしい。 キルケは前評判どおり、邪悪な魔女だったのだ。船で一緒にきた仲間達は豚に変えられてしまっていたのを知ってぞっとする。彼らを元に戻すように言うが、キルケは拙者をあざ笑うだけでどうにもならなかった。拙者自身は無事に罪を清めてキルケの島から脱出できたが、結果的に仲間を見捨ててしまい良い気分ではないの。これならアレス神殿で一人SMをしたほうがましじゃったな。
キルケの島から再び旅立った拙者。しかし、ここからは大筋では2つ前の冒険とそう変わらぬ展開じゃった。 死者の国に行き、そして兄じゃに会い、父親の死の穢れを払うためにピタロスの一族を探せという助言を手に入れる。 アテネを出たところで鉤づめの足に鳥の仮面をつけた鳥人に襲われる。ここで前はやられたが、今回はテーベの町まで必死に走り続ける。そして今回は運良く逃げ切ることができた!おまけにテーベの町を歩いているとこんな会話が耳に入った。 「……ピタロスの部族だ。ここから20マイルばかり向こうにキャンプしているんだ」 緊張に思わず体がこわばる。いよいよじゃ、いよいよ求める相手に近づいたのじゃ。 ピタロスの部族がいるという場所に向かって吹雪の道中をひたすら北に向かう。しかし、寒さからか、今までの旅の疲れが限界にきたのか、道中で拙者は倒れてしまう。おお、今まで数々の苦難をくぐり抜けてきた拙者もここまでか。眠るように安らかに死ねるのがせめてもの救いか。じゃが、しかし、ここまできて。 誰かが拙者の体を揺り起こした。簡素な外套に身を包んだ2人が、拙者を心配そうに見つめている。 「アルテウスさんですね」 「なぜ拙者の名前を」 「私たちはピタロスの一族の者です。しっかりして下さい。私たちはあなたを迎えに来たのですよ!」
拙者は床に敷物をしいた暖かいテントの中で寝かされた。そばにはピタロス一族の女が控え、やさしく看護してくれる。 ああ、人の気持ちが暖かい。ひさしぶりだ。こんな優しい気持ちになったのは。 ある程度、体力を取り戻すと清めの儀式を受けたいと長老に申し出る。長老はうなずいて、テントから出て細い道を歩きだした。 ここで今まで温存していた(というよりは使う機会のなかった)、ゼウス神への嘆願権を使用し加護を願う。なぜかわからんが、選択肢があったゆえ、そうしたほうが安全な気がしたのじゃ。(名誉点が1まで減少し、恥辱点が0になる) 拙者がついていくと長老は小さな洞窟に入っていった。中には同じピタロスの一族が手をつなぎ、輪になって座っている。拙者と長老も輪の中に入って、しゃがみこんだ。右側の男が小袋からキノコを出して、熱湯の入った椀に入れて拙者に差し出した。 一気にそれを飲み干す。 皆、その様子をニッコリ笑って見守り、大丈夫だというように拙者の手を強く握った。拙者は黙祷して、拙者が生まれてから今までの光景がめまぐるしく見えるのを受け入れていった。 そして時間は流れ、拙者は目を開けた。儀式は終わったのだ。拙者は感動を覚えながらピタロスの皆に礼を述べる。 「終わった。拙者は生まれ変わった。父の墓から開放されたのです。みなさん、かたじけない!本当に感謝の言葉もござらぬ」
もう家路を妨げるものは何もなかった。ピタロスの一族と別れ、拙者は故郷トロイゼンを取り巻く、ふもとの山までたどり着く。 霧雨の中、町の方角から家々の煙がたなびいているのが見える。懐かしさに涙があふれた。もうすぐ母上に会えるのじゃ。拙者はもどかしい思いで走り出す。 次回は感動の最終回じゃ!
by銀斎
2021年06月15日(火) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その14 |
船の上で目を覚ます。ようするに3巻の冒険の最初に戻ったわけだ。甲板のほうを見ると、ミノタウロスの生贄に捧げられる予定だった若者たちが視界に見えた。 目を向けるまでもなく、当然のようにそばには使者の神ヘルメスがいた。奴は大げさにため息をついて見せる。 「俺もいろんな冒険者を見てきたがな。アルテウス。これほど時間をかけてクリアできてない奴は初めて見たよ」 無視をして現在の拙者の情報をおさらいする。 原攻撃力5、原防御力11、名誉点22、恥辱点10、情報点8、装備と所持品は割愛。守り神は海の神のポセイドン様じゃ。この冒険では海難事故多発でご利益がまったくないがな。 負け惜しみではないが、今回こそこれが最後の冒険だという予感がするな。
それにしても、気を取り直したくともあそこまで進んで“冒険者の帰還”を再スタートとは少々つらいのう…。 ひとまず現在の拙者の情報をおさらいする。原攻撃力5、原防御力11、名誉点22、恥辱点10、情報点8、装備と所持品は…どのみちすぐに海で遭難して、すべて失ってしまうので割愛じゃ。 まずは、アリアドネを結婚式のために立ち寄った島へ置き去りにする。そのあとは船員の反乱で船を放りだされ、父上の死を見届けることができずに、アテネを出発する。遭難を繰り返しながらたどり着いたトロイの宮殿で従兄のアグノステスを事故で死なせ、ニンフの島オギュギアで4年半を過ごし、軍神アレスの神殿にたどり着くと自分で自らをムチ打って従兄弟殺しの罪を清める。そして一人、小船で航海中にボケた女神こと復讐の三姉妹に船ひっくり返され、遭難したところをヌビア人の捕虜になってしまうが、ライオンや他の蛮族を退治してやり、ヌビア人たちの信頼を勝ち得ることになった。部族の中で戦闘訓練を一緒に行い(攻撃力・防御力がそれぞれ1点増える)、王の娘の一人を妻にしてすっかりヌビア人の一員として暮らし一年がすぎる。そしてヌビア人の祭りの日に檻から脱走したライオンに首根っこをガブリと噛み付かれておしまい。 ようするにまた最初からやり直しじゃ!!!
by銀斎
2021年06月14日(月) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その13 |
アリアドネと別れた拙者と長老は、兄のいるというエリュシオンの野に向かって歩き続けた。しかし、景色は相変わらず気の滅入るような霧につつまれてはっきりしないままだ。 「もうエリュシオンの野には、さしかかってますよ」 長老は拙者の気持ちを察したように言った。 「そうなのでござるか?しかし、エリュシオンの野といえば、日光の降り注ぐ緑野に咲き乱れる花に満ちていると聞いたが、景色は変わらぬな」 長老が手をひと振りすると、とつぜん拙者らは、春の陽光に満たされて、花々が咲き誇る野原に立ち尽くしていた! 「まえにもいったように、ここには現実というものはありません。今のはあなたが見たいと思った景色を見せただけですよ」 長老はこともなげに説明した。だが、拙者はそれどころではなかった。花畑の中央に兄上テセウスの姿が見えたからじゃ。 「あにうえー!」 拙者の呼びかけにテセウスはニッコリ笑って、駆け寄ってくれた。 「アルテウス!ようやく会えたな。よくぞ、兄の意思をついでミノタウロスを退治してくれた。父の死のあと、お前の身をどんなに案じたことか。無事でなりよりだ。お前の罪の穢れを払うことのできる一族の元へ案内してやろう。二人で一緒に黄泉の国を出るのだ」 「兄上。ともに母上の家に帰ろう。母上もさぞ喜ぶじゃろう」 長老に別れをつげると彼は、兄を黄泉の国から連れ出すためには、拙者が先頭にたって歩き、生者の国へ戻るまで決して振り向かないことが必要だと助言してくれた。さすがギリシャ神話が舞台の冒険じゃ、いろんな神話がまぜこぜになっとるわい。
生者の国へ登る長い長い階段を兄じゃと二人で登っていく。もっとも決して振り返ってはならないという長老の助言どおりにしていたから、後ろから兄上がちゃんとついてきているか不安がつきまとった。 どのくらいたったであろう。頭上から細い光がもれさしてきたのをみて、ほっとする。そのとき後ろから兄上の声が聞こえてきたが、振り返ろうとするのをぐっと堪えて歩き続けた。そんなよくある罠にひっかかるものか。声はだんだん遠のいていき、逆に地上の光はどんどん強くなっていく。 ついに日光の降り注ぐ地上に辿り着いた。 「やったな兄上!」 拙者は喜びに身を震わせながら振り返ったが、そこにいたのはなんと兄上ではなく、商人マルコスだった! 「君のお兄さんから伝言を受け取っているよ。ピタロスの一族を探せっていってたぜ」 「兄上はどうしたのでござるか!?」 「さてね、俺にはわからないよ。それはともかく、船に乗せてやるよ。まったく旅は道連れさね」 マルコスは黄泉の国で手に入れたオボール硬貨でいっぱいの袋をかつぎあげたまま、自分の船へ向かって歩いていった。拙者も他にあてもなく、首をふりふりついていくのみだった。 例によって船旅は平穏なものではなく、怪物に乗務員が2・3人食べられることもあったが、マルコスはいつもより犠牲者は少ないと平気な顔している。港に寄港したときにマルコスは拙者を強引に酒に誘った。断わろうとも考えたが、あるアイデアが浮かんだため拙者は付き合うことに決めた。 一晩、奴と飲みあかし、酒に酔い潰れたマルコスを残して、船を出港させる。船員は船長はあとで落ち合うことになるという拙者の嘘に疑うこともなく、意気揚揚と船を出発させる。行先はもちろんアテネだ。 さらばマルコスよ。 置き去りにしたマルコスのことを思い、多少良心がとがめる。あんな奴でもいつのまにか情がうつってしまったらしい。じゃが、腐れ縁だったマルコスとの別れは、この旅がそろそろ終わりに近づいている印ではなかろうか?
10日後、船はアテネの港ピレエウス 何年ぶりかで帰り着いたアテネは、他人の町のようじゃった。通行人にきくと、アテネの王位はイテコン将軍の息子が継いでいるという。 イテコン将軍……。父上が亡くなった時、民衆が怒っているといい、拙者をアテネから脱出させた男だ。今思えば、世継ぎである拙者を、ていよくやっかいばらいしたわけだ。 ミノタウロスの生贄になりかけたあの若者たちにも出会った。拙者を旧友のごとく温かく歓迎してくれたが、そんな彼らも、もう若者といえないくらい年を重ねているのが痛々しい。 そのなかの母上によく似た娘が拙者に微笑みかける。そうだ。母上はどうなさっているだろう。ふいに故郷にたまらなく戻りたくなった。 翌朝、拙者は故郷のトロイゼンに向かって、街道を歩き始める。 第一巻の冒険ではこんなボロボロの拙者の姿、想像もしていなかったでござるな。次から次へと悲惨なことばかり…。じゃが、なんとなくこの冒険もゴールが近い気がする。もうしばしの辛抱じゃ。 そんなことを考えているとき、背後から衝撃が走り、拙者は気を失った。
暗闇の中で縛られた状態で目が覚める。どこかの倉庫に閉じ込められたようだ。 扉が開くと、鉤づめの足に鳥の仮面をつけた悪夢のような鳥人が入ってきた。縛られたまま飛びかかって、そいつともみあっているうちに、奴の鉤づめで縛られていた縄が切れた。しめた!奴を突き倒すと、そのままそいつはぐったりとなった。 外はもう夜で、月明かりの中に薄ぼんやりと小道が2つ伸びているのが見えた。仲間がいるかもしれないので、その片方の小道を駆け出す。 背後でキーキー、カシャカシャと騒ぎ声が聞こえ始めた。気付かれたらしい。必死に走り続けるが、前方の茂みから鳥人どもがあらわれたではないか。 ふいに胸に鋭い痛みがはしる。見下ろすと胸に矢が突き刺さっているではないか。 ぐったりと地面に崩れ落ちる。ゼウス神の助けを求めたかったが、なぜかその選択肢はない。 おのれ……もう終盤の感じがするここまできて最初からやり直しとは。
by銀斎
2021年06月13日(日) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その12 |
その後は邪魔者らしいものには出会わない。周りにたわわに実る果物を目の前にして餓えた男がいた。彼が痩せこけた手を伸ばすと果物の枝はすっと遠くに逃げるのだ。大岩を抱えて丘を登り続ける男がいた。見ていると、もう少しで頂上というところで大岩は手から滑り落ちて元の位置までもどってしまった。おそらく彼はこれを永遠に繰り返しているのだろう。そんな光景が延々と続いた。 亡者に鞭を振るう男がいた。そいつは黄泉の国にいる管理人の一人らしい。 彼に聞けば兄、テセウスの居所がわかるかもしれない。 彼は拙者が接近すると、鞭を振るう手も休めず目もあげぬまま、喋った。 「アルテウスだな。兄に会いにきたのだろう。わしは黄泉の国の裁判官、アイアコスだ」 「そうでござる。どこに行けば会えるのが教えていただきたい」 「テセウスならエリュシオンのどこかにいるはずだ。案内人に長老をつけてやろう」 うす汚れたローブを着た男が目の前に、ぼぅと現れた。 「長老。この男をつれて黄泉の国を一通り案内してくれ。ここの神秘を見せてやるのだ」 「かしこまりました」 長老と呼ばれた男はアイアコスに一礼すると、足早に歩きはじめる。拙者は慌ててついていく。
長老と拙者は霧のうずまく道を延々と歩いていたが、7つの分かれ道で長老は立ち止った。 「どうやら、象徴的な選択の瞬間にきたようです」 なにやら小難しいことを言う。どういうことか問い返すと長老はこともなげに答えた。 「黄泉の国は何一つ現実的なことはないのですよ。この道をいけば(と、道の一方を指差す。)腐敗した廷臣たちのすみかに出ます。2つ目は色欲や物欲の亡者ども。その次は君主や支配者たち。次は自然の災害。次は工事中。その次は行きたくはないでしょうね。地獄の奥地へ向かう道です」 「残り一つは?」 「クレタの女王がいます。愛人に捨てられ、出産で命を落とした」 拙者の背筋に冷たいものが走った。その道を進んでいくと、「アリアドネ」という小さな看板があるではないか。その奥からはかすかに水音が聞こえる。 「彼女は死んだのか。姿は見えないようだが」 「いえ、そこからやってきます。ああして永遠に水浴から戻るのが彼女に与えられた罰なのです」 「水浴?珍しい罰だな。さほど辛い気もせぬが」 「彼女の父は黄泉の国では裁判官の一人だったのでね。ああ姿が見えてきました」 長老の指差した先を見ると、ああなんたることじゃ!拙者が置き去りにした女が近付いてくるではないか。彼女は拙者の姿をぴたりと見据えていた。 「あら、アルテウス。こんな所にくるなんて?これも罪滅ぼしのつもりなの」 「国に帰ろうとしているのじゃ。そなたの姿が再び見られるとは思わなかった」 「国へ帰って、英雄の歓迎を受けようというわけね。でもあなたを喜んで迎えてくれる人がいるかしら?」 彼女は痛いことをついてきた。 「クレタの魔力がいまだ健在でなりよりだったな。水浴はさぞ気持ちよかろう」 拙者の嫌みにアリアドネはキッとなって、にらみつけた。 「出てお行き、アルテウス。出て行け!」 長老とともにこの場を立ち去った拙者は思わず涙ぐむ。本当はアリアドネとこのような再開をしたくはなかったのう。
by銀斎
2021年06月12日(土) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その11 |
再び、黄泉の国へ向かう洞窟を下り続ける。突然、足もとの地面がなくなって拙者の体は虚空に投げ出され、はるか地底へ落下していく。 うあぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……! 落ちるにしたがってあたりの空気がもやってきて、それとともに落下スピードも落ちてきた。あたりは濃霧で、まるで雲のクッションに包まれたような感じだった。 驚いたことに無傷で地面に足がつく。霧の中をかき分けるように歩いて行くと、ふいに霧が晴れて、自分が大きな川岸で無数の亡者どもと一緒に歩いているのに気づく。 川岸には一艘の渡し船があって亡者どもを乗せていた。これが三途の川というわけか。 自分も船に乗ろうとすると、渡し守にはばまれた。オボール硬貨一枚を渡し賃として支払わねばここは通れないらしい。 なるほど、見るとどの亡者も舌の上にオボール硬貨をのせている。埋葬のときに親族から遺体に入れてもらったのだろう。川を渡れない亡者はここで一千年もの間、さまようことになると伝説で聞いたことがあるな。しかし、困った。拙者には持ち合わせがない。 「おお、久しぶりだな。アルテウス。渡し賃をもってないのか?ただ乗りお断りがここのモットーだからな」 死者の国らしからぬ、生気にあふれた声に拙者がビックリして振り返ると、なんと商人マルコスがいた。彼は大きな荷物を背負っている。 「なんと、貴様は死んだのか。それにしては元気そうだが?」 「なんだって?違う違う、俺は商売に来ただけさ。ところで困ってるんだろ?お前の剣と引き換えにオボール硬貨を調達してやるよ」 ここで剣を失うのは不安だが、ここで動けなくてはどうにもならぬ。拙者はしぶしぶ、剣を彼に手渡した。マルコスはひょいと傍の亡者の舌から、オボール硬貨を取り上げると、拙者に手渡した。 「なんということじゃ!それではこの亡者はどうなるんだ」 「知ったことか。俺はあんたが困っているからオボール硬貨を都合しただけだぜ」 (不幸な亡者に迷惑をかけることになったので恥辱点を1点増やす) ともかく拙者とマルコスは、渡し船に乗り込む。渡し守が川底に竿をさし、船はゆっくりと川を渡り始めた。それにしてもこの男とはどこまで腐れた縁があるのであろうか。
三途の川を渡る船は静かに対岸へと到着した。 「急ぐからこれで失礼するよ。そら、ザクロの実でも食べて腹ごしらえするがいい」 マルコスは拙者にザクロの実をくれ、一足早く船から飛び降りると、スタスタと何処かへ歩いて行った。手にのこったうまそうなザクロに食欲をそそられる。 拙者はザクロの実を地面に投げ捨てて、先に進んだ。黄泉の国で食物を食べれば二度と生者の国へ戻れなくなるのを知っていたのじゃ。マルコスの悪ふざけのやり方は、もううんざりするほどわかっているのでな。 すぐ近くで獰猛そうな犬の吠え声が聞こえた。霧の中から3つの頭をもった巨大な地獄の番犬が飛び出してくる。黄泉の国を支配するハデス神のペット、ケルベロスだ! 恐ろしい敵との遭遇に髪の毛が逆立つ!ふっ、少々装備が心ともないが、拙者逃げるような臆病なマネはしないでござるよ。 剣をしっかりとにぎりしめて、拙者はきゃつの前に立ちはだかった。 するとどうしたことだろう。ケルベロスは拙者の姿を見るなり、キャンキャン悲鳴をあげて逃げ出したではないか。ふふふっ、どうやら拙者の気迫に気圧されたらしいな! (名誉点を2点得る。実のところケルベロスは、ライオンの皮をつけた人間の姿に、ヘラクレスがまた自分を捕まえにきたのかと驚いたのだ)
by銀斎
2021年06月11日(金) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その10 |
翌朝、通りかかった別の種族に助けられた拙者は、またたどり着いた港で船に乗り込んで、旅を再開した。そうして上陸したこの地がエジプトであることを知る。ああ、拙者はなんと遠くの地まで来てしまったのじゃろうか。 日は急速に暮れてくる。ここでアテネの王としてエジプト王の宮殿に尋ねるか、エジプトの神アモンの神殿に保護を求めるか、宿を探すかという選択肢があった。 アテネの王といっても今のみすぼらしい姿では信じてもらえまい。また宿にいっても無一文では叩き出されるのがオチじゃ。異教徒の神にすがるのは本意ではないが、アモンの神殿に一夜の宿を求めることにした。 神殿は巨大なほこらのような建物だった。神官にことわりを入れ、吹きぬける風の当たらない角を見つけると、猫のようにまるく寝ころんだ。とても快適とはいいがたいが、外で野宿するよりはましじゃろう。 うとうとしはじめたとき、厳しそうな顔つきをした女が目の前に立っているのに気づいた。いや、見覚えがある顔じゃ。見覚えがあるどころじゃない、なんと女神ヘラではないか! 「おお、ヘラ様。異教徒の神殿に泊った拙者をお許しください。ほかに方法がなかったのです」 拙者の謝罪にヘラは、あきれたように言った。 「おばかさんだね!アモンの神殿に泊ったからって、怒るもんか。アモンとはゼウスのことなんだよ!エジプト人の発音だとそうなるのさ。さて、お前は明日になったらオアシス・アンモニウムに向かって旅立ちなさい。砂漠の真ん中にある神託所さ。なんでそんなところに神託所を建てたのか、エジプト人のセンスはわからないけどね。でもなかなか良いところらしいよ。さあ、それまでにいくらかでも眠って体力を蓄えておき。旅はまだ長いんだからね」 女神の姿はそこでフッと消えた。 わざわざそんな辺鄙な神託所にいかせずとも、ここで神託を教えてくれればよいのにな。
翌朝から拙者は、また船にのり、ワニと戦い、ラクダにのって砂漠を渡り、やっとの思いで砂漠の神託所にたどりついた。小柄なアラブ人の神官に用件を伝えると、彼は神託所の奥へ通してくれた。するとそこには、なにやらパピルスに一心不乱に何かを書きなぐっている一人の男がいた。男は拙者に気づくと驚いた拍子にインク瓶を落としてしまう。 「アルテウス。驚かせるじゃないか。どうしてこんなところに」 なんとその男は、予言の神アポロではないか。拙者が答えようとすると、彼は手をふってとどめた。 「ああ、わかってる。父親殺しの罪を祓いたんだな。それにはある一族にであう必要があるそれはピ…、ピッポ、ピップじゃない、ああ、すまない。そのことは予言したのだが、自分で書いた字が読めないんだ。お前なら読めるかな?」 アポロ神が差し出した紙を覗きこんだが、字とよべるのかも疑問なほど汚く、とても判読できない。 「ああ、少し思いだした。たぶん、ピディピデスだったかもしれん。だがはっきりとは思い出せない。そうだ、お前の兄テセウスなら知っているから、彼に聞いてみるといい」 「兄じゃは残念ながらもう死んでもうす!」 「なに死者の国に向かえば会えるさ。美の女神アフロディテの島キテラに向かうがいい。そこで会う人物に話は通しておくよ」 死者の国へ行くじゃと!?冒険はのぞむところでござるが、神の物忘れのためにわざわざハデスの治める危険な地へいくのは何か納得できんのう。
砂漠を出て、メンフィスに向かい、そこから12日間の航海のあと、美の女神アフロディテの島、キテラにたどり着いた。内心アフロディテ様の登場を期待したのじゃが、そこでは小柄で黒髪の年老いた女が、拙者を待っていた。 「遅かったですね。私の名はシビル。2日はこの地で待ちましたよ。黄泉の国までテセウスに会いにいくのですね」 「そうでござる。兄じゃは拙者が罪の穢れから解放される方法を知っているらしいのじゃ」 「わかりました。まずこれをお持ちなさい。この先はこういったものが必要です」 シビルは剣(攻撃力2)と胸当て(防御力2)を拙者に手渡してくれた。やはり死者の国は厳しいところらしい。そして彼女は大洞窟の中まで拙者を案内してくれた。 洞窟の途中で彼女は立ち止った。 「わたしはここから先はいけません。ここでお別れです」 「あい、わかった。いろいろとかたじけない」 彼女は入口に向かって歩きだした。 「ご幸運を祈ります」 彼女のたいまつの光が遠くに消えると、拙者は暗闇に一人ぼっちになった。理由もなく、寒気がする。 ここで怖気付くわけにはいかないでござる! 黄泉へ続く洞窟は、果てしなく下りが続いている。途中で左側へ枝道があったので、そちらに進んでいくと上り階段があり、進むと外の森に出てしまった。 いかん、無駄道を通ったらしい。 振り向いて再び階段を降りようとすると、大きなライオンが襲いかかってきた。仕留めると、皮をはいで着てみる。くっくっくっ、まるであの英雄ヘラクレスのような姿ではないか。死者の国へ向かう勇気が出てきたでござるぞ。
by銀斎
2021年06月10日(木) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その9 |
虹の女神のあまり役にたたぬお告げを聞いた拙者は、船に乗ってきた仲間たちと別れ、再び小さなボートであてもない航海をつづけ、やがて北アフリカの海岸までやってきた。 ここの住民たちはのんびりした様子ですごしており、時折頭上にたわわに実っている黄色い果実を、もぎ取っては食べているようだった。 そんな彼らの中に一人、様子が違う者がいた。そいつは拙者を見て手を振ってきたではないか。なんとあのフェニキアの商人マルコスではないか。奴と拙者はよくよく縁があると見えるのぅ。 「アルテウス!ここであんたと会おうとは思わなかったぜ。こっちにきてザクロの実の荷造りを手伝ってくれないか。ここの住民はロトスの実にしか関心がないのさ。まあ、それだけ美味いんだがね。お前もひとつ食ってみるかい?」 彼はここの住民も食べている例の黄色い果実を2つ取り出し、実のひとつを自ら食べ始めると、もう一つを拙者に手渡した。礼を言って拙者もそれを受け取る。 せっかくの勧めであるが、拙者はマルコスの性格を知っていた。ひとくち齧って、食べるふりをすると、マルコスの注意がそれたときに地面にそれを吐き出す。(なぜか恥辱点を1増やす) マルコスは拙者の吐いたロトスの実に気づくと、ずるそうに自分もさきほど口に含んだロトスの実を吐き出してニヤリと笑った。思ったとおりだ。この実は麻薬のような中毒性があり、一度飲み込んだが最後、ここの住民のようにふぬけのようになってしまうのだ。 「まったく、ここの住民の口にしか合わないものさね。よく売れるなら、もっと持っていくんだが」 マルコスそう言って、拙者を船に乗せてくれるわけでもなく、船員達を急き立てて去ってしまった。なんの為に登場したのだ。あやつは。 拙者は再びボートにのって孤独な旅を続ける。ある日、食料を求めて内陸に入ってみると、原住民とうまく交渉ができ彼らの歓待を受けた。宝石の埋まった短剣(攻撃力1)を進呈されたうえ、ボートいっぱいに詰まれた食料を見て、拙者、久しぶりに人間の優しさに感じ入ったわい。
気の良い原住民との心休まるひと時もすぐに終わり、拙者は旅を続けるためボートを漕ぎ出した。そよとの風もなく、夜になっても月の光もなかった。すると今夜は新月なのじゃな。 うっかりオールを海に落としてしまう。舌打ちしたが、父親殺しの罪を清めねば故郷にも帰られぬ、特にあてのない旅じゃ。しばし潮の流れのままにボートを向かわせてしまおう。拙者はボートを漂わせながら、めずらしく落ち着いた気分になり、瞑想をしながら、今までの悲惨な旅を思いかえしていた。
ふいにバタバタと耳障りな羽音と、ピシリと鳴るムチの音が静寂をやぶった。目を開くとなんとそこには復習の女神として知られる醜い三姉妹が、ボートの周りを旋回しているではないか。彼女たちは一斉に叫んだ。 「われわれ復習の三姉妹は、正義の手先。汝オイディプスを産みの母と婚姻した罪により処罰する」 「待つでござる!拙者はアイゲウス王の息子、アルテウス!お主らは人違いをしているでござる」 「黙れ、悪党。われわれは常に正しい。アルテウス、貴様は確かに母親と通じたのだ」 「何をぬかす。さきほど、拙者のことをオイディプスと間違って呼んでいたではないか!私は母親と結婚した記憶はない!」 なんということだ。この呆けた三姉妹は、まるであずかり知らぬ他人の罪で、拙者を罰しようとしている! 「誰かがしたのだ。確かに見たぞ!われわれがくだす罰は不快でしつこいぞ」 誰かがしたとは、なんといい加減でござろうか。あきれて口も聞けない拙者を、三姉妹はムチで幾度も打ち据えると、仕上げにボートをひっくり返し海に放りこんでから去っていった。 拙者はボートに戻ろうと必死に泳ぐが、海流につかまってしまい、果たせないまま流されてしまう。
またどこかの浜辺にながれついた拙者は、神々の敵意に決してくじけないと決意を新たにする。ここまでコケにされたからには、拙者、意地でも故郷に帰ってみせるわい。 さっそく船の代用品になるものを捜そうと浜辺の様子をみていると、大勢のヌビア人に襲われ降伏を余儀なくされてしまう。捕虜になり、脱走を試みるも、道中にヒョウに襲われてしまう。辛くも撃退したものの、足を痛めたところを先ほどのヌビア人どもに救助され、結局は奴隷としてすごすことになっ た。負けるものか!負けるものか!
奴隷として一年が過ぎたある日の夜、祭りの最中に籠に入れられたライオンが飛び出して、人に襲い掛かかるハプニングがあった。脱走のチャンスだ。混乱に生じて、ヌビア人たちのキャンプを抜け出し、暗い草原地帯を必死で走り抜ける。 「拙者は絶対に!絶対に負けないでござるぞー!」 十分遠くまで走ったところで拙者は絶叫すると、そのまま木陰に倒れこんでぐっすりと眠り込んだ。
by銀斎
2021年06月09日(水) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その8 |
「アルテウス。神のお告げにはすぐに従うものだよ」 使者の神であるヘルメスが喋る声で拙者は目がさめた。 「後何度あるのかわからないが、まあ頑張りなさい。リプレイ合計が第50話でキリよく終わるのもいいかもな」 そう言うと、ヘルメスはクスクスを笑って姿を消した。第50話とはとんでもない。あと2・3話くらいでこの冒険も完了してやるわい。 気を取り直して現在の拙者の情報をおさらいする。原攻撃力5、原防御力11、名誉点22、恥辱点10、情報点8、装備と所持品はどうせすぐなくなるので省略。
さて、恋人のアリアドネを結婚式のために立ち寄った島へ置き去りにしたあと、ほどなく船は嵐に巻き込まれて、船員たちが反乱を起こすイベントになった。 「おれたちがこんな目にあうのも、神々がこいつを罰しようとしているからだ!」 「生贄だ!奴を生贄にしろ!」 今回も断固戦うことにする。そして…(何人のアテネ人が味方をしてくれるか、サイコロを振る。名誉点を使ってサイコロの目に修正もできるが、今回もしない)3人のアテネ人が味方になった。たった3人?、アリアドネを置き去りにしたことを怒っているのか、アテネ人たちまでそっぱを向いてしまったではないか。あわれ拙者は船から大海へと放り込まれる。 マルコスの船に救助されアテネにたどり着く。そこで黒い帆をかざして入港する船を見て、拙者が死んだと勘違いをして自害してしまった、あわてんぼ父上の話しを聞いた後(恥辱点8点を加える)、王の側近のイテコン将軍へ、クレタ島で体験した数々の出来事を報告(情報点を消して、名誉点16点を加える)した。
この後は、何度も繰り返しているので要点だけ書いておこう。その後、拙者は船にのり、遭難して、流れ着いた岸でケンタウロスを助け、マルコスに再開してトロイに向かうことになり、その地で従兄弟のアグノステスに会い、翌朝ボート競技でうっかり彼を死なせてしまい、罪滅ぼしのためにオルビアの軍神アレスの神殿か、キルケの島へいくように神託を得る。そしてニンフのカリプソの島で4年半まったりとすごしたあと、アポロ神の忠告を聞いて再び船旅に出て、航海中の甘い妖怪サイレンの歌声の罠を無事切り抜けたのであった。
罪滅ぼしのために、拙者は軍神アレスの神殿に向かうことにした。船旅を終えて神殿にやってきた拙者を神官たちは、すべてわかっているという風に出迎えた。 そしてよくしなるムチを拙者に手渡してこう告げた。 「このムチで自分自身を打ち付け、罪を罰するのだ。決して手を抜いてはならん!力の限りやるのだ」
なんじゃと、このムチで一人SMをしろということか。ここで嫌だ断るという選択肢もあるがな。神の意向に逆らうとロクなことにならないのはわかっておる。 しかたなく拙者はムチを手に取り、文字通りに自分自身をムチ打った。つまり戦闘ルールにしたがって、自分に4度攻撃を加えないといけない。当然、本気で攻撃するので死の可能性すらある。念のため以前に入手した薬草の白い花びらを(あれから5年近く経過しているのですっかり乾燥しているだろうが)口に含み、なんとかこの試練に耐え切った。神官が傷口に塩を塗り始め、拙者は思わず痛みに呻きながらぐったりする。しかし、これで罪の穢れを払えたのだ。ずいぶん回り道をしたが、これでやっと故郷に帰ることができる。 「まだよ、アルテウス」 突然、虹色の輝きとともに女が登場した。登場のしかたからして、彼女は女神らしい。 「私は虹の神イリス。でもそんなことどうでもいいわ。あなたに言いたいことがあってきたの。あなたは従兄弟殺しの罪は清められたかもしれないけど、まだ父親を死なせた罪が残っているわ。あなたはその穢れを払わないと故郷に帰ることはできないのよ。ええ、あなたが不当におもう気持ちはわかるわ、 でもそれが神々のルールだから、まったくあなたって人は何をするか、天上の神々はハラハラしながら見届けているのよ。思わず仕事の手が止まっちゃうくらいにね。まずは罪の穢れを払う方法をさがさなくちゃね。それは……」 女神は息もつかずに話しかけてくる。うむむ。この冒険が神々の娯楽にように見られていると思うと、ゲンナリでござるよ。
by銀斎
2021年06月08日(火) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その7 |
拙者はアテネに向かう船上で目がさめた。となりに使者の神であるヘルメスがしきりに拙者へ話しかけている。 「しかしなんだなぁ。本来ここで"そう言うと、ヘルメスは永遠に姿を消す”なんて文章があるじゃないか。このリプレイでは、また会いそうだよな」 そう言うと、ヘルメスはクスクスを笑って姿を消した。 くそっ。神でなかったら叩き斬ってやるのに。
気を取り直して“冒険者の帰還”を再スタートしよう。まずは現在の拙者の情報をおさらいする。原攻撃力5、原防御力11、名誉点22、恥辱点10、情報点8、装備と所持品は…書かなくてもいいだろう。遅かれ早かれ海で遭難して、すべて失ってしまうようだからな。 さて、恋人のアリアドネを、結婚式のために立ち寄った島へ置き去りにするという、気の滅入るイベントもすませると、船は嵐に巻き込まれて、船員たちが反乱を起こすイベントになった。 「おれたちがこんな目にあうのも、神々がこいつを罰しようとしているからだ!」 「生贄だ!奴を生贄にしろ!」 最初の冒険は、戦うことを選び、ミノタウロスの生贄にされかけたアテネ人たちも味方をしてくれて、反乱は収まった。前回はわざと降伏してみて、船から放り出された。 今回は断固戦うことにする。そして…(何人のアテネ人が味方をしてくれるか、サイコロを振る。名誉点を使ってサイコロの目に修正もできるが、今回はしない)……9人のアテネ人が味方になった。その中途半端な数に中立の水夫も、反乱側についてしまう。 狭い船内で入り乱れての乱闘が始まる。拙者は反乱側の水夫の一人を殴り倒すと、反乱の首謀者が逃げ込んだ船倉へ、たいまつを持って飛び込む。奴は鎌を使って飛び掛ってきたが、ミノタウロスを倒した拙者の敵ではない。かるく捻りつぶして、逆にポセイドンへの生贄にするために引っ立ててやった。 そういえばこの巻の冒険で、戦闘らしい戦闘はこれが初めてかもしれぬなぁ。
その後、船は無事アテネにたどり着き、心労により寿命を縮めた父王アイゲウスと最後の挨拶を終える。父の死を見届けた後、王の側近のイテコン将軍へ、クレタ島で体験した数々の出来事を報告(情報点を消して、名誉点16点を加える)した。 この後は、生まれ故郷へ向かって、また遭難な確実なことを知りつつも、次なる船へと乗り込むのだ。 そして予定通り船は難破して、拙者はどこかの島の浜にうちあげられた。 手近の山を這い登って、傷ついたケンタウルスを発見し、薬草で癒す事に成功する。(残りの薬草を入手。 プティア行きの船に乗り、たどり着いたところで出会った商人マルコス相手に、分の悪いゲームをする。いつもここでなけなしの小銭を巻き上げられるのだが、今回はめずらしく、小さなサファイアを勝ち取ることに成功した。多少気分が良くなったところで、従兄弟のアグノステスが住むトロイの宮廷に世話になる。翌日、円盤投げをしてアグノステスに命中して彼を死なすと、従兄弟殺しの罪の穢れを祓うために、また船に乗って旅立ったところを、またまた嵐に襲われて拙者は海に放り投げられるのだった。ここまで今までとだいたい同じ展開じゃな。
見知らぬ島にたどり着き、よろよろと浜辺をさ迷っていると、林の中に楽しそうに戯れている数人の男女を発見する。近くの小屋から一人の女があらわれて、拙者に微笑みかけた。 「わたしはカリプソで、ここはわたしの島オギュギアです。好きなだけここにいて結構よ」 よく見ると彼女は人間ではなくニンフらしい。島の居心地の良さに、拙者も林で遊んでいる人々と同じく幸福な気持ちになってきた。 むっ、ここは前の展開と違うな。海に投げ出されたとき、恥辱点が偶数なら奴隷商人が待つ島に、奇数ならこの楽園のような場所にくるらしい。拙者はしばらくこの島で休息をとることにした。
そして―――その休息が始まってから4年半の歳月が流れた。森で食べて眠って遊び暮らす。まったく極楽気分でござる。 ほうけたようにのんびり暮らす拙者の間に、アポロ神が立っていた。彼は軽い軽蔑を含んだ声で宣言した。 「ただちにここを離れることだな。カリプソはまったく性悪女だと私は睨んでる。小船を作って逃げ出さないとひどいことになるぞ」 こう言うやアポロ神は姿を消す。 拙者は、顔面をはたかれたような衝撃を受けた。 拙者、今まで何をしていたのでござる?危うし危うし、冒険者アルテウスとあろうものが、一生ここですごして終わるというのか!? さっそく、島にいるうちの数人の人間も説得して一緒に小船を作り始める。
小船に乗ってのあてもない航海は2週間も続き、食料はすっかり底をついた。船に残っているのはロープと蜜蝋(みつろう)くらいだ。そんなときに危機はおとずれた。 ある朝、島影がみえ、そこから美しい歌声が聞こえてきたのだ。 これはこの巻、最初の冒険で出会って拙者を無念の死にへ追いやった、妖怪サイレンの魅了の術だ! ここではサイコロを2つずつ6回ふって、10以上の目を4回も出さなければ、彼女らの食料になってしまう。 しかし今回は、ロープと蜜蝋を持っていたおかげで、他の船員達に耳を蜜蝋で塞いで、拙者の身体をロープで固定するように指示を出すことができた。(サイコロの目に4つ足すことができる) ここで終わったらどうにもならぬ。念の為、さらに拙者は名誉点を4点つかって目を修正し、サイコロのチェックに成功することができた ふいに甘美な歌声がしわがれた罵詈雑言に変わった。獲物を逃したことを知ったサイレンどもが正体をあらわして罵っているのだ。 こうして拙者らはなんとか船旅を進めることができたのであった。
ロープや蜜蝋の残りをかたずけていると、血なまぐさい香りとともに船上に戦の神アレスが突然現れた。 「アルテウス。穢(けが)れを祓え!今すぐにだ!オルビアの俺の神殿か、キルケの島へ!俺の神殿がいい。本物の神官がいる」 とどろくような声とともに、現れたときと同様、その姿は突然消えた。 ふむ。オルビアかキルケの島か。それともまずは腹ごしらえか。3つの選択肢だ。船の食料はもう底をついている。そこで3番目の選択肢を選び、まず手近な島に船をつけて食料を探すことにした。
その島には原住民らしき人々がいた。島に降り立った拙者は、友好的に近づくことを選んで、敵意をないことを示すよう両手をあげながら彼らに近づく。 あっと、いうまに拙者は蔦でできた粗雑な縄でぐるぐる巻きにされ、えっほえっほと運ばれていく。
そして焚き火にこんがりとあぶられて、拙者は彼らの美味しい夕食となった。
完
by銀斎
2021年06月07日(月) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その6 |
故郷へ向かうべく乗船した船は、当たり前のように嵐にみまわれ転覆した。 流れ着いたのは荒れ果てた島。荷物もすべて失った。しばらく助けの船を待ったが、船はこない。 ムシャクシャして石を投げると、石は近くの岩に跳ね返って拙者の足に当り、しばらく痛みにしゃがみこむ。(恥辱点1を負う) 島の山頂への探検をせず(なぜか英雄らしくないと言われ恥辱点1を負う)、歩き続けて人のいる港にたどり着いた。ここでオボール硬貨の入った袋を発見するが、拾うとネコババしたと言われ恥辱点を負うはずなので、今回はやめておいた。 しかし、船に乗せてもらおうとすると、船賃にオボール硬貨が必要だといわれる。一晩野宿するが、あまりの寒さに凍え死にそうになる。物乞いをしてオボール硬貨を手に入れると(結局は恥辱点1を負う)船に乗せてもらうことになった。
「冒険者の帰還」を始めたのはこの冒険が最初ではない。じゃが!わかってはいたが!何度も繰り返すが!こう振り返ると、3巻の冒険はどの選択肢を選ぶにせよ悲惨のようでござる。 ボロ船でうんざりする短い航海は終わり次の港についた拙者は、また商人マルコスとその仲間達にあった。 一緒にゲームをしないかと持ちかけられたが、賭け金になるオボール硬貨がないので断ると、奴らは拙者を腰抜けやら軟弱者だとぬかしおった。(恥辱点1増える)しかし、ないものはないのだ。拙者がごろりと横になって寝ていると、前回の冒険と同じくマルコスが拙者の銭袋を抜き取っていったが、中身は空っぽ。どうということもないわ。一応、怒っているふりはしたがな。 商人マルコスとも別れ、拙者は再び航海にでた。今度もマルコスの忠告を信用してトロイに向かう。 道中では、鍛冶の神ヘパイストスの聖なる島、レムノスの島に立ち寄ったときに、ちょっとしたトラブルがあった(守り神の加護を受けたので名誉点1を減らす)くらいで、トロイにはほどなく到着した。 実は、ここトロイの宮殿には、従兄弟のアグノステスが住んでいる。好青年の彼を今回もうっかり事故死させてしまった拙者は、罪の穢れを清めるためにアイアイエの島に住む魔女キルケか、オルビアのアレス神殿のいずれかに向かうように信託を受け、ひとまず商人マルコスの船にアイアイエまで乗せてもらうことにした。
が、れいによって船は大嵐。拙者は海から、また放り出されてしまう。ヒントを使って守り神ポセイドンに祈ってみると、
───君はこの大遠征でおおいに経験を積み、鍛えられたはずなのに、神々に対する信仰がきわめて薄いのが奇妙だ。
よけいなお世話じゃ!
───君の嘆願はどこか投げやりで、敬意がこもってない。君ほどの英雄にはあるまじきことだ。(名誉点1を引く)
うるさい!海の神を守り神にしていて、これだけ海で遭難していたら、誰だってそうなるわ! そんなわけで陸地に流れ着いたところを奴隷商人にまたしょっぴかれ、パポスにある美の女神アフロディテの神殿で5年間をまたすごすことになった。 つまるところ、まるきり前の冒険と同じということだ。5年後、女神の生贄にされそうになった拙者は神殿からの脱出に成功する。 ここで前回は小船をどこからか盗み出して旅を続けたのじゃが、今回は商船に乗せてもらう、という選択肢を選んだ。 あの嫌味な商人マルコスの登場を想像していたのじゃが、そうではなかった。見知らぬ商船の船長は、船に便乗させてくれと頼む拙者を、血の染みた衣類などを見て凶悪な人間と思い込む。 ふいに後頭部に衝撃がはしると、拙者は永久に気を失った。 マルコスの方がましじゃった! 完
by銀斎
2021年06月06日(日) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その5 |
さて、冒険者の帰還の最初に戻った拙者が最初にすることは、アリアドネ姫を裏切ること。 2度目とはいえ、嫌な始まりじゃな。
<スタート時の冒険記録紙の状況>
原攻撃点 5 ヘパイストスの剣 (攻撃力+4) 原防御点 11 ヘパイストスの胸当て(防御力+4) ヘパイストスの盾 (防御力+4) 名誉点 22 恥辱点 10 情報点 8 所持品 母の宝石、メダル(戦闘時に攻撃力か防御力のどちらかに+2の効果)、ブローチ (注1)ヘパイストスの武具は、神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。 (注2)ミノタウロスを倒した経験により、アルテウスの原攻撃点と原防御点は前作より1点ずつのボーナスがついている。
さて、アリアドネ姫を島に置き去りにした後も、アテネへと続く帰りの船旅はまだまだ続き、船は嵐に見舞われた。 災難続きで弱っていた船員たちもストレスが貯まっていたようだ。一部の水夫たちが拙者を指差してなじりあげた。 「こいつのせいだ!俺たちがこんな目に会うのも、この男を神が罰しているからだ!巻き添えはごめんだぜ。こいつを生贄にしよう!」
ここで選択肢。前回は一喝して船員を黙らせたものじゃが、このシーンは2度目じゃし、今回はあっさり降伏する道を選んでみた。まあ、悪い結果にはなるとは思うがな。 拙者は体中を縛り付けられ、どんぶらこと大海原に投げ込まれる。予想以上に酷い仕打ちじゃ!ボートにすら乗せてくれぬとはな。おかげでなんとか縛られていた縄こそ振り切ったものの、あてもなく数時間を大海原で泳ぎ続ける羽目になった。 しかし最低レベルの幸運は残っていたのか、通りすがりの商船が拙者を発見してくれる。 大声で助けを求めると投網が投げ込まれ、拙者の体は甲板まで引き上げられた。 ふぅ、助かったわい。 横たわってまだ荒い息をついている拙者に船長が近づいてきた。礼を言うつもりで顔を見上げた瞬間、拙者は思わず硬直した。 「わたしはフェニキアの商人マルコスだ。これからアテネにいくところだ」 なんと前回の冒険で散々拙者を愚弄しおったマルコスではないか。まさか今回は、拙者の命の恩人になるとはな。そのうえ拙者と同じく、この船もアテネに行くという。文字通り、渡りに船というものじゃ。 「危ないところを救っていただき、かたじけない。拙者もアテネに向かう途中であった。良ければ、このまま目的地まで乗せてもらえるとありがたい」 「いいだろう。では船賃に君の腰布をもらおうか」 むう。これを渡すと拙者、裸同然のような格好になってしまうが、ここは仕方あるまい。 しかたなく、拙者が身に着けていた腰布を渡すと、マルコスはそれをポイッと海へ投げ捨てた。そして唖然とする拙者にマルコスはニヤリと笑いかける。 「こんなことをするのが好きなのさ。どいつもびっくりした顔をしてくれるからな」 むむむぅ。やはり下衆な野郎でござる!今回の旅もこいつとは嫌な縁がありそうじゃ。
マルコスの船に乗船してから数時間でアテネにたどりつく。 久方ぶりのアテネに、間に合わせの布で覆った拙者の腰が興奮でむずむずしてくるわい! が、拙者を待っていた王の宮殿はどことなく薄暗く陰気くさかった。 王の間で会ったことのあるイテコン将軍を発見して、声をかける。 「たのもう!復習者、アルテウスがただいま帰還いたした!父上にお目通り願いたい!」 「アルテウスか!あなたは自分のしたことをご存知か!」 なっ、なんでござろうか!?イテコン将軍の険しい顔に驚いてしまう。しかし、次の説明に拙者は地獄へ突き落とされたかのような気分を味わう。 「すでにあなたの船が!あなたの死を知らせる黒い帆を張って!寄港したのです!それで王はテセウス様に続いてあなたまでが死んだと思い込み!塔から身を投げて死んだのです!」 おぉぉぉぉおおぉお!拙者があの船からムザムザ降りたばかりに、父上が自害なさったと!拙者はなんと間抜けだったでござろうか!(恥辱点8を負う) イテコン将軍にクレタ島での出来事を説明したあと(情報点1につき名誉点を2増やす)、拙者は逃げるように、王を失って怒りと悲しみに満ちたアテネを出た。もう英雄などならなくてもよい。せめて早く、母様の御許へたどり着きたいものじゃ。
by銀斎
2021年06月05日(土) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その4 |
よくよく拙者は船旅にむいておらぬようだ。またしても拙者の乗船した船は、大嵐にまきこまれて、四日四晩というもの木の葉のように揺れておる。(ここで恥辱点が偶数か奇数かで分岐する) ええい、ポセイドン神は本当に役にたたぬ。 そんな拙者の思いが翼にのって神へ聞こえたのか、大波が拙者を甲板から引っぺがし、海中へと放り込んだ。
気がついてみると、どこか粗末な作りの港に体がうち上げられておった。九死に一生とはこのことじゃが、やはり守り神には感謝したくないな。 町にいた人間に助けを求めると、ニヤニヤ笑いながら大勢の人間が棍棒をもって近づいてきた。どうやら声をかけたのは、奴隷狩りの連中だったようだ。まったくどこまでもどこまでも運の悪い! 頭をボコンと殴られ、再び気を失ってしまう。
次に目を覚ましたのは、美しい神殿の中じゃった。 今度はいったいなんじゃな?少なくともガリー船の中で鎖につながれ、櫂を漕ぐ羽目になったわけではないようじゃが。 薄目で様子をみると女性の小間使いらしき者が、拙者を目覚めさせようと、赤いケシの花を拙者にあてがっている。拙者は起き上がってその花を払いのけた。 「ここはどこでござるか?」 「パポスの愛の女神アフロディテの神殿です」 彼女は落ち着き払ってそう答えた。彼女の説明によると、拙者は女神に仕える寺祭として引き取られたらしい。 「女神によくお仕えすれば、神官になれるかもしれませんよ」 そういって彼女は微笑んだ。 なにを!?拙者はポセイドンという守り神が…守り神が…。
ポセイドン神なぞより、アフロディテ殿への奉仕の方がええのう。 しばらくここで過ごすことにきめる。どのみちここで他の選択(肢)がないのじゃから。
しばらくの話しと思っておったが、驚いたことに次のパラグラフでいきなり5年もの歳月が流れておった。 やがて、拙者はアフロディアの下級神官として叙任され、女神の洗礼の儀式を受けることとなった。
拙者は衣服に着替え、礼拝堂を通り過ぎ、女神の聖域へ向かう。そして聖なる円錐形のまえで膝まづくように他の神官たちに促される。 ここでヒントを使った拙者は、天上のゼウス神からこれが生贄の儀式であるという啓示を受けた!とっさに聖なる円錐形を引っつかみ、それで神官の胸を貫くと、同じ境遇の数人の奴隷たちと共に、神殿を必死で脱出したのだった。 ここでギリシャ本土に向かう商船に乗せてもらうか、漁師の小船を盗んで航海するかの選択肢となった。商船というと、あのマルコスがまた登場するような嫌な予感がしたので、小船で旅立つこと決める。 一緒にアフロディテの神殿から脱出した奴隷たちと力をあわせて小船をこぎ、間に合わせの布袋で風を受ける帆を作ると、船が順調にすすみだした。 じゃが、しだいに西の方角へ船は流されて、やがて地理がまったく把握できなくなってしまう。 一ヶ月半もたつと、船の食料はほとんど底をついてしまった。
拙者らの乗った小舟は強風にあおられるまま、イタリアの荒涼とした岸部沿いを流れていた。 まったくみじめじゃ。最終巻の冒険だけにどんな困難でも覚悟するつもりじゃったが、敵らしい敵がいるわけでもなく、ただ野良犬のように流されるままの流浪の旅になるとはな。だいたい、なぜ我が家に帰るためだけに5年以上の年月がかかるのじゃろ。一巻では数日で歩いた道のりではないか。 船にのった仲間たちが騒ぎ出す声で我にかえった。 どうやら前方の小さな島影から若い娘たちの歌声が聞こえてくるらしい。 むむっ。どんなに悲惨でもこの冒険の舞台がギリシャ神話であることには変わりない。 拙者は急いでみんなに「急いで船をこいで島から離れろ!」と大声を張り上げる。 謎の小島に若い娘らの歌声とくれば、船乗りを誘惑しようとする妖怪ハーピーだかサイレンだかの仕業に違いあるまい!しかし手遅れのようだ。仲間たちは魔法にかかったように拙者の言葉を無視して、逆に小島に向かってオールをこぎ始めている。 拙者の髪の毛がピピンッと一房逆立った!この妖気は間違いなく妖怪のもの!ここままでは喰われてしまう!しかし南無三、拙者の心の中にも天女のような歌声にもっと近づいてみたい気持ちが高まっている。わずかに残った理性を総動員して誘惑に必死に耐えようと試みる。 ここでサイコロを2つずつ6回振って、チェックじゃ。これは10以上の目を4回以上出さねばならないという非常に厳しい試練となっておった。ただし名誉点を消費してサイコロの目を修正していいようなので、サイコロを振る度に名誉点を3点ずつ消耗し、7以上の目ですむようにした。
一回目・・・失敗 二回目・・・失敗 三回目・・・成功 四回目・・・成功 五回目・・・成功
六回目で運命がきまる。とりゃー!デカい目よ!出ろぉぉぉ!
4
拙者はサイレンどもに魅了され、奴らの食料になってしまった。 完
by銀斎
2021年06月04日(金) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その3 |
どうやら父上の死さえも次なる苦難の旅の始まりにすぎなかったらしい。 船がはるか沖まで港から離れると、またしても嵐の雲が竜巻のように襲ってきた。拙者、どうも船旅とは相性が悪いようでござる。 船員たちは必死で船のバランスをとろうとするが、まったく無力のように見えた。そのとき大波が船材を押し破って船内に流れ込み、おもわず絶叫する拙者を大海原に放り出してしまったのじゃ。 ぐんぐん波にもまれながも、奇跡的に目の前に板切れが漂っているのを発見して、必死でしがみつく。 ポセイドン神に内心悪態をつきつつも、守り神に命の無事を祈り続けた。そのかいあってか、なんとかどこかの砂浜に流れ着いたようだ。見回すと薬草が青々と茂ったペリオン山が近くにそびえている。 すくなくとも、流れ着いた先がハデスの黄泉の国ではないことに安堵する。 もっとも安心はまるでできなかった。今まで所持していた身の回りの物を探したが、砂浜にはなにもない。武具も母の宝石をはじめとする所持品もすべて流されてしまったらしい。おまけにあたりには人っ子一人いそうもないのだ。 ここで助けを求めるため、通り過ぎる船をまつか、山を登ってみるかの選択肢。 じっとしているよりは、動いている方が気がまぎれるじゃろう。 そう思い立った拙者は、険しい山道を登り始めた。
けわしい崖を…(サイコロによるチェック成功)…無事に登っていくと、半人半馬のケンタウルスが血を流しながら苦しげにうめいている。事情を聞けば、あのフェニキアの商人マルコスに、ふざけ半分に毒矢を投げられたという。 薬草を探し出して傷の治療をしてやると、彼の顔に生気が戻ってきた。 「もう私は大丈夫だ。ありがとう。君に医神アスクレピオスの祝福があるように。残った薬草をもっていきなさい。役に立つから」 (この薬草の効力で今後の戦闘中にもし“重傷”になってもニ回の打撃に耐えられるようになる。ただし、一度限り有効) ケンタウルスと分かれた拙者は、山すそを歩き続けて田舎の港に出た。ここでいくらかのオボール硬貨が入った袋が、道端に落ちているのを発見する。(くすねた罰として恥辱点1増える) 港からはプティア行きの船に乗り込む。さながら地獄の三途の川の渡し舟のような老朽船だ。乗船中は乗客全員で船にたまる水をかいださなければならない程だった。どこまでも悲しい旅よな。
プティアの港に到着すると、なんと商人マルコスが、ツロの神バールの像をアポロ神の像と偽って、町の人間に売りつけている現場に出くわした。 「よう!どこかで見かけた顔だな」 マルコスは拙者に気づくと馴れ馴れしく近づいてきた。離れようとするが、こやつは拙者の袖をしっかりとつかんで離さない。彼の後ろには4人の屈強なアカイヤ人の戦士たちがニヤニヤ笑いながらこっちを見ている。 「退屈してたんだ。俺たちと博打でもして遊ばないか?」 こいつのことだ。いかさまを働くに違いあるまい。誘いを断ると拙者を、腰抜けだのなんだのと呼び捨てたあと(恥辱点1増える)、離れた場所で勝手に賭け事を始めた。 まったく……こいつとは嫌な縁がありそうじゃわい。
しばらくウトウトしていたらしい。ふと傍の気配に気づいて目を覚ますと、マルコスが拙者のオボール硬貨を盗みとったところだった。しかもあろうことか、マルコスは拙者が目を覚ましたのに気づくと、あわてて 「これは俺のだぜ。泥棒め」 と言うではないか。斬り捨ててやりたかったが、アカイヤ人たちが見ているので騒げないという理由で、そんな選択肢はなかった。まあ、もともと拾ったものではあるが、許すまじマルコス! もっともマルコスはさすがに気まずかったのか、プティア人の兜から盗んだと思われる緑の羽飾りを拙者に差し出した。 「ほれ、これをやろう。トロイの衛兵にこれを渡せば城砦にいれてもらえるだろう」 「なんじゃと?しかし、拙者は故郷のトロイゼンに帰るところ。トロイには用はござらぬ」 マルコスは肩をすくめてみせた。 「陸路であそこまで帰るのはまず無理だろうな。ボイオティア全域が内戦でごたごたしているからね。船でトロイゼン経由で渡った方がましだろうよ」 くくっ、どこまでも腹のたつ奴!しかし、奴の言うことは本当らしい。選択(肢)の余地もないので奴の言葉を信じてトロイゼン行きの船に乗り込む。
トロイ行きの船は、鍛冶の神ヘパイストスの聖なる島レムレスに立ち寄った。 この島では怪しげな男どもに取り囲まれ、これまた怪しげな儀式を強制されるが、守り神に祈ってすぐにその場を逃げ出し事なきを得る。(名誉点が1増える) このあとは何事もなく、船は数日後には無事トロイへと到着した。そういえばトロイの宮廷には拙者の従兄のアグノステスがいるはずじゃ。ここは一つ挨拶に向うかの。 町の衛兵にアグノステスの居所を聞くと、彼はにっこりして案内してくれた。この様子ではアグノステスはトロイでかなり評判がいいようじゃな。 やがて拙者は宮廷の小部屋に通され、アグノステスと対面した。 「アルテウス。いったいどうしたんだ!つもる話しがあるんだろうなあ」 アグノステスはやはり、いい奴であった。拙者に居心地よい寝室をあてがってくれ、おかげで久しぶりの安眠をとることができる。(名誉点1増える)
翌朝になり早くから、拙者はアグノステスに起こされ、海岸べりまで遊びに出かけた。ここでボートレースをして遊ぼうというのだ。 ボートレースはマップをつかって遊ぶミニゲーム風になっておった。サイコロを何度も振らねばならんのが少々面倒くさいがな。それでもなんとか勝利をおさめ観客から歓声を受ける。(名誉点5増える) 次にアグノステスは拙者を円形闘技場に連れ込んで、円盤を握らせる。今度は円盤投げ競技をしようというのだ。アグノステスもなかなかの遊び好きじゃて。 最初は円盤投げに慣れなかったものの、数回なげるにしたがって、だんだんコツがつかめてきた。じゃが、四投目で手が滑って観客席の方へ円盤が飛んでしまう。観客たちから悲鳴が上がったところをみると、見物人の誰かに命中したらしい。これはまずいことになったのぅ。 あわててかけよると、なんということ、被害者は従兄のアグノステスではないか!しかも円盤の打ち所が悪かったらしく、すでに絶命している。 これで拙者は親族殺しの罪を背負ったわけじゃ。思わずぞっとして目の前が暗くなる。あの復讐の女神たちが訪れたら、また拙者は破滅じゃろう 急いで、町のアテネ神殿に助けを求めにいった。そして罪の穢れを清めるため、アイエの島に住む魔女キルケを訪ねるか、オルビアのアレスの神殿に赴いて清めの儀式をしてもらうのどちらかをするように神託を受ける。 商人マルコスの船に乗せてもらい、逃げるようにトロイから旅立つ。この巻になってから拙者、まったくついておらぬのう。
by銀斎
2021年06月03日(木) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その2 |
アテネへと続く帰りの船旅は、その後もまだまだ続く。 ポセイドン神が守り神にもかかわらず、船は行きと同じくまたしても嵐に見舞われ、どす黒い海面の大しけの中を船は木の葉のようにゆれ動いていた。 ふぅ、2巻ではまったく出番のなかったうえに、ここでもろくに助けてくれぬとは、拙者、守り神の選択を誤ったかもしれんのお。 災難続きで弱っていた船員たちもストレスが貯まっていたようだ。一部の水夫たちが拙者を指差してなじりあげた。 「こいつのせいだ!俺たちがこんな目に会うのも、この男を神が罰しているからだ!巻き添えはごめんだぜ。こいつを生贄にしよう!」 狂ったように揺れる船の中に緊張が走った。アテネの若者たちや残りの水夫たちは、この事態にどうしたらいいのか、オロオロとただ困り果てているようだった。 降伏して船から小船で降りる選択肢もあるようだが、とんでもござらぬ!拙者は声高らかに、アテネの若者たちに一喝した。 「武器を取れ、アテネ人よ、立ち上がれ!拙者の味方になるものは誰ぞ!刀の錆になるのは誰ぞ!」 ここで何人のアテネ人の心が動いたかをサイコロでチェックする。幸いアテネ人たちは拙者の味方だった。 船長が遅ればせながらノタノタとやってきて、水夫たちを説き伏せ、船内は平穏な状態に戻っていった。最初の試練はうまく乗り越えたようじゃな。
翌朝、船長と甲板から朝日を眺めていると、後方から一隻の船がぐんぐんと追いついてきた。 海賊船かと身構えたが、船長は笑って説明してくれる。 「船体からさっするにあれはフェニキアの商船ですな。あんなに急いでいるのは、おそらく腐りやすい荷でも運んでいるのでしょうなぁ」 会話している間にもその船はぐんぐん、こちらの船にせまってきて、ついには並走するところまでになった。その船は危うく衝突しそうになるまで接近すると、なんと鉤爪のついた長い棒のようなものを差し出して、こちらの船のマストを引き裂いてしまったではないか。 唖然とする拙者と船長らの前を、商船は追い越していく。ファニキア人が高笑いしながら、こちらに向かって叫んだ。 「この世の中はすべからく競争なのさ!誰にやられたかと聞かれたら商人マルコスに出し抜かれたんだと報告してやれよ。じゃあばよ」 マルコスと名乗った男の船は、「ジーン号」という船名を見せながら、ゆうゆうと去っていった。
ズタズタになった黒いマストを取り替えようとしている船員達。 拙者はポセイドンの忠告を思い出して、ヒントを使って、白いマストにかけなおしてくれるように船長に頼んだ。船長はうなずいて船倉から白いマストの帆を取り出してくれた。 史実のギリシャ神話では兄のテセウスが、黒いマストをかけたまま船をうっかりアテネの港に入港させたはずじゃ。その光景を宮殿から見たアイゲウス王は、テセウスが死んだと勘違いして悲嘆のあまりに自害したという。危ない危ない。 その後の船は順風にのってすみやかにアテネの港へ入港していった。 港に集まった群衆から歓呼の声と拍手が沸きおこる。うむ。英雄気分でいい気分じゃ。 「アルテウス、おお、わが息子よ」 渡し板から陸地に降り立った父君アイゲウスはまっさきに拙者に、ひしと抱きついて喜んでくれた。
しかし、父君はふいに胸をおさえると地面に倒れ伏してしまったではないか! 父君は急いで宮殿へ運ばれたが、容態は悪いようだ。拙者が旅立つ前とは見間違えるばかりに、やつれた顔をしている。寝たまま父上は拙者にそっとささやく。 「終わりのときがきた。すでにわしの心臓は心労でずたずたになっていたのだ。よくやったアルテウス。だが、今は家にお帰り。そしてお前の母に伝えてほしい……」 拙者は顔を近づけた。父上は苦しげにつぶやく。 「すまなかった……と」 それが最期じゃった。そのまま父君は身罷われてしまったのじゃ。
父君が入った棺が運ばれていき、かわりにイテコン将軍がやってきて拙者につげた。 「群集は怒っています。あなたが王の死を運んできたと。すぐにあなたがここから立ち去れるように手配いたします」 拙者は将軍に感謝の気持ちを伝え、クレタ島での出来事を詳細に語って聞かせてやった。(情報点1につき名誉点2に換算。つまり名誉点が8加算される) それから変装して宮殿から連れ出され、用意された船の待つ港へと向かう。 これからどうするべきか。父君は故郷に帰るよう言っておられたが。 しかし、まずはあてがわれた船室に駆け込むと、つかの間しかめぐり会えなかった父君の死を一人偲ぶことにしたのだった。
by銀斎
2021年06月02日(水) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム3 冒険者の帰還(P.パーカー他/社会思想社) その1 |
ミノタウロスを倒す快挙を成し遂げ、クレタ島から脱出してからというもの、穏やかな航海が続いた。気温は下がり始め、季節はもう秋の気配を感じさせている。 甲板に座り、ぼんやりと船を見渡すと、辛くも生贄の運命を免れたアテネの少女とアリアドネ姫が談笑していた。姫のほがらかな笑顔をみると心がなごみ、あの恐ろしいミノタウロスとの戦いの記憶もしだいに過去のものへと変わっているのを拙者は感じ始めていた。 さあ、気をひきしめよう!なんというても、これからは最終巻の冒険なのじゃからな! とはいえ、ミノタウロスを退治するという、冒険当初の目的は達成した今、これ以上の困難が待ち受けているとも思えないのだがな。 船長がこちらへやってきて笑顔で言った。 「午前中にはナクソスの島へ到着できるでしょう。そこのアルテミスの神殿の神官は私の友人でしてね。あなたとアリアドネ姫の結婚を万事うまくとりしきってくれるでしょう」 そうなのだ。最終巻はアリアドネ姫との結婚式のシーンからはじまるのだった。少々照れるでござるな。
結婚式は滞りなく進行していった。船員たちが祝福してくれる神殿の中で、拙者は神官の言葉も、うわの空でアリアドネ姫の姿ばかり見つめていた。美しい。 「誓います」 アリアドネ姫の言葉でわれに返る。拙者も慌てて「誓いもうす!」と叫んで彼女の体を抱き寄せた。
突然、周囲の人々がコウモリに姿をかえ飛び立った。驚いてアリアドネ姫を見つめると彼女の体から、無数の蛇がはえ始めた。 な、なんだこれは! みると、神官も船長も姿を変えて、復習の三姉妹の老婆達の姿になった。 「お前は兄殺しだ」 「ミノタウロスは、アリアドネの兄じゃった」 「お前はアリアドネと結婚した。ゆえに親族殺しの罰を受けるのじゃ」 復習の女神達はいっせいに笑う。拙者が混乱する中、突如足元の崖の端がくずれ、遥か下の海岸の岩に体を叩きつけられ、拙者は破滅した。
完
そんな酷い理屈があるかー!まだ1パラグラフしか進んでおらんというのに! (ゲーム開始と同時に結婚して破滅という衝撃の結末から回避するには、パラグラフ1でヒントを使って下のように展開を変えるしかない)
改めて、3巻の冒険を開始する。 アリアドネ姫が婚礼の準備のため、一足先にナクソスの島に入ると、拙者は船長にすぐ船を出発させると告げた。船長は最初、拙者が冗談を言っていると思ったようだが、船長の喉元に剣を突きつけると、息を呑んだ。 「アルテウスさん!あなたはアリアドネ姫をお見捨てになるのですか」 「しかたがないのだ、さあすぐに出航しろ!さもないとお前を斬るぞ」 船は未練たっぷりといった様子で、のろのろと港を離れていった。拙者はアリアドネが残されたナクソスの島が消えるまで甲板で眺める。そして島影が消えると、船室に戻りベットで泣いた。 ふと気がつくと使者の神ヘルメスが傍にいた。 「これでいい。お前は自分の役割を演じた。これは裏切りとともに始まった旅だ。だからお前は恥辱のうちに旅をしなければならないのだ」 そういってヘルメスは消える。 よろよろと再び甲板に出ると、海面から一人の人間が飛び上がってきた。いや、違う。人間ではない、わが守り神のポセイドンだ。彼は不思議そうに拙者を見つめ、ぼやくように告げた。 「テセウスですら失敗したことをお前がやり遂げるとは、信じられん。とにかくお前はアテネに帰らねばならん。お前の父は、この船がお前の死を告げる合図の黒帆を揚げて戻ってこないかとビクビクしながら待っているぞ。もうこんな英雄ごっこはやめにしろよ。お前はそんな器ではないんだ」 ポセイドンの姿は海面へ溶けて消えた。 拙者は心からの大きなため息をついて、甲板の上で大の字になって寝転がる。なんとも意気のあがらぬ冒険の始まりじゃな。
原攻撃点 5 ヘパイストスの剣(攻撃力+4) 原防御点 11 ヘパイストスの胸当て(防御力+4)、ヘパイストスの盾(防御力+4) 名誉点 22 恥辱点 10 情報点 8 所持品 母の宝石、メダル(戦闘時に攻撃力か防御力のどちらかに+2の効果)、ブローチ (注1)ヘパイストスの武具は、神々やそれに属する生き物との戦闘では、ポイントが6に増える。 (注2)ミノタウロスを倒した経験により、アルテウスの原攻撃点と原防御点は前作より1点ずつのボーナスがついた。
by銀斎
2021年06月01日(火) |
続々、アルテウスの偉大なる冒険談 |
ゲーマニに投稿していた内容を、冒険記録日誌に書き移すときは、そこそこ変更を加えました。 まずは誤字脱字の修正。これはこの冒険記録日誌自体にも多いのですけど。 続いて、パロディネタの削除。八幡国出身の銀斎が、他のアニメやゲームの知識があるのは不自然だし、なにより読み返すとギャグが寒い。 さらには楽屋ネタや、現実世界と絡めたやりとりの削除。連載途中で本を紛失して今週はリプレイを書けなかっただの、今となってはどうでもいいですね。 あと、小説じゃないんだから、創作的な描写は控えめに変更。くどい説明も必要じゃないところは削除。 なんだか削除してばっかりな感じですが、あんまり削除しすぎると、この長編リプレイ自体を自分で否定してしまってるような気もしなくもないです。(汗)
さて、リプレイも最終巻「冒険者の帰還」となりました。 この巻の内容は、とにかく鬱。主人公が最初っから理不尽な目にあったかと思うと、エンディングまで不幸真っ逆さまな展開が続きます。 ミノタウロスを退治する目的が終わったため、ただ母のいる故郷に帰るだけなのに、遭難してどんどん目的地から離れていき、身に覚えのない恥辱を払う必要があるだの言われるわ、倒すべき悪役の存在もなく、ただ黄昏の中をさすらうだけみたいなのが感想でした。 さらには守り神達もこの巻ではあまり助けてくれない悲しさ。 2巻でハッピーエンドのまま全2巻でシリーズが終わっていれば、普通の楽しいゲームブックだったのに。 まあ、黄泉の国に向かう展開は面白いし、この巻のみ登場する、おしゃべりな虹の女神イリスと、曲者の商人マルコスはとてもいいキャラしてます。 この3巻こそが一番の傑作と強く推す方もいらっしゃいましたし、これがギリシャ神話たるものなのかも。ギリシャ神話って理不尽な事が多くて、その意味ではこの巻もそうなのかもなぁ。
|