冒険記録日誌
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2016年04月30日(土) 愛の矢は誰に?(雅 考司/朝日ソノラマ) その5

(ネタバレ注意。プレイ予定の人は読まないでください。)
 
 残った恋人候補は、少女漫画から抜け出したような王子系の学園アイドル、圭一君。それから長髪ミュージシャンの誠治さん。
 女の子の候補が是非とも必要だわ。(今風にリメイクするなら男同士のカップルもありかもね。女の子向けゲームブックだし(w )

 ちょっと心当たりがあったので、赤坂のテレビ局にもどってみると、英雄君がやってきた。これがタイムマシン効果ってやつねー。
 もしここで私と恋愛モードになったらもうドロドロの三角関係になりそうだわ。今回はムシムシ。
 TV番組の収録にいた一般の女の子達(観客席で笑ったり、芸能人のトークに合わせてタイミングよく「そうですねー」とか唱和する人のことよ。)に一人目を引く娘がいた。シックでセンスの良い服を着ているんだわ。
 番組アンケートとか言いながら彼女を捕まえて話してみると、大人っぽい見た目とは裏腹に占いが好きだとか、チャーミングなところもあるみたい。ギャップ萌えってやつね。優子さんという名前だって。覚えたわよ。

 ここで困ったのは、圭一君と誠治さんのどちらを紹介すべきかということ。
 どっちもそこそこの相性点はでそうだけど、10点満点みたいな決め手は感じられない。うーん。
 決めた。誠治さんにしよう。占いとミュージシャンって、どっちもロマンティストじゃない?
 それに圭一君はパーフェクト過ぎて、恋人にするには案外疲れそうだしね。アイドルは遠くから眺めるのが一番ってものよ。
 魔法もあまっているので、遠慮なくエリア移動エネルギーと愛の矢を使う。私が弓から普通の人には見えない矢を放つと、矢は二人を貫いた。ほやほやのカップルは喫茶店でいつまでも楽しそうに話している。
 さあ、相性点は──?フィラリス様のテレパシーを待つ。
「素晴らしいわ。10点ですよ、ルピア。よくやりましたね」
 やったー!オール満点よ!

 こうして意気揚々と天界に戻った私は、審判を受けて見事大天使としてキューピットの試験に合格したわ。もう最高よ! 

END


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 大天使になる基準点はかなり高いので苦戦するかと思ったのですが、まさかの満点。カップルの組み合わせが予想外にうまくいったようです。
 もしも低得点のカップルが出来た場合は、好きと嫌いの魔法を使って、カップルを解消して仕切り直しもできます。今回はそれが一切なかったので魔法の力があまってしまいましたね。
 リプレイでは遭遇しませんでしたが、実は愛の矢が通じない人とか、ルピアがラブラブカードを奪われる展開もあったりするので、クリアするには油断は禁物です。
 最初にも書きましたが、カップルが成立した時の描写は欲しかった。それだけでなく愛の矢を使うシーンも描写がないんです。魔法少女アニメなら変身シーンがないようなものですよ。リプレイに描いたエリア移動エネルギーの魔法を使った結果とかは、山口プリンの妄想で書いてます。
 他のシーンの描写はまあまあしっかり描かれて悪くないんだけどなぁ。特に恋愛ルートで雨の日のデートの待ち合わせで、時間を過ぎてもこない彼を、喫茶店の席でミルクティーを飲みながら待つシーンは好き。バットエンドだけど。
 ゲームブックとしてはいろいろ甘さがある作品だけど、着眼点の妙とふんわりした世界観は高く評価できます。独特の雰囲気をもった佳作でした。


2016年04月29日(金) 愛の矢は誰に?(雅 考司/朝日ソノラマ) その4

(ネタバレ注意。プレイ予定の人は読まないでください。)
 
 ミサさんのいる青峰学園は青山。英雄君はテレビ局にいたから赤坂ね。
 2人を引き合わせる為に、エリア移動エネルギーを使うと、梶田君がなんと学園にやってきた。
 なんでもミサさんと梶田君はそれぞれの学校の生徒会メンバーらしいんだけど、梶田君の通っている学校と合同文化祭の企画があるとかで、学校を代表して何人かで青峰学園まで打ち合わせにきたらしい。びっくりするほど、効果てきめんだわ。
 2人はこれから何度か打ち合わせとかするんだろうけど、ここで2人に愛の矢ことキューピットの矢を使うべき?
 初めてのカップル作りだし、ここは愛の矢を温存して、軽く2人を私が紹介した後は成り行きに任せることにした。(すると選択肢とサイコロによる判定発生)
 結果は……成功!2人がドンドン打ち解けていくのがわかったわ。
 すると、フィラリス様からのテレパシーが響いた。
「よくやりましたね、ルピア。ニ人の相性は10点ですよ。」
 やったっ、最高点だわ!

 気をよくした私は他の恋人候補を求めて、もう一度麻布のディスコに繰り出した。
 (もう踊る選択肢は選べないので)今回は大人しく椅子に腰かけて、バブルの熱狂にあふれるホール内を見物していると、カップルが「ここ空いてますかー?」とやってきて傍に座った。男は長身でミュージシャンらしい恰好をしていて、恋人候補に良さそうな感じだけど、彼女持ちじゃ駄目だなぁ。
 でも一応、彼女が席を外した時に話しかけてみると、きょとんとして「あれは妹ですよ。恋人ですか?いないけど欲しいな」との事。
 ラッキー!誠治さんを確保確保。
 でも小学生みたいな千秋ちゃんとは、似合わないかな。まだ別の恋人候補を探す必要があるかも。

 次は原村のテニスとペンション内のみんなとカードゲームを楽しむ。楽しみながらアンテナを張って目星をつけた男の子には、すでに彼女がいた。残念!
 「ああ、でも長尾誠治って俺の友達が、彼女を欲しがっていたな。麻布のムハラジャってディスコで会えると思うよ」
 情報はありがたいけど、誠治君はすでに確保済よ。
 まだ見つからぬ恋人候補がいそうなので、すぐに原村のペンション3周目に挑戦。今度も空振りだったけど、なぜかフィラリス様から私の誕生日プレゼントとしてエリア移動エネルギーを一つ貰っちゃった。ラッキーだけど、時間の流れがよくわからないなぁ。
 4度目の原村では、テニスコーチの大学生、昭彦さんと会話してみた。
 「好みのタイプ?ほのかちゃんみたいなタイプかな」
 まあ、お上手。ドラマやアニメでもテニスコーチのイメージってナンパな感じよね。そう考えていると、さらに注目の一言が。
 「クラスメイトや今日の仲間は大人すぎるな。僕は自分の世代よりもっとずっと下かそう見える女の子が好きなんだ」


ロリコンキタ━━━━━━\(゚∀゚)/━━━━━━ !!!!!


 はいはいはいはい。エリア移動エネルギーを使って、スキーから今度はテニスを遊びにやってきた千秋ちゃんを紹介するわよ。
 昭彦さんのナンパな性格は不安だから、今回はしっかりと愛の矢を打ち込んでおいた。
 千秋ちゃんは素敵なお兄ちゃんに出会ったとばかりに甘えてテニスを習っている。こりゃうまくいくよ。
「ルピア、今度も上手にやりましたね。ニ人の相性は10点ですよ。」

 これで20点。よーし、あと一組よー!えいえいおー!!


続く


2016年04月24日(日) 愛の矢は誰に?(雅 考司/朝日ソノラマ) その3

(ネタバレ注意。プレイ予定の人は読まないでください。)

 東京に戻った私は、ディスコに潜入してみた。ディスコに女子高生じゃ無理があるから、ここではちょっと大人っぽいメイクに変えてみた。
 しばらくホールで賑やかに踊っていたけど、チークタイムになるとカップルになってみんな踊り始める。私にも踊ってほしいと声をかけてきた男の子がいたけけど……私の好みと審査眼では合格と不合格の境目だわね。(ここで誘いにのって踊るか、座るかの選択肢)
 せっかくだし踊ってあげようかなと、つきあってあげた。でも、ずいぶん体を押し付けるし、息はかかるし、しまいにはヒップにまで手が近づいてきた。そこまでの相手じゃないしなー。
「ここは踊るところよ。キミ、満員電車にでも行ったら?」
 甘い声で耳元でささやいてやると、相手はスゴスゴと去っていく。
 ここも空振りみたい。

 赤坂に向かった。道でハゲの……ごめんなさい。頭の不自由なおじさんに道を聞いて、到着したのはテレビ局。
 ここでは英雄君というちょっと内気で繊細な性格の男の子に出会った。お話しをしてみると、私に好意があるみたい。(ちなみに、ここで自分も英雄君が気になるなら、恋愛ルートに突入)
 ちょっとかわいいかな。でも仕事だもん。代わりに最高の女の子を探してきてあげるからね。(ここで初の恋人候補確保!)

 まだ行っていなかった原村のペンションは空振りしてしまい、これですべての場所をまわったことになる。これからは二周目の場所を探すしかないみたい。
 スキー場で、見た目が小学生みたいな女子高校生、千秋ちゃんと知り合って恋人候補に追加。
 英雄君と千秋ちゃんとつっつけようかとも考える。でも、なんとなく青峰学園の図書室にいた女の子達が気になった。あそこにいた文学少女を恋人候補にできれば、英雄君と相性が良さそうに思えるのよね。ここは保留かな。
 というわけで、青山に再び移動。今度は容姿端麗、優しくて性格の良い学園のアイドル圭一君を恋人候補に確保。それから恋人候補になってくれそうな、知性派のミサさんも図書室でゲット。
 恋人候補達も少しずつそろってきたわよ。
 さっそく、英雄君とミサさんをくっつけてみよっと!

続く


2016年04月23日(土) 愛の矢は誰に?(雅 考司/朝日ソノラマ) その2

(ネタバレ注意。プレイ予定の人は読まないでください。)

 さてさて、まずはどこに行きましょうか。カップルをつくるには、まず素敵な男の子、女の子を見つけなくちゃね。
 原宿・渋谷には恋人候補になりそうな子たちが集まっているだろうし、ディスコなんかもいいかもしれない。それも六本木より麻布のディスコの方がすすんでいるって聞くわ。テレビ局もいいかもしれない。学生狙いなら青山かなぁ。

 まずは原宿を散策してみることにした。日曜日の代々木公園には、大勢の人が出て、中には竹の子族の仲間みたいな人たちが輪になって踊ったり、歌ったりしている。でも、中心の人たちは真剣にやっているからちょっと声をかけにくい感じ。
 そのうち男性バンドの熱心に見つめる観客の中から、3人の女の子に目ぼしをつけた。(ここで大人っぽい子、あどけない子、お嬢様タイプの子の中から、どの子に声をかけるか選択肢発生。)

「リードギターの子、かっこいいわね」
 私が彼女にそう話しかけると、その少年を見つめたまま「そうね」と生返事。
「彼、毎週ここでやっているの?」
「私が来たときはいつもね」
 やっぱり、こちらを振り向きもせずに答える。ありゃ、選択ミスったかな。
「ああいう子が好みなの?」
 まだ頑張ってみようと、もう一声かけると、彼女は初めて私を見た。そしてニコリと笑った。
「ね。あなた、実習中のキューピットじゃない?」
 ギョエェ!?という叫び声こそ出さなかったけど、目は点になった。何で知っているの?
「ふふっ、私も元キューピットだからよ」
 聞けばあのリードギターの子と恋におちて、キューピットをやめ人間への道を選んだという。
 もう天界には帰れないけど、上級天使になるよりも幸せよ。と彼女はいたずらっぽく笑うと、使い残していたというキューピットの矢を一本私にくれた。
 お礼をいってその場を離れる。恋を選んで人間として生きるってどんな気分だろう。なんだか羨ましい気もするなぁ。
 そのあと竹下通りをウロウロして、かわいいお店をのぞいたりしてみた。一度、恋人候補になりそうな店員さんに声をかけたけど、「せっかくだけど、いいわ。私、恋人は自分で見つける主義だから」と断られてしまった。もう一人の店員さんの方に声をかければ良かったなぁ。
 結局、ここの収穫は愛の矢一本だけ。

 気を取り直して次は青山にいこう!それも男女共学の青峰学園に。
 ここでは私が普通の女子高生として暮らしていると、フィラリス様が学園中の人たちの記憶に植え付けてくれているのだ。
 そんなわけで昼休みなると、女友達2人と屋上でお弁当を広げておしゃべりに夢中になった。でも友達達は、私が授業中でもいつもグースカ寝ているキャラと思っているみたい。フィラリス様、もっとマシな記憶を入れておいてよ〜。確かに天界の私はそんな感じだけどさ!
 お弁当タイムが終わると、私は図書室に入ってみて文学少女達に声をかけてみた。(ここも3人の子の中から3択)だけど、「まだ恋人とか興味ないわ」と断られてしまう。残念。
「でも、そういうのに興味ある先輩は知ってるわよ。原宿でバイトしているわ」とその文学少女。
 その子の特徴を教えてもらったけど、あー、竹下通りのお店で声をかけなかった方の店員のことだ。ヒントを聞くのが遅かったな。(竹下通りはなぜか一度しかいけないエリアなのです。)

 青山も空振りに終わった私は、一度仕切りなおしに東京を離れてみようかと思った。
 山形県の雄大な蔵王スキー場かな。長野県の原村でテニスコートつきのペンションもロマンティックでいいかもしれないわ。(うーん。「出会いの場=スキー場にテニスコート」の図式は、いかにもバブル時代。)
 とりあえず、スキー場に向かった。ここではゲレンデのレストランでチャーミングな女の子に目を付けたのに、実はもう結婚していたとわかってガッカリ。高校生妻かぁ。おまけにリフトに乗っているときに愛の矢を、一本落としてしまってガックリ。
 スキー場も空振りに終わってしまった。えーん、なかなか恋人候補が見つからないよぉ。

続く


2016年04月17日(日) 愛の矢は誰に?(雅 考司/朝日ソノラマ) その1

 朝日ソノラマのハローチャレンジャーシリーズの第11作目。
 このレーベルは幅広いジャンルのゲームブックが揃っているのが特徴ですが、なんと本作の主人公は恋のキューピット!!これは新しい!いや、30年前の出版なんだけども!
 巻末の作者コメントによると、「ファンタジーといえば、剣と魔法でモンスターを倒すという、ワンパターンからは脱却したかった」とのことですが、この発想はなかったです。どちらかと言うと女の子向けゲームブックという印象ですね。
 ストーリーは見習いキューピットが正式なキューピットへの昇格テストに挑戦するという内容で、主人公は人間に化けて人間界へ潜り込み、素敵なカップルを成立させていきます。
 登場人物の中にはまれに腹黒い奴もいますが、主人公の性格がノー天気でポジティブなこともあり、全体的にほんわかした世界観でして、藤浪智之(わきあかつぐみ)さんのゲームブック(「バニラのお菓子配達便!」とか「銀河宅急便」とか)みたいな気持ちの優しくなる世界観です。表紙と挿絵もこの世界にぴったりあった雰囲気の絵柄になっていて、いい感じです。
 ただ、それだけに恋人になった2人の描写がない点がとても残念。カップル成立すると「このカップルの相性は7点です。」のような無機質なナレーションが出るのみなんですよね。男女6人ずつの恋人候補の中からカップルを成立させるので、全ての組み合わせの結果を書くのは大変とは思いますが、雰囲気重視の作品だけに、一番達成感があるはずのこの場面は手を抜かないでほしかったなぁ。
 あと、80年代の東京が舞台だけに、今読むと時代を感じさせる描写が多いのですが、さすがに仕方ないか。
 具体的なゲームの流れも書こうかと思いましたが、雰囲気がわかりやすいリプレイ形式の方で紹介しようかと思います。
 以前遊んだときは、主人公が人間の男の子とカップルになるという、比較的簡単に到達できる恋愛エンドで、まだあまりやり込んでいない状態です。今回はベストエンドであり難易度が最も高い大天使エンドを目指しますよ。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 私のキューピット見習いのルピア。普段は天界に住んでいるんだけど、人間でいうとティーンエイジでなかなかの美少女……と自分では思ってる。
 今日はキューピットの実施試験なの。雲の宮殿の奥に通されると、そこには長い衣を身にまとった女神フィラリス様がいらっしゃった。
「あなたもそろそろ正式キューピットになる年頃です。地上に降りてカップル作りの実習をするよう命じます。」
 フィラリス様は試験(ゲームルール)の説明を始めた。カップルが成立すると、ニ人の相性によって10点満点でテレパシーであなたに教えます。あなたが天界に戻ったときに点数は1点につき1枚のラブラブカードなります。カップルは最大3組までです。枚数次第で下級・中級・上級天使もしくは不合格の結果になりますよ。

 ラブラブカードなんて商店街のバレンタインイベントみたいね。
 そんな私の心のつっこみもフィラリス様にはしっかりテレパシーで伝わったようだ。フィラリス様はちょっとだけ話しを止め、にっこりとほほ笑んで説明を再開した。まずいまずい。

 キューピット自身の恋愛はルール違反で、あなたはただの人間になってしまいます。それがあなたの望む幸せなのかよく考えなさい。
 同じところへ何度も行き来していると、タイムマシン効果で前と同じことを経験することもあります。(ゲームブックのフラグ問題をタイムマシン効果の一言であっさり片づける女神さま)
 あなたには愛の矢、エリア移動エネルギー、好きと嫌いの魔法という3つの力が使えます。全部で10回分になるよう、あなたの好きなように使える回数を決めなさい。

「あのー、愛の矢はキューピットの力として当然わかりますが、好きと嫌いの魔法はどう違うのですか?それにエリア移動エネルギーの意味がわかりません。狙った男の子・女の子を誘拐してくるのですか?」
 私が思わず質問すると、フィラリス様はまたほほ笑んだ。なんだか、少し馬鹿にされているような気がしないでもない。被害妄想かなぁ。
「愛の矢はお互いを両想いにしますが、好きと嫌いの魔法は、今の状態を反対にします。うまくいかなかったカップルを成立させるだけでなく、カップルを別れさせる力もあるのです。ただし、好きと嫌いの魔法は片方の相手にだけ有効です。またエリア移動エネルギーを使われた人間は、移動しなければならない用事が発生するのです。つまりカップル候補がお互い離れていても、偶然のように相手に出会うようになるのです。」
 ふーん、相性点の低いカップルが出来てしまったら、別れさせてやり直してもいいわけか。当人たちはキューピットに振り回されて、ちょっと可愛そうな気もするなぁ。

 フィラリス様の前から退席した私は、使える力を愛の矢を3回、エリア移動エネルギーを4回、好きと嫌いの魔法を3回に決めた。
 そして霞ほのかという人間の女の子として、人間界の東京に舞い降りたのでありました。


続く


2016年04月16日(土) 魔法使いナシアンの旅(滝永悟/朝日ソノラマ)

 前に少し遊んで、そのうちちゃんと最後まで遊ぼうと思っていた「魔法使いナシアンの旅」をクリアしました。2003年04月23日の冒険記録日誌で、ナシアンの魔法システムを紹介したとき以来ですから、10年以上越しの達成です。
 ゲーム機ならハードが2回入れ替わっているくらいの時間だな。オンラインゲームならサービスが終了している状態でしょう。
 新刊のゲームブックもすぐに買うものの、大抵1〜2年経過してから遊んでいるし、スローゲームライフの私にはやはりゲームブックがぴったりですわ。


 さて、紹介の方をします。本書は魔法や怪物が存在する中世ヨーロッパ風の世界が舞台の、極めてオーソドックスな冒険ファンタジーです。
 主人公のナシアンは見習い魔法使いとして魔法院の学生をしています。ストーリーですが、世間では謎の人さらいが頻繁に出没する中、兄弟の結婚式に出席するため里帰りするという他愛もないもの。学院の休暇を取る条件として、プロローグでは学院長から道中に立ち寄る街に、ある手紙を配達するようお使いを命じられます。
 最終的には途中で加わる仲間と共に、人さらいが潜伏している本拠地に潜入することになり、元凶の黒魔術師を退治するという王道展開になるわけですが、この世界の人々は旅人と別れるとき「平らな道が続きますように」と声をかけるとか、描写が一般的なゲームブックより細かく、小説として意識された内容となっているのが特徴です。
 とびぬけた個性的な登場人物はいませんが、ヒロインのエイレンは現実にいそうな好感の持てるしっかり者の性格ですし、戦士エルウィンのナシアンとの会話の掛け合いは楽しく、ラスボスのビスマイアもいかにもな悪者ぶりで、キャラ小説としてもなかなか良し。何気にイラストも雑誌ウォーロックや「ニフルハイムのユリ」等でお馴染みの米田仁士氏ですし、雰囲気はばっちりです。

 こう書くとストーリーメインで、ゲーム性は普通な出来に思えますが、さにあらず。システムのいくつかが独創的で面白いのです。
 まずは魔法システム。ナシアンは11種類の魔法を習得していますが、多くの魔法はまだ咄嗟にうまく使えないとの設定で、ゲームのルール説明の段階では、初心者向けの「明かり」と「眠り」の魔法以外は名前とその成功率しか表示されていません。他の魔法がどんな効果があるのか、冒険中の実践で試して覚えていくしかないというわけです。ゲームオーバーになっても、次のプレイではより多くの魔法の効果が判明した状態でスタートできるという、プレイヤー経験値を積み上げていくシステムは、ゲームブックの名作ソーサリーの魔法習得に通じるものがあります。
 次にゲームブックを手軽に遊びたい人と、本格的に遊びたい人、双方の欲求を満たすため、サイコロを使う使わないがプレイヤーの任意で決められるようになっています。使用の有無で戦闘等のルールが違い、サイコロを使用するルールの方が、初期体力値が多くなり、戦闘で必ず先手を取れるという有利な面がある一方、攻撃に命中判定がつくようになり、安定したプレイが難しくなります。
 サイコロなしなら必ず成功していた魔法にも成功判定が必要になり、その成功率は呪文の種類によって違うので、一部の選択肢や戦闘では一番有利な呪文が変わってくるのも面白いところです。
 他にも戦闘システムでは、体力値はパーティ共有で、攻撃の手番だけ戦士のエルウィンは剣で、ナシアンは剣と魔法を状況に応じて使い分けるという風な、プレイヤーの負担を減らしつつも、パーティプレイ感があるものになっているなど、ルール面では作者がいろいろと試行錯誤したように感じますね。

 実際のゲームプレイ中の印象では、基本的に中盤まで割とのんびりした旅が続き、ラスボス手前のゴーレム戦が強敵なくらいで、難易度は割と低い方でした。有名ゲームブックでいうとソーサリー1巻みたいな感じかな?最初はゴーレム相手に体力がもたずに敗退を繰り返して苦戦していましたが、これは仲間が加わったときに体力値の上限が増えるという記述を見逃していたのも原因と判明。(汗)
 ちなみに本書には続編があり、そちらの方の作者コメントによると、前作は登場人物紹介的な意味合いが強かったと書かれていました。そういわれると本作は昔のライトノベルの第1巻みたいという方がぴったりくるかもなぁ。主人公は歴戦の冒険者ではなく、ただの学生の状態から始まっているし、序盤にナシアンが見た夢に登場した謎の3人組の伏線はそのままで、今回の事件にまだ背後があるようですし。
 エンディングでナシアン達がのん気な会話をしている裏で、3人組が「ビスマイアがやられたそうだ」「所詮、奴は若輩者……」「我らの計画が揺るぐことはあるまい」とか会話していそうだ。
 ゲームブックとしてのボリューム感はややあっさり目に感じましたが、長編ゲームブックはなかなか初心者には敷居が高いと思うので、これはこれでありです。ローンウルフシリーズみたいに巻を積み重ねて、シリーズ化すると良い感じだったのにと思った良作でした。


2016年04月10日(日) ルパン三世ゲームブックがまさかの漫画化

 お〜もりさんのサイトで知りましたが「ルパン三世H 華麗なる挑戦」(双葉社)というルパン三世の単行本が凄い。かつて双葉文庫から出ていたルパン三世のゲームブックシリーズ(2004年07月の冒険記録日誌参照)を原作にしているとの事。これはチェックしないわけにはいきません。
 早速購入してみると、本の帯にも「ルパン三世の小説&ゲームブックシリーズをコミカライズ!!」と書かれています。ルパン三世ゲームブックは一部電子書籍化されているし、ルパン人気の根強さには恐れ入りました。でもゲームブックのストーリーを漫画化したものであって、分岐とかないので、ゲームブックと間違って買わないように注意してください。
 以下は読んだ感想ですが、原作となる作品は「アムネジアの砂漠」「青の女王強奪作戦」「華麗なる挑戦」の3作品。
 「アムネジアの砂漠」の原作は兄弟分の小説レーベルの方ですね。(2009年08月の冒険記録日誌参照)原作の方は、設定を盛りすぎて逆にルパンがバックドロップを決めた所しか印象がないのですが、漫画では少しアレンジしてスッキリまとめられ、予想外に良かったです。この回は不二子が可愛いよ。
 「青の女王強奪作戦」は原作にあったラストのオチを削っているのが、かなり残念。なぜ削った?ルパン三世ゲームブック1作目「さらば愛しきハリウッド」に絡んでいる設定もなくなっている事もあり、ヒロインのクラリッサが中途半端でいらない子になっています。
 「華麗なる挑戦」はヒロインのシャーリーがひたすら可愛い。ルパンと公園の湖でボートデートするシーンをちゃんと入れてくれて嬉しい限り。次元が作戦AやBを使い分けて作戦を実行していく展開も、元のゲームブックを遊んだ人間が読むと微笑ましい気分になるね。
 ちなみに小説の方は、ルパン三世Hの以前の巻でも「泥棒さんと、殺し屋さんと、……ひとりの少女」「星を盗む男」「泥棒さんたちの華麗な休日」が漫画化されています。こっちも読んでみましたが、いい具合に原作をアレンジ補強してあって良く出来ていましたよ。特に「星を盗む男」は、ホラー色は薄れたものの、原作の消化不良なラストをキチンとした解決に変更していたのがよかった。
 これは確かにお〜もりさんと同じく、「戒厳令のトルネイド」とかの他ゲームブック原作の漫画も見てみたくなります。小説の方でも銭型が主役でかっこいい「エルドリア大脱出作戦」の漫画版が見てみたいところ。いったい、どんな基準で原作を選んでいたんだろう。またやらないかなぁ。


2016年04月09日(土) 光文社文庫ゲームブック総まとめ・改

 レーベル全プレイ感想掲載記念!一度まとめを書きましたが、改めて総まとめの書き直しと追記をしました。

 正直なところ光文社文庫のゲームブックは、発売当時は存在すら知らなかったし、古本屋でゲームブックを集めるようになっても、面白くなさそうに思えたので、購入を見送ったりもしていましたし、最近までいつか遊ぶ未読のゲームブック脳内リストの中でも最下位レベルの作品群でした。
 それが先日、ちょっとしたメールをいただいたのをキッカケに、全て読破したのですから、何か起こるかわからないものです。
 レーベルは全11作品で、その内容は製作者別に4グループに分けられます。ちょっとリスト化してみましょう。


○ワールドフォトプレス作品
•F−4Jファントムラインバッカー作戦
•戦闘宇宙艇SRV4−B シャングリラ作戦
•オルフェウス作戦 海上原子力発電所を奪回せよ!

 軍事ものなどリアル志向の内容。ゲーム本編前の設定解説などが異様に長いのが特徴です。


○若桜木虔作品
•一緒にアクシア 大遺産を探せ!
•秘密諜報大作戦

 運任せ選択肢と無限ループ迷路の地獄です。


○RED BOX作品
•日本縦断 キャノンボール火の玉レース
•サバイバル 東京ひとり暮らし
•マネーゲーム きみも億万長者になれる
•爆走バイク! アメリカ大陸縦断レース

 作品数が一番多いRED BOX作品。車だの都会生活だの、チャラ男向け雑誌を読んでいそうな学生を購買層に狙っていたイメージ。マネーゲームを除けば3部構成になっているのも特徴です。


○スタジオハード作品
•妖魔館の謎
•鉄人28号 東京原爆作戦

 双葉ゲームブックでお馴染みスタジオハード。原作付きというのがこのグループの特徴です。


 さて、せっかく全作品を遊んだので、11作品を独断と偏見でランキング化してみましょう。
 すると次のようにランク別に4グループに分かれました。


1位 鉄人28号 東京原爆作戦
2位 爆走バイク!アメリカ大陸縦断レース
3位 マネーゲーム きみも億万長者になれる
4位 F−4Jファントムラインバッカー作戦

 ランキング上位の第1グループです。他の出版社と比較して大傑作というものはないですが、良作には違いないので、安心して遊べます。
 1位の鉄人28号は、この中では最も安定した面白さですが、手軽に遊べる作品の多い同レーベルの中では珍しくメモが必要です。
 光文社文庫ゲームブックらしい面白さ、という意味なら2位・3位のRED BOX作品の方が相応しい気がしますね。
 4位のF−4は、好みで評価がわかれそうな作品ですが、シュミレーションゲームブックとしては完成度が高いと思います。


5位 オルフェウス作戦 海上原子力発電所を奪回せよ!
6位 日本縦断キャノンボール火の玉レース

 第2グループにして、いきなりイマイチな出来のゲームブック。
 とはいえ、5位のオルフェウス作戦は、ゲーム部分に問題があるものの、映画のような世界観は魅力的です。比べると6位のキャノンボールは、ゲーム、ストーリーともに淡泊過ぎます。
 私的には、同じ点なら全てが平均した作品より、オルフェウス作戦のような長所と短所のある作品の方が好きです。


7位 秘密諜報大作戦
8位 妖魔館の謎
9位 一緒にアクシア 大遺産を探せ!

 第3グループは、 スーパー頭脳集団アイデアファクトリーも裸足で逃げ出すグループ。3作品の差はほとんどありませんが、塩田作品と若桜木作品の内容は全然違います。
 妖魔館の謎(塩田作品)はゲームブックとして目指しているものは正しかったが、仕上がりが未完成品。一方、残りの2作(若桜木作品)はあまりバグもなく、文章も手馴れた出来で、仕様通りに作れているのはやはりプロですが、無限ループをセールスポイントにする時点で方向が根本的に間違っている。
 結果としては塩田さんは、この後「メトロイド」のゲームブックやオリジナル作品「終末の惑星」など、評価の高いゲームブックを書いているのに対し(「暗黒のピラミッド」みたいな悪名高いゲームブックも出していますが)、若桜木さんは一部例外(「誘拐犯はエイリアン?」)を除き、どれも同じような無限ループ迷路のゲームブックを出していて良い評判は聞きません。
 まあ、これらの作品の時点ではエイリアンVSプレデター的な勝負には変わりありませんが。もちろん、彼らの犠牲になる人類とは読者です。


10位 戦闘宇宙艇SRV4−B シャングリラ作戦
11位 サバイバル 東京ひとり暮らし

 問題の第4グループ。認めん。ゲームブックとは断じて認めんぞ!
 10位のシャングリラ作戦は選択肢がほとんどないという、ゲームブックの前提を根底から覆している問題作。最下位の東京ひとり暮らしは選択肢が選択肢になっていないので、ゲームブックとして成立していません。
 猫も杓子もゲームブックを出版していた、当時のゲームブックブームの勢いを知らしめてくれる証人です。


 光文社文庫はレーベル開始わずか一年程で撤退しているので、いかにもゲームブックブームに乗って出してみましたという感は拭えません。私の直感も一部は当たっていたようですが、編集部が甘かったのか双葉文庫以上に粗製乱造という言葉がイメージされます。
 光文社文庫ゲームブックの特徴は、ゲームブックとしては対象年齢層を高めに設定していることです。また、いわゆる定番のファンタジー冒険ものが一作品もありません。そのせいか、いつもと一味違うゲームブック体験ができて新鮮味を感じたのは確かです。
 光文社文庫ゲームブックは現在でもプレミア価格はあまりついていないので比較的入手が楽なのは良い点です。まあ、万人にオススメする作品は少ないですが、楽しんだもの勝ちということで。


2016年04月03日(日) 妖魔館の謎(塩田信之・飯野文彦/光文社文庫)

 光文社文庫のゲームブックレーベルもこれで最後の紹介となりました。
 菊池秀行さんの小説「妖魔シリーズ」を原作としたゲームブックで、現代社会の裏で触手がうねうねしていそうな妖魔が、人間を食らったり取り付いたり悪さをする世界で、主人公が妖魔退治をするという話しです。
 どうしよう、これ。私、塩田さんのファンなのに感想が書きづらいよ。塩田さん、すいません。これはあくまでこの作品のみに対する感想です。その後の作品は別ですから。

 一言で言うと文章がヘタすぎ。

 まず、「〜であった。〜であった。〜であった。」と畳み掛ける文章の多用にクラクラ。普段、正しい日本語なんて気にしない私が気になるのだから、相当なものです。
 怪しいとはいえ登場したばかりのお婆さんを家族の目の前で殺しにかかるあんまりな選択肢。突然、別の登場人物視点になって読みづらいパラグラフ。基本ハードボイルド調なのに、それをぶち壊すように時々入る「わっはっはっ。後は知−らないっと。」といったお茶らけた文章に腰砕け。
 とどめはパラグラフの先がつながっていない。選択肢により今回は登場しなかった男をなぜか知っている主人公。などと、バグのオンパレード。
 要するに商品レベルに達していません。
 
 本作は塩田さんと飯野さんの共作となっていますが、後書きによると、発売当時まだ高校生だった塩田さんのデビュー作であり、飯野さんがサポートしたような形だそうです。
 ロクに編集による校正作業もされてなさそうなので、全て作者のせいにするのは酷ですが、やはりプロ作品として見ると、厳しい感想しかでてきません。
 本作のポイントはやはり文章力。それが普通にあれば問題点の多くは解決したのじゃないかな。
 例えば招待された館で主人公が寝室に向かうシーンでは、依頼をしてきた館の婦人が案内を申し出ているのに、婦人の他、3人の娘の誰に案内してもらいたいか?という不自然な4択になっています。しかし、ここは婦人が「どの娘に案内してもらいたいですか?」と冗談めかして言うシーンにすれば普通の選択肢です。
 ちなみに娘に案内してもらう選択肢を選ぶと、ある娘は唐突に抱いてほしいとか言い出す意味不明さ。(注:初対面です。)存在感がなかったのに、いきなり忍者みたいな下男どもを引き連れて襲ってくる館の主とか、どの登場人物も突飛な行動をする変な人達ばかり。これも書き込みが全然足りないので行動に説得力がないのと、人物像がつかめないせいでもあります。

 一応、全てが駄目というわけでもなく、前向きな感想を書くとすると、原作にある妖魔と人間の戦いに、本作ではさらに魔樹というオリジナルの存在を加えて、三すくみになっている設定はなかなか良いです。(ただ、絶対的な存在として描かれているはずの魔樹が、ごく普通の除草剤を撒いたら瀕死になる展開には笑えた。)
 ゲームとしては一回のプレイ時間は短めで、沢山の展開が用意されているタイプのゲームブックで、それ自体は悪くありません。能力値やら、弾丸やお札の管理を求められますが、すぐに終わるためその気になれば暗記だけで遊べると思います。
 作者が目指している方向は間違っていなかった。しかし、実力がまだ足りなかったというところでしょうか。ファミコンゲーム原作なら文章の表現力が弱くても問題ないことが多いですが、小説原作だとそうもいかないようです。
 ただ、ゲームブックには珍しくベットシーンが(といっても18禁レベルには程遠いですが)あるので、当時の煩悩小僧どもを釣るには良かったかも。


2016年04月02日(土) 魍魎戦記マダラ─聖なる反逆者─(高木成一、犬飼わたる/双葉文庫)

 ファミコンゲームRPG「魍魎戦記MADARA」を原作としたゲームブックです。
 原作といってもファミコン版「魍魎戦記MADARA」自体、「マル勝ファミコン」というゲーム雑誌に連載されていた同名少年漫画を原作としたもので、これはコテコテのバトル系少年漫画です。世界観の設定にどことなく仏教的なものがあるファンタジー世界が舞台になっています。
 主人公のマダラは手足等がなく、ギミックという超文明のテクノロジーでできた義体で補っている存在で、チャクラというものを所有している魔物を退治すると、本当の体の一部が戻ってくるという設定があって、手塚治虫の漫画「どろろ」の舞台設定を変えた作品と思うとわかりやすいです。
(マダラはシリーズものとして、外伝的な別ストーリーやら、魂が転生して舞台が現代社会になった話しなど、いろいろ複雑に展開していたようですが、ここでは無関係。)
 私は漫画もゲームも知らなかったのですが、ファミコン版の制作者が私の好きな「クロちゃんのRPG千夜一夜」を書かれた黒田幸弘さんなんですよね。
 黒田さんが「RPG製作ノート Making of MADARA」という本でこのゲームの製作模様を語っているのを読んでいたので、(私の愛読書。しかもこの本のイラストは千夜一夜と同じ中野豪さん!)前々から原作の大まかな内容はわかっていました。

 さて、ここからはゲームブック版の感想です。
 最初はリプレイ仕立てで紹介しようかとも思ったのですが、この世界の敵は禍耳幽羅(カジューラ)だの妖焔候戊倭主(ヨウエンコウボイス)だの、仰々しい名前がついていて、いちいち書くのがめんどくさいのでやめて普通に書くことにしました。
 本書でまず目につくのはイラスト。
 表紙カバーの絵はファミコンソフトのものを流用しているようなので問題ないのですが、本文イラストが3等身キャラなんですよ。
 原作漫画の特徴である、線の細いシリアスタッチで描かれた絵柄と真逆で、世界観ぶち壊しです。これはむごい。
 絵柄が合わないだけでなく、ギャグも入れて追い打ちをかける念の入れようです。例をあげると、人間が魔物の皮をかぶって偽装していたのが判明したというシーンでは、着ぐるみのジッパーを開けて人間が出てくるイラストになっています。中ボスの手前にラーメンが描いてあるイラストは、本文では真面目な中ボス登場シーンで、もちろん直前までラーメン食べていたなんて書いてない、といった具合です。
 双葉ゲームブックで、たまにある悪いパターンですね。同じ双葉の桃太郎シリーズならこのイラストでぴったりなんですが、マダラでこれはないわ。
 
 イラストのおかげで印象が悪くなったのですが、本文はギャグではないので遊んでみた感じでは普通でした。マダラはもっと本格的な小説仕立てのゲームブックにした方が合っていた気がしますが、小学生向けに無難にまとめた感じです。
 一方向システムのゲームブックで、各エリアごとにマダラの体の一部を持つ中ボスが登場するので、RPGというよりアクションゲームが原作みたいに思えます。
 ファミコン版では入れ替わりで仲間になる登場人物が結構いたようですが、こちらはヒロインのキリン以外には、カオスしか仲間が登場しないので、ファミコン版のファンにはちょっと寂しい感じです。それにファミコン版ではマルチシナリオが売りだったらしいのに、ストーリーがほぼ一本道というのも気になるところ。
 ただ、ゲームブック1冊の容量でファミコン版の全てを詰め込むのは難しく、マダラが体を取り戻す過程がある都合上、中ボスたちの存在は減らせないので、こうなるのは仕方なかったのかもしれません。

 ゲームルールは戦士度と体力の2つの能力値管理の他に、秘術(RPGの魔法にあたるもの)やチャクラポイント(取り戻した体を表す数値で能力値というよりフラグチェックの役割)と多めで、メモは必須です。
 戦士度は経験値というより、戦士としてのモラルみたいなもので、戦闘に勝つだけでなく選択肢の行動でも上下します。体力の方は0になると死亡しますが、戦闘力に影響するうえ回復する機会が限定されます。サイコロやバトルポイント表のようなランダム要素はないこともあり、特に前半は数値が減るほど戦闘に負けやすく、ジリ貧になっていずれゲームオーバーという悪循環に陥りやすかったです。
 途中、単調な通路が続く迷路が2カ所あるのはどうかと思いましたが、マッピングせずとも左手法であっさりクリア。先日に無限ループ迷路のやたらある某ゲームブックを遊んだばかりの私にとっては楽勝ですよ。

 4度目の挑戦でクリア。ラストの展開は漫画版とファミコン版でかなり違うのですが、ここはファミコン版の展開でした。
 作者後書きでは、漫画版とファミコン版のギャップを埋めるのに苦労したような事が書かれていました。そもそも出版社もファミコン版という移植をさらに移植という面倒くさいことをせずに、素直に漫画版を原作に企画すれば良かったのに。いったい権利関係はどうなっていたんだろう。


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