冒険記録日誌
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2005年10月31日(月) |
神の頭をもつヒドラと戦うための考察 |
ソーサリー関連の記事が充実しているサイト、夢見るカボチャ計画(http://www.angel.ne.jp/~ootto/OPM/)を久しぶりに覗いてみたのですが、いつの間にか追加記事がドドン!と増えていて驚きました。 特にあちこちで少しずつ触れられている新版と旧版の翻訳について書れている部分が素晴らしい。旧版を貶めることなく、さりげない感じで浅羽訳の凄さを紹介しています。うーん。こういう書き方で説明されると、もうちょっと浅羽訳を見直そうかという気になるなぁ。 それ以外で興味を引かれたのが、最強戦士君のコラム。 つまりソーサリーで高い能力で冒険を始め、なるべく強力な武器やパワーアップを繰り返して最強キャラを作ろうという考えです。 これ、私も同じこと考えて遊んだことがあるのですよ。 ちょっと違うのは私の目標は最強キャラ作りではなく、四巻のパラグラフ84に到達して、作者に「さすがチャウベリーの学校で戦士の称号を受けただけのことはある」と誉めてもらうことでした。 これ難しいんですよ。だってその条件はソーサリー最強能力の敵と思われる“神の頭をもつヒドラ”相手に、戦闘で3ラウンド連続して勝つ必要があるのですから。 “神の頭をもつヒドラ”の能力は、技術点17、体力点24。相手の特殊能力を無視して、普通の戦闘として考えても絶望的な戦いです。 しかしこれを達成することは実は十分に可能なのです。その攻略順を紹介しましょう。
その1、技術点10の魔法使いで冒険を始める。 その2、まずはカントパーニで攻撃力に+1の修正がつく剣を購入。 その3、アリアンナのところで剣術熟達の腕輪(剣での攻撃力+2)を入手。 その4、黒エルフの隊商で鎖かたびらを購入。(技術点+1&ダメージ軽減の可能性) その5、七匹の大蛇を全て倒す。(原技術点+2) その6、 マンパン砦の研磨機でカントパーニで購入した剣を研ぐ。(剣の攻撃力が+2に変化) その7、いよいよ決戦!“神の頭をもつヒドラ”の前でBIGの呪文を唱える。(戦闘中の技術点が+4に)
冒険開始時点から攻撃力に+11の修正です!つまり技術点21相当の戦闘力! これで巨大魔法使いがヒドラ相手に格闘を繰り広げるシーンが見られます。ヒドラを圧倒して作者に誉めてもらいましょう。 でも考えたらこの戦闘って、ほとんど特撮映画の世界だよな…。
2005年10月30日(日) |
わくわく初夢アドベンチャー(奥谷道草/白夜書房) |
クロスワードランドのはみ出しゲーム、2006年2月号の作品です。 今回は、楽しいことばかりの夢の中の世界をさまようというお話し。美味しいものを食べたり、遊んだり、お洒落したりと、とにかく沢山楽しんでハッピーになろうというのが目的です。 よくあるはみ出しゲームと同じく、沢山の部屋で作られた迷路のような空間を移動するのですが、今回は夢の中だけに部屋と部屋の位置関係がバラバラだそうです。 ルール説明では「地図を書かなくても楽しめますが、高得点を狙うなら書きながら進めていくことをお勧めします」と書かれていますが、普通にマッピングすると混乱してぐちゃぐちゃになりそうなので、私はマッピングなしでパラグラフ番号を覚えていくつもりで挑戦しました。 ゲーム中の基本的な仕組みは、楽しいことをしてハッピー・ポイントを増やすのが基本ですが、中にはある行動をとると目を覚ましかけそうになることもあります。目を覚ましかけたのが3度目なら、完全に目が覚めてゲームは終了するようになっています。問題の行動には共通点があるのですが、私の場合、その法則を発見するより、どの行動が失敗か丸暗記した方が早かったりして。 ゲームが終わると、獲得したハッピー・ポイントに応じた夢診断の結果が発表されます。私の初回の挑戦は、なすび級。その後、2回ほど挑戦しましたが、結果は大きく変わりませんでした。やっぱり、最高評価をもらうには労を厭わないマッピング根性が必要なのかも。 あと、パズルの部屋で出される白雪姫の小人の数のクイズ。正解すると「裏の裏を読んだのだな」なんて言われますが、本当に裏の要素なんてあるのですか?それとも、ただのギャグ?
2005年10月29日(土) |
サンタの帽子を手に入れろ(奥谷道草/白夜書房) |
クロスワードランドのはみ出しゲーム、2006年1月号の作品です。 今回は珍しく主人公にオリジナルの名前がついています。その名も回答ルンパ。警備カメラが至る所に設置してある屋敷に潜入して、「サンタの帽子」を盗み出すのが目的です。 お約束ですが、屋敷内の通路は迷路状になっています。それを警備カメラがところどころ通せんぼをしているのです。カメラの視界に入れば、警備員がワラワラ登場するので逃げ出さなくてはなりません。 通り抜けるためにカメラの背後から接近し、細工をしてカメラを役立たずに出来ますが、それが出来るのも2つまで。そのくせカメラは沢山設置してあるので、考えなしで細工していると宝にたどり着くことができないのです。 そんなわけで今回はマッピングが必要でした。 ところがマッピングを開始すると、実は思ったより簡単な構造になっていることが判明。それほど苦戦せずにクリアできました。 正解は一パターンのみで、考えに考えないとわからないような難易度だろうと勝手に予想して、よーし解いて見せるぞ、と意気込んでいたので、ちょっと拍子抜けしました。 ここ最近のはみ出しゲームは、一時期よりも簡単になってきたので、もっと難しくしてもいいですよぉ(マッピングの難しいのは嫌だけど)、と小声で言ってみます。
2005年10月28日(金) |
がっちりマツタケ狩り(奥谷道草/白夜書房) |
クロスワードランドのはみ出しゲーム、2005年12月号の作品です。 マツタケの取れる山でなるべく沢山のマツタケを取りましょう、というわかりやすい目的です。 マツタケを発見するたびにページに指を挟んでいく方法は、以前にやっていた「ガッチリ掴みましょう」(2004年04月02日の冒険記録日誌を参照)と同じシステムですね。正直、二度目なので前回のような驚きはないです。それに賑やかなデパート内と違って、今回の舞台は山の中だけにやや単調な感じもするかな。 指挟みシステムはかなり秀逸なアイデアなので、確かに前回の一作品だけで終わらせるのは勿体無い気もしますけど、今回はさらに一ひねり欲しかった。 例えば、ガッチリつかんだ中に笑い茸もまざっていて、探し回れば見分け方のヒントが出るけど、気づかずにエンディングまで行ってしまうと、笑い転げてENDとかいうのも良かったんじゃないかな。 などと製作者の苦労も考えずに適当なことを言ってみました。
このゲームの私の成績は…、遊んだのがしばらく前なので忘れちゃった。テヘ。
2005年10月27日(木) |
文化祭とミステリー(奥谷道草/白夜書房) |
クロスワードランドのはみ出しゲーム、2005年11月号の作品です。 今回は白夜学園の文化祭に遊びに行くというもの。この文化祭の目玉としてあげられている、「ミステリーを探せ」という謎かけを解くのが今回の目的です。 主に3階建ての建物が舞台なので、立体型迷路のようになっていますが、ワンフロアの面積がそんなに広くないので、それほど迷わずに移動できます。実際に私はマッピングをせずにクリアできました。 謎解きもトントン拍子に解けてしまって、簡単な感じ。今回はむしろ指紋をじっと見つめる迷路倶楽部の部員とか、妙な倶楽部やサークル活動が沢山あるので、それを見物する方が楽しいです。 いろいろ面白そうなので、また白夜学園を舞台にしたはみ出しゲームがあってもいいな。
2005年10月26日(水) |
キモだめし(奥谷道草/白夜書房) |
クロスワードランドのはみ出しゲーム、2005年10月号の作品です。 キモだめしというと、暑い夏を涼しくすごそうという趣向みたいですが、ちょっと事情が違うようです。恋人に「オバケが出るという噂の深夜の山寺まで行ってこれたら結婚」と言われて行くことになったのです。 これって、もし主人公が女性だとしたら、恋人はずいぶん意地の悪い男ですよねぇ。ところが主人公が男だとすれば、恋人は小生意気でチャーミングな女の子に見えてしまうのです。女は得だなと、作者の意図しないところで、変な納得をしてしまいました。
さて、今回の特徴は、キモ・ポイントという数字の管理があることでしょうか。10ポイントからスタートして、怖い思いをしたら減少していくという、「地獄の館」でいう恐怖点を逆さにしたみたいなシステムです。ポイントが0点になったら、さすがにショック死はしませんが、恐怖のあまり現場から走って逃げてしまいゲームオーバーになります。 もっとも恐怖点のルールとは少し違うところがあって、怪しい茂みなどを調べるときに事前にキモ・ポイントを1点消耗させることで、オバケに会っても怯えずにすむ“心の準備”というものをとることができます。“心の準備”なしでオバケに出会うと、キモ・ポイントを2〜3点消耗してしまい、逆に何もなかったら無駄におびえたために、“心の準備”でキモ・ポイントを消耗した分を損するわけです。 実際にゲームを始めてみると、キモ・ポイントを使用するタイミングが勘まかせで判断するしかなく、最初の挑戦ではまずうまく行きません。危険を避けたくても一通りのオバケに会わないと、クリアはできないようなので、ジレンマが発生します。数回くらいは失敗して覚えろという感じですね。
そしてエンディングですが…。回答の地図が今回はないですね。ゲーム中にも少しだけ地図を見ていいというシーンがあったので、掲載されてないとおかしいのですが。記憶が曖昧なんだけど、これについてMANATさんは何か言っていたかなぁ。 それはそれとして主人公さん、あなたの恋人はいったいどんな人なの?
2005年10月25日(火) |
涼しい風(奥谷道草/白夜書房) |
クロスワードランドのはみ出しゲーム、2005年9月号の作品です。 暑い夏の最中、涼しい風が手に入るという噂を聞きつけて、仙人の住む洞窟を訪ねる、という話し。 洞窟の中はわりと賑やかで、風仙人ならぬ風邪を引いた仙人や、逆さ仙人、クーラー販売のサラリーマンなど妙な人間が登場します。その人々の間をヒントや風邪薬を抱えて右往左往しながら、涼しい風を分けてくれる仙人のいる場所までたどり着こうというのです。
はみ出しゲームではいつも、「マンピングは面倒くせー、意地でもマッピングなしでクリアしてやるわい」が私の定番なのですが、今回はマッピングなしでは絶対にクリアできません。なぜなら洞窟の見取り図を完成させて、その迷路全体の形を眺めないと、ある謎がとけないからです。 そんなわけで今回はマッピングをしましたが、幸いにもこの洞窟は1ブロック四方の小部屋ばかりで成り立っている迷路なので、マッピング作業は割合に楽なほうだったと思います。 でも、マッピングを完成させても謎は解けませんでした。逆さにしても、色を反転させてもなんのことかわかりません。 しょーがないので降参してエンディングを見てから、「なるほど言われてみれば○○○の形になっているなぁ」思うくらいの鈍さでした。 私って、発想の転換とか、そういったことが必要な謎解きが苦手なのかも。
2005年10月24日(月) |
遠水大会(奥谷道草/白夜書房) |
クロスワードランドのはみ出しゲーム、2005年8月号の作品です。 タイトル通りに遠水大会に出場して、見事少しでも先頭になって泳ぐことが目的です。今回は時間制限があって、ページを12回めくりおえれば、泳ぎ終わってそこで終了するようになっています。 やってみると、これがスピード感があって面白い。何も考えずに前へ前へと泳いでいくと、岩にぶつかったり、他の水泳選手に邪魔されたりで、逆に順位が下がってしまうのです。昔のTVゲームにあった、ジッピーレースを少し思い出しました。 安全ルートの法則性を探すという謎解きの要素もありますし、一回の挑戦が短時間で終わるのも、簡単に何度も挑戦する気になりますね。他の選手の帽子の色がどんな意味をもつのか、推理するのが楽しかったです。 この作品で遊んだことを、リプレイ日記風に書いたら結構面白いかもしれません。
「○○選手。果敢に選手がすいている斜め右方向へ猛スピードで泳いでいきます。先頭集団から二段目のところまであがってきました。この調子ならトップも近いですね。おおっと、ここでアラザシがぬっそりと登場です。○○選手に擦り寄っています。アザラシに纏わりつかれて7段目まで順位を落としてしまいました。ああ、○○選手、残念無念。さらば、バイバイよ」
ってな感じですね。
2005年10月23日(日) |
ウェディング・ブーケを手に入れろ(奥谷道草/白夜書房) |
久しぶりに、クロスワードランドのはみ出しゲームとして連載されているミニゲームブックの紹介です。 「ウェディング・ブーケを手に入れろ」は、2005年7月号の作品ですが、発売時期は6月でした。相変わらず季節に合わせた題材でゲームブックを作るのがうまいですね。
今作の特徴は、花嫁が投げたウェディング・ブーケを奪い取るという目的なので、ゲーム全体がわずか数秒間の間での出来事であるということでしょう。 ゲーム内時間がこんなに短い作品は、初めてみました。 人ごみの中を、押し合い圧し合いしながら、ウェディング・ブーケの落下地点に駆けつける必要があります。一パラグラフ進むごとに時間ポイントが追加されます。選んだ行動によって、経過する時間も0.1秒、0.4秒と違ってきます。ブーケが落下するタイミングの時間ぴったりに、うまく落下地点に到着するかが鍵となります。 なかなか面白いのですが、ある程度同じパラグラフ間を適当に右往左往して時間調節をしているうちに、うまく花束をキャッチできました。もっとも、何回もとり損ねてしまいましたが。 ゲーム終了後は、何度ウェディング・ブーケのキャッチに失敗したかで、結婚度の診断が下されます。 私は数えていなかったので、診断結果は「忘却愛──結婚なんて忘れなさい。そいうゆう生活もあるではないですか」だそうです。
……そうさせてもらいます。
2005年10月16日(日) |
邪悪な略奪者(ジョン・サザーランド、ギャレス・ヒル/社会思想社) |
ウォーロック15号に収録されているゲームブック。 もとはホワイト・ドワーフ誌という雑誌に3回にわたって連載されていた作品を、日本のウォーロック誌では一度に掲載したものらしい。 そのため100パラグラフ前後の短編ゲームブック3本から構成された、3部作のような内容になっています。
ファンタジー世界の物語で、ゲームのルールはFFシリーズのものとまったく同じですが、タイタンが舞台ではなく、よくある無名の戦士がダンジョンや怪しい森を探索するタイプの物語とはまったく違います。主人公はある王国に使える領主という設定なのです。 3年ほどの間、友人に領地の統治をまかせて、王のために冒険に旅立っていた主人公。帰ってみると、平和だった領地は邪悪な勢力にすっかり乗っ取られてしまっていた。おまけに主人公は化け物に捕まってしまって、自分の城の牢に閉じ込められてしまった、というところからゲームは始まります。 第一部が牢から抜け出し城から脱出するまで。第二部は略奪者たちの情報を集め、領地の奪還を整えるまでの準備。第三部は軍隊とともに城へ攻め入って、邪悪な略奪者を退治するというストーリーの流れになっています。 実際に3部作を通して遊んでいると、合計でも300パラグラフしかないのに壮大な映画の主人公になったような気分が味わえます。 第一部で牢を脱出するときの緊張感や、第ニ部で謎の老人との出会い、第三部での軍隊の指揮など、ある種の映画にありそうな展開はすべて含んでいて、悪くいえばベタなストーリーなのだけど、数百人規模の集団戦闘など、ゲームブックでは珍しい要素が、つい新鮮に見えてしまうのです。 終盤では友人たちとの再会と別れなど、泣ける要素もしっかり用意してあって、無事にクリアすると「いやー、ゲームブックって、本当にいいもんですね」という気分になることでしょう。
戦闘バランスは楽な方で謎かけの要素も薄く、ゲームとしては簡単。逆に進行のテンポが良いともいえるので、ストーリーをメインに楽しむべき作品でしょう。技術点7の主人公でも選択肢が良ければ、クリアが十分可能になっている作りは好感がもてます。 難点はバグがいくつかあったこと。私の場合はウォーロックの前の所有者が、鉛筆書きでパラグラフ番号の訂正をしてくれていたので助かりましたが、結構苦痛なんですよね。間違いさがしって。
2005年10月15日(土) |
浮遊する都市(ルース・プレイシー/社会思想社) |
ウォーロック第6号に掲載されているミニゲームブック。 舞台がタイタンのどこの地域かはわかりませんが、この作品もFFシリーズの仲間のようです。 冒険の目的は、このあたりの領主キャロン公の依頼で、さらわれた彼の友人のドワーフを救出するというもの。王様の令嬢ならともかく、ドワーフの救出ねぇ…。なんとなく冒険する気分が湧いてきませんなぁ。(苦笑)
ちなみにその誘拐犯は幻のような都市に潜んでいます。なんで幻かというと、その都市はつねに空高い位置に浮遊しているのです。 冒険の最初は、荒涼とした風の吹きすさぶ北の大地を、浮遊する都市に乗り込む方法を探すためにさまようところから始まります。登場人物も少ないしみんな無口だし、舞台も殺風景だし描写もそっけないしで、なんといいますか物語全体にとても寂しげな雰囲気が漂っています。 アンゲコックなる魔法使いが、浮遊する都市に乗り込むための道具を持っているのですが、こいつが極悪人。アンゲコックに出会ったとき、彼が欲しがっている物を持っていないと、問答無用で魔法をかけられ、妙な姿に変身させられてゲームオーバーになってしまうのです。この彼が欲しがっているという物を入手するルートはかなり限られます。 一応、アンゲコックと強引に戦って必要なアイテムを奪い取ることも可能ですが。参考までに書きますと、アンゲコックの技術点は12・体力点は15です。 浮遊する都市に乗り込んでからの冒険はあっさりめですが、最後の敵は純粋に強いので高い技術点の冒険者で挑戦したいところ。アンゲコックの機嫌取りと最後の戦闘さえ切り抜ければ、なんとかクリアができそうです。(できそうですというのは、私がまだクリアしていないから)
余談ですが、今回の冒険で登場するアイテムに「変身の薬」というアイテムがあります。毛や羽などある動物の一部分を握り締めながら、薬を飲むとその生き物に変身できるのです。 冒険中に入手した物の多くで試すことができるので、これが結構面白い。何かの骨、何かのウロコ、金色の何かの羽のような正体不明のものから、毛布や石ころ、木切れまで試してみることができます。まあ、悲惨な結果になることの方が多いのですが…。
2005年10月14日(金) |
運命のダンション(J.フォード/社会思想社) |
「運命のダンション」とは、ウォーロック3号に掲載されていた短編ゲームブック。世界観とルールはFFシリーズと共通の作品です。 ゲーム中にアナランドの地図の書かれた書物が登場したので、それで舞台は旧大陸だとわかりました。(プロローグでドクロ砂漠のあたりと書いてあるけど、ピンとこなかった) ソーサリー以外で旧大陸が舞台のゲームブックって珍しいかも。
さて、ゲーム冒頭でコブリンが一人のエルフを殺した現場を、たまたま目撃した主人公。 コブリンが逃げ出すのを呆然と見送っていると、エルフ達の集団がやってきて、主人公がエルフ殺しの犯人だと疑われて連行されてしまいます。 「お前は運命のダンションに連れて行かれる。ダンジョンのどこかに隠されている偶像を見つけて持ち帰れれば無罪とみなされるだろう」 それがエルフ流の裁判らしいです。なんかすんごく不条理な裁判に見えるのですけど、魔法の生きる世界だとそんなものなのでしょうか。 挑戦してみましたが、なかなかクリアできません。いや、運命のダンションから脱出すること自体は簡単です。迷宮内は平凡な仕掛けや魔物しかいないし、即死トラップさえ注意すれば、迷宮内のどのルートを通過しても出口にたどりつけます。 でも、問題の偶像が見つかりません。偶像を持たずに出口を抜け出すと、弓をかまえた数百人のエルフ達に囲まれてしまいます。そして「有罪だ!」の掛け声とともにハリセンボンみたいに無数の矢で射殺されてしまうのです。
今回の冒険では、技の薬、力の薬、ツキ薬の中から予め一つを選ぶことができます。中身は2服分です。罠の回避などに運試しをかなり多用するので、今回はツキ薬を選んだほうがいいかも。 冒険中は金貨や宝石、魔法の道具などが結構見つかりますが、偶像以外のどのアイテムもクリアの為には無関係か、なくても何とかなる物ばかり。ただし、偶像を発見してエルフ達から見事に「無罪」を勝ち取った場合は、エルフの長老に「運命のダンションでみつけたあらゆる物を持っていってよい」と言ってもらえるのです。発見した財宝は「サイボーグを倒せ」の英雄点のような、ゲームの達成度を測る物差しとして考えた方がいいみたいです。
ところで問題の偶像の隠し場所はというと、十数回目の挑戦でやっと発見できました。ネタバレになるので書きませんが、すごく地味なところに隠されています。 でもねぇ。サイコロを2つ振って技術点と同じかそれ以上の目を出し(つまりある行動を失敗する)、続いて運試しに成功して危険を脱出しないと偶像を発見できないというのは、ちょっと酷すぎないでしょうか。 技術点12のキャラがクリアできる確率は36分の1以下…です。
2005年10月13日(木) |
八百比丘尼の斎(麻野 一哉/チェンソフト) |
スーパーファミコンでサウンドノベルシリーズ第一弾として発売されていた、弟切草の続編をゲームブック化したものです。 入手してみるとパラグラフ数が500弱もあって、かなり本格的なゲームブックのようで嬉しい限りです。 さて、弟切草の続編といっても、原作は選択肢によっていろいろ設定の違う物語に発展しますので、その中の一部の話しを発展させたものになっているようです。半漁人が登場する話しが元ネタのようですが、私はそれほど弟切草をやりこんでいなかったので、本書を遊んでいてもピンときませんでした。
本書は原作と同じく、人里はなれた場所で車の事故にあって、真夜中に森をさ迷っていた主人公が、近くにあった古びた洋館をおとずれるという古典的なもの。 ただし、主人公は体育会系のたくましい27歳の男という設定で、原作の主人公たちとは別の人間です。 館の扉をノックすると謎の老婆に門前払いをされ、二階の窓からはこれまた謎の住民から、懐中電灯やら花瓶やらを投げ付けられて、屋敷にはいる前から散々な目にあいます。それでも主人公は、「屋敷のまわりは真っ暗で戻れない。玄関先では凍死してしまう」と言って果敢に屋敷の潜入を試みます。 もっとも、そのセリフの後すぐに懐中電灯を手に入れたにもかかわらず、引き返す選択肢はないみたい。 さらには「お堂の中で一晩すごす」という選択肢を選んでみると、無事に夜を明かせたのに、翌日の夜までまる一日寝過ごしてしまい、結局振り出しに戻るという、すさまじいボケッぷりを見せてくれます。 プロローグによると上司を殴って全治3ヵ月の重傷を負わせて会社を首になったらしいし、今回の不法進入で逮捕されそうな行動といい、主人公の性格は少々問題がありそうです。
やっとの思いで屋敷ホールに侵入すると、ひどく荒れ果てた状態になっていました。ここは原作でもかすかに覚えのある西洋の甲冑や巨大な水槽があって、ちょっと懐かしい気になります。 しかし、主人公はそんなことにお構いなく、腹が減ったと言って、一階の室内を物色し始めます(そんな選択肢しかありません)。鍵がかかっている部屋は、ウォォォォォ!とか言いながら体当たりで開けていくは、厨房でバナナを一房発見してムシャムシャ食べてしまうは、住民が出てこないのをいいことにゴリラ並みの行動ぶりです。
だいたい一階の全ての部屋を調べる終えると、ちょっとしたイベントが発生して、開かなかった扉が開き、今度は二階の探索が始まります。 このゲームブックは双方向システムで、ひととおり調べ終わると新たな場所へ移動する、そんなパターンを繰り返しながら進行しているようです。 それから鍵だの燭台だの毛布だののアイテムを入手することがありました。各アイテムには番号が振られているので、純粋な分岐小説と思っていましたが、ちゃんとメモをとらないと遊べないみたいです。
途中でどのアイテムを使えば進めるのかわからなかったり、ナンバー錠を開けるための3桁の数字を探すのに苦労しましたが、そのあたりさえ切り抜けると、後は詰まることなく割と順調にストーリーが進みました。 原作で主人公だった公平や奈美も登場するけど、なにか悲惨な状況になっています。 終盤近くなってから、ストーリー自体が大きく分岐する選択肢も出てきて、数種類のエンディングにつながっているようでした。 一応、私は一通りのエンディングを見ましたが、ハッピーエンドを含めて、どれも主人公が人肉を食べる展開の話しばかりで、読後感が悪すぎです。 一つくらい普通に元の生活に戻れるエンディングを用意してほしかった。
弟切草の世界が好きか、この手のオカルトに興味がないと、ちょっと駄目かもしれませんね。 ただ、それでもこの作品が売れてほしいとは思いました。 売れ行きが良ければ、第二弾として私の好きな「かまいたちの夜」もゲームブックになってくれるかもしれませんし。「かまいたちの夜」に限らず、我孫子武丸さんの小説を読んでみると、彼は絶対面白いゲームブックが作れそうな気がするのですけどねぇ。
2005年10月12日(水) |
暗黒城の領主(ジーン・ブラッシュフィールド/富士見書房) |
「ウェイレスの大魔術師」と同じく富士見のAD&Dゲームブックシリーズの一冊ですが、本書はオリジナルストーリーとなっています。 簡単にいうと主人公はジェーレン・シェアブレードという聖騎士で、吸血鬼に支配された村を救うため、アイリーナという村娘と共に吸血鬼の住む屋敷へと潜入するという内容です。
このゲームのルールについてですが、能力値の方は、生命点、戦闘技術点、機敏度、賢明度、経験点の4つで、感覚的には他のシリーズ作品と大きくは変わりません。ただ、冒険中はこのシリーズでは珍しく双方向システムとなっていて屋敷の中を自由に移動できるようになっています。 吸血鬼は強敵ですが、屋敷の中にはなぜか吸血鬼退治に使える聖なるアイテムや、魔法の道具がゴロゴロしていますので、まずはそれを捜索するのが冒険の最初の目的です。 ちょっと面白いのが、「事前運命点」という数値を使ったシステム。ゲームの最初にサイコロを振って、3つの数字を決めておくのですが、この数値によってアイテムの設置場所が変化するのです。また各部屋で登場する吸血鬼の配下の敵も、サイコロを振ってランダムに登場するキャラが変わるので、繰り返しのプレイなんかにはいいのじゃないでしょうか。 ただこの屋敷内はそんなに広くなく、容易に目ぼしい部屋に移動することができるので、アイテムの位置が変わってもあんまり変わりばえしないかな。なかなか良いルールだとは思うだけに、このへんが少々残念です。
実際に遊んだ感じでは、主人公というかAD&Dの聖騎士という職業は、なかなかに強力らしく、雑魚相手の戦いではサイコロの目がよっぽど悪くないかぎり負ける気がしないという感覚でした。しかも回復魔法をはじめとする各種呪文も習得しており、ゲームブックの主人公にしては無類の強さです。 そのかわりこのゲームには、レベルドレインというルールがあって、吸血鬼の攻撃を受けると主人公の戦闘力や抵抗力、使える呪文の数などが減少します。一度でも喰らうと立場は一転して苦戦はまぬがれないでしょう。 肝心の吸血鬼との戦いも、レベルドレインさえ喰らわなければ勝てる相手ですが、そこは吸血鬼。普通の武器は通用しないし、倒しても煙になって逃げてしまうやらしさを発揮しています。ここは戦いの前までに入手したアイテムがものをいうわけですが、クリアした時は序盤であっさり手に入ったアイテムで勝ててしまい、必死で集めた他のアイテム達の出番はなし、というちょっと肩透かしな展開でした。
うーん。悪くはないのですが、エンディングとか吸血鬼との決戦あたりの文章をもっと書き込んで欲しかったし、全体的にもオドロオドロしさが欲しかったな。あとゲームバランスが大味な気も。 もう少しパラグラフ数を使って舞台を広くして、謎解きの要素も入れて、文章も改善して、ゲームバランスもうまく取ることができれば、名作に化けていた作品だと思いました。 でもそこまで変えたらもう別の作品かも。(^^;
2005年10月11日(火) |
ウェイレスの大魔術師(テリー・フィリップ/富士見書房) その2 |
4回目。 また兄貴の説得に失敗するも、強力な攻撃魔法をつかって、兄貴を勇めることに成功。兄貴と一緒に森にはいるが、妙な亡霊が現れる。サイコロ運が悪く、恐怖に打ち勝てなかったレイストリンは逃亡。END
5回目。 また兄貴の説得に失敗。無理矢理お家まで強制送還させられてEND。
6回目。 兄貴の説得に成功。兄貴と一緒に森にはいるが、妙な亡霊が現れる。なんとか理性で切り抜ける。 その後もサイコロ運に恵まれ、無事「大審問」を受けることになります。その結果は村人に火あぶりにされて死亡。
7回目。 このゲームって、進めるかはサイコロ運まかせだなー。と思いつつ、亡霊から逃亡してEND
8回目…
と、こんな感じでした。展開がほぼ一本道のわりに、サイコロ一振りで即バットエンドという展開が多すぎて、なかなか真っ当にクリアできません。サイコロに補正できる経験値というシステムがあるとはいえ、これはポイント数が全然足りないし、ほとんど運任せなゲームですな。最善の選択肢を選んでいれば、もう少し救済処置があるようにゲームバランスを考えてくれれば、結構面白くなったと思うのですが…。魔法システムは簡潔ながら、そこそこバランスが取れていただけに残念。 「大審問」自体は塔の中で行われているはずなのに森や町が登場します。レイストリンは、審判団の魔法使い達がかけた強力な幻影の魔法の中を冒険しているらしいです。 中には小説への伏線と見られる箇所や人物が登場しているように見えますが、「ドラゴンランス戦記」を読まないとちょっとこのあたりはわからないなぁ。 今回はちょっとずるをしてクリアさせてもらいましたが、ゲームというよりストーリーで楽しむ作品でした。
2005年10月10日(月) |
ウェイレスの大魔術師(テリー・フィリップ/富士見書房) その1 |
主人公はあの有名ファンタジー小説「ドラゴンランス戦記」に登場する魔法使いレイストリン。その彼が若い頃のお話しです。 っていっても私は小説を読んでいないので、よく設定がわかっていないのですけどね。レイストリンについて、知らずに妙なことを書いていたらすいません。 このゲームブックでは、レイストリンが「大審問」と呼ばれる魔術師の試験に挑戦するというストーリー。その「大審問」の舞台と思われる謎めいた森の入り口に立ったところからスタートです。レイストリンの傍らは、逞しい戦士であり双子の兄でもあるキャラモンが同行しています。
本書の後書きによると、小説でこの「大審問」での出来事がよく話題になるわりに、具体的にどんなことがあったのかは小説内では触れられていないそうです。この作品はその空白部分を埋める重要なもので、「ドラゴンランス戦記」ファンにとって非常に興味深い内容となっているらしいです。 このゲームブックにおけるレイストリンの能力値は、生命点、判断力、機敏度、沈着度、経験値の4つ。生命点の数値はサイコロで決定させますが、技術点、判断力、沈着度の3つは、3つの合計が9点になるように自由に振り分けることができます。そいうえば、注釈に「沈着度は3つの能力の中で最低値にしなければならない」と書いてあるのですが、レイストリンって小説でもすごく怒りっぽいキャラということなのでしょうかね。経験値は6点という固定値でスタート。他の能力値のチェックのときに必要と判断すれば、経験値を消耗してサイコロの目を補正することができるようです。 使える魔法は15種類もあって、総パラグラフ226のゲームブックにしては良く詰め込んでいます。 ちょっと遊んでみました。
1回目。 スタート直後に、双子の兄が「お前にこんな危ない試練は受けさせられん」とか言い始めます。必死で説得しますが嘘を見破られ(沈着度チェック失敗)、押さえつけられて(機敏度チェック失敗)、無理矢理お家まで強制送還させられてEND。
2回目。 また兄貴の説得に失敗。機敏度チェックには成功して、なんとか魔法を使うものの、丈夫な兄貴には通用せずに押さえつけられて、無理矢理お家まで強制送還させられてEND。
3回目。 また兄貴の説得に失敗。無理矢理お家まで強制送還させられてEND。
兄貴、強すぎ。冒険すら始まらないよ…。
続く
2005年10月09日(日) |
フォボス内乱(宮原弥寿子/社会思想社) |
雑誌ウォーロックに掲載され、後に文庫本にも収録された短編ゲームブックです。アンドロイドなどが普通に存在するSF作品です。 この作品の面白さは、なんといっても主人公が戦闘用に作られた少女型アンドロイドだという設定でしょう。「いつか人間になりたい」なんて夢を見るような、中途半端なアンドロイドではありません。見た目は人間そっくりですが、あくまで機械は機械というスタンスで描かれているところがいい感じです。 主人公の目的は王位継承者の生命を王座を奪おうとする一味の者たちの手から守ること。彼女は非情な性格ではありませんが、必要とあらばいかなる犠牲も厭いません。
ストーリー的には、わずかパラグラフ255のゲームブックだけあって短い方なのですが、主人公が初めて起動して目覚めたとき、主人公を作り上げた博士が目の前で敵の集団に射殺されるという、いきなりな冒頭シーンで読者を引き込ませる部分がうまい。 次に面白いと感じたのは、主人公の特殊能力を扱うゲームシステムです。主人公には体からレーザーやミサイルを発射したり、3倍速で行動できるようになったり、赤外線で透視するなど様々な能力があるのですが、主人公は最初のうちは自分にそれらの能力が備わっていることを把握していません。 そのかわり危険が迫ったとき主人公は、腕をねじるか、イヤリングをひっぱるか、奥歯を噛みしめるか、などの衝動にかられるのです。実はそれらの行動はそれぞれ何かの能力のスイッチとして連動しているので、冒険中にいろいろ試していくことで主人公、つまり読者自身がそれを徐々に理解していく仕組みになっています。 自分の能力がほぼ把握できた頃にはゲームは終わるので、短編だからこそ成立するゲームシステムでしょうね。 あとネタバレになるので書きませんが、あるエンディングの内容が、もし主人公が普通の人間ならとてもハッピーエンドとは思えない展開で、これがこの作品をとても印象的に仕上げている部分です。選択肢によっては普通のハッピーエンドも一応用意されてあるけれど、最終パラグラフのエンディングをあちらにした事に作者のセンスを感じます。
<追伸> 最初の頃、私は序盤でどーしても抜けられないシーンがあって半ば攻略を諦めていたのですが、以前の日記でそのことを書いたら、掲示板の方で攻略法を教えてもらい無事クリアすることができました。にゃあ様、その節はありがとうございました!
2005年10月08日(土) |
宇宙の連邦捜査官(A・チャップマン/社会思想社) |
FFシリーズ第15作品目。冒険の舞台はファンタジー世界のタイタンではなく、タイトルからわかるとおりSFです。 ブーム当時は私は読んでいなかったですね。面白いFFシリーズはファンタジーものだけ!とか考えていたわけではないのですが、本屋で立ち読みしたときに顔の汚い女ボスとか、気持ち悪いヘビ女の挿絵を見て敬遠して買わなかったのです。 普通の本でもそうですが、イラストから得るイメージって、私的には結構重要なのです。最近はおかまいなしで読んでいますけど。
さて本書の感想ですが、人類が宇宙に進出し各惑星に人類が散らばっている未来という、いかにもなSFチックな舞台です。 主人公は麻薬組織を摘発するという任務を与えられた捜査官。おおまかなシナリオは、序盤から中盤まで聞き込みなどで手がかりを捜しながら、犯罪組織と接触する段階。その結果、うまく組織の本拠地を発見できれば、後半から本拠地に潜入するという展開へとなります。 捜査中は麻薬組織に監禁されたり、カーチェイスがあったり、銃撃戦があったりといろいろな展開が用意されていて、クリアに至るルートはかなり数多くあり。一方向システムですが、読者の行動の自由は非常に高く、難易度も易しい方でしょう。グッドエンディングも2種類あります。 理不尽な展開も少なく、繰り返しプレイに向いているので、リビングストン作品ばりに難しい作品でないと納得できないというマゾ的な趣向の方にはお勧めしませんが、ゲームとしては良く出来ていると思います。 他に印象に残ったのが、戦闘シーンが他のFFシリーズに比べてかなり少ない気がすること。ストーリー重視というか、“避けられる戦闘は避けた方がいい”という常識が通用するところは好感がもてました。他のFFシリーズでは、避けられる戦闘でも無理に戦って戦利品を収拾しなくては、後のまったく関係ないシーンで困ることとかありますからねぇ。でも戦闘が少ないわりに「さまよえる宇宙船」と同じく、素手の攻撃、射撃戦、宇宙船どうしの戦闘と、計3種類もの戦闘ルールがあるのはちょっと多すぎな気もします。それに避けられない戦闘シーンで初期能力値が低いと相当苦労する箇所が少しありますね。他のFFシリーズよりは断然良い方ですけど。
ところでこの作品。先程“いかにもなSFチックな舞台”と書きましたが、そのわりに全然SFらしく感じません。(汗) というのも、SFと呼べる部分は宇宙空間と宇宙船の存在くらいで、他は現代の世界を舞台にしたものとほとんど変わらない描写だからです。SFというより、現代アメリカの暗黒街を捜索しているみたいで、ギャング映画の世界といった方が正しい気がします。 同じA・チャップマンの前作「宇宙の暗殺者」も、ダンジョンを宇宙船に置き換えただけじゃないか、という印象を受けたのですがこの人、SF書きは向いていないんじゃないでしょうか。「海賊船バンジー号」はすごく面白い世界観だったことを考えるとそんな気がします。 この内容なら無理にSFにしなくても、現代サスペンスものゲームブックとして改訂すればもっと面白く感じるかもしれません。
2005年10月07日(金) |
レイデルの洞窟(ジーニー・ブラック/世界文化社) |
皆様お待たせしました。ハーレークインゲームブックとして名高い、愛のアドベンチャーゲームブックシリーズ第三巻の紹介です。 この巻でついにシリーズが全て揃いました。例えゲームブックコレクターでも、この全四巻(幻影の島・バルデガードのお守り・レイデルの洞窟・運命の巻き物)揃えはなかなか持っていないのでは?ましてやシリーズ全部の感想を書き終えたサイトは、日本広しといえどもこの冒険記録日誌だけでしょう!って胸をはることでもないか。
さて、本書の主人公は宝石細工師の娘シャンデル。シリーズ他の主人公の女性達(第一巻の主人公は戦士、第二巻はドルイド、第四巻は魔法使い)にくらべ一般庶民に近い普通の娘みたい。そのかわり様々な魔法の力の込められた宝石をいくつも持って、これを頼りに冒険をするわけです。 物語は、財宝に目がないレイデルというレッドドラゴンに父親をさらわれたことから始まります。ただ1人残されたシャンデルは父親を取り戻そうとするのですが、そんな彼女に2人の戦士が助力を申し出てきます。 1人はまだ冒険者になりたてのドジで田舎者な若者コーエン、もう1人はかなりのプレイボーイっぷりを発揮しているキザ男トーベックです。読者的にどちらも魅力的な男とはどうにも思えないのですが、しばらく冒険を共にすると主人公がコーエンと恋に落ちるというのはこのシリーズのお約束です。あと、ハーフリング(ボビット)の女盗賊も仲間になるのですが、全然目立ちません。 そんなに長い物語ではないぶん、選択肢によってストーリーは大きくかわり、同じドラゴン退治でもまったく別物の展開が複数用意されています。難しいルールは一切なく、純粋な分岐小説タイプなので、さくさく読むことができます。 小説志向の強い作品なのでノーヒントのまま選択肢を選ぶということは少なく、一応読者の決断を重視する作りにはなっていますが、「彼の言葉とおりにするか」という選択肢が多かったり「キスをするかどうか」という選択肢があるのがハーレークインらしい。しかもそうゆう選択肢の方が何気にクリアへの重要ポイントだったりするのです。 それから数多く分岐しているストーリーの中には、コーエンがほとんど登場しないものも用意されていて、そこでは他ではどちらかというと脇役(かませ犬役?)っぽかったトーベックと結ばれるハッピーエンドが用意されていました。おめーは、身近にいる男なら誰でもいいのか。 シャンデルに限らずこのシリーズのヒロインって、ものすごく恋に飢えてますねぇ。恋に恋するというか。本書のターゲット読者がそうだろうから、そうなのかもしれないけど。 なんといいますか卵から孵って最初に見たものを親と認識する雛鳥を連想します…。
2005年10月06日(木) |
悪夢の幽霊都市(鳥井加南子/祥伝社) |
「悪夢の妖怪村」「悪夢のマンダラ郷」と続く、鳥井加南子の悪夢シリーズ第3弾です。 「悪夢のマンダラ郷」ではリプレイ記録を書きましたが、悪夢シリーズのリプレイを専門にしているブログがありますので、本書のリプレイ記録はそちらに譲って、ここではシリーズ全体のことも含めて感想だけ書いておきます。
<参考> パラグラフの狭間で http://parahaza.seesaa.net/
今回の冒険は、映画館からふと異次元の悪夢の幽霊都市にさ迷いこんだ不幸な主人公という出だしです。無事に幽霊都市を脱出することが冒険の目的です。悪夢の幽霊都市というのは生きている者が主人公だけという、ひとけのない不気味な町なのです。しかも幽霊都市は主人公の魂を吸い取ろうと、あちらこちらで罠を仕掛けています。 アミダクジをひいて運命数とバイオリズム数を決める簡単なシステムは「悪夢の妖怪村」と「悪夢のマンダラ郷」と共通です。今回は謎の易者さんがゲームの冒頭で主人公にアミダクジを差し出します。所持品の管理もそれほど多くなく、覚え書きくらいで簡単に楽しめました。 そしてやはり文章があいかわらず素晴らしいです。幽霊ならともかく透明人間、モスラ、ゴジラ、キングコングetc…がさまよう都市という、冒険の舞台は実にふざけているのですが、それを破綻させずに真面目に扱いきっている文章力は驚嘆に値します。さすが江戸川乱歩賞受賞作家の肩書きは伊達ではありません。
この「悪夢の幽霊都市」自体の特徴ですが、他の2作と違って、バスや地下鉄などの交通機関で町から町へ移動する事がゲームにおいて重要な要素となっています。町は無人なのに、乗り物だけは運転手もいないのに動くのです。ゲームの構成は基本的には一方向システムですが、大まかな場所移動については双方向システムに近い感じです。 さらにこの作品では主人公が死亡してもゲームオーバーにはならず、最初の町で簡単に復活できるようになっています。(ゲームオーバーになるケースもありますがここでは割愛)しかし、そのぶん主人公は冒険中にぽんぽん死んでしまいます。 ガラモンに踏んづけられたり、キングコングに乗っているバスごと振り回されて投げ飛ばされたり、謎の異星人に消滅させられたり、もうさんざん。主人公が殺されるバリエーションはシリーズで一番多いのじゃないのだろうか?主人公がリカちゃん人形になってしまう罠なんかは、そこにいたるまでの描写に危機感があってかなり印象的です。あまりの殺されっぷりに苦笑い(特には大笑い)をしながら、少しずつ安全ルートを開拓していくしかありません。 そしてその安全ルートですが、これが運命数やバイオリズム数によって変化します。それどころか幽霊都市を脱出する方法すら運命数によって違う数種類が用意されています。つまり一度幽霊都市の脱出に成功しても運命数を変えればまた遊ぶことができるのです。 「悪夢の妖怪村」では運命数やバイオリズム数は主に行動の成否判定に使うだけの単なるサイコロの代用品でしたし、「悪夢のマンダラ郷」にいたってはクリアに至るルートはかなり限定されていて、運命数やバイオリズム数を使う場面に遭遇すること自体が(氷の海のシーンなど一部をのぞいて)すでに失敗確定という作りだったので、あまりこのルールが有効に活用されていませんでした。本作はそのあたりを見事に改良したっぽいです。 逆に不満をあげるとすれば、乗り物の移動回数が多くて煩雑に感じてしまったこと。「○○駅」「□□駅」「△△バス停から××バス停へ」などと地名から選ぶだけなので、このあたりのパラグラフ移動がちょっと単調に感じてしまいました。マップングが必要なほど複雑なものではありませんが。 何気に「悪夢の妖怪村」と「悪夢のマンダラ郷」の登場キャラがゲスト出演してくるあたりにニヤリ。なかなかのサービス精神ですが、これらの3つの世界がつながっているとは思わなかったな。特に「悪夢の妖怪村」の奴ら。久しぶりに休みがとれたからと、観光バスで都会にきたそうですが、仕事って何の仕事よ。火星人に雇われていたのか?(妖怪村を読んだ人にしかわかりません) いずれにせよ、このシリーズ最終巻にふさわしい出来であることは間違いありません。古本屋で本書を見かけたら、見せかけのB級オーラに惑わされずに確保してみましょう。
以上で3作品とも感想を書き終えたわけですが、私の中では悪夢シリーズは「日本流に作ったブレナン作品」という評価です。日本人作家ならではの計算されたゲームの完成度と、ブレナン作品のハチャメチャぶりが同居しているという。「悪夢の幽霊都市」の表紙イラストはかなり怪しい感じだし、裏表紙に書いてあるストーリー紹介を読んでもB級ホラー映画のような印象しかうけないのですが、いや、今まで完全に食わず嫌いでした。それなりにいろんなゲームブックを読んでいたつもりでも、まだこんなに面白いゲームブックが眠っていたとは思いませんでしたね。創土社さんと鳥井加南子さんに手を組んでもらって、このシリーズの新作を出して欲しいくらいです。 ちなみに私はシリーズの中では「悪夢のマンダラ郷」が特に好きでした。この作品が一番冒険の舞台が明るく広々としていて開放感を感じましたし、なにより阿弥陀様の存在がいいです。海の女神タカナカプサルックのイラストも好きだったなー。「悪夢の幽霊都市」の作者の後書きによれば、「悪夢のマンダラ郷」は巫女の神秘体験をモチーフにした作品だそうで、巫女を題材にした「天女の末裔」という作品で江戸川乱歩賞を受賞したという、ある意味もっとも鳥井加南子さんらしい作品かもしれません。 この前「オンラインの微笑」という鳥井加南子さんの小説を古本屋で発見したので購入してみました。ちょっと昔の作品みたいですが、気軽に読めそうな雰囲気の作品です。 最近の執筆作品はないようですが、鳥井加南子さんって今はなにしているのかなー。
2005年10月05日(水) |
夜の馬(茂木裕子/創元推理文庫) |
第2回ゲームブックコンテストに応募された作品であるもの、「ベルセブルの竜」と共通の世界観という理由で、コンテストとは別枠で発売された経緯をもつ作品です。
「ベルセブルの竜」で見られた独特の魔界の世界をそのままに、ゲームバランスも格段に改良されている良作。巻末には「魔界物語辞典」もついていて、それを読むだけでも魔界ワールドを楽しめます。 今回の主人公は、魔界の住民です。3種族の中から選びますが、戦闘力が高く、五感も鋭いので細かいことを察知できる獣人を選ぶのが一番有利な気がします。獣人は見た目が悪いので交渉関係には不利との設定ですが、町から出ればそんなの関係ないし、同族の獣人相手には逆に仲間扱いされるしで、実際のプレイでは全然問題ありません。 旅の最中にペンダントを拾った主人公は、そのペンダントが人の意思をもっていることを知ります。おそるべき魔物である夜の馬ことサマオーンに魔法をかけられたために、ペンダントになっているのです。主人公はこの男から、サマオーン退治を依頼されてゲームはスタートします。 つまり今回は、オーソドックスな魔物退治のシナリオなのです。それに今回は、お姫様もヒロインもいないので、萌え属性はまずないと思います。(笑) オーソドックスといっても、そこは独自の魔界ワールドを作っているだけあって、絶滅寸前の魔物「ふるいで」達の存在や、冒険に直接関係のないものの、世界観の大きさを感じさせるイベント(黒い髪のアレフのエピソードなど)もあって読者の想像力をかきたてて飽きさせません。夜の馬は日の光に弱いとのことで、日の光を放つ太陽石を探しつつ、夜の馬のすむ荒野を目指して旅を続けます。 魔物退治に使用する太陽石は、強さのランクの違うものが数種類用意されていることもあって最終戦闘の難易度が変わってきます。そのかわり前作よりもクリア可能な選択肢の数は広がっているので、海路を選んだり、森を抜けたりなど、いろんな行程をある程度は気楽に選ぶことができるのが嬉しい限りです。 私は最強の太陽石を入手することができず、黄色の太陽石でサマオーンの姉の方と戦ったのですが、苦戦しつつもきわどく勝つことができました。そのあとも、ヒヤヒヤしながら弟サマオーンに勝ってクリアできた印象が強くて、いまだに10年以上前のその時の冒険の記憶が残っています。
本書のあとがきで、作者は3作目の執筆を宣言していましたし、「魔界物語辞典」も追加版をアドベンチャラーズ・インに連載するようになっていたのですが、ゲームブックブックブーム終了とともにあえなく、消滅してしまいました。新しいゲームブック界をひっぱるシリーズだと、思っていただけに残念でなりません。 本当に茂木裕子さんは、今は何をしているのだろうか。HPの一つはもっていないかと捜索したこともあったのですが、情報なしでした。 なにかの同人誌を販売していた、という書き込みを見たような気もするのですが、謎のまま。もし本当なら是非購入したいものなのですがね。 どなたか情報を知っている方がいれば、ご一報をお願いします。
2005年10月04日(火) |
ベルゼブルの竜(茂木裕子/創元推理文庫) |
「紅蓮の騎士」と同じく、ゲームブックコンテスト出身の作品であり、やはりファンタジーものですが、あちらとは毛色が違う内容です。 作者の茂木裕子さんは、もともと「魔界物語」という未発表の長編小説を書き溜めており、その世界を舞台にゲームブックを書いたそうです。そのためステレオタイプにみえた紅蓮の騎士とは違い、しっかりとした世界の歴史をもち、独特の生物や魔物が生活する魔界という異世界を見事に書ききっています。タイタンという世界が完成したあとのFFシリーズや、TRPGの下地もあるブラッドソードシリーズに見られるような、物語の厚みを感じさせてくれるのです。
この作品の冒険の主人公は、人間界のルクレオという小さな町に住む人間です。 町が、土地の急速な砂漠化のため危機に瀕しており、町を救うために魔界の魔王の城に住む「ベルゼブルの竜」が持つ魔剣、アシュナードの力を借りに魔界へ旅立つというストーリー。アシュナードの秘める再生の魔力だけが、土地の荒廃を押しとどめ、緑の大地をよみがえらせることができるのです。
冒険の前半・中盤は、魔界のあるところに落とされた主人公が、魔王の城で必要な情報やアイテムを集めながら、町や森や湖を抜け、魔王の城を目指して旅をするようになっています。 ここで面白いのは、冒険中に夜を迎えるたびに、主人公がもっている魔界の辞典が、月明かりの魔力で読めるようになるシステムです。辞典は魔界に住む、いろんな個性をもった魔物達のことが書かれています。どの魔物の項から読むかは自由ですが、一夜ではほんのわずかしか読むことができません。 アドベンチャラーズ・インの情報だったか、執筆当時の茂木裕子さんは動物学を学んでいる学生だったそうで、その経験を生かしたかのように魔物の生態系や行動パターン、弱点などを特徴的に描いています。 これが昼間に魔物と出会ったときに、対処法の知識があるかどうかで難易度が大きく変わってしまうのですね。うまい具合に、自分が調べていた魔物が登場したときは、結構嬉しい感じになります。
そして終盤は、いよいよ魔王の城へ。 ピポラグライデスだったか名前は忘れたけど、ものすごく強い竜の門番がいるので、ここまでに通行証を入手してないと、死亡確実です。通行証を持っていても、それに書かれた謎解きをしないと効力を発揮しないので、やっぱり苦戦必死。私が挑戦したときは、ここが一番の難所でした。 それから魔王には2人の娘と4人の息子がいて、アシュナードの力を借りるには、彼らからも情報を得る必要があるようにもなっています。彼らとの交渉シーンも個性があって面白いです。全員、美男美女揃いで(一人ひきこもり系の学者タイプもいたけど)キャラの人気も高く、アドベンチャラーズ・インで彼らの人気投票なんかの企画も行われていましたね。 さらに一般の冒険と違うのは、主人公はあくまで魔王の城まで力を借りにいくのであって、魔王を倒しに行くのではないということです。 この世界の魔王は、もちろん善良というわけではなく、人間をとるにたらぬ存在と思っていたり、主人公へ命をかけたテストを強制したりもしますが、反面、人間界を襲うなどといった野望もなく、主人公との約束は守る公平な存在として描かれています。魔王が課す試練はなかなか厳しく、魔王が倒せない超越した存在として描かれているぶん、魔王退治よりもむしろ対面したときは緊張感がありましたね。 見事、アシュナードの剣が手に入ったときはなかなか感動ものでした。
そういえばこの作品について、どっかの掲示板で「萌えゲームブックみたいで駄目」とか「同人誌くささが嫌」とか言う意見がありました。 でも萌えに過敏に反応しすぎじゃないかと思います。普通の人はこれくらいで、萌えとか言われてもピンとこないと思いますが・・・。 同人誌くさいというのは、好みというかその人の感じ方の問題だからしょうがないですね。私はそんなことは全然気になりませんでしたけど。 ただできれば「私は嫌だから復刊するな」とか、そういうことは言わないで欲しいです。万人に受けるゲームブックなんてあり得ないので、いちいち嫌っていたら、どんなゲームブックも復刊しませんし、新しい作品も生まれません。 最近「クイーンズ・ブレイド」に対するゲームブックファンの反応なんかをみて、ちょっとそう思いました。
話を戻すと、このゲームの難易度は少々難しめ。ゲームバランス的にも「紅蓮の騎士」よりもやや劣る気がします。 しかし読ませるものをもったゲームブックとして、私は非常に楽しんだ作品であり、次回作に期待させた作品でした。 茂木裕子さんは今は、何をしているのだろう。同人誌販売でもいいから「魔界物語」を読ませて欲しいものです。
2005年10月03日(月) |
紅蓮の騎士(伊藤武雄/創元推理文庫) |
創元推理文庫で行われた第1回ゲームブックコンテストの入賞作品。 ルールの説明を呼んでいると「他のゲームブックには見られない独特の能力のポイントがあります」という主旨の記述があって、作者の盛んなアピールに少々微笑ましい気持ちになります。独特といっても、FFシリーズでいう技術点を少し変えたくらいのもので、そんなに従来のゲームブックとルールが変わっているとは思えないなー、と当時から思っていましたけどね。 ストーリーは主人公が王家に使える騎士で、悪魔ワードナを復活させようと使用人に化けて、翡翠の首飾りを盗み出した盗賊を追っかけるというお話し。 特別な舞台背景もないし、最終的には主人公は悪魔ワードナと戦う羽目に陥るという展開になるあたり、むしろ極めてオーソドックスな内容かもしれません。
もちろん、それだけじゃコンテストで勝ち抜けられなかったはずで、この作品には大きな売りが2つあります。 実際、当時のゲームブックファンの情報誌「アドベンチャラーズ・イン」でも、読者から結構な反響がありました。 そのオリジナル要素とは、ゲーム中に読者本人の肺活量を利用する点。 早い話が、毒ガスに満たされた迷路を抜け出すシーンがあって、その迷宮をさ迷っている間は、読者本人が実際に呼吸するたびに体力ポイントが6点減ってしまうというシステムです。今ならはみだしゲームで、たまにみかけるアイデアですね。 もう一つの特徴は、何度と繰り返して遊んでも楽しめるという工夫です。 最初に選ぶ選択肢によって、主人公は冒険につかえる特別な助力を受けることができます。それは魔法の力、仲間としてついて来てくる動物たち、名剣の入手と盗賊達の協力、妖精の腕輪による加護、と4種類用意してあるものの、選べるのはそのうちの一つだけです。当然どれを選ぶかによって、敵との戦い方などが少しずつ違う冒険になるようになっています。 さらに主人公が進んでいくルートは、前半に大きく2種類、後半も大きく2種類に分かれており、それぞれまったく新しいイベントが楽しめるようになっています。もちろんどちらのルートでもクリアは可能。 つまり、これらの相乗効果でいろんな種類の冒険を楽しめるようになっているのです。
当時は、ガチガチの創元野朗だった私は、「おおう!こんな新しいゲームブックは始めてだ!」と妙に感心していました。今から思えば、より奥深いストーリーで何度も繰り返して遊べる作品は、ブラッドソードなどで既に存在していましたし、自分の体を使ったゲームブックというのも、今から思えばブレナン作品あたりでもうあったような気もしますが。 もちろん作者はそんなことは知らなかったのでしょうし、面白さに繋がるのなら、オリジナルだろうが前例があろうがどっちでもかまいませんけど、なんだか大人になってちょっと騙された気分かも。
呪われた町に進んだ時のエピソードは非常に印象深いです。主人公の使命には無関係だけど、ワードナ以上に強力で主人公にはどうにもならない“悪”の存在があるのがね。 仲間になっていたインコみたいなイノピーも可愛かったな。 欲をいえば主人公の仲間の騎士が3人いて、彼らも主人公と同じ冒険に出発しているという設定が消化不良でもったいないかな、と思います。どの仲間も活躍するシーンもないまま、死んじゃっているあたりがね。
正直、文章やシンプルな展開など、ところどころに初心者らしさが出ている気もする作品なのですが、それでも割と好きな作品でした。 綺麗にまとまっていてゲームバランスもとれているので、ゲームブック初心者にも基本形としてオススメできる内容です。
2005年10月02日(日) |
ティーンズパンタクル(鈴木直人/創元推理文庫) |
霊能力をもつ女子高生の大島いずみちゃんが、謎の転校生氷室の出現をきっかけに始まった異世界からの侵略と戦うという、まるで学園ドラマのような筋立ての作品です。 鈴木直人作品といえば、ドルアーガの塔やスーパーブラックオニキスに代表されるように、双方向システムによるマッピングの楽しさがメインという印象が強いですが、この作品には一方向システムのうえマッピングの要素がいっさいありません。 かといって、超能力か、武器を使っての戦いという2種類の戦闘があること。時間やイベント管理のためのフラグチェックも頻繁に行うこともあって、チョコレートナイトほど気軽にプレイをできるようにもなっていません。そのかわりティーンズパンタクルは、他の作品にないゲームシステムの魅力があります。 もちろんタイトルに「パンタクル」の文字があるように、終盤では「パンタクル」の主人公だったあのメスロンも今回は異世界の住民として登場。名脇役としていずみちゃんを助けてくれるのです。学園物という本格的ゲームブックでは珍しい世界観や、じわじわと学園が謎の存在に支配されるという展開、そしてタウルスそっくりな登場人物もいるなどファンサービスの点でもたまらない内容でしょう。 ですが、やはりこの作品の最大の特徴は、主人公のいずみちゃんが全寮制の学校に住む一見普通の女学生として学園生活を過ごしている前半部分のシステムにあると思います。 その、おおまかなゲームの流れとしては、
デートや友達の誘いなどがあるので、昼間にやりたいことを決定する。 (読書・デート・昼寝など) ↓ 夜になると事件発生!イベントが終わると、異変の原因を探るべく深夜の学園内で調査したいところを決定する。 (屋上・旧校舎・プールなど) ↓ デートや友達の誘いなどがあるので、昼間にやりたいことを決定する。 (読書・デート・昼寝など) なお、日にちによっては特殊イベントが発生。 ↓ 夜になると事件発生!特殊イベントが終わると、異変の原因を探るべく深夜の学園内で調査したいところを決定する。 (屋上・旧校舎・プールなど)
基本的にはこの繰り返し。
このうち“特殊イベント”は日にちが進むにつれて、次々と新しいものが発生して、全体のストーリーを引き締める役割を果たす一方、メインとなる( )内のデートや調査などのイベントは、どの日に行っても良いので、何度でも選択する機会があります。 これにより、小説のようなストーリーの進行が楽しめるうえ、気になった箇所は好きなときに調べられるという、一方向システムと双方向システムの良い所だけを組み合わせた秀逸なシステムになっているのです。 このシステムにより、このゲームブックはゲームの攻略法がバリエーション豊かになっています。例えば、このゲームにはニバスという名前の中ボス的な悪魔がいるのですが、こいつはとんでもなく強い。倒すためには弱点を調べて、戦う前に必要なアイテムを準備するのがセオリーですが、それがなくても主人公を鍛え上げて戦闘力を高めることで、終盤前くらいのタイミングなら通常の戦闘で倒すこともできるのです。 他にも異世界にいるメスロンを学園に呼び出す方法も2種類用意されていたり、クリアに必須ではないが後々の攻略が楽になるイベントが数多くあるなど、プレイヤーの好みに合せて攻略を考えていくことができます。このあたりのゲームバランスは鈴木直人らしく絶妙なのです。 繰り返し遊べるゲームブックとして、コストパフォーマンスはかなり良いと思いますね。
メールのやり取りで、ある方がこの作品のことを「TRPGでゲームマスターが融通を効かせながら、ゲームを進めるような感覚」となかなかうまく表現していました。その方は、「文章とかいろいろキツイ部分があるので、そのまま創土社で復刊させるのは問題があるとは思うのですが」とも言っていましたが、このあたりは海外ファンタジー小説と、日本のライトノベル系の小説の違いのような、好みに対する問題でしょう。 私にとっては、ブラッドソードやソーサリーに並ぶ名作なので是非とも手を加えず、そのまま復刊してもらいたいところです。 そんなわけでそろそろ鈴木直人ゲームブック関係の発売情報をお願いしますよ、酒井さん。
(追記)是非とも手を加えずとは書いたけど、現代風にリメイクするのはありかもしれないと思いなおしました。当時と現在は学園の様子も違うし、ライトノベルなら流行の文章というのもあるし。となると、表紙や挿絵も萌え系イラストレーターによるものに差し替えなのかなぁ。
なんかゲームブックの雰囲気を模したゲームという主旨で、“蠅声の王”というパソコンゲームが発売されるそうですが、内容は18禁エロ路線だそうです。 まあ、世間のエロパワーは侮れないですからね。個人的には歓迎です。 少なくとも最近リメイクのうえ復刊したゲームブック“クイーンズブレイド”のような、中途半端な萌え路線よりよっぽど潔い。 ぷりん部屋のコンテンツ、「エロゲームブックを語ろう」のネタになるし、購入しよっと。 でもサンプルCGを見るかぎり、どうも触手エロみたいでちょっと嫌だな。
蠅声の王(サバエノオウ) http://www.lostscript.jp/
クイーンズブレイド http://www.hobbyjapan.co.jp/queen/index.html
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