酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEXwill


2002年08月31日(土) 六番目の小夜子

 陸ちゃん(私はものごころついたら勝手に恩田陸さんをそう呼んでいた)の幻の名作(今でこそ名実ともになったけれど)と伝説がとどろいた 『六番目の小夜子』 を、私がはじめて読んだのはいつのことだろう。1992年に発表され絶版となった新潮文庫版は生涯かけて探し出したい幻の一品。古書店を経営されている方に知り合いがいると言う真理に頼んだもののまったく返事がない。さすが幻だけのことはある。値段もどうなっていることやら。 
(と言う訳で雷音堂さん、なにとぞよろしくお願い申し上げます)

 この物語に惹かれる一番の原因は、そういう伝説があったらよかったのになぁ、と言うほのかな郷愁めいた気持ちではないだろうか。学校の怪談ではなく、数年ごとに繰り返される 「サヨコ伝説」、 わくわくどきどきする想いを何度読んでも感じさせてもらえる。10年前に書かれていながら今読んでも尚、色あせることのない学園ファンタジー・ホラー (ジャンル分けするならそう呼びたいv) の傑作です。近年NHKでドラマ化されたサヨコはまた原作とはちょっと違うサヨコで (ちょっとと言っても原作にはいない人がばーんと出てくる)、 とても素晴らしい出来上がりでした。また再放送してくれないかなぁ。期待>NHKさん

 またこの物語に惹きつけられてしまう原因は、終わり方の曖昧さにあると私は思っている。どこに真実があるのか、伝説の小夜子は存在するのか。伝説は終わったのか。またどこかで続いていくのか。そのはっきりしない感が想像力を刺激してたまらないのですv しかし、逆もまた真なりで、その訳がわからない感が好きになれないと言う声をよく聞くのも事実。読む感性は人それぞれだし、そういう感覚もあって当然だと思う。あれっていわゆる放置プレイだし(爆)。
 
 陸ちゃんの作品は大概 (恋愛ものはどうかなぁ) 好きだけど、サヨコのような閉ざされた学園ものを書かせると右にも左にも出る人はいないなぁと思う。テレビ化は失敗だった (あれは脚本のせい?)『ネバーランド』 の少年たちも原作では素晴らしかったv 『球形の季節』 では奇妙な流行を追いかけて学生が姿を消す。学園から町の謎に広がりながら最後はやはり謎のまま終わる。やっぱり曖昧だわvなによりこの本は章タイトルが素敵。とっても長いけどね。

 ちなみに一番最初の酩酊本処に書いた西澤保彦さんの 『依存』 に登場するアノ毒花美也子さんのことをして 「タックのかぁちゃん」 と言われたとか・・・。さすが陸ちゃん(苦笑)。

 『六番目の小夜子』 2001.2.1. 恩田陸 新潮社文庫



2002年08月30日(金) 輪廻

 巨匠横溝正史先生の本を読んで(正しくは姉のまねをして読んで)中学時代に読書に開眼した私は、根っからのホラー好きv そんな私が日本のホラーを書かせたらおそらく最高峰に違いないと思っている作家さんが、高橋克彦さんです。記憶シリーズとドールズ・シリーズは最高傑作。是非ご一読をv(いずれここに書きたい。)

 2002年、年が明けてたまたま 「高橋克彦氏絶賛」 の文字を目にしました。その作品は 「輪廻」、 作者は明野照葉さん。松本清張賞受賞作品。高橋克彦さんが絶賛しているなら、絶対にはずれはないだろーとばかりに購入。読む。・・・読んだ。はずれなどないっ。うわぁー今年のノックアウト第一号〜。この物語、内容も素晴らしいのですが、装丁がまたすごく素敵。本屋さんで見るだけでも見てね。(そのまま買うと尚よろしいですわよ)

 明野さんにはまったところで、 「輪廻」 → 「憑流」 → 「棲家」 → 「赤道」 → ※「緋迷宮」(短編「恋歌」収録)→ ※「雨女」(オール新人賞短編) →「女神」 → 「闇の音」 → ※「それだけは言わないで」 (小説宝石8月号)と読みました。作品時系列ではありません。読めていない短編は今後の課題。雷音堂さんに頼もうかしら。
 
 今まで読ませていただいて、明野さんと言う作家さんはホラー作家ではないです。うまく言いあらわせないのですが、あの方は人間の心の闇や醜さや悲しさや悪あがき、そんな心模様を描かれている気がします。そして 「強い」 と言うか 「図太い」 んですね。主人公たちが。物語はいつもエンドページで終わらない。「エーッ、このあとどうなるのよぅー」 と悲鳴をあげさせられることばかり。短編はもったいないので長編にしていただきたい。ひりひりしたり苦しかったり怖かったりするくせに、読み終わって心のどこかに小さな光が残る。そんなふうに打ちのめされてしまわないのは、明野さんのお人柄ゆえなのでしょう。
いや、まぁとにかく読んで。読みなさい。読めばワカルからv

 さて 『輪廻』 はローマ字でRINKAIと読ませています。「りんね」 と読ませなかったのはなにかこだわりがおありだったのかしら。この物語は前世の因縁の物語と言えばよいでしょうか。どこまでも途切れることなく続いていく読後感があります。明野さんは、この作品で松本清張賞をお取りになられたとき、 『輪廻』 をホラーだと言われて、 「あ、ホラーだったのか」 と思われたそうです。上に少し書きましたが、明野さんはホラー作家ではありませんが、秀逸な日本のホラーを書ける作家さんだと感じます。ホラーを侮るなかれ。高度な日本のホラーは古典作品や、高橋克彦先生作品以外ではなかなか出てこないですよ。しかも品がある。これがすごいのよね。
 『赤道』 や 『女神』 などはホラーではありませんが、読んでいるうちにて主人公とに同調させてしまう表現力はお見事なのでございます。最後ハァハァ言いながら読んでましたよ、私は。

 さて、この明野さんの公式サイトにもお邪魔するようになりました。明野照葉さんって雑記帳や掲示板では「あけのてるはちゃわん」なる人物に変身されます。こちらのあけのさんの方が本物なのかな。話題が流れていくし、集まる人たちもとてもユニークな方ばかり。面白いですよ。明野さんの作品を読んで明野さんのページにも遊びに行きましょう。楽しいこと請け合いますわよんvちなみに今のところあっちゃん確保!ふっふっふv

 『輪廻 RINKAI』 2000.6.30.明野照葉 文藝春秋



2002年08月29日(木) 依存 西澤保彦

 西澤保彦さんの『依存』との出会いがなければ、ホームページを作ろうと思わなかったと思います。大きな意味合いを込めて、この出会いは、私の世界を広げてくれました。大好きですv>西澤先生

 ちょうど2年前の夏、私は『依存』(幻冬舎さんより2000年7月10日刊行)にカウンターパンチを喰らいました。年間150冊、多い年は200冊の本を読む活字中毒者の私ですが、読むジャンルは決まっていません。失礼な話、ミステリーは好きでしたが、ミステリーマニアというほどではなく、あの日までのワタクシ(!)は、西澤保彦さんと言う作家さんを存じ上げませんでした。私が『依存』を読もうと思ったきっかけは確かなにかの雑誌に載った惹句に本当に惹きつけられたからでした。本の帯の“ぼくには、実の母親に殺された双子の兄がいたんだー。”を見てシリーズも時系列も無視して読んだのでした。一気に読み上げてそのままファン倶楽部サイトへお邪魔した時のことは今でもよく覚えております。たった1冊を拝読しただけで、よくぞ飛び込んだものです(汗)。今ではたくさんの本仲間ができ、仲良くさせていただき、さまざまなオフ会に参加。西澤先生にお目にかかる機会もございました。最近では岡山まで遊びに来てくれる人もちらほら。(ちなみ2002.8月現在、ひろただくん、ライオンさん、さくらが来ました。物好きな。笑)出会いから変化をくれたと言う点では、お馬鹿キャラにいち早く反応し、女王と臣下ごっこにおつきあいくださったらいしんくんあってこそのワタクシです。らいしんくんとのやりとりは大きかった。あのおかげでサイトのみなさまにも覚えていただけるようになりましたし。
いつまでもワタクシについてきておくれ。>我が忠実なる臣下ジェスターらいしん殿v おほほのほvv

 いきなり『依存』から西澤先生作品に飛び込んでしまいましたが、このお話は匠千暁シリーズ、別名高瀬千帆シリーズの5作目に当たります。あとからシリーズを時系列で読みましたが、『依存』は彼らのシリーズの中ではとりわけ重苦しい空気を孕んでいます。私は毒のある人物や毒のあるお話が好きなのでこの物語に惹かれて当然ですね。あらすじを説明するタイプではないので読んだことがない方は読んでください。是非っ。

 美也子さんと言う、タックの母親がまさに毒花。対するワタクシの(我らがなんて言わないもん)タカチvタカチの名台詞があるので、書きたいのですが、書きません。読んでください。(←しつこひ)あのタカチの名台詞は座右の銘にしたい。タカチが読んでいるだけで美しいと感じるのは、西澤先生の描写による姿かたちだけでなく、あの傲慢とも言える高潔さにある。そして私は毒花、美也子さんの再登場を待ち望んでいるのです。

 また西澤先生の作品については書きたいと思います。あ、こんなんで酩酊本処なんてつけるなーっと言うバッシングの嵐かも。でもいいんだもーん。酩酊本処ってネーミングが使いたかったんだもーん。

 西澤先生の作品で、今のところワタクシ的ナンバー3は、1位『依存』、2位『夢幻巡礼』、3位『黄金色の祈り』でございます。西澤先生の作品を読まれていて、ワタクシの嗜好をご存知の方になら、納得のいくチョイスにございましょう。『夢幻巡礼』の背表紙には、ダーティヒーロー奈倉渉の「ひとを殺すことが、こんなにも、おもしろいとは思ってもみなかった」と言う言葉が。きゃぁっ。『黄金色の祈り』の帯には、「誰が十字架を背負うのか」とあります。きゃぁきゃぁきゃぁ。そうです。ワタクシは西澤先生のお書きになる作品でもとりわけ残酷で息苦しい作品が好きでたまらないのでございます。ワタクシったらマゾー。こんなんで終わるんかい(笑)。
終わるのv

『依存』 西澤保彦 2000.7.10. 冬幻舎

 



酔子へろり |酔陽亭酔客BAR
enpitu