Juliet's Diary
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合同会議のときは、東京へ宿泊者が出る。
「じゅりちゃん、ホテルとってよ〜」
統括工場長。それは絶対、わたしの仕事ではない。 断じて違う、と、じゅりちゃんは言いたい。 ダレの仕事とかではなく、己でやるものだと思う。
だが結局、わたしはやってしまう。 ある事情により、あと1回やれば終わりのハズだ。 文句を言いたいのはヤマヤマだが、ここで恩を売っておくのも悪くない。 ずーっと続くなら、当然お断りだが、期間限定。 それならば、多少言うことを聞いておいて、 優しいじゅりちゃんを演じておくのも、あとあと利がある(ハズ)
ところがである。いつものホテル満室(笑) 全員分が取れなかった。遅いのだよ、言ってくるのが。
「ごめん、林田さんだけ、他のホテルになっちゃうよ」
北海道、北から順番に予約していったら、九州はビリ。 林田さんだけ、どーがんばっても、近所のホテルがムリだった。
「いいですよ。ひとりだけちょっと遠くても」 「そう? ならウチはどう??」 「・・・・・・・・・」
気を取り直して、再度質問。
「ツインはもうダメなんだけど、ダレかをシングルから、 ダブルに変えれば一緒にとまれるよ。ダレがいい?」 「ダレとでも、いやだー!!!!」
そうか。男同士でダブルはイヤか。いや、冗談だよ。冗談。 でも、そこまで嫌がんなくても、いいじゃん。 現に静岡ヤクザには冗談で言ったのに、 「じゅりさん困っているんですよね・・・。いいですよ」 って言ってくれたぞ(ホモ疑い度が上昇したが・・・)
結局、林田さんは、もうなんでもいいと言って、電話を切った。 自分が今回の会議に参加することはわかっていたが、 宿泊先の連絡を受けて、急に身に迫る危機を感じたのだ。
「じゅりさんは毎日のように社長に会っているから わかんないと思うけど、こっちは年に1回か2回なんだよ。 オマケに全国の所属長の前で、 自分の部署の成果を発表するのも緊張するのに、 社長に質問されて答えられなかったらと思うと、もう今から憂鬱。 ”自分ところが、わからんのか〜!!ボケ!!!なんて言われるかと 思うと、もう今からアタマが一杯で、他のこと考えられない」
まだ1ヶ月以上先のことなのに、もういっぱいいっぱい(笑)
そして彼は、 「ホテルは、なんでもいいけん、任すっばい」 と、いつもの標準語はどこへやら。 筑後弁丸出しでまくしたてると、電話を切った。
ちなみにその前の説明も、泡をくらった彼は筑後弁で言った。 じゅりちゃんは筑後弁は、さっぱりわからないので、 (ちなみに博多の人にも、筑後弁は難解らしい) ある程度予測しての、彼の発言内容である。
ところがである。直前になって、九州、選手交代(笑) 林田さんに代わり、グアムで一緒だった江川君が登板だ。
「もう、どーすっとぉおおお??」(訳:もう、どうしよう!)
今度は、江川君が大パニック。 筑後弁より博多弁の方が、じゅりちゃんにはわかりやすい。 そして大混乱の江川君を尻目に、宿泊先の説明。
「ヤダ! ダレかと一緒じゃなきゃヤダ!!」
えっ? ナンでそんな子供みたいなこと言うの? 問いかけると「会議前の不安な気持ちを、ダレかと共有して紛らわせたい」 なんだそうだ。だから一人だけ別のホテルはダメなのね。
「じゃ、ダレかとダブルの部屋か、ツインの部屋を・・・」 「一緒の部屋はダメ!!」 「なんで!(半ギレ)」 「オレ、イビキうるさいから、恥ずかしい!!」
・・・・・。わかったよ。隠れた悩みがあるんだね。奥さん大変ね。
広島・小宮君「子供みたいなこと・・・(笑)」 静岡・ヤクザ「オレはどこでもいいですよ」
結局、参加者の中での若造3名で、ちょっと遠方のホテル、 つまり、江川君が宿泊するホテルに移動してもらった。
して、問題はここからである。
当日、帰宅路途中にあるそのホテルまで、その3名を送っていった。 途中で迷われても困るし、途中だし、ということである。
「ちょっと遠くてゴメンね」
とは言ったが、なーに。たかだが600Mである。 1本道だし、迷いようもない。また近くにコンビにもあるし、安いし、 喜んでくれると、その時は信じて疑いもしなかった。
雲行きが怪しくなったのは、歩き始めて5分ほど。 さいしょにイラついたのは、じゅりちゃんだった。
「ねぇ・・。わたしにあわせて、ゆっくり歩いてくれているの??」
遠慮しながら聞いたのだが、とにかく、おっそいのだよ、歩みが。 だって5分も歩けばつく場所なのに、まだ半分も来ていないんだよ。
ハイヒールの自分を気遣って、ゆっくり歩いているのか?と。 そして、そんな気配りは無用だぜよ、と。 それより、さっさか歩いて、さっさと寝てくれと。
「なに言うとぉ〜!! 一生懸命、歩いとーよ!!」
江川君がびっくりしたように言う。
「もう、はぁはぁ言うとーよ。きつかー」
冗談だと思った。だが、ヤツの顔は真剣だった。 びっくりして、小宮君を見ると、 「いっつも車じゃけ、よう歩かんから・・」 と、笑いながら同調された。静岡ヤクザもそう言った。
でもじゅりちゃんは、半信半疑だった。 だって、江川君の歩幅は、ヤツの足のサイズと同じだった。 つまり、踏み出した前足のカカトは、後ろ足のつま先にくっついていた。 ひょっとしたら、これは「歩幅ゼロ」とカウントされるかもしれない。 千鳥足のおやじにも、抜かされているよ。
ありえないだろー。 いくら日頃歩かないからと言っても、ヤツらは3人とも、私より若い。 それほど違わないが、江川君4つ下。小宮君3つ下。ヤクザは5つ下。 つまり江川君とヤクザは、まだギリギリ20代だ。
オマケに彼らはセンター職員。 日頃デスクに張り付いている私より、足腰強いハズだ。 っていうより、毎日毎日、ものすごい運動量のハズなのだ。
彼らは「東京モンは足が速い」と、しきりに話していた。
「なにをそんなに急いどるんじゃろ?」 「わからんねー。飛んでるみたいに歩いちょる」
口はとまらず。だが歩みは、もたくそ、もたくそ。 こんなに遅く歩くと疲れるし、もう時間も遅いし。 冗談にも程があると、じゅりちゃんが怒り爆発寸前、その時!
「まーだ、つかんとぉおおおー!!!」(訳:まだ着かないの?)
と、江川君がシビレを切らして叫んだ。
びっくりした。ヤツらホンキだと思った。 私はてっきり「意外と近いじゃん!」と喜んでくれると思っていたのだ。
そしたら小宮君が、 「もうすぐじゃけ、もうすぐじゃけ」(訳:もうすぐだから) と、江川君を励ましだした。
もう、方言丸出し、田舎者丸出し。 じゅりちゃん、びっくりして、言葉も出なかった。
結局、600Mの道のりを、15分かけて到着。そりゃ遠いわ。 あげくのはてに、予約番号をメールしておいたのに、全員忘れてくるし。 「印刷してもってこい!」って、メールに書いておいただろ。 (まぁ全員無事、泊まれたけど)
分速40Mで歩く男たち(オマケに方言丸出し)
「博多はみんなこんな感じで歩いとーよ」
ウソつけ! 博多は九州の中でも1番の都会じゃ。 そんなに、ちんたらちんたら歩いていたら、経済活動に影響が出るわ!
昨今、母親に手をひかれた幼稚園児だって、そこまで遅くないだろう。 というか、本社の人に話したら、「どーやったら分速40Mで歩けるのか?」 と、質問されてしまったよ(再現してやったけど)
脅威の分速40M。 ちなみにじゅりちゃんは、急げば分速100Mで歩きます。 倍以上の差だよ。
追伸
「江川は足が遅い」
林田さんに話したら、そう言われた。 だが私は知っている。林田さんも信じられないほど、足が遅い。
集合に遅れそうなので「急いで!急いで!」と何度言っても亀の歩み。 だが、顔は必死だったのは覚えている。
結果は当然、遅刻。 地方組引率者だったわたしは、本部長に猛烈に怒られた。
怒られた後、地方組のグループに戻ったら 「はぁ〜、なんとか間に合ったばい」とか言ってた。 ちっとも間に合ってねーよ。
地方組と歩く際は、東京の基準より3倍の余裕をみないと、間に合わない。
追伸2
九州の事務員Aさんにも電話で話してみた。 そしたら「ちょっと待ってて!」と、言われた。
事務員A「ねぇねぇ!あのお店って、確かここから500Mくらいだよねー!」 事務員B「そうだよー!」 事務員A「こっから歩いて何分?」
そしたら事務員Bさん!
「15分!!!」
だってさ。もう、信じられない・・・・(泣)
追伸3
今お付き合いのあるシステム会社の方も、複数名博多の人がいる。 博多出身ではなく、現在も博多在住。 つまり、じゅりちゃんの会社には、毎度出張でいらしているのだ。
「ここから羽田までなら、都営線が便利ですよ」 「えっ?どうやって行くんですか?」 「都営線に乗ると、京急に乗り入れしているんですよ」
そしたら、博多在住の彼、 「うーん。でも乗り換えに30分とか待たされたら、困るしなぁー」 だから、じゅりちゃんは、言ってあげた。
「大丈夫ですよ。九州じゃないから。10分も待てば来ますよ」
全員大爆笑。そしたら、もう一人別の博多在住者の方が、
「九州って、乗り継ぎないんですよ。全部1本だから!!」
ターミナル駅は、博多駅くらいなんだろうか?
その後 「初めて東京に来た時、山手線がすぐ来るのがびっくりした」とか、 「あれは前のが遅れたら、どーするんだろう?」とか。
驚いた。毎週のように東京出張をしている人でも、そう思うんだ。 ほとんど、東京にいるのか?なんなのか、わからないくらいの出張族。 そんな彼らでも、戸惑うんだ。
わたしは確認したい。そんな彼らも、分速40Mなのだろうか?
「ネットで乗換案内ありますよね? あの乗換予定時間中に間に合います?」
ちなみにじゅりちゃんは、今まで全て間に合っているが、 時折迷うと、ちょっと危ない時もあった。
追伸4
そのホテルは、どうやらオバケが出るらしい。
別拠点の所属長も同じホテルだったらしく、ホテル前で追いつかれた。 その時、その所属長が、そう言ったのだ。
顔面蒼白になる、3名。
あまりのうろたえぶりに、その所属長も驚いて、 「ウワサだよ、ウワサ!」と、明るく言うが、時既に遅し(笑)
「まぁダメじゃったら、朝までファミレスにでもいっときゃいいじゃけ」 と、小宮君は言うが、 「オレ、霊感つよいんだよー!」と江川君は、蒼白になっていた。
結局、朝までラップ音に悩まされた江川君の会議の結果がどうだったか? それは、じゅりちゃんには、知ったこっちゃありません。
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