箱の日記
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遠い空に手をかざす
むかし まだクスノキが木でなかったころ ごつごつしたその肌にふれたのと 同じ手で
おはよう または こんばんは
なんでもいいので 声をかける 届くかどうか わからないけれど
ずっとむかし まだそれが木でなかったころから クスノキは私をみている ただしさがなくてもいいような やさしさのまま そこにいる だから 毎日がやってくる
クスノキのありかたで わたしはもういちど 空へ 手をかざす
なにもないベランダに ちゃんと土があって、芽が出ている だんだんと暑くなって 空気といっしょに汗をかいている 細い茎の上を さっと つばめが通り過ぎた
なにもないベランダなので 休みの午後になると 何かを置こうと考える ここに土があれば 育つだろうか ここに土があれば 同じように日々がやってくるだろうか
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