.◆◆第6話:『Teenage Walk』 ①
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♪Teenagewalk 鳥が空へ遠く羽ばたくように いつか飛びたてるさ 自分だけの翼で Teenagewalk あきらめないたとえ時間がすぎても いつか見えるはずさ 自分らしい生き方
世の中に、星の数ほど職業はあるけど、どうしてもつきたくない職業がある。 それは、美容師。 あたし・谷村麻衣の両親は美容師をしている。ちゃんと自分の店も持っている、常連さんもいっぱいいるから生活に困るわけじゃない。お小遣いだって他の子達よりは多いみたいだし、欲しいものも買ってもらえた。 だけど、店の休みはたいがい月曜日で、世間のお父さん・お母さんがお休みになる日曜日は当然稼ぎ時で一日中店に出ている。 小さいとき、親が運動会や授業参観に来てくれたことなんかほとんどなくて、クラスメートが家族団らんを繰り広げてるそばで、あたしと三歳上の由衣姉ちゃんと二人で店の従業員さんが届けてくれたお弁当を食べると言うのが常だった。 おまけに休みが月曜だから遊びにつれていってもらったという記憶がない。 さらに、由衣姉ちゃんまで美容師になって店の手伝いをしてるから、家事の一切があたしにまわってきて、正直言ってまいっていた。 両親や姉を見てりゃ、思った以上にきつそうだし、そのせいかせっかくの休みも寝てるか、家でぼーっとしてるかのどちらかで、その大変さはよくわかっているつもりだから、あたしにできる限りのことはしてあげたいと思う。だけど、どうしても『美容師』という形で両親や姉のサポートをしたいという気になれないのだ。 そんなこんなで、高2になったあたしは進路希望のプリントを前に悩んでいた。 「とりあえず」高校は行かなきゃと思って、「とりあえず」目的もないまま、高校生になりゃ何か見つかるだろうと、由衣姉ちゃんと同じ城山高校に入学したのだが、いまだに自分の進むべき道が見えてこないのだ。 (『Teenage Walk』②へ続く)
2002年07月17日(水)◆◆
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.◆◆intermission⑤
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5話終了~♪ いよいよこの物語も佳境ですな。 この物語の基本コンセプトっつーか、キャッチフレーズが 『6人の女子高生の恋・夢・友情の物語』なわけですが、恋と友情の部分は全話共通したテーマですが、『夢』については主に5・6話がその部分を担っています。 実はこの6話、ストーリーの流れは全部出来ているものの、文章化されてるのはその半分もありません(苦笑)。というわけで、完全書下ろしの7話はもちろん、この6話についても、今まで以上にストーリー進行が遅くなると思われます。 どうか、のんびりとした気持ちで、今後を見守ってやってくださいませ。
それと、この物語の時代設定を書いた当時そのままの平成5~7年にしたのか、その種明かしがこの6話の中に出てきます。 たいした理由じゃないんですが、どうぞそれもお楽しみに。
2002年07月12日(金)◆◆
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.◆◆第5話:『GROWIN’UP』⑥(最終回)
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「第5回・ジャパンミュージックフェスティバル地区予選・審査結果を発表します!」 なお、当予選での一位の皆さんには、来月東京にて行なわれる本選に参加していただきます」 あたしたちは客席で息をつめて見守る。早く発表を聞きたくて、心臓がばくばく鳴り始めて、司会者の説明さえもどかしいくらいだ。 「それでは発表します。・・・第三位・エントリーナンバー15 ・『BLACK』!」 あと二つだ・・・。隣に座っている麻里がうつむいて何かを祈っているのか、顔を上げようとしない。
「・・・・第二位・エントリーナンバー9、『CINQ』!」 後からリーダーと浅倉さんのため息が聞こえた。二位。あたしたちにとっては二位では意味がない。本選に出られるのは一位だけなのだから。 結局・一位はリーダーたちがライバル視していた『プロクレイム』の人たちが獲って、次は各パートごとのベストプレイヤーの発表が行なわれるようだった。 「それではベストプレイヤーの発表です。各部問ゴールド・シルバー・ブロンズの3名を選出します。それではギター部門から!」 「少なくともこれのどれかの賞には入りてーよな」浩司がぼそり・とつぶやいた。
「ギタリスト部門・ゴールド賞は『プロクレイム』の天野翔さん、シルバー賞は『CINQ』の桑原浩司さん、ブロンズ賞は『BLACK』の中山正人さんです!」
「ベーシスト部門・ゴールド賞は『TIMES』の木野直也さん・シルバー賞は『CINQ』の嶋田貴弥さん・ブロンズ賞は『プロクレイム』の島崎陵さん!」
「キーボード部門・ゴールド賞は『CINQ』の浅倉寿史さん・シルバー賞は『プロクレイム』の小川奈月さん・ブロンズ賞は『TIMES』の小村哲朗さん!」
「ドラマー・パーカッション部門・ゴールド賞は『REVUE』の寺内正美さん・シルバー賞は『プロクレイム』の近藤大介さん・ブロンズ賞は『CINQ』の海藤麻里さん!」
「最後に、ヴォーカリスト部門・ゴールド賞は『CINQ』の海藤絵里さん・シルバー賞は『プロクレイム』の麻生理佳さん・ブロンズ賞は『TIMES』の内之宮隆さんです!」
「俺たちって、ひょっとしたらすげー腕の持ち主なんじゃねーの?」 オーディションが終わって、いつもライブをやってる『Freedom』での打ち上げの席で、二位に終わって落ち込んだのも忘れ、個人部門では全員三位以内入賞という快挙に、みんな上機嫌だった。 「浅倉の一位はまあ当然として、絵里ちゃんがこんなに本番に強いなんて思わなかった!今まででいちばん良かったよ!」めったにひとをほめないリーダーの口から出た言葉にあたしはさらにうれしくなる。 「すげーよな。俺たちって本当にすごいよ!」浩司がいまだ興奮がおさまらん・といった感じだ。 「本当に。ブラバンで賞もらったときよりもうれしいよ!」ドラムで賞を取った事のある麻里もこれ以上はないってくらいの喜びようで。 「やっぱ、次への目標ができるよな、こういうふうに実績ができるとさ。夢が現実になるのかなーって気がするんだ」いつも冷静な浅倉さんでさえ、喜びを隠せない表情だ。
「・・・やっぱり、あたし何年かかってもプロになりたい・・・」あたしは思わずそうつぶやいていた。 やっぱり歌うことが好きだって、今日はっきり自覚できた。 妥協なんかしたくない。何年かかってもプロになりたい。いつか必ずきっと。麻里と、浩司と、浅倉さんと、リーダーと。誰一人欠けても意味がない。『CINQ』のメンバーでプロになりたい。 今まではいまいち自信がなかったけど、今なら声を大にしていえる。たとえ反対されてもこの想いを貫き通してみせる。
あたしは、どこまでも夢を追いかける。 『CINQ』のメンバー5人で、何年かかるか分からないけど、夢に向かって歩いていきたい。 いつかきっとその夢を実現して、誰よりも輝く光を放つひとになれる、その日を信じて・・・。 [THE END]
2002年07月03日(水)◆◆
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.◆◆第5話:『GROWIN’UP』⑤
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一次のテープ審査を無事通過して、8月1日の地区予選に向けてますます練習に熱が入る『CINQ』のメンバー。この地区予選で一位をとらないと、東京での本選に出られないから。 誰も口にしないけど、最終目標はメジャーデビューだと、誰もが心の中で思っていた。 そして、当日。 会場のホールにあたしたちが到着すると、すでに出場するバンドが何組も集まっていて、熱気と独特の空気であふれていた。 「見ろよ、浅倉。『Proclaim(プロクレイム)』の連中だ」 「でも嶋田さん、あいつら、解散したんじゃなかったっけ?」 「一度はな。でもほとんどが同じ大学だから、再結成したんだろ。あいつらが出てきたとなると、手強いよな」急に真剣な顔になるリーダーと浅倉さん。あたしは訳がわからずに二人に聞く。 浅倉さんが言うには、彼らはふたりの高校の後輩で、元々は天城中央高の軽音部時代に結成したバンドで、当時の人気ナンバー1だったという。 「プロクレイムだかプログラムだか知らんけど、俺らの実力を出しゃいいことじゃん。関係ねーよ」こういうときは浩司の強気な発言が頼もしく思える。みんなの緊張がほぐれた時、リハーサル室のドアが開いた。 「六番から十番までの方は舞台にお願いします」 舞台袖で待機するあたし達。なぜか全然緊張することなく、やがてあたしたちの前のバンドの演奏 が終わった。
「・・・エントリーナンバー9、『CINQ』の皆さんです!」 「・・・・・よっしゃいくか!」ライブでのお約束・円陣を組んで気合いを入れてあたしたちはステージに飛び出した。 大舞台のはずなのに、あたしたちはいつもと同じように、・・・ううん、いつも以上にリラックスして、それでいて気合いの入った演奏を繰り広げている。 うん、いいね。今日はみんなのってるよ。メンバーと交わす視線・みんな楽しそう。みんな音楽が好きで好きでしょうがないって、すごくいい顔している。リーダーも、浅倉さんも、麻里も、それから浩司も。
間奏・浩司のギターソロ。やっぱりかっこいいな。やっぱり好きだわ・浩司のこと。 最後の音が消えていく瞬間、割れんばかりの拍手・拍手・拍手! 聴いてくれて・どうも・ありがとう!あたしたちは感謝を込めて何度も頭を下げた。
全てのバンドの演奏が終わり、いよいよあたしたちが待ちに待ったあの時間がきた。 「第5回・ジャパンミュージックフェスティバル地区予選・審査結果を発表します!」 (『GROWIN'UP』⑥につづく)
2002年07月02日(火)◆◆
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