加湿器に青白く照らされた、ぼやけた天井
かすかに揺らめき、その淡い青さがお日様との隔絶を知らしめる
先生、先生、と呼ばれ敬意を払われる
得意げになって知識や知恵を振りまく
けれども、胸の中は、がらんとカラッポ
子供を叱りつけ愛情を込める大きな父親
帰ってくると途端に、子供たちが言うことを聴くようになる、と
けれども、胸の内は、がらんとカラッポ
胸の内には何もない 私は何もない 私だけ、は何もない
それでもトボトボと歩き続ける
それでもボソボソと喋り続ける
それでもボロボロと呻き続ける
夕暮れの、お日様から最も遠い、ぼやけた稜線
チラチラと舞い踊る風花
ポツポツと生える枯草
ポトポトと足を落とす
目指しても 届かぬとも 知りつつも がらんとカラッポのまま
それが現在の私の在りのまま
また、そろそろ蜩が這い出てきて
また、そぞろに蜩が騒ぎ出して
また、そろそろお口が這い出てきて
また、そぞろにお口が騒ぎ出して
四季の運行に支配される蜩はロゴスで
各自の逸脱に支配されるお口はノモスで
どちらも、イデアから遠望すれば、臭いオナラと代わらない雑音
どちらも、訴えかける価値もなく個性もなく、一瞬で霧散する雑音
「はぁ、またくだらぬ音がしている」
と心の主はつぶやく
「はぁ、また顔面に出ていないか」
と心の表は警戒する
「はぁ、またこうして死へと近づいている」
と心の奥底は厭きれる
「はぁ、また厭世の罠にはまらないか」
と心の友は突き刺してくる
遠望が臨界になるように、なるように。
私は死者や唯一神やイデアに絡み取られてはならない
それが、人類の歴史が私に教えてくれたこと
なんとか、踏みとどまろうと、肉体の眼へと心を戻す
それが現在の私の在りのまま
付記:「望」は比較的高い地点から観ること。この場合はイデア界や神の世界を示唆。
「臨」は比較的低く近い地点から観ること。この場合はこの世を示唆。