ものかき部

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「 お待たせしましたか 」
2008年10月21日(火)



 ぼっさぼっさの爆発髪と寝ぼけなまこで階段を下りていく

 ぽいっとゴミ出し

 ガーガーと自動車、パスはピーピー、人はせわしなく、朝はすっかり仕事モード

 ぼっさぼっさの爆発髪と寝ぼけなまこで階段を上がっていく

「 愛の性活 」
2008年10月20日(月)

 母鳥の愛の巣から、羽ばたこうとする営みの苦しさは眉間に深い皺を刻み込んだ
 肩甲骨の躍動では決して消し去れない苦しみは、世界を広げなければ消えないと君子は囁いた

 職や性や機械や衣食の快楽は、歴史が鏡のように繰り返してはいつの間にか後戻りさせるよ
 書生の一室で得た知識など、強大な暴力の前には1本の蝋燭のように消え去ってしまうんだよ

 流氷つく湖から真冬には濁る海、湾曲美しい砂浜から夕日に沈む渦巻きの群れ、商人の意地が残った都会から異国の兵が占拠する深夜まで津々浦々と
 自らである事を放棄した消費社会の落とし子から、薬物だけが親友で一緒にいてくれる娘から、精神のストレスを肉体にストレスで与えることでしか解消できない人から、暴力衝動が抑えきれなくて何度も繰り返す友と

 心を重ねてきた
 口を紡いできた
 肉を交してきた

 遥かな地点へと世界を広げようと 広げようと
 眉間の苦しさを全てばら撒けるほど遠くへ、薄めてしまって気がつかなくなるほど遠方へと

 けれど、彼らは私の遠くにあったのではなく、実は私が持っていたものたちであった
 私が持っていたから彼らを引き寄せてきたのであった
 背理法でもなく数学的帰納のように無限遠への道でもなかったのだ
 
 眉間の皺が緩んで、寒中の三日月が視界に入るようになり
 君子の囁きから始まった性活は、ついに、無限縁の彼らと交わりをもたらし、背理法さえ否定した



題はRAMJA「愛の性活」から

 
 

「 積雪に微風 」
2008年10月19日(日)


 深海に揺らめきながらゆっくりと降る雪
 行った行為の業が赤い肉団子の海にシースノー

 想い出すと今でも狂おしいらしく、積雪が微風に、ブゥ、と遊びだす
 白い積雪の富士を映えさせる染井吉野が連れてくる春のそよ風も、生命の連帯と自己肯定を与えてくれる中秋の名月の艶やかな風でもない
 灼熱の太陽と狂気の湿度も、たんに体温を奪うだけの寒気と排気ガスで汚れる地上の雪でもない
 決してそれらでは触ることさえ出来ない肉団子の奥のシースノー

 誰かと同じ行為をすれば
 いいや、愛でこの肉団子を熔かしきるしかないのだろう
 
 深海に揺らめきながらゆっくりと降る雪
 行った行為の業が赤い肉団子の海にシースノー

 熔かしきって昇華して満月を目指すか、このまま地上で自然の営みに身を任せるか、それとも深海に帰郷するのか、


注記:シースノーは深海に見られるプランクトンの屍骸が地上の雪のように降る現象のこと

「 充分だよ 」
2008年10月18日(土)



 やっと横にいてくれるようになって
 闇夜からワンルームに戻る時の寂しさがなくなって

 けれど、あなたは本能の炎にチリチリとお尻を焦がされ
 つぎへ行こう つぎへ行こう と
 なにが無いよ なにが無いよ と
 あれが欲しい これが欲しい と
 時が経ってる 肉が老いるよ と

 ちょっとちょっと待って欲しいな
 だってやっと横にいてくれるようになったのだもの
 
 おぎゃあと親から産まれ出でて何十年
 これから朽ちてみんなと一緒の世界にいくのに何十年一緒にいるのだから
 もうちょっと 側にいるだけの喜びを味あわせて欲しいな
 ううん それだけで十分かもしれない
 独りで産まれた悲しみも 独りで朽ちる喜びも
 やっと横にいてくれるようになった それだけで充分だって

「 わが闘争 」
2008年10月17日(金)


 生の道徳、性の道徳、聖の道徳、正の、政の、世(せい)の、制の、清の晴の正の姓の道徳
 全てがいつの間にか入り込み、肉体の欲望、欲求、生理とわが体内で戦い続けてきている

 これからも血肉が滅ぶまで戦い続けるのだろうか
 全く私の関係のない闘争を繰り広げるのだろうか

 観念の量子が引き起こし続けるわが闘争


注記:副題は「 観念の量子Ⅱ 」です

「 望月な鈴虫たち 」
2008年10月16日(木)


 漆黒の葉々からチラチラともったいぶりながら慈愛深い穏やかさを大地に降ろし
 望月
 尽きない慈愛の届く落ち葉と冷酷に分けられる落ち葉

 全ての存在者に遍く施せぬ運命を背負いし
 望月
 地平すれすれから天空へと向かいながら運命に抗おうと

 深き慈愛がかくり世の死に人まで及ぶかのように幽玄が
 つらつらと足元の落ち葉に揺らめいている

 死骸のような噎せ返る刺激が鼻腔を突き刺し
 タドタドしい地平に脚下はビンカンに反応する

 うつし世の潜在が揺さぶられ血肉の塊に戻って
 漆黒を抜け天空に至った衛星の慈愛が続く一本道に出て

 右手坂下に広がり煌くこの世
 幽界を遮断して愛に恋に金に賞に快楽に宗教に明け暮れる亡者の群れ盛るこの世
 何時でも深き慈愛に受け入れられると錯覚し続けて、ついには忘れ去ったこの世

 リンリンリー
 リンリンリー

 左手の森から臭覚に続いて錯覚までも奪い去ろうと、鈴虫たちが


注記:「題字」は合っています。「漆黒(しっこく)」、「慈愛(じあい)」、「穏やかさ」、「望月(もちづき)」、「冷酷(れいこく)」、「遍(あまね)く」、「抗(あらが)おう」、「幽玄(ゆうげん)」、「揺(ゆ)らめいて」、「死骸(しがい)」、「噎(む)せ」、「鼻腔(びくう)」、「塊(かたまり)」、「衛星(えいせい)」、「煌(きらめ)く」、「幽界(ゆうかい)」、「錯覚(さっかく)」

「 寄葛藤 」
2008年10月15日(水)



 月陰に噛み浸かれて 気紛れに突き放されて
 大小の葉たちが不規則に重なり合って 弄ばれて
 沿い続けた影独り
 
 うつし世を掻き消そうとする
 無尽蔵に奪い尽くそうとする
 無意識へと追いやろうとする

 何時でも必ず輝く人工ライトに太い眉を寄せた 左手を寄せた 


注記:題字は禅語「打葛藤」を意識して

「 観念の量子 」
2008年10月08日(水)



 「ちゃんと世間の役に立っているか」
 「それでも人間か」
 「きちんとしろ、周りのように」

 研究書の紙から、釣り下がった紺色のカーテンから、くちゃっと放りなげられたビニール袋から、どんぶりに残ったご飯粒から入ってくる観念の量子たち
 ご飯、という語源に観念は含まれていて、製造物には目的に含まれていて

 体内に入り込んで決して分離できない程に巣食っている
 表皮常在菌どもがあらゆる黴から白皙を保護しているように

 自他不二によってあらゆる時へ空間へと観念を開放したからこそ
 観得てきた観念の量子

 「ちゃんと世間の役に立っているか」
 「それでも人間か」
 「きちんとしろ、周りのように」

 例えず、渇飛ばさず、憂わず、心寂しからず、継承せず、
 ただ、量子たちを観測し続けよう


注記:「量子(りょうし)」、「自他不二(じたふに)」、「表皮常在菌(ひょうひじょうざいきん)」、「渇飛ばさず(かっとばさず):「かっ飛ばす」と禅宗の「渇(かつ)」を組み合わせた造語」、「憂(うれ)わず」

「 秋の夜長の暇さ加減 」
2008年10月07日(火)




 数式で作られていないから、意見が合わない
 電気で出来ていないから、合理的な判断の限界がある

 だからこそ、前提状況が改変されても生き残る可能性が出てくる
 だからこそ、前提条件が固定されていると闘争ばかり

 また、喧嘩しちゃった

「 空のような 」
2008年10月06日(月)




 天使の白い羽を広げたような雲から差す光たち
 悪魔の漆黒を撒き散らしたような低い雲が遮ろうとしている

 その間に散りばめられた青の彩度の無限さ
 薄い薄い透明に近い水色から、ブラックに近い藍色まで何万色にも分けられそうな青色
 まるで世界中の人々のように

「 真実の弾丸 」
2008年10月05日(日)



 透明な誠実を詰め込んだ弾丸
 これで当らない真実の的なんて、ないのと同じ
 脳髄も猥雑も善悪もコンプレックスも詰め込んだ弾丸

 ばん!



注記:タイトルはkinggiddraに、インスピレーションはcapsule「starry sky」に

「 僕は君に 」
2008年10月04日(土)




 僕は君を救うことができない
 僕は君の悩みを聞くことしかできない
 僕は君の感情を10%も理解できない
 僕は君の替わりに苦しみを背負ってあげられない
 なんという
 
 僕は君を救うことができない
 僕は君に降り注いだ紫外線を取り除けない
 僕は君の探すものを決定できない
 僕は君の替わりに肉体的な死を背負ってあげられない
 なんという

「 かみ、神、迦微 」
2008年10月03日(金)



 われを守護天使が救いたもう
 大地を潤す慈愛の雨のように
 
 われらを迦微が救いたもう
 大地を温める超絶した日光のように


注記:「迦微(かみ)」本居宣長が『古事記伝』第3巻で「神」定義した言葉
   この迦微と守護天使の近接を意識して。また、慈愛、超絶もまた同様

「 生暖かい星 」
2008年10月02日(木)



 漆の闇夜にシトシトと降る雨が膝頭から下を濡らす
 簡易な扉が1つしかない蛸壺のような部屋に入る

 広い、ただただ広い闇夜の中、星の如くポツンと独り
 濡れた肉体が生暖かい温もりを帯びてきて、ポツンと独り

「 端言Ⅳ 」
2008年10月01日(水)


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