真面目に見られるメガネの間で遊んでいる白磁の君
幾つも落ち込んだ原因や、びっくりした時の眉の動かし方が一緒だったり
乙女のような暢気(のんき)な振る舞いにも、思わず重過ぎる荷物を置いて一休みしちゃうよ
執筆者:藤崎 道雪
胸ポケットに入れた白磁の君
お尻に行ったり前ポッケに着たりで、いっつも笑顔で体の周りを飛び回っている
座って考える人のように胸の中に落ち込んでいる暇なんかなくなっちゃったよ
執筆者:藤崎 道雪
ポケットに入れておきたい白磁の君
七変化の視線と献身と恥じらいが、初めて足の裏をこちょこちょと
初めて心から微笑んだらお返しも返してくれた白磁の君
執筆者:藤崎 道雪
帰り際、その異性のことが浮かんできた。
暗い林のような曲がり角を左に体を倒す疾走感の中。
首筋の汗を舐めとるように浮かんできた語彙達が遊びかけてくる誘い文句をよくよく聞いていると、どうも、その異性に頼っているのだろう?というまとめになってしまった。
限りなく暗天に薄められた三日月に、本当かな? と語りかけると、黒林が深夜に吐き出す二酸化炭素が返事を邪魔するように干渉現象を引き起こした。
永劫に縮小していくように後退していく登り階段と鳥居の先は、暗天に三日月がないように根源的な崇高と表象的な恐怖に渦巻いている。
振り返ると、もう出発点が観えなくなるように広がっていく降り階段と鳥居の間には、ポツリ、ポツリと3人の姿だけが幽霊のように白々く揺れている。
四肢の静脈から産まれる薄紫色の粘液が、染み出して全身を包み込みながら足跡に粘り残ってきたのだ。
決定的に決別した時、決定的に私が加速して慣性の力を振り切った時、決定的になった時、階段の上に粘液がその人の形状となって残ってきた。
暗い林のような曲がり角を左に体を倒す疾走感の中に感じたのは、立秋の夕暮れ、空高くに居まします透明なスカイブルーからブルーグラスリリーへのグラデーションなのだろうか。
何時の日かその異性は、この四肢と勝手に共鳴してミゾソバ色の粘液を噴出させていくのだろうか。
薄紫色の波長が離れていくと全ての重なり合った白くなっていくように、鐘音の鳴り響く中でその異性もまた、錯誤の総体となっていくのだろうか。
追記:文中の語、「薄紫色の粘液」は「 薄紫の粘液 」(2005年09月01日)を、「鐘音」と「錯誤の総体」は「 鐘音と共に 」(2005年06月16日)をご参照下さい。
執筆者:藤崎 道雪
卑猥で極悪で不道徳でさめざめで皮肉な行動をしていく時ほど、純文学が読みたくなってくるものだ
個般的な狂気が肉体に安楽でスローな浮遊感を与えてくれる
艶かしい漆黒の海に抱かれて、バターのように蕩(とろ)けだす三日月が、全ての五感を惑わして惑わして
ぷかぷかと
いつか陸地に戻って弱肉強食に放り込まれるまで
いつか停止が音連れて土塊(つちくれ)に放り込まれるまで
ぷかぷかと
ぷかぷかに不道徳の身を委(ゆだ)ねて目蓋(まぶた)を閉じる
追記:原題は「バターの誘惑」です。
執筆者:藤崎 道雪
入れたての紅茶を恐る恐る一口含んだ。
口の中に熱湯とは違う真っ赤な火の玉が生まれては吸収され、初めて口腔に充満していた粘液に気がついた。
思い出せば立秋の湿気から夕暮れの秋風までの、貪り合い。いやそれだけではない、お互いを肯定し合い、性別の情動の、個体の偏差の、正義感の歪みの、緩やかな狂気の、昇華する愛し合いの、仄(ほの)かな初恋の、絶対的な依存関係に基づいた肯定。
まとわりつく粘液の正体はまさにそれだ。
単なる雑音に聞こえてくるお喋りや、道徳的な善なる行為や、与えられた名誉や金銭の捕食、動植物のような欲望としてだけの性交、日常的な繰り返す朝食、感動や感謝のまったくない睡眠は、さらさらと流れていくだけなのだから。
囚われていた事実も支配されていた感覚も、気がつかないような薄紫色の粘液が、静脈にこっそりと隠れていた。
クンクンと二の腕を嗅いでみる。ある。
ふた口目の紅茶
み口目の紅茶を
ご口目の紅茶で完全に洗い流れた、その薄紫の粘液
執筆者:藤崎 道雪