2018年06月30日(土) |
黄金夜会 〜尾崎紅葉『金色夜叉』による〜 橋本治 |
橋本治 2018 読売新聞朝刊連載小説
STORY: 父を亡くし、友人一家に引き取られた貫一。その家の一人娘の美也は、貫一との婚約までしていたが、別の男と結婚が決まる。貫一はショックから家を飛び出し…。
感想: 尾崎紅葉の『金色夜叉』をモチーフに、現代版にアレンジした作品。
実のところ、名作をほとんど読んだことのない私。もちろん『金色夜叉』も題名と熱海に銅像があることぐらいしか知らずに読んだので、果たして原作と同じような結末を迎えたのかがよくわからないが、結末はちょっと衝撃的であった。
現代版なので、時代の流れも現代がモチーフになっており、そのあたりもなかなか面白かった。
特に貫一が美也の家を身一つで飛び出し、海に携帯電話も投げ捨てて連絡手段もなく、一人で生きていくことを決め、毎日を過ごすあたりが、非常に面白く、どんな展開になっていくのか目が離せなかった。
原作の方も読んだら面白いのかな? いつか読む機会があったら読んでみたいとは思うけれど、今の読書環境ではなかなか難しいかも。
毎朝楽しみな小説が終わってしまい、残念な気持ち。次の浅田次郎の小説は時代小説。浅田次郎はキライではないのだが、時代小説が受け付けないため、1日目を読んで挫折…。夕刊小説も挫折してしまったので、しばらく新聞小説とは縁がなくなりそう…。
久しぶりに映画を見に行ってきた。
オギー(ジェイコブ・トレンブレイ)は、両親の遺伝子の不幸な組み合わせのせいで、顔の奇形を持って生まれた。手術を何回も繰り返し、10歳まで学校には行かずに、母・イザベル(ジュリア・ロバーツ)が家で勉強を教えていた。
10歳になり、みんなが新しい学校になるタイミングでオギーは初めて学校に行くことになる。優しい父・ネート(オーウェン・ウィルソン)、高校生の姉・ヴィア(イザベラ・ヴィドヴィッチ)ら家族が見守る中、オギーは校長のトゥシュマン先生(マンディ・パティンキン)のもとへ。
校長は気を利かせて、3人の子供たちをオギーに紹介し、学校案内をさせる。奨学金をもらっているジャック(ノア・ジュプ)、金持ちの息子・ジュリアン(ブライス・ガイザー)、子役をしていることを鼻にかけているシャーロット(エル・マッキノン)。
3人の子供たちはオギーに好奇の目を向け、オギーは嫌な思いをする。学校が始まると、オギーはみんなから避けられるように…。
姉のヴィアはいつもオギー中心でいる家庭の中で、さびしい思いをしていた。それでも、親友のミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)が前まではいたので平気だったのだが、高校に入ってから、ミランダは近寄らなくなってきた。何が起きたのかわからないヴィア。
そんな時に出会ったのが、ユーモアのあるジャスティン(ナジ・ジーター)。次第に二人は仲良くなって行き…。
オギーのほうも、理科の才能を活かし、ジャックに答えを見せてやったことから、ジャックと次第に親しくなる。
母・イザベルもホッとして、オギーが生まれてからやめていた論文を書くことに再挑戦することにする。
しかし、オギーはジャックの本音を聞いてしまい、友達不信に。そこに声をかけてくれたのは、サマー(ミリー・デイビス)。
オギーはもともとの頭の良さ、ユーモアのある性格から次第にクラスの子供たちとも打ち解けていくが…。
子供たちの友情や成長、そして、高校生の友情や恋愛模様、家族のあり方など、盛りだくさんの内容を入れながら、非常に感動的な作品に仕上がっていて、号泣ものだった。
すごく良い映画を見たと思う。
しかし、こういう映画を見ると、自分の子育てはどうなんだろうとつい思ってしまう。もっとよい母親になれるんじゃないか?とか…。
まあ、難しいけど。
それと、アメリカのいじめ問題も日本と似たような感じなのかと…。
金持ちジュリアンは、いじめの証拠を押さえられて、両親が校長に呼ばれるのだが、両親の態度がひどい。日本のドラマなどでも、両親が開き直るシーンが放映されているが、アメリカでも同じなんだなと。
親として思うけれど、もし自分の子供が卑怯なことをしていたら、頭を下げられる人になりたいとは思う。でも、そういう人の子供はいじめはしないのかもしれんなー。逆にいじめられるのか…。
2018年06月18日(月) |
やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる |
NHKの土曜ドラマ。
スクールロイヤーとして青葉第一中学校に派遣されることになった田口章太郎(神木隆之介)は、赴任早々、学校のあらゆる問題に向き合うことになる。
望月先生(岸井ゆきの)から体罰を受けたと騒いでいる保護者・水島(堀内敬子)。吹奏楽部の騒音がうるさいと文句を言う近所の男(渡辺哲)、バドミントン部では先生が見ていない間に生徒が怪我を負い、いじめで自殺未遂を図る生徒も。
その問題に弁護士ならではの視点から解決を試みる田口に対して、反発するベテラン教師の三浦(田辺誠一)。学校には学校ならではのやり方があると、旧来からのやり方にこだわろうとする。
また、事なかれ主義の校長(小堺一機)は、自分の責任逃れに徹している。
学校の抱える今時の問題を提起するドラマだった。特に最近の中学生はスマホを持っていて、スマホがトラブルに一役買っているのが今時だった。
先生が体罰をするかのようなシチュエーションにして、それを動画に撮らせて拡散させ、先生を追い込んでいったり、いじめもその様子を動画で撮影して、それを拡散する形式である。
どちらのケースも、当事者の生徒は全く悪びれていないのが恐ろしい。教師が体罰をできないことなどを逆手にとって悪いことを考えている。
こういう生徒が一番たちが悪いと思うし、どうしてこんな風になってしまうんだろうなと…。
道徳教育とかも始まっているみたいだけれど、スマホやネットの使い方、モラル、マナーなどをもっと低学年のうちから教え込んでいかないといけないのだろうか?
問題提起という意味では面白い作品だったかもしれないが、田口があんまり魅力がない。青臭すぎるというのかなー。
せっかくの神木隆之介なのにもったいないというか。
もう少し違うキャラクターのほうがよかったんじゃないかなとも思ってしまった。
2018年06月15日(金) |
ざわつく女心は上の空 こかじさら |
こかじさら 双葉社 2017
STORY: ただの主婦だったはずの榎本さわこが、あれよあれよという間に大人気料理研究家になり、変化していく。その様子に周りの人たちの心はざわつき…。
感想: ただの主婦だったはずの榎本佐和子は、小学生の娘と息子が成長してきたことから、フードコーディネーターの青柳美香子のもとで下働きのバイトを始める。
ところが、敏腕雑誌編集者の山上から、雑誌のページに掲載する料理を作ってくれと頼まれ、1回だけのつもりが人気が出てしまったことから、人気料理研究家・榎本さわこへと変身していく。
同じマンションの住人・水戸智恵子一家とも家族ぐるみで付き合っていたが、自由ヶ丘のキッチンスタジオ付きの豪邸に引っ越してしまう。榎本さわこのもとには、追っかけのようなファンが集まり、1回3万円もする料理教室はすぐにいっぱいになってしまうほど。
しかし、家族の心はどんどん離れ、「家族の喜ぶ顔を見るのが幸せ」と言っているのに、夫は単身赴任の上、不倫、子供たちもそれぞれ遠くの学校に行ってしまい、榎本さわこは孤独に幸せな主婦を演じ続けているのだった…。
それぞれの人々から見た榎本佐和子を描くとともに、最後は榎本佐和子本人の視点からの作品も。
人はちやほやされて持ち上げられて、自分の根っこをすっかり忘れてしまうことがある。もっと地に足をつけて、身近な幸せに目を向けて生きていくほうがいいんだろうになーと思ってしまった。
それぞれの視点から見ると、同じ出来事もまた別の印象があり、なるほど、そういう考えもあるね…と思わされる部分もあった。
なかなか面白く読むことができた。
荻原浩 光文社 2018
STORY: 福島の原発事故の後に架空の原発テロが起きた未来の日本が舞台。ヤクザでアル中の及川頼也がその特異な反社会性パーソナリティー障害を治療するために精神病院に治験に行くことなって…。
感想: 久しぶりの荻原浩の小説は、ヤクザで反社会性パーソナリティー障害を持つ男が主人公。そのため、最初から結構ハードな描写が続く。暴力的な描写が多くて、ちょっとそういうのが嫌いな人は最初でダメっぽそう。
私もあんまりそういうのが好きじゃないので、最初の段階でちょっと失敗したかなーって思ってしまった。
が、読み進めるうちに、恐怖を感じないというウィリアムズ症候群という遺伝子疾患を持つ少女と出会って、少しずつ変わっていく様子に少しずつひき込まれてしまった。
あと、精神病院で拘束されたりという描写も物珍しく…。
ただ、どうしてこの少女と出会って、主人公が変わるのかとか、なぜなのかの説明がなくて、そこが少し弱いような気も。そして、終わり方が唐突でまだ続きが読みたいんじゃー!!というところで終わってしまったのも、私的にはちょっとイマイチな感じであった。
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