2013年09月30日(月) |
モンスター 百田尚樹 |
百田尚樹 幻冬舎文庫 2012
STORY: 田舎の町で洗練された高級レストランを経営する絶世の美女・未帆。かつて彼女は誰からも避けられるほどの醜い女だった。美しくなった彼女が本当にしたかったこととは…。
感想: ものすごいブスに生まれついていたら…人からどんどん冷たくされ、からかわれ、卑屈になり、見た目も心も薄汚くなっていく。一方ものすごい美人に生まれたなら、人から優しくされ、ほめられて自分に自信を持つようになり、見た目も性格もよい人物となる…。
これは、ある意味、的を射ているらしい。
私はここまでのことは思わないが、確かに人から冷たくあしらわれたり、からかわれたりすると、卑屈になる。人を恨めしい目つきで見たりするようになれば、顔つきが暗くなり、きつくなる。そうすると、誰も近寄りたくなくなる…というのは否めないような気がする。
ブスでも明るく笑顔を振りまいていれば、そこまでブスだとか不気味だとは思われず、あの人は明るくて面白い人という印象になるのではないだろうか。
主人公の未帆は自分が引き起こした事件のせいで地元にいられなくなり、名前を変え、東京へ。知らない人ばかりの東京でも、主人公を受け入れてくれる人はいなくて、つらい日々を過ごす。
そんなときにふと試した二重にする整形。それだけで自分の目が素晴らしく思え、他の場所とアンバランスだとほかの人に陰口を言われても、めげない。
お金をためて、とにかく美しくなりたい…その一心で、風俗にも手を出していく。
これ以上美しい人はいないというほどまでになった時、彼女は田舎に戻り、レストランを開いて、自分の意中の人を待つ。
自分を昔、悪しざまに扱った人に復讐をしたりしつつ…。
にしても、男って…と思わせる…。
一気に読んだけど、なんか悲しい話だったねー。
2013年09月29日(日) |
Oh, My Dad!! |
織田裕二が主演のドラマで、子供が出てくるし、ちょっと面白そうかなーと思って見てみたら、視聴率はあんまり奮わなかったみたいで、ボロクソ言われちゃってたりして、ちょっとかわいそうだったかな。
確かに初回から数回目あたりは、織田裕二扮する新海元一がダメすぎたりして、突っ込みどころも満載だったかもしれない。
研究という名の道楽に金を費やし、妻(鈴木杏樹)の金を当てにして、家庭を顧みない…。妻は愛想を尽かし、子供である光太(田中奏生)を置いて家を出て、一切の連絡が取れなくなってしまう。
家賃を滞納していたため、家を追い出され、研究を続けるために借りていた場所も取り壊されることになり、出て行かざるを得なくなり、ファミレスやネットカフェみたいなところに泊まろうとしても、子連れだと難しく、結局公園に野宿…。
今まで職歴がないため、ハローワークに行ってもあまり相手にしてもらえず…。
それなのに、行政を頼ったりはしようとせず、子供は相変わらず保育園に行けていて(保育料はどうしてたのか謎)、人にも頼ろうともしないのでちょっとどうなんだろうと思っていたら、ついに児童相談所が出てきて、光太を連れていこうとする。
そこに出てきたのが、元一の元恋人・早坂(長谷川京子)。自分の高級マンションに2人をとりあえず住まわせることに。この早坂さんもなんだかちょっとわからないキャラで、助けるなら最初からもっと助けてあげてもいいのになーとも思ったり…。
で、突然別れた妻から離婚の調停を申し立てられた元一は、早坂が勤める会社で、無給のインターンとして採用されることに。これはインターンの中から数人だけが正社員になれるが、残りの人はただ働き…という制度らしく、なんか前に見た「しあわせのちから」だったかな…。映画に似てるような…。
にしても、ここまで徹夜っぽく休みなく働かせておいて、無給ってありえるのかしら? こういうのは労働基準法とかに違反にならないのかしら? インターンだから仕方ないのか? 交通費ぐらいは出してもらえているのだろうか? 気になった。
結局妻に引き取られて、親子離れ離れになり、正社員も不採用が決まり…。
でも、父と子の絆は切ることはできない。妻が出ていった間に二人の信頼関係は強いものになっていた。
このあたり、子役の田中くんはとてもうまかった。最初の方で、父親の会社に保育園を休んで無理やりくっついていくとか、変なわがままを言わせる設定にしたのがもったいない。
それと、いくら夫に愛想を尽かしたからといって、子供を置いたまま家を出てしまった奥さん…。あんまり共感できなかった。電話をしても出ないし、メールにも返事をよこさない。挙句の果てには電話番号を変えて…。
その間、そんなダメ夫が子供と二人でうまくやれると思ったのだろうか? 私なら、気になって仕方ないと思うんだけど…。
その間の妻側のエピソードが全然なくて、唐突に離婚調停をしてほしいと現れるので、もう少し妻側のエピソードも描いてくれたらよかったんじゃないかと…。
すごく視聴率が低かったみたいだけれど、私としては突っ込みどころがありながらもそれなりには楽しめた。
何より息子(3歳)が光太くんの着ている電車の服とか、鉄道博物館に行くとか、そういうシーンに目をキラキラさせていたからよかったのかな。
NHKの朝ドラ。工藤官九郎脚本。最初から面白くて引き込まれた。
母・春子(小泉今日子)の田舎、岩手の北三陸で海女になろうと決心するアキ(能年玲奈)が、親友のユイ(橋本愛)とともにアイドルになろうと上京するまでを描く北三陸編と、アキが上京し、アイドルを目指して奮闘する東京編、そして、311の震災後、アキが再び北三陸に戻って地元を盛り上げようとする震災後編の3部って感じの作品。
北三陸から東京へ出たあたりで、ちょっと乗れないかな? 北三陸編が面白かったからなーと思っていたけれど、昔の春子と太巻(古田新太)と鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の関係などの謎が明らかになるにつれて、それなりに面白くなってきたから不思議。
そして、震災の場面の描写方法もすごく配慮されていたし、ぱらぱらマンガを使っての解説を入れたり、模型を使ったりとわかりやすく…。震災後の東北の人々の力強さ・明るさも素晴らしくて、最後は段々盛り上げてくれて、これぞ最終回という感じの終わり方で、個人的には続編はもうなくていいかな…って思った。
個性的な人々が適役で脇を固めていて、どの人にも思い入れができるような感じ。
オープニングの音楽も明るくて、楽しい気分になれる曲で、息子もノリノリだった。中で使われている挿入歌も思わず歌いたくなっちゃう曲がたくさんあったし…。
誰もドラマの中で死ななかったし、悪い人もいなかったし、安心して見ていられる話だったかな。
ただアキとユイの友情関係って、なんだか不思議な感じだね。ユイって結構一緒にいて疲れるキャラかもしれないなーと思ったり。そんなユイの親友でいられるのは、やっぱりアキだからなんだろうね…。
桐野夏生 光文社 2013
STORY: 江東区のタワーマンションに住み、子育てをしている有紗は、同じタワマンの高層階に住むママ友グループに所属。しかし、経済感覚も生活レベルも違うママ友に悩みを打ち明けることもできず、一人で子育てすることに閉塞感を感じていて…。
感想: タワーマンションのことをタワマンと略すらしい。そこで暮らすことが一種のステータスなんだとか…。でも、実際住んでみると、隣近所のこともよくわからないような生活みたいだ。
有紗は過去の出来事を夫に打ち明けなかったことから、夫が家を出ていってしまい、音信不通となっている。その出来事をママ友たちには伝えられず、事実を偽ったままグループにいる。
しかし、自分とタワマンに住んでいるわけではないが、スタイルもいい美雨ママの2人を、ママ友グループは人数合わせぐらいにしか思っていないと美雨ママに伝えられ、気持ちが乱れる。
急速に美雨ママと接近していく有紗だが、美雨ママには重大な秘密があって…。
有紗は見栄でタワマンの賃貸に住んでいるけれど、夫は出ていってしまって、経済的にも苦しい。ほかの者たちはそのことを見抜いているわけではないだろうが、経済的格差があることはわかっているのかな。
私としては、有紗がどうしてここまで見栄っ張りなのかわからないし、自分の身の程にあったところで暮らした方が気持ちも楽なのに…とあまり共感はできないところが多かったかな。
結局、最後は夫とやり直すかも…という感じになっていたけれど、私はこんな身勝手な夫とは一緒にやれるだろうか…と考えてしまった。
また、美雨ママもママ友の夫との不倫…。幸せになれるのか?と思ってしまう。
とにかく経済状態がどうであれ、このママ友グループはみんながみんな見栄っ張り系で、疲れそう。本音も話せないなら、仲良くもなれない感じだ。
最後までこの調子だったけれど、きっとこの人たちはこの先もこういう人生を歩むんだろうな。
先日見た「激流」もそうだったけれど、お受験とかをするお母さん方はこういう人が多いのかね…。
久しぶりにすごいドラマを見たなーという印象を持った。
夫・信(小栗旬)を不慮の事故で亡くした小春(満島ひかり)はシングルマザーとして2人の子供を育てる苦しい日々を送っていた。
ある日、生活保護の申請をしに役所に行くと、小春を置いて再婚した母・紗千(田中裕子)が経済的に援助ができるということで、申請が却下されてしまう。
小春と母は心の行き違いから疎遠になっており、小春は母を頼るつもりはなかった。援助を断るために母と再婚相手・健太郎(小林薫)の家に行った小春だったが、健太郎は紗千と小春に仲直りをしてほしいと思い、小春の子供たちにも優しく接するのであった。
最初は母を拒絶する小春だったが、自らが難病に侵されていることを知り、子供たちのためにも生きることを望むように。
しかし、夫を死に追いやったのは紗千と健太郎の娘・栞(二階堂ふみ)であることがわかる。また、信が小春と母を仲直りさせようとしていたこともわかる…。
絶妙な緊張感が漂う中、彼らの気持ちをとどめたのは小春の子供たちの無邪気さだった。大人たちのいざこざも子供たちの前では影をひそめるようになる。
そして、みんなの気持ちをほぐしていく…。
前半は、シングルマザーの厳しい生活をまざまざと見せつけられる描写が続く。こんなになっても生活保護がもらえないの?と言いたくなるようなシーン。
でも、私が一番すごいと思ったのは、こんなに生活が苦しいというのに、小春は常に子供たちに優しいこと。私ならできるだろうか? たぶん、自分がつらいときに子供がぐずったりなんだりしたら、私ならたぶん怒鳴ったりしてしまう。優しくできないかもしれない。
いや、今ですら、そうだと思うと、自分の至らなさ、親としての未熟さを感じさせられるような気がした。
後半は壊れた家族が修復できるのか、難病の小春がどうなっていくのかが中心に描かれていた。
終わり方は希望が持てたし、よかったなと思った。
子役の子たちを含めて、みんな演技がうまくて、すごくよかったと思う。
ただ一つ腑に落ちなかったのは、医者(谷村美月)と役所の所員(三浦貴大)の夫婦が最後に離婚を選ぶところ。何とか3人でやり直す道はなかったのかなーと思うと、残念だった。
栞役の二階堂ふみ、すごくわからないキャラクターだった…。悪いと思っているのか、思っていないのかいまいちつかめない今時のキャラだった…。なんとなく宮崎あおいを連想させるのだけれど…似てない?
2013年09月14日(土) |
神去なあなあ夜話 三浦しをん |
三浦しをん 徳間書店 2012
STORY: 林業にも慣れ、神去村での生活にもなじんできた勇気。村に伝わる話や直紀との恋の行方について描く。
感想: 「神去なあなあ日常」の続編。
前作は2009年に読んだ。内容は何となくしか覚えてなかったが、前作を読んでなくてもそれなりに楽しめる。
勇気はだいぶ成長して、一人前になりつつある。そして、神去村にかなり溶け込んでいる。
年上の直紀との恋の進展はなかなかないけれど、少しずつ近づきつつあるし…。
村の謎や過去のことを知るようになったり…。
車の免許を取ったり、三太のためにクリスマスパーティーを開いたり…。
結構面白かった。
すごく軽い文章だから、すぐに読めるのもよいかも。
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