2009年11月28日(土) |
哀しい予感 吉本ばなな |
吉本ばなな 角川文庫 1988(1991)
STORY: 幼い頃の記憶がなぜか一切ない弥生。ある日、おばで変わり者のゆきのの家に家出し、そこで段々幼い日のことを思い出していく。
感想: 吉本ばななといえば、私が高校・大学生の頃にかなり一世を風靡していた作家。その頃の自分は、そういう風に騒がれている作家の作品を何となく毛嫌いしていたので、読もうとあまり思わなかった。
そして、今頃になって、ちょっとあの頃話題になっていた本でも読んでみるか…と読んでみると、確かに爽やかな印象を受けるような気もする。
が、もし、あの頃に読んでいたら、また今とは違った感想を持ったような気もする。
主人公の弥生は19歳。今の私は、その倍くらいは生きているので、その時代の葛藤みたいなのを読んでも、当時の自分ほどにそういうものを感じられないのかもしれないなと思う。
でも、今になって読んでも、時代を感じさせないような普遍的なものが流れているような気もする。
なにせ、初版は1988年。80年代後半なのだから…。
最近自分が手を出す本も、2000年代のものが多くなっているわけで、久々にこんなに古い年代の本を読んだような気もするのである。
それでも、色褪せてはいないような気がした。
2009年11月21日(土) |
食堂かたつむり 小川糸 |
小川糸 ポプラ社 2008
STORY: インド人の恋人に室内のものをすべて持ち逃げされた倫子は、声が出なくなってしまい、渋々折り合いの悪い母の住む田舎へ戻る。そこで、予約だけを対象にした「食堂かたつむり」を開店させ…。
感想: 評判がよいと聞いており、ずっと読みたいとは思っていたけれど、なかなか手を出す気になれなかったのだが、予約が少なくなって来ていたので、手を出すことに…。初めての小川糸の本…。なかなかいい感じだった。
恋人に捨てられた倫子は田舎に戻る。そして、折り合いの悪い母に頼み込んで、食堂を開店させることに。
食堂を自分好みに作っていく過程や、様々な料理を一から作っていく描写など…本当によい感じで、特に料理を作るシーンがおいしそうで…。
店で食事をすると願い事がかなうというまことしやかな噂が立ち始め、物珍しく思う客がやって来るようになるが、その後は料理を食べておいしかった人が再びやって来るようになる…。
以下ネタばれあり。
母が病にかかり、初恋の人と結婚式を挙げることになり、その料理を倫子が担当する。大事に飼っていた豚のエルメスを殺さなくてはならないシーンはちょっとギョッとした。でも、人間はこうして動物の命をいただいているんだなぁ…と思った。
母の死後、母の本当の気持ちが綴られた手紙が出てきて、倫子は自分がかなり母のことを誤解していたことなどに気づく。この手紙が何だか泣ける。
母が最後に「声を聞かせて」と話しかけてきたときに、寝たふりをしてしまったことを倫子は後悔する。
そして、母の死後、食堂は閉鎖したままに…。
最後に野生のハトのことを母だと思って、料理をする場面はよかった。そして、自分が心を込めて作った料理を初めて食べた倫子は、ついに声を出すことができるのだった…。母の愛だったのかな…。
死ぬ前においしいものは食べておくこと。そして、死ぬ前にわだかまりは取っておくのが望ましいこと…。そんなことを考えさせられるのだが、人間は結構死を前にしても素直になることができないものなのかも…。
倫子が再び食堂を再開して、人の喜ぶ姿を見たいと思う最後もよかったと思う。
2009年11月08日(日) |
おそろし 宮部みゆき |
宮部みゆき 角川書店 2008
STORY: ある事情から叔父・叔母夫妻に預けられたおちかは、叔父の計らいで変わり百物語の聞き手となる。そして、自らの忘れ難い過去と次第に対峙していくことに…。
感想: 読売新聞の朝刊で現在連載中の宮部みゆきの時代小説が面白い。どうやらこの小説の前の作品がこの『おそろし』らしくて、おちかの過去が知りたかったので、読んでみることに。
なるほど、こういう過去があったのか…と合点がいった感じ。
これから、朝刊小説もますます楽しめそうな…。
|