「エ、買った?そんな…ムチャクチャな…!」と安孫子が驚いた。
「現地も見ないで、契約したって?」と、藤本があきれた。
土地を買ったのだ。藤子不二雄の紹介でやってきた、
不動産屋のセールスマンが広げた図面を見て「それじゃ、ここチョーダイ」。
場所は川崎市生田。藤子たちはすでに現地を見て、買っていた。
「イイ場所だヨ。石森氏も買いなヨ。
みんながまた近所に住んだ方が楽しいし、何かと便利だし…」
それだけで買う気になった。
◇
藤子不二雄が引っ越して行った。
川崎に買った土地に、二軒続きの家を建てたのである。
庭で往来の出来る、コンビにはお似合いの新居であった。
「静かでいい場所だヨ。近所にまだ空いてる土地があるから、
角田氏にも声をかけているんだけど…。早く建てて、石森氏もおいでヨ」
★章説 トキワ荘・春/石森章太郎★
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