○プラシーヴォ○
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2002年05月31日(金) タッチの差

マンガを買って


ビールを買って


大丈夫、これで退屈しない
ハム男は今ごろ
テレビのサッカーに釘付けのはず



思ったとおりだった


ああー、何やってんだよ
とテレビにハム男が呟く

ピザを食べる私

お疲れさま、仕事どうだった?
とハム男がコマーシャルの間にキスをする

まあまあです、とビールを飲む私

そこに蹴るかあ?と
またハム男がテレビに呟く

洗濯物を干す私



サッカーが終わり

セックスが終わり


眠りにつく瞬間、たまらずに私は口を開いた



ダメヨ、と
プライドが私の口を押さえる前に
私は言ってしまった




「ハム男、もう私に会いたくなんてないんでしょう
 サッカーや、あなたの友達との約束の後回しだもん
 私ばっかり好きみたい
 不安だよ、もう疲れちゃったよ」


なんて醜いセリフだろう
相手に

「そんなことないよ」

と言って欲しいのがミエミエの
ずるいセリフ


期待を裏切らず、ハム男は言った


「どうしたの急に…
 会いたくないわけないじゃないか」


そう言って、私の涙を拭くために
体をねじってティッシュを取った


「付き合い始めた頃を思い出してよ
 俺ばっかり、がちゃ子に電話をしてたよ
 がちゃ子から電話がかかってくることなんて
 なかったじゃない
 あの時の俺の方が、遥かに不安だったと思うよ」




うわーん



マンガじゃあるまいし

まさか自分が


うわーん


って声で泣くとは思わなかった


安心して
ばかばかしく思えて
喉が震えて泣き声が出てしまった



いっぱいいっぱいセリフを考えてた
モンモンとしてた


もう面倒くさくて
別れたほうがいいのかもしれないだなんて
思ってた



なのに


「俺は会いたいよ
 何が不安なの?」


とアッサリ言われると


自分でも分からなくなる


私とハム男は両思いで




これ以上何がいる?



私より遥かに温度が高い
ハム男の体温に抱かれて

私の思考は
これ以上ないくらい


シンプルになっていた


2002年05月30日(木) 正しいオトコの育て方

もしや

ハム男がこんな
ふぬけ野郎になったのは


私のせいなのだろうか



会いたい会いたいと言わない私
粘着質じゃない私


こんな私に似てしまったのだろうか


一週間に1回くらいしか
鳴らなくなった電話



一緒にいても
ならなくなった胸



同じことを
ハム男も感じてる?


私たちは
このまま
どこへ行く?


2002年05月26日(日) 怒らないでください

もう本当に私は疲れていた


新しい仕事に就いて丸一週間目


体を使う接客業で
私はもう本当に ヘトヘトだった


なのに

私は今、歩いている

ハム男の家から歩いて20分ほどの
写真屋へ、写真を現像するために


「車に乗って出かけるのに
 どうして駐車場をとおりすぎて
 ここまで歩かなきゃいけないの?」


「俺、写真屋の側に自転車置きっぱなしだったんだ」


写真屋の前で一旦別れる


ハム男は、自転車で駐車場まで少し戻って
車を取ってくると言った


5分後、徒歩のハム男が
帰ってきた


「自転車盗られてた」

「それはいいけど…
 なんで徒歩で帰ってくるの
 駐車場まで歩いていって
 車で帰ってきて欲しかったんだけど」


ハム男が首をかしげる

「お前はVIPか?」


私の手を引いて、グイグイと歩いていく

後で7月上旬並みだと観測された今日


暑い暑い
どうして私、歩いているの


フラフラで、ハム男が行きたがっていた
スーパーと百貨店を足して2で割ったような
ところへ到着した


晩御飯の材料を買おうと
食料品売り場へ流れ込む


頭がボウッとする


ただでさえ
料理嫌いの私なのに

とてもじゃないけど
買い物なんてする気にならない


このままこの冷たそうなリノリウムの床に
倒れてしまいたいほどだ



「何しようかな…
 エビフライとか、どうかな」


ああ、眠い
気分悪い


はっと

気がつくと


目の前に露骨に不機嫌さを表現した
ハム男が立っていた

右手に冷凍ブラックタイガーを持って

そして苛々と私に言葉をぶつけた



「なんでそんなにダルそうなの?
 俺が一生懸命料理のことを考えてるのに
 一緒に材料を探そうともせずに…」


だって、しんどいんだもん


ハム男、初めて怒ったね


怖いよ


クルリと背を向けると
ハム男は一旦カゴに入れた材料を
次々と棚へ戻し始めた


「出前とろう
 今日は料理するのやめた」


怖い怖い



帰りの車で


「ごめんね
 今度ちゃんと料理するから」



ん。


短くハム男が返事をした




ねえ、別れようか



返事を、してくれなかった



どうして
否定してくれないの


2002年05月18日(土) 制圧す

うらうらと眠気のままに
枕に頭を落とした







声だけでも
聞いてみようかいの


自分からなんて
滅多に電話すること無いのに
気合をいれてダイヤルする



午前0時50分
ハム男の携帯に電話をかける


繋がらない
ワンコールもせずに
留守電の音声



飲みに行くと言っていたから
地下にいるのか
それとも
コンパかなんかで
私の侵入を防いでいるのか



10分後
もう一度鳴らすと

コールを何回かした後
留守電になった



もういい


プライドをがっしり押さえ込んで
自分から電話したけれど
力つきた


午前2時

ハム男から電話



「がちゃ子?
 電話ありがと
 明日、迎えに行くから
 いいね?待ってるんだよ」


有無を言わせないハム男の声


ハイ


と返事をすると



んふーん




満足そうな鼻息が聞こえてきた



私も同じく

満足な息をついて

すかすかと

眠りのなかへ


2002年05月16日(木) 無くなったと思ってたよ

ハム男と出会えてから、
ずいぶんと
すり減ったと思っていたのに


やっぱり私のプライドは
不必要に高かった



「土曜日、飲みに行くから
 日曜日に迎えにいくよ」


ハム男はそう言ってくれた


でも私は


土曜日の夜、本当は会いたかった
もう2週間も会ってないのに
日曜日にしか会えないなんて
辛かったから



「サッカーは無いの?」


「本当はあるんだけど
 今回はパスするよ
 久しぶりにがちゃ子と会えるんだし」


プライド高き私の心が
勝手に口を動かす


「…サッカーに行けばいいじゃん
 飲みに行った次の日、ハム男は
 必ず遅刻するから、嫌なのよ」


「信じろよ、ちゃんと迎えに行くから」


「イヤよ
 日曜日はのんびり寝ることにするから
 放っておいて」


この言葉の裏側が


『土曜日も会いたいのに
 相変わらず、友達を優先するなんて…
 どうして私を大切にしてくれないのか』


という意味を含んでいるなんて


お天道さまでも
フロイトさまでも
わかるめえ



「分かったよ…
 じゃあサッカ」


そこで、電波の悪いハム男の携帯は途切れた



じゃあ、サッカーに行くよ



これで私の日曜日の約束は
無くなった



そして今私は
泣きながらこれを書いている


会いたかったのに

だなんて無茶なことを呟きながら




バイト先の店長とソリが会わずに
毎日キリキリと胃を痛めながら帰宅する

思うように痩せられず
鏡を見るたびに脱力する


そして会いたい人に
会いたくないと言ってしまう





ドカッと泣けたら楽なのに

もっともっと
息もできないくらい泣いたら


スッキリしそうなのに



今、ちゃんと自分に言い聞かせないと

手首を切るのも
すぐそこのベランダから飛び降りるのも

勝手に体がしてしまいそうで
こわい



だめだめ


きっと明日になれば

なんてことないさ


2002年05月14日(火) 思い出した

以前、タイに一人旅に行った時は
寂しくて寂しくて

ハム男に会いたくて


夜中に一人で

ハム男、ハム男


と呟いていた



でも今回、研修旅行ということで
メンバーや上司に気をつかいながら
ばたばたとしていたから


ハム男のことは
ほとんど考えなかった



家に帰って

あまりの眠気に
スーツケースを脇におしやり、
早々に眠りについた



ハム男専用の着メロが鳴り、

ぼんやりと思い出す
ハム男の存在



おかえり
大丈夫か?



ハム男の声を聞いて
ちょっとずつ思い出す


ハム男の顔
ハム男の背
ハム男の口グセ


恋をしている私でさえ
こんな状態なのだから


失恋した人にはぜひ旅に出て欲しい



通じない言語に頭を悩ませたり
あきらかに違う空気の匂いにグッタリしたり


生きることが最優先になる状態に
自分を持っていけば

恋は

二の次になる


2002年05月07日(火) 思わぬ味方

夕食を食べながら
ママに怒りをぶつけた


今働いている(開店準備をしている)
マッサージ店の社長の話


自分の好き嫌いで人を雇う

自分より年上の人が、
自分より頭がよくてしっかりしていて
扱いにくいからとクビにしてしまう

自分の自慢話ばかりして
夢物語りばかり語って
開店準備中の店は
ちっとも進まない




「やめちゃえ!」



明太子を乗せたご飯を食べながら
ママの方を見ると
真っ赤な顔をして怒っていた


「がちゃ子の収入なんてアテにしてないし
 そんな気分悪いところでそれ以上働くことない!
 やめちゃえ、やめちゃえ〜」


驚いた


それくらい
我慢しなさい


って言われると思ってたから




嬉しかった


もうちょっと
がんばれる


2002年05月04日(土) 泣き声

『光の旅人』

を見た


ハム男と良く来る
いつ来ても
どんな超人気最新作でも
わりとすいていて
スンナリ座れるマイナーな映画館



でも今日は一人


映画が始まる前に


「これからどうするつもり?」


とメールを送った


ゴールデンウィークをどう過ごすつもり?

という意味と

私達、これからどうしていったらいいの?



映画が始まって10分後
ハム男からの着信

慌てて電源を切る



それから1時間30分、映画に没頭



劇場を出てコールバックする



「がちゃ子…
 ごめんな…今晩、迎えに行くからな」


弱弱しい声



これから何度
こういうケンカを繰り返さなくてはならないのだろう


2002年05月03日(金) 指示に従います

昨日、私を駅に送り返しながら
ハム男が言った


「明日、迎えに行くからね」


その後、電車の中からメールを打った


『飲んだ次の日は
 いつもいつも爆睡していて遅刻するでしょう
 もう、待つのはいやなので
 迎えに来るなんて言わないで下さい
 迎えに来ないで下さい』



そう、そして今日



メールの指示通り
ハム男は迎えに来なかった



電話一本も
かけてきやしない


なんて最悪な
ゴールデンウィーク



ワカレマショウカ



とても言えない


だって
会いたいのだから


こうやって、
会わなくて辛いのは
きっと私だけ


2002年05月02日(木) まるで幸せそうですか

『とても幸せそうに手を繋いでいる恋人達だって
 本当は幸せだとは限らない』


私より幾らか若い女の子が
そんな事を唄っていた


それは、本当の事なんだと
今日、知りました


だって、今この瞬間
23時という立派な夜道を歩く男女


両手でしっかと彼女の手を握る彼氏が

『わざわざ電車で来てくれた彼女を
 友達が今から泊まりにくるということで
 追い返す男』

素直に手を握られて
時々笑って相槌を打つ彼女が

『仕事終わりで彼氏に会いに来たのに
 また電車にのって帰らなくてはいけない女』


だなんて



ねえ、誰か見ただけで分かる?




「怒らないでくれよ…
 ケースケは大事な後輩で
 もう高速に乗ってるっていうし…
 追い返せないだろ?」


といいつつ
彼女を電車で追い返すのね



「こんな状態で
 本当は帰したくないんだよ」


はいはい
ありがとう


駅の改札に近づいたとき
ケースケから電話


「…あ、ケースケ?
 うん、うん、あ、俺今
 ○○駅にいるんだ
 え?違うって、一人だって
 誰も一緒にいないって」



もうそれ以上
ハム男の側にはいられなくて
慌てて切符を買って、ホームに駆け上った



ハーイ、ドウゾ


というように
スルリとタイミング良く電車が入ってきた



電車の中で
もう私は
思考能力がなかった



私はいつも不安だった


連絡せずに彼の家に突然押しかけて
驚く彼の顔を見るのがすきだったけれど

『もしかしたら
 迷惑がられるんじゃないか』

といつもビクビクしながら
歩いていた


望まれなくて進む道は
なんて短く感じるんだろう


と思ってた


がちゃ子 |偽写bbs

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