遠距離M女ですが、何か?
井原りり



 老人病棟

救急車で選択の余地もなく連れてこられた病院の当直医は最初こういった。

「あいにく今は満床で……」

なんだよ。

家から一番近い救急外来だから来たのに、結局、巨大なだけでややこしい市民病院に送られるのか……。


あきらめかけたところへ、個室が一つだけあるかもしれないとか言い出して……。

とまあ、そのまま世話になっているわけだが、入ってびっくり!


全館これ老人ばかりなのな。


あたしが点滴ころころ引きながらトイレに行こうとするとすれ違った介護士が(なんでこんな若いおばさんが……)みたいな顔で見る。



2004年08月07日(土)



 やぶ医者

最初の医者は点滴一本と、飲み薬を三日分くれただけだった。

腹痛はおさまらず、その上背中の中心からやや右よりの、ちょうど胆嚢の真裏にあたるあたりがずきんずきんと痛みだしてきた。


懐かしいこの痛みは陣痛の時のそれによく似ている。

あれほどの陣痛でさえ耐えたのだし、ノン気な主婦どもより痛みに耐えることにかけては自信がある。


だから、一晩は我慢してもみた。


翌日の夜、肩で息をするあたしを見るに見かねて夫が救急車を呼び、なりゆきで入院した先は……。






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2004年08月06日(金)



 入院

夢のような、というのはほめすぎだ。

ただ独りの時間はことのほか豊かだったことは確か。


沖縄で二泊三日して戻ってみると、異常に疲れてへたりこんでしまった。

二日後、右の乳房の下が異様にふくらみ、押すと痛い。

内蔵をやられているな。


医者に行くと、超音波で腹の中をのぞかれた。

「ああ、こんなに胆嚢が腫れてますよ。これじゃあ痛いわけだ」


胆嚢か……。肝ではなかったのだな。


むかしの観光みやげによくあった、ゴムで包んだ深緑のまんまるい羊羹。

あたしの胆嚢のイメージはそれだ。

つまようじで突つくと、ぷちんと音がして、ずるりとゴムがはがれ羊羹がべろんと転がり出る、あれだ。


メスであたしの胆嚢をつついで破裂させたりしないでね。


誰に云ってるかしらんが、あたしのふくらんだ胆嚢がはじけたんではたまらないという妄想がぐるぐるする。







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2004年08月05日(木)
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