白痴日記
白痴



 煙草

25になる女が煙草を吸っても
特に
何にもならないわけで.

非道く寒い冬に痛めた気管支が
ぜいぜいと
音を出すぐらいで.

基本的に吸わない煙草を
ホテルの部屋で
たてつづけに
5本
灰皿に捨て去っても

やはり
何にもならないわけで.

2002年03月31日(日)



 

簡単に死んではいけないと
言うけれど

簡単かどうか誰か教えてよ.
自分が
簡単だと思ったら簡単だなんて
ナンセンスな言葉は胸焼けが
する.

白痴吐く,白痴死去.
死.

2002年03月27日(水)



 

他の女との布団を,女に話す男

集団ヒステリー

所詮誰でもいいのだろうなと僻む自分

大事な者に刃を持たせ

いざゆかん.

2002年03月25日(月)



 

膿を出す行為
膿を生む詞

あなたが膿にまみれてしまったら
それはそれで
美しい.

私が舐め取ってあげよう.

膿でできた舌で.

2002年03月22日(金)



 

心臓がひどく苦しいのです.
心臓の右下が.

息を大きく吸って
吐いて
眩暈を感じながら

赤い靴履いてた女の子のお歌を
口ずさんで.

異人さんに連れられていっちゃった

2002年03月21日(木)



 暴走する

時が
自動二輪車が
街が

工事現場の火花が
タクシーが

自分が.
自分が?

2002年03月20日(水)



 遺書

私が死んでも,決して後追いはしないでいただきたい.

二つ後追いのパターンが有ると思うのだけれど.

一つはこれ幸いと,どさくさに紛れて後追い.
私の死を利用しないで欲しい.
死んでまで利用されたくない.

二つは本当に私が好きで死後の世界を夢見ての後追い.
そんな人いるかどうか知らないけど.
死後の世界など私は信じていないので,たぶん会えません.
無駄なことはしないで生きて下さいな.

所詮戯れ言だけれど.
死んだら,利用されようが夢見られようが
わかりません.

冷酷な白痴です.


2002年03月19日(火)



 性交

何だか当たり前のことが
美化されたり
汚すことに用いられたり

違う,と思うのです.
当たり前なことは当たり前なこととして
それ以上でもそれ以下でもなく.

ま,人の勝手なのですが.


2002年03月18日(月)



 血族

祖母に会ったのです.
伯母にも伯父にも会ったのです.

私は笑って,ただ笑って.

血の在ること.
血だけではどうにもならずに
けれど
血があるから会うのです.

生命の繋がりを考えたら
少し
吐き気がしました.壮大すぎて眩暈がしました.

2002年03月17日(日)



 白血球

肘の傷には白血球が大活躍なのです.
群がる白血球.
死にゆくのね,恨みがましく.

恨みがましい死に方はどうかなあと
思うのです.

2002年03月16日(土)



 

骨がないのよ
という台詞がすきな映画にあった.


人を形作るもの.
大切,いとしい,食欲がわく.

歯もそう.

遺体をさばくとしたら
骨と歯を
いただこう,私は.

2002年03月15日(金)



 

愛する者の歪んだ視線
歪んだ表情.

歪むと醜く,でも美しい.

それが見られるのなら
何も
惜しまない.

2002年03月14日(木)



 自然

鬱.
でもこの気分を「鬱」としていいのだろうか.
何かいつも違う気がする.

敢えて言うなら
虚.

自然の流れのような.
虚.

2002年03月13日(水)



 幼児

バスの座席に幼児が土足をしていたです.

母親は土足で上がってはいけないという神経を
持ち合わせておらず.
停留所をいくつも過ぎる間に
段々と
その幼児が憎らしくなってきました.

小さいから,かわいいから
何もかも許されるわけではないのよ.

ビー玉のような眼をしている幼児を頭の中で殺害しました.

2002年03月12日(火)



 コップのお水

「お母さん,お水飲んでいい?」
と聞いて育ったのです.

いや,ただふと思い出しただけ.

今は一人の朝も7年目になり,誰かに何かを尋ねることも
ないのです.



2002年03月11日(月)



 

一月一度,血の沼ができる.
私の躰.

動物の躰.

女の匂い.

むせかえるような甘くだるい匂い.

たまらずに窓をあけて,逃がしたけれど
嗚呼.

2002年03月10日(日)



 

屍の匂いが
自分から漂ってきて
どうにも,こうにも.



2002年03月09日(土)



 堕胎

私は別に堕胎が悪いことだとは思わない.身体に悪そうだと思うけれど.

という一言を公共の掲示板に書いてきました.

「おろした子供が許してくれるまで.」
「その子の分も生きて.」

私にはさらさら思えない言葉です.
掻き出された生物は許しなど与えられないからです.
人の分まで生きるなんて,笑止.
あくまで,個人的な意見です.
だってこれは私の日記だから.

合意に基づいて避妊をせずセックスをして
「できちゃった,おろしちゃった,私って悪い子.」っていう人.
繁殖目的以外のセックスにおいて妊娠したくない場合,避妊という手段をとらない人は馬鹿だと思うですが(繰り返しますが,あくまで私は).

何が言いたかったんだろう.
何かにとても腹が立ったのです.





2002年03月08日(金)



 ぬいぐるみ

ぬいぐるみ
大きな犬のぬいぐるみ.
私の身体の半分ほどもある茶色の.

ずっと一緒なのです.
日本を北から南まで5箇所移動したときも
私のそばに.

結局
この世に存在しているものの中で
一番好きなのは
このぬいぐるみのような気がします.

2002年03月07日(木)



 

闇は気持ちいいね.
置いていってしまうけれど,いつも.

でも迎えに来てくれる.

私はうれしくて躰を開く.

でも
何も残らない.

残るのは私,だけ.

2002年03月06日(水)



 

花が一日ごとに咲いていくのです.
ああ,今日は薔薇が
ああ,今日は蒲公英が.

あちこちに生命があって
少し怖ろしいのです,私は.

2002年03月05日(火)



 

爪が伸びているのです.
何の目的もなく,ただ切る気力がなくて.

この爪で引っ掻けるものはなんでしょう.
なあんにもないから

早く爪を切ってしまおう.

2002年03月04日(月)



 ベビーカー

私でも例えば

暖かい夕暮れ,夫婦と赤子とベビーカーで
散歩したりできるのでしょうか.

私に用意できるのは,せめて
ベビーカーだけのような気がするのです.

2002年03月03日(日)



 

朝の光が夜の闇に変わって
夢と現実を行ったり来たり,どこか
現実のような夢に
軽く吐き気.

紅い街灯は嫌い,好き?

2002年03月02日(土)



 肉体

猫の声はますます聞こえます
明け方眠れない私の耳に.

白痴な女はただその肉体に触れられるのを待っています.


2002年03月01日(金)
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