訪問 - 2006年04月20日(木) ちびちびのクラスメイトの女の子、 Mちゃんのお父さんが亡くなられた、 という知らせをうけたのは、先週の土曜日。 Mちゃんのお母さんとは、共通の友達がいて、 保育園で顔を合ればあいさつしたり、 バレンタインデイにはちびにもちびちびにも、 手作りのチョコレートをいただいたりしていた。 特別親しくしていたわけではなかったけれど、 友達を通じて、お父さんが病気で、ここ2,3年、 入退院を繰り返していたことは聞いていた。 亡くなられたのは、先月の末だったそうだ。 葬儀などはすべて身内だけで済ませたということで、 友達は、これからお線香をあげに行くのだと言っていた。 それから2,3日、迷っていた。 お線香をあげに行こうか、という思いと、 そんなに親しかったわけではないし、 本人から聞いたわけではないし、 なにより、お線香をあげにいって、 いったい何を話したらいいのかわからなかった。 気まずくなりそうな気がして、逃げようとしていたのかもしれない。 思い切って訪問することにしたのは、 友達から話を聞いてからだ。 前々から話に聞いてはいたけど、Mちゃんのお母さんは とってもほのぼのーとした人で、 お父さんもそういう感じだったのだそうで、 生前の二人の話を少し聞かせてもらったら、 闘病中とは思えないのんびりした、 やわらかい水彩画みたいな風景が目に浮かんだのだ。 それで、いろいろ話を聞くうちに、なぜだか 「やっぱり行ってみよう」と思った。 そして今日、行ってきたのだ。 ちびちびをつれて、二人で。 Mちゃんのお母さんは、友達から聞いていたとおりの人だった。 ちゃんと話したのは初めてだったのに、 そうとは思えないほどいろんな話をしてくれて、 だんなさんとの出会い、病気のこと、子どものこと、 いっぱい聞かせてもらった。 私の方は、ときどき胸が詰まって涙ぐんでしまったけど、 彼女は、思い出のひとつひとつを、 とてもいとおしそうに、大切そうに、そして楽しそうに 私に話してくれた。 私の方もいろいろ話して、すっかりくつろいでしまい、 夕方の3時過ぎに訪問したのが、5時過ぎまで、2時間も 居座ってしまったのだ。 まだ名残惜しいくらいの気持ちだったけど、 時間が時間だったのでおいとましてきた。 思いがけず、仲良くなれそうな人に出会えた、という喜び。 でも、彼女は、しばらくして落ち着いたら、 他県の実家に帰るかもしれないという。 それでも、まだ当分はこちらにいるということで、 今度また、ゆっくり遊びましょうといってわかれたのだった。 でも、あれでよかったのかなぁという思いは残る。 「楽しい」と思ってしまうことに感じる罪悪感。 大切な人を失ったばかりの人は、 私と同じ気持ちで「楽しい」とは感じていないんじゃないか。 無神経なことを言ってこなかっただろうか。 友人や知人の不幸と対面するたびに、襲ってくるこの気持ち。 ほんとを言えば、どうやって対応していいのかわからないのだ。 不幸に見舞われてしまった人の、心の中まではのぞけないから。 自分で気づかないうちに、その人を傷つける言葉を、 口にしてしまうかもしれないし。 訪問を躊躇してしまったのも、それがほんとの理由かもしれない。 自分のやってることに自信をもてない私が、 そんな不安を感じている。 その一方で、能天気な私が、「大丈夫だよ、 私が感じた気持ちを、相手も感じているよ」とも言ってる。 そんなふうに考えるのってずうずうしい、とか、 そんな思いがいっぺんに心の中にあるのだから、 人間の気持って、複雑だ。 本当の気持ちなんて、自分のことさえ、よくわかってない気がする。 きっと、彼女は、もっともっと複雑な気持ちを抱えているのだろうな。 だんなさんとの、いっぱいの、思い出を抱えて。 ... 嘘をついてもだませない人は - 2006年04月16日(日) 「手を洗ったの?」と聞くと、洗ってなくても 「洗った」と答えたり、 「ちゃんと片づけたの?」と聞くと、片づけてなくても 「かたした」と答えたり。 その程度の些細なことではあれど、 日常のいろいろな場面で、ちびもちびちびも あまりにもつるつると簡単に嘘をつくので、 ある日、ちびに言った。 「ちび。あなたの嘘なんて、お母さんにはすぐにわかっちゃうけど、 もしね、お母さんのことをうまくだませて、 ほかの誰もを、だませた!って思ったとしても、 本当のことを、いつも必ず知ってる人が、一人だけいるんだよ」 ちびは神妙な顔になり、「わかる」とうなずく。 「誰だと思う?」と聞くと、「ちび」と、 自分の名前を言った。 そうだよね、わかってるよね。自分はだませないんだよ。 ちびが嘘をついて、みんなをだましても、 もうひとりのちびが、ちびの嘘に気づいているんだよ。 私の言葉に、うなずくちび。 よしよし、ちゃんとわかってるよね、と、やや ほっとする私。 ある日、同じことをちびちびにも言ってやった。 嘘を見抜かれたちびちびは涙目になりながら、 「誰だと思う?」という私の質問に答えた。 「おかあさん」 ……ふー。 「ち、が、う、の。だからね、お母さんをだませたとしても、 ってことよ。ちびちびの嘘に、絶対気づいてる人がいるんだよ。 だれ?」 もはやちびちびの目は真っ赤に充血し、ぽろぽろとなみだがこぼれる。 そして答えた。 「おまわりさん」 …………。 ああ、もう、気が抜ける。 こういうとき、気を取り直して説教を続けるのには けっこうエネルギーがいる。 笑うのもこらえなきゃいけないしさ。 ...
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