新知庵亭日乗
荷風翁に倣い日々の想いを正直に・・・

2002年11月29日(金) Shinchanと第九

Shinchanはおじいちゃんにに連れていかれ、朝比奈隆さんの指揮でベートーベンの第九の練習を大阪の扇町プールのオーケストラ稽古場に着ました。沢山の合唱の人とオーケストラでごったがえしていました。



「じゃー第四楽章のバリトンから行くでー」と朝比奈先生の棒が振り降ろされました。
ティンパニーが激しく叩きます。
(Bariton solo)
O Freunde, nicht diese Töne !
sondern laßt uns angenehmere anstimmen, und freudenvollere.

おじいちゃんは独逸語が解るので、Shinchanに解説します。

おお、友よ! このような調べではない!
そんな調べより、もっと心地よく歌い始めよう、喜びに満ちて。

(Bariton solo)
Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium,
Wir betreten feuertrunken, Himmlische, dein Heiligtum!
*Deine Zauber binden wieder, was die Mode streng geteilt;
alle Menshen werden Brüder, wo dein sanfter Flügel weilt.*

(Chorus)
 *-* repeat (バリトン独唱)
歓喜よ、美しき神々の煌めきよ、
エリジウム(楽土)から来た娘よ、
我等は炎のような情熱に酔って
天空の彼方、貴方の聖地に踏み入る!
*貴方の御力により、時の流れで容赦なく分け隔たれたものは、再び一つとなる。
全ての人々は貴方の柔らかな翼のもとで兄弟になる。*

(合唱)
*-*間の繰り返し








「Shin坊、これを作曲した時、ベートーベンはほとんど耳が聞こえへんかったんや」
「・・・みみ?・・・」
「ベートーベンはオーケストラを指揮して終わったのに、お客さんの拍手が聞こえへんかったから、歌の人がベートーベンを客席に向けてあげたんや、そしたら皆立って手たたいて喜んでるのがやっと見えたんやって」
「・・・ふーん・・・」


(Quartet)
Wem grosse Wurf gelungen,
Eines Freundes Freund zu sein,
Wer ein holdes Weib errungen,
Mische seinen Jubel ein!
*Ja, wer auch nur eine Seele sein nennt auf dem Erdenrund!
Und wers nie gekonnt, der stehle weinend sich aus diesem Bund. *

(Chorus)
 *-* repeat (四重唱)
一人の友人を得るという
大きな賭けに成功した者よ、
一人の優しい妻を努めて得た者よ、
その歓びの声を一つに混ぜよ!
*そう、この地球上でただ1人の(一つの心と呼ばれる)者も!
そして、それが出来なかった者は、この集まりから涙を流してひっそりと去る。*

(合唱)
*-*間の繰り返し

Quartet)
Freude trinken alle Wesen
an den Brüsten der Natur,
alle Guten, alle Bösen folgen ihrer Rosenspur.
*Küsse gab sie uns und Reben,
einen Freund, geprüfut im Tod;
Wollust ward dem Wurm gegeben,
und der Cherub steht vor Gott! *

(Chorus)
 *-* repeat (四重唱)
全ての生物は、
自然の乳房より歓喜を飲む。
そして、善きもの、悪しきものも全て薔薇(ばら)色の跡を付けていく。
*歓喜は我等に口づけと葡萄(ぶどう)、
そして死の試練にある一人の友を与えた。
官能的な快楽は虫けらに与えられ、
そしてケルブ(智天使)は神の御前に立つ!*

(合唱)
*-*間の繰り返し

 
Shinchanは意味は解りませんでしたが、すごく楽しくなり、たくさんの音と光が照らしているように見えました。

帰りにレコード屋さんに寄ってフルトヴェングラー指揮のベルリンフィル、ベートーベンの第九のレコードをおじいちゃんが買いました。



2002年11月28日(木) 紬、ハブ、海亀

Shinchanのお父さんの従兄弟さんは大島紬のデザイナーのお仕事をしています、仕事のお部屋には沢山の綺麗な絵が飾られていました。
「Shin坊、工場ば行ってみるか、泥でな、着物の糸を染めるんや、こいがよか色出すための大事な仕事なんで」
「しんたん・・・絵・・・好き」
「そいな、あん美加が着とる着物もここで織ったと、ばあちゃんも織ってるんや」



大島紬制作過程

http://www.wa-gallery.com/kimonogallery/spot/spot1.htm

「Shin坊には少しむつかしかねー、じゃどんおいが描いとる絵はのー、ハブちゅうヘビの柄なんや、噛まれたら死んでしまうぐらい、強か毒を持とると」
「・・・ハブ???」
「奄美にはハブセンターちゅうのがあると、Shin坊行くか?」
「・・・うん!・・・」
どげな?」「・・・きれ・・い・・」
「な!綺麗と!おもしろか子なー、こいハブ見て綺麗なんちゅうた子始めてな」



※ホンハブ(怖ーいZO!それでもクリックする?)
http://village.infoweb.ne.jp/~fwic4591/snake/kusarihebi/text/habu.htm









「こんハブの皮とこん紬、よう似とるやろ?オイはこの図柄が好きでのー、ハブと睨めっこばするとよ」
「・・・えー!にら・・・っこ!」
「そいな、でこん絵ば描いて、そいが紬になるとよ、まーの、時間がかかっとよ、こん紬で良か自動車ば買えるん値段ばするたい」





 そしておじさんは夜遅くに海につれていってくれました。
「Shin坊、今夜あたり亀の赤ちゃんが海に帰るとよ、卵を自分で破ってのーひろーい大きか海に帰るとよ」
「・・・たま・・ご・・・うみ?」

 そしてShinchanが眠くてうとうとしてた時、カシャカシャと音がしました。
「しー」


・・・大きくなったら・・・会おうね・・・ここで・・・Shinchanまた・・・くる・・・待ってね・・・


※奄美大島紬サイト
http://www.oshimatsumugi.or.jp/index.html



2002年11月26日(火) 島美人

むちゃ加那の碑












「むかし、むかし、こん瀬戸内村にうらとみさんというそりゃー美しか娘がおったと、じゃから沢山の男衆が結婚してくれーと言うてきてのー、そん中でお役人さんが一番熱心でのー、じゃどんうらとみさんはいやじゃちゅうて、逃げて逃げてのーとうとう捕まって島流しにされたと、そん流された喜界島ちゅう島では哀れに思った気の優しいにせと出会うての、暮らしたと」


むちゃかな公園


「美加ちゃん、もう一度Shinどんに唄ってあげられ」
 綺麗な美加姉さんが、さんしんを弾いて歌ってくれました。

行(い)きゅんにゃ加那(かな) 吾(わ)きゃ事(くぅと)忘(わす)れてぃ

       行(い)きゅんにゃ加那(かな)

  出(うっ)発(た)ちや 出(うっ)発(た)ちゃむん 行(い)き苦(ぐ)るしゃ

       ソーラ 行(い)き苦(ぐ)るしゃ~
[行きゅんにゃ加那節]


「そいで生まれた子がむちゃかなちゅう子で、それはそれは母親より美人で、これまた評判になったと、じゃどん焼餅ば焼いたほかん娘子達が、嘘ついてのー、アオサ取りに誘いだして、海ん中に突き落としたと。まーその遺体が流れ着き、お父さんもお母さんも皆泣いたとよ、そいで青久の人々によって手厚く葬られ、それ以来の、古い暦の9月9日には、お墓さーに詣でかわいそな娘「むちゃかな」の霊を慰めおると。」
Shinchanは悲しくって泣いてしまいました。美加姉さんが優しく、
「Shinchanにはよく唄がよく解るのねー、この歌の意味はね・・・ねー行ってしまうのですか、愛しい人。私のことを忘れて行ってしまうのですか。いや発とう発とうとするが、あなたのことを思うと行きがたいのです・・・人を好きになるとこう思うんよ」
 Shinchanは竜宮城にいるみたいです、そう言えば・・・島美人ちゅうて、美加ちゃんがむちゃ加那さんの生まれ変わりなんや・・・とお父さんは言っていました。






「そいでShinどんのじいちゃんのじいちゃんは、鹿児島から西郷どんといっしょにこん島に流されての・・・
・・・しんたん・・・しってる・・・しってるよ・・・

★元ちとせさんの[行きゅんにゃ加那節]をどうぞ
http://www.minc.ne.jp/setouchi/seto4/seto41.htm



2002年11月25日(月) 島歌

キュウヤ ウガミンショウラン(こんにちは)Shinchan一家は途中小さなお船に乗り換えて、綺麗な島に着きました。奄美の瀬戸内町という所です。
 お父さんは大きな声で叫んでいます。そして何人かの人達はさんしんという奄美の三味線を抱えて、歌って踊りながらShinchan一家を迎えてくれました。
「Shinchanね!かわゆか子なー、ほら踊りゃんせ」「アリゲティサマ」そしてお父さんの従兄弟さんが車に乗せてくれました。
「遠ーかとこよくこられたなー」「皆元気かな?」「やもん、姉さんもShinchanもユルットシィ ウモレィンショレィ」「アリゲティサマ」
Shinchanは言葉は解りませんでしたが、解りました。

 そしておじさんのお家に着きました、ニャンコとワンちゃんがまず迎えてくれました、もーShinchanは嬉しくて嬉しくてたまりません。
「キャァーウロウ」(ご免ください)「ウモレィンショレィ」(いらっしゃい)とおばあちゃんにそっくりなおばあちゃんが、皺くちゃな顔をニコニコして言いました。Shinchanお父さんのお母さんのお姉さんです。
 「Shin坊よー遠かとここられた、ユルットシィ ウモレィ」
「きちゃ・・・おふね・・・」
「そーね、そーね、Shin坊お腹空いたじゃろ、たーくさんミショレィンショウレィ」

 Shinchanもお母さんも吃驚したのは、大きなお膳に豚の頭や大きな魚、貝や赤飯が沢山並んでいました。
 そうしたらShinchanとお母さんは大おばあちゃん以外の人は誰が誰やら解りませんでしたが、さんしんで演奏して皆で踊り始めました。


Naoのページより
http://www5.ocn.ne.jp/~nao1119/index.html
行(い)きゅんにゃ加那(かな) 吾(わ)きゃ事(くぅと)忘(わす)れてぃ

       行(い)きゅんにゃ加那(かな)

  出(うっ)発(た)ちや 出(うっ)発(た)ちゃむん 行(い)き苦(ぐ)るしゃ

       ソーラ 行(い)き苦(ぐ)るしゃ
[行きゅんにゃ加那節]
 








「Shin坊この蛇味線の皮はヘビで出来とるっと」
「・・えー!・・ヘビー!」
「そこいらにものー、ハブちゅうヘビがおると」
「・・・こわー・・・」
「ハッハハハ」
「こうして弾くんじゃ」
「・・・Shinたんも・・・」「こん撥でなー、そーねそーね」


「うまか、うまか、そんちょうしやどん、明日は歌ば教えっど」
Shinchanは指で押さえて弾く事が出来ました、綺麗なお姉さんがすごく良い声で唄を歌ってくれました。
「Shinchanは音のこと解っとるのねー、すごいなー」とそのお姉さんは声をかけてくれました。親戚や隣近所の人達は暗くなっても何時までも何時までも踊ったり、ご馳走を食べたりしました。

 Shinchanは夜中に目が覚めました、すると海の音とさんしんの音が気持ち良く、竜宮城のお話の中にいました。

・・・かめしゃん・・・きれい・・・おねえしゃん、おとひめしゃん・・・たまてばこ・・・おじいちゃん・・・Shinどん・・・Shinどん・・・よーきた、よーきた・・・

 夢に新太郎じいちゃんの声がしました。

※奄美の島歌をどうぞ
みちのしま農園より
http://www.michinosima.com/simauta/simauta.html



2002年11月22日(金) 奄美大島


Shinchanのおばあちゃん、お父さんのお母さんの田舎は奄美大島です。お父さんは学校が夏休みになったので、お母さんとShinchanを田舎の奄美大島に行く事にしました。「Shinchan、煙がモクモクでる汽車に乗って、そして船に乗って奄美に行くんぞ!」
「へー、キチャ?・・・ふね?」
「そや、おばあちゃんの田舎や、海が綺麗で、魚が手でとれるんや、そしてサンシンで歌って踊るんや、えーぞー」
「おど・・・る?」







 Shinchan一家は神戸駅にいます、ポーと煙を吐きながら汽車が近づいて来ました、Shinchanは嬉しくて嬉しくてピョンピョン飛びはねました。ガシュー、ガシュー、キキーン
汽車は音を立てて止まりました。
 大きな鞄を持ったお父さんとShinchanが飽きて騒がないように、お母さんはキリンさんレオポン君、戦車の玩具や絵本を入れた大きなバッグを持っています、Shinchanは幼稚園の帽子とお菓子と水筒を入れたリックサックを背負っています。
・・・お見送りの方はホームからはなれて・・・ポーォーン、ガシュ、ガシュと大きな音を発てて出発です。
「Shinchanなー、この先でなー関門トンネルちゅうてな、海の底を通るねぞ」
「うみ?」
 でもShinchanははしゃぎ過ぎて関門トンネル通過の時は寝ていました、そして沢山の駅に止まり、お弁当や蜜柑を食べました、凍った蜜柑もありました。Shinchanは窓から後ろに飛んでいく山やお家を見ていて、時々お眠して飽きることはありませんでした。
 鹿児島に着いたら翌朝でした、そして皆んなでおうどんを食べて、今度はお船に乗ります、何日も乗るそうです。
大きなお船でした、お母さんは船に酔ってゲーゲーしています、しんどそうです、でもShinchanはお父さんと一緒に甲板に出て一番前にいました。すると魚が飛んでいるのが見えました、「あれはなー飛魚ちゅうんや」
「・・・・」Shinchanは全然元気でした、夜になって客席に戻りましたが、お母さんはぐったりしていました。


 朝早くShinchanはお父さんに起こされました、「さー見えてきたぞー」
本当に綺麗な海です、Shinchanはまた嬉しくなりピョンピョン飛び跳ねました。
・・・うみ・・・カメしゃん・・・





2002年11月20日(水) 蝶々夫人

「Shin坊蝶々好きか?」「・・・うん」「ほなオペラ蝶々夫人、見にいこか?」「・・・・」
 Shinchanのおじいちゃんは大阪フィルハーモニー交響楽団が上演する、オペラ蝶々夫人を見に行くのにShinchanを連れて行くことにしました。
 おじいちゃんは指揮者の朝比奈隆さんと友達だったので、特別の計らいでShinchanをコンサートに連れていくことが出来ました。
「比奈ちゃん、こん子、ワシの孫やね、でもなー言葉が遅れててなー、困ってんね、それでワシがヴァイオリン教えてんねけど、どうもピアノのほうが好きみたいでな、音階は全部ドイツ語で覚えてるんや」


「そうかいな、そんならゲネプロの時き来たらよかったのに、ふーん、ボン、そんなにピアノ好きか?」
「絵が・・・シュキ」「絵かいな!ほうー、そうか」「チョウチョ?」「あー、蝶々夫人な、ボン見ときやおじちゃんがなー棒振るとなー、沢山の楽器や歌の人が音出すねで、そやなーボンは音楽家になり、そしたら言葉なんかほんのちょっぴり喋れるだけでええのや」
「・・・・・」
「このお話はなー、『坊や、坊や、可愛い坊や、小さな神様、バラのようないとしい坊や、私が死んでいく姿を、汚れのないお前に見せたくない、お前は海を越えてあちらにお行き、お前は御空から栄光に満ちて授かったの、幸せになるのよ、お前の可哀想なお母さんの顔をよく見るのよ、決して忘れないように、よくごらん。いとしい子よ、さようなら、さあ、遊んでおいで』と、坊やを遊びに行かせ、懐剣を胸に突き刺し、死んでいくんや、悲しい話やれどええ音楽なんやで、 ほな又な、Shin坊、又おいでや」








 Shinchanは吃驚しました、そして訳もなく涙が出ました。
「どうや、凄いやろ、Shin坊がピアノ弾くんやったら、そのうち比奈ちゃんの指揮でオーケストラバックに弾いたらええんや、おじいちゃんに任しとき、そやから頑張りや」

・・・ありがと・・・そのうち弾くよ・・・朝比奈せんせの棒で・・・オーケストラと・・・一緒・・・

★トップ写真の喜波貞子さんは?
「蝶は還らず」によると、喜波貞子は1902年(明治35年)11月20日、横浜に生まれた。母方の祖母が日本人、祖父はオランダ人で、父親はオランダ人商人だった。西洋人らしい顔立ちの中にどこか宝塚女優のような雰囲気があるのはそのせいだろう。1920年にミラノに渡り、声楽のレッスンを積んだ後、1922年、「蝶々夫人」のリスボン公演にマダム・バタフライ役でデビュー、以後、ヨーロッパで次々と公演を行い、三浦環をしのぐ人気を得た。後にやはりオペラ歌手だったポーランド人ラヴィタ・プロショフスキーを夫とし、戦後はニースで暮らした。1983年にそのニースで亡くなっている。



大阪フィルハーモニー交響楽団

http://www.osaka-phil.com/profile/profile.htm




 



2002年11月18日(月) 蛭?

Shinchanは近所の友達と一緒に田んぼに蛙をつかまえにいきます。田んぼや畑がたくさんあって、Shinchanの好きなおたまじゃくし、バッタ、蝶々もいます。
 今日は雄太君が親分です、長靴をはいて網とバケツを持っていました、そしてShinchanも含めて5人の子供達を引率します。
 「えーか、絶対僕の見えるとこにおってやー、迷子なったら困るからな、なーShinchan」
「・・・・・」
「こら!雄太、ガキらだけで行ったらあかん!」と近所のご隠居さんのしげ爺ちゃんが、Shinchan達を呼びとめました。
「わかった、わかった」
 と雄太君も皆もしげ爺ちゃんについて行く事にしました。



 Shinchan達はジャブジャブ田んぼの側にある小さな川に入って行きました。
「Shinchanな、おたまじゃくしが蛙になるんやから、あんまり沢山捕まえたらあかんでー」「ふー・・・ん」
 ある子が「しげ爺ちゃん!蛙におしっこかけられたー」と言いました。
「そうか、ほっといたら腫れるからなー、自分のおしっこかけて、川の水で洗うとええ」
「へー、そんなんでええの」
と言ってオチンチンをつまんで手におしっこをかけました。
「じいー・・・」
「おーShinchan、それは蛭や!まっとき、そっちに行くからな」
 Shinchanの足に何か変な物がぶらさがっていました、そしてその変なものがくっついている所から血が出てました、Shinchanは怖くなって泣いてしまいました。
 しげ爺ちゃんはまず煙草に火をつけてふーと吸って煙の輪を作りました。
「Shinchanこわないからな、動いたらあかんで」
そして煙草を蛭におしつけました、ジュ―と音がして、ポロンと落ちました。
「雄太、そこの袋、持っておいで・・・・こんな事もあろうかと思うてな、ヨウチンと赤チンにメンタムバンソウコウ持ってきたんや、ばい菌はいったらあかんからなー」
 Shinchanはおしっこちびるぐらいに怖かったのです。

蛭って何?
http://www.tele.co.jp/ui/leech/index.htmヤマビル研究会








「しげ爺ちゃん、おおきに、やっぱり一緒に来てよかったわ、僕やったらどうしたらええか解らんかった」と雄太君は言いました。
「しげじ・・・ちゃん・・あーと」
「ほな、みんなで夕焼け小焼けうとうて帰ろか」

夕焼け小焼けで 日が暮れて
山のお寺の 鐘が鳴る
お手々つないで 皆かえろ
カラスと一緒に 帰りましょう

子供が帰った 後からは
丸い大きな お月さま
小鳥が夢を 見る頃は
空にはきらきら 金の星
中村雨紅 作詞  草川 信 作曲

http://www.interq.or.jp/ruby/kakizaki/sub80.htm

夕焼け小焼けの旅サイト
http://member.nifty.ne.jp/NENDO/yuyake/yuyake.htm



2002年11月12日(火) 紙芝居が見れへん!

チョン!チョン!
「さー紙芝居が始まるよ、ええ子は飴玉こうて見てやー、さー始まり―始り―」近所の空き地に向かってちっちゃい子供が走ります。「ちゃんと飴買ってやー、はいはい見るだけの子は後ろ、後ろ、押したらあかんて!」
「おっちゃん!今日はなに?」
「宇宙人来たるや!」
「へーどんな宇宙人?たこみたいなん?」
「そやから飴買って見なさい」
「あっ!Shinchanがまた犬連れてる、おっちゃん、犬連れてたらあかんやろ?」
「吠えへんかったらええよ」

 Shinchanはお金を払って飴も買っていましたが、何時も一番後ろに回されて、大きな子の後ろなので見れませんでした。



「地球人よ、降参せよ、さもなくば、すべての人間が湯気のように消えるぞー・・・さーこの次ぎはどうなりましょうか、それは又のおたのしみー」チョン!チョン!

「おっちゃん!ずるいわ!すぐお終いにして、つづきーはずるい!」
「なにがずるいんや!君らはちゃんとお金払って見てる子を犬連れてるという理由で後ろに回してるやんか?あのワン公もおとなしくしてるのに、そっちの方がずるいんちゃうか?」
「そんなん言うたかって犬、噛み付くもん」
「よっしゃわかった、僕、ワン公と一緒に一番前においで、今日はスペシャルサービスや、いつも正直に飴買って見てくれる僕につづきを見したる!」
「わーいShinchanのおかげヤー」
「みんななーこれから順番を守るか?」
「うーん」
「しゃーないなー、地球防衛軍の将軍は・・・」

紙芝居の風景画
http://plaza.rakuten.co.jp/yukikurosaki/003002








「おっちゃ・・・ん・・・あり・・・とう」
「そうか、わかった、これからShinchan割引したるから、何時でもお出で、そして早よう言葉覚えるんや」

 Shinchanはお家に帰って、紙芝居のお話をしました。「そうか、そんならテレビ買うのをもう少し先にするか?」
「て・・び?」
「紙芝居の方がええかもな」とお父さんが言いました。

 やがて空き地に来る子供達も少なくなってきました、でもShinchanは何時も一番前で飴をなめなめ見るのが好きでした。
 そして空き地から公園に移ってからしばらくして、紙芝居のおじさんは来なくなりました、近所の子はテレビの話ばっかりしてます・・・。

・・・おっちゃん・・・又きてね・・・待ってるから・・・



2002年11月10日(日) エリーゼのために



 
Shinchanは幼稚園で綺麗なピアノの音楽を聴きました。それはいつもおとなしくしているおかっぱ頭のはるちゃんが弾いていたのです。
「はる・・・ちゃん・・・いい音・・・」
「Shinchanもピアノ習ってるんだって?」
「・・・うん・・・なんの・・・きょく?」
「あーこれはね、ベートーベンのエリーゼのための、という曲なの」
「ふーん」

 はるちゃんはShinchanのためにもう一度弾きはじめました。
「ミレミレミシレドラ~・・・Shinchan、弾いてみる?」
「・・エリーゼって・・・だれ?」
「それはベートーベンさのが好きだった女の人なの・・・」
「ふーん、しんたん・・・はるちゃん・・・すき」

 Shinchanは楽譜を見て弾くというよりは、はるちゃんの弾いている音を覚えて弾きました、何故かすぐ覚えてしまうのです。
「Shinchan!凄い!・・・なんですぐ弾けるの?ベートーベンみたい!」
「・・・・・」
それを見ていたおじいさんの園長先生がベートーベンの絵本を持ってきてくれました。
「Shinchan、はるちゃん、ベートーベンはちっちゃいとき、お父さんからピアノの弾き方を教わったんや、でもな・・・そのお父さん、怖かったんやって・・・そして大人になって、耳がきこえなくなっても、音楽を作ったんやで・・・」

「せんせ、エリーゼさんは?」
「ほんまはなテレ―ゼさんという名前なんや、ベートーベンはそのテレーゼさんにピアノを教えているうちに、好きになったんやなー、そして結婚して下さいと言うたのやけど、あかんかったんや」










 Shinchanは家に帰ってピアノを[エリーゼのための]を練習しました。
大人になって、はるちゃんのために綺麗なピアノの音楽を作って、そしてお父さんとお母さんのように結婚して、Shinchanはピアノの先生なのです。


Jeunes filles au Piano 1892年パリ/オランジェリ美術館
 
そして幼稚園に行ったら、はるちゃんはお休みでした。
「はるちゃんは、黄疸が出て病院に入院しました、しばらくお休みやね」

 Shinchanは二度とはるちゃんと会えませんでした・・・今でも夢の中ではるちゃんと一緒にピアノを弾いています・・・
おぼえてる?・・・はるちゃん・・・いっしょに・・・ミレミレミシレドラ~




2002年11月08日(金) 盲聾のA君

 今日は今のShinchanのお話です、Shinchanは筑波大学附属盲学校音楽科で目の見えない中高校生の音楽科の学生に邦楽打楽器を中心に幅広く民族音楽を教えています、この前の定期演奏会ではShinchanの作曲した「東の海の風」を演奏しました、当日Shinchanはお仕事で彼等の演奏を聞く事は出来ませんでしたが、概ね好評だったようです。
 盲学校の学生達はやはり耳が良く、感が良く、Shinchanは楽譜にしないで、全て言葉によって彼等に伝えました。
まずジャワ島のガムランが夜明けを告げます、そして鳥達が囀り始めます、そしてそれに呼応するかのように、太陽が昇ります、やがて島の人達が太鼓を持ってきて実りの感謝の踊りを始めます。
ガムランの楽器の説明

http://www.jp-kyoto.co.jp/gamlan/gakki.html
(京都国際現代音楽実行委員長:中川真先生監修)

 やがて一番星が現れ、海鳴りが聞こえて宇宙の歌をガムランで謳歌して眠りにつきます。という構成の曲でした。
 現在筑波大学附属盲学校音楽科の学生達に邦楽専攻の学生はいません。昔は宮城道雄先生や琵琶の先生のお蔭で邦楽専攻の学生がいましたが、時代の流れでしょうか、現在はピアノ・ヴァイオリン・声楽専攻の学生に限られています。

 Shinchanはオランダのユトレヒト総合大学で聾唖の子供達に対する療法の研究会に参加しました、それはこのえんぴつShinchan日記の番外編をご覧下さい。
 
 Shinchanは盲聾のA君と始めて会いました、目がねをかけて大変利発に見える少年です、Shinchanは楽器の響きが良く伝わるようにジャワ島のガムランを叩く事にしました、A君は少し見えて、少し聞こえるそうです、担当の先生は指点字と手話でShinchanの言葉を伝えます、それは正にサリバン先生のようで大変なお仕事だと思いました。
A君にまずゴングを叩いてもらいました、真ん中のおへそのような出っ張った所を叩くと良い音がするのを体得しました、そして沢山並んでいるのはボナンという楽器です、A君は端から順番に叩いていきます、そして何個並んでいるかということも手話で話しました、Shinchanが「もっと自由に叩いていいよ」というと「何故?」という手話の返事が返ってきました。
 担当の先生によると規則正しい事が大事であるという教育をしているので「自由に」という事が伝わらないそうです。
 ShinchanはA君の手を取ってまずゆっくりアットランダムに叩きました、そしてそのようにA君も叩きました、今度は狂ったようにメチャメチャ叩きました、A君もメチャメチャ叩きました、ニコニコしてました。嬉しそうです。








 !!Shinchanは気がつきました、A君の叩き方は誰にも教わった事がなく、見た事もないのに、それは基本に則った素直で無駄のない叩き方でした。!!Shinchan吃驚!!
 「本当は体育の授業なのに・・・」とA君が言いました。「いいんだよ、太鼓の奏法は体育と関係があるのだから、いつかわかるよ」

メチャメチャ叩いていた時、Shinchanは自閉症の子供時代に戻っていたのです、A君の可能性を感じました。
・・・またいっしよ・・・あそぼ・・・Aくん・・・あえて・・・よかった・ネ









2002年11月07日(木) 竜宮城の遠足②



Shinchanは浦島太郎さんが行った竜宮城に亀に乗って行きたかったのです、でも洋次君はイルカショーが大変気に入ったようです。
「しんたんは・・・カメしゃん・・とこ」
「僕は電気うなぎ見たい」
それで、洋次君は他の友達と一緒に魚や電気うなぎを見ることになりました、Shinchanはどうしても浦島太郎さんを背中に乗っけて、綺麗な竜宮城に連れて行ってくれた亀さんを見たくてしかたありません。
「なんで・・・うみに・・もぐれる?」
「Shinchan、それは御伽噺やから、そーなってんねん」
「でも・・・カメしゃん・・・たまご・・・もぐるよ」










Shinchanは空を飛んだたまごの事が言いたかったのです、だから亀がたまごになって海の底にある竜宮城へ行く事が出来る事をなんとなく知っていたのです。


「Shinchan!!大変!!洋次君が玄関の池に落ちたんやってー、びしょ濡れやそうやは」
「びしょ・・・ぬれ?」
 Shinchanは自分の来ていた幼稚園の服を脱ごうととしました。
「Shinchanはええのよ、洋次君は今、事務室で毛布にくるまっているそうや」

 そして皆の来ている服を少しずつ洋次君に着せて、それで水族館からもらった毛布をかぶって、早めに帰りました、お弁当はバスに乗って食べました。

「Shinchan、ごめんな、僕が池に落ちたから・・・」
「また・・・いっしょ・・・いこ」

 Shinchanは浦島太郎さんが竜宮城で遊んで、帰ってきたら何百年もたっていて、玉手箱を開けたら、お爺さんになったというお話が好きになりました。

帰って見ればこは如何に(いかに)
元居た(もといた)家も村も無く(なく)
路(みち)に行きあう人々は
顔も知らない者ばかり


心細さ(こころぼそさ)に蓋(ふた)取れば
あけて悔しき(くやしき)玉手箱(たまてばこ)
中からぱっと白烟(しろけむり)
たちまち太郎はお爺さん(おじいさん)



2002年11月06日(水) 竜宮城の遠足



「浦島太郎さんは乙姫様からもらったお土産の玉手箱を開けました、そしたら白い煙がモクモクと出て見る見る内に真っ白な髪の毛とお髭のお爺さんになりました・・・Shinchan、もうえーやろ、お母さんは眠たいよ」
「・・・うた・・うた」

昔々浦島は
助けた亀に連れられて
竜宮城(りゅうぐうじょう)へ来て見れば
絵(え)にもかけない美しさ


乙姫様(おとひめさま)の御馳走(ごちそう)に
鯛(たい)や比目魚(ひらめ)の舞踊(まいおどり)
ただ珍しく(めずらしく)面白く(おもしろく)
月日(つきひ)のたつのも夢の中(うち)


遊びにあきて気がついて
お暇乞い(おいとまごい)もそこそこに
帰る途中の楽(たのしみ)は
土産(みやげ)に貰った(もらった)玉手箱(たまてばこ)


帰って見ればこは如何に(いかに)
元居た(もといた)家も村も無く(なく)
路(みち)に行きあう人々は
顔も知らない者ばかり


心細さ(こころぼそさ)に蓋(ふた)取れば
あけて悔しき(くやしき)玉手箱(たまてばこ)
中からぱっと白烟(しろけむり)
たちまち太郎はお爺さん(おじいさん)

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「・・・なんで?・・・おじいちゃん?」
「Shinchan、今度バスに乗って、須磨の水族館に遠足やから、その時亀さんおるよ」
「カメしゃん?バシュ?」
「あと2日寝たらネ」
「しんたん、カメしゃん・・・のる!」
「はいはい、はよ寝よー」



幼稚園にはお母さんと一緒の子供やお父さんもついて来ている子供もいました、でも洋次君はお母さんがお仕事のため一人でした。
「ようくん・・・いっしょ」
「そう、洋次君とShinchanは今日ずっと一緒なのよ、洋次君のお母さんに頼まれたんや」
「Shinchan、僕お弁当持ってきたよ」
「じゃ、はよバスに乗ろー」

 バスの中ではマイクを持ったお姉さんが[かわいいかわいい魚屋さん]や「浦島太郎]の歌を教えてくれました、そして皆で歌いました。

「かわいい魚屋さん」

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加藤省吾作詞・山口保治作曲
作曲された山口保治氏は新日本フィルハーモニー交響楽団ティンパニー名誉首席奏者・山口浩一さんの父君にあたります。山口浩一さんはShinchanの大先輩にあたります。




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