++ 記憶の中へ
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■ 越智章人さんのミニコンサート 2005年05月28日(土)
 越智章人さんはダウン症のピアニスト。
 地元に住んでいらっしゃるということもあって、コンサートを聴く機会も何度かあり、今回で3回目。

 1度目は海渡がまだ赤ちゃんの頃で、海渡を抱っこしてコンサートに行った。
 2度目は昨年、海渡の小学校の芸術鑑賞会。
 そして、3度目が今日のミニコンサート。

 何度聞いても彼の演奏は素晴らしい。楽譜も読めない書けないのにどうしてこんなに素晴らしい曲が次から次へと弾けるのだろうか。不器用と言われるダウン症でありながら、どうしてあんな風に10本の指がなめらかに動くのか、不思議だ。

 この日は、主にクラシックが多かったが、愛・地球博に出演されるそうでそのときに演奏する曲も披露された。
 クラシックやオリジナルももちろん良いけれど、私的には「冬のソナタ」の主題曲が聴けたのも嬉しかった(笑)

 この地域の福祉を考えるパネルディスカッションといっしょに行われたためのミニコンサートだったが、また機会があったら何度でも足を運びたい。赤ちゃんの海渡と握手してくれたことや、昨年小学校の演奏会のあと、私と海渡に会ったこと覚えていてくれているかなぁ?

 パネルディスカッションは地域で活躍していらっしゃる方々、NPO法人を立ち上げて児童デイを運営されている方、小学校の特殊学級の現役の先生、知的しょうがい者の授産施設の施設長さん、積極的にしょうがいのある方を採用されている企業の社長さん、そして行政の担当者の方・・・さまざまな立場の方から、これからの福祉の動向など地域に根ざしたお話や、リアルタイムなお話など充実した内容でいろいろ考えさせられることが多かった。

 特に社長さんのお話では、一般就労したあとも本人と親と会社の3つの連携は不可欠で、連絡帳に毎日の会社内での様子を担当者が書き、それを親が読み、家庭での様子もまた書いてというお話には、まさに今小学校と連絡帳でやり取りしていることと同じなんだなぁと感心するやら、一生連絡帳とは縁が切れないのねと思ったり・・・・(苦笑)

 いろんなお話を聞いて、ポイントは「ネットワーク」「連携」の大切さ。
 小学校、地域、企業、行政、仲間たち・・・どこへ行っても、いつの時代になっても連携は大事。上手にネットワークを作り、活動して子どもたちが住みよい社会、地域に近づけていきたい・・・そんなことを思った日だった。


■ 風太くん 2005年05月24日(火)
 海渡が私の前でつま先立って両手を下に下ろして

「れ※▲○☆の・・・ふたくん」


と言う。最初は「?」だったが、すぐにそれが

「レッサーパンダの風太くん」

だとわかった(笑) こういうことは、すぐ覚える。

 海渡は形態模写というか、ものの特徴を体で表現することが抜群にうまい。炊飯ジャーから湯気が立ち上る様子は、なんと自分が湯気そのものになっていた。両手の平を合わせた両腕を体の前にまっすぐ伸ばして「ヒ〜〜!」と言って斜めに飛び上がるのだ。何度やらせても同じように斜めにとびあがる。

 また、ファーストショップの店先で、色とりどりのジュースが入ったミキサーが回る様子も面白かった。スイッチオンで回りながら飛び上がっている(笑) まるで、フィギュアスケートのスピンジャンプのように。

 そういえば、昨日、「おかあさんといっしょ」のファミリーコンサートのビデオを見ていたときのこと、海渡はお姉ちゃんの壊れたイーカラのマイクを持って、歌のお兄さんのまねをして歌っていた。何気なく見ていたら、振りつけはもちろんのこと、お兄さんのマイクの持ち方や動かし方、ちょっとした微妙な動きも全部同じだとわかった。歌はもちろん下手なんだけど、そのマイクさばきというか何と言うかそこまで見てたのねぇ〜とびっくり。絶妙と言うか、何と言うか・・・・面白い!

 海渡は小さい頃から、言葉で上手に表現できない分、身振り手振りが大きくて、どんなこともまるで外国人のように体全体でおしゃべりする。海渡を見ているとそれが普通なのだが、同年齢の子を見るとやっぱりその違いがよくわかる。私たち大人も喋っているとき、手は全然違うことをしていたりする。言葉だけで自分の言いたいことが伝えられたら手や体を動かす必要なんかないのだ。

 海渡が、口と手と体を総動員しても伝わりにくいこともあるので、聞いているこちらは耳と想像力と記憶力(過去の)を総動員して、いま海渡が伝えようとしていることを聞いて、見て、考える。

 これって、けっこう頭の老化防止に役立っているかも。 

■ 海渡失踪事件・・・その後 2005年05月23日(月)
 ショッピングセンターから失踪して、雨の中ひとりで歩いているところを偶然にも海渡の担当のガイドヘルパー※※さんに見つけられ、警察に保護された海渡。

 少なくとも30〜1時間は雨の中を歩いていたせいか、鼻水がひどくなったのと、咳も出てきたし、何より時間になっても熟睡で起きれなくて、結局今日は学校を休ませた。午前中は小児科を受診。午後は久しぶりにべったり・・・急ぎの仕事がなくて良かった。

 朝ごはんのとき、何気な〜く聞いてみた。

「きのう、どうしてお店から出ちゃったの?」

 ポケモンヌードルを食べていた海渡は突然の質問に驚いて、私を見つめたまま固まった。口元に持っていきかけたヌードルが宙に浮いたままだ(笑)
 そして、私の視線を避けるようにちょっと体を斜めに向けて、ヌードルをすすり出した。

 「一人でおうちに帰ろうと思ったの?」

 「・・・・・・」

 「ママに待ってて言ったの忘れたの?」

 「・・・・・・」

 聞かれていることはよくわかっているけれど、答えたくないらしい。言うもんか・・・という意思さえ感じる・・・(苦笑)
 そこで、質問を替えることにした。

 「おまわりさんのところで何か食べた?」

 「おかし たべた」

 「あそこで何してたの?」

 「こうやって(椅子に座りなおして)、あそこ(空中を指差して) テレビ みてた」

 どうやら高い位置にテレビがあって、それを座って見ていたらしい。

 「こわくなかった?」

 「こわくないよ!」

 やけに強気(苦笑)

 「もう、ひとりでおうちに帰ろうとしないでね。どこにいても、一人で出ていかないでね。海ちゃんがいなくなると、パパとママは泣いちゃうよ」

 海渡はじっと聞いていた。昨日、自分のしたことで周りが大騒ぎになったことはよく分かっているようだ。反省しているようにも見える。だって、言われもしないのにさっさとパジャマを着替えたり、言われもしないのにテーブルに出しておいた宿題のプリントをやりだしたりしているんだもの(笑)

 これは、私の想像だけれど、きっと海渡は一人で家に帰ろうと思ったのだと思う。パパを探して1階に下りてみたのはいいけれど、どこへ行けばいいのか分からなくなり近くの出入り口から外へ出てしまって、もうこうなったらうちに帰ろう、というか帰るしかないという気持ちになったんじゃないかなと思う。

 パパを探すと言ったのに探せなくて、一人で帰ろうと思ったのに帰れなくて、それでどうして店を出たのか、一人で歩いていたのか聞かれても答えたくなかったんじゃないかな。本を一人で買って、膨らみかけていた海渡の自信とプライドが一気にしぼんで・・・・それで答えたくなかったのかもしれない。

 そんな風に考えると、海渡は海渡で考えてしたことでこれも海渡の成長の証かなとも思えるんだけどね・・・・親ばかかもしれないけれど。

 

■ 神様が見ていた? 2005年05月22日(日)
 海渡8歳10ヶ月にして初めて警察に保護されました。

 家族3人でよく行くショッピングセンターの本屋さん。ポケモンの本を選んだ海渡は、一人でレジへ行くと言うのでお金を渡し、離れたところから見ていました。ちゃんとおつりとポイントカードと本を受け取り、海渡はピカピカの笑顔で私のところに戻ってきました。

 その後、ちびっ子コーナーに座って買った本を見ていたのですが、

「海ちゃん、パパさがしてくる ママ まっててね」

と走りだそうとしました。パパは1階にいます。「すぐに戻ってくるよ」と言っても

「海ちゃん、さがしてくる まってて」

とストップサイン。さっき一人で本を買った自信や達成感がまだまだ残っているような笑顔で張り切っています。こんなことを言い出したのは初めてのことでした。せっかくやる気になっているのに、それを止めるのもどうかと思い「はいはい。ママ、ここで待ってるね」と腰を下ろすふりをしました。

 そして海渡が行く先を眼で追いかけ、すぐに海渡が走っていった方向に向かいましたが、見失ってしまいました。私は、海渡はパパを探しに行くとは言ったけれど、多分この先にあるゲームソフトのコーナーに行ったと思っていました。1階には一人で下りたことが無かったし、今日はまだ大好きなゲームソフトの売り場には行ってなかったからです。
 ところが、必ずいると思ったゲームソフトのコーナーにはいませんでした。同じ並びの、大好きなビデオコーナーにもいない。途中の玩具売り場にもいない。その先さっきの本屋を通りこして、一番はしのゲームコーナーに行ったのかな?とそこへ行っても海渡はいませんでした。

 海渡が行きそうなところはわかっているので、1階から上がってきた夫と合流して、事情を話し手分けして探しました。でもなぜだか、どうしても見つかりません。もしかして、海渡は本当にパパのいる一階へ一人で降りていったのだろうか?と急に不安になってきました。そんなこと今までしたことないのに?

 「パパをさがしてくると言っていたので、もしかしたら1階かも」

 そう言うと夫が1階へ探しに行きましたが、しかし見つからず、いつも止める5階の立体駐車場にもいませんでした。もう一度初めにいた3階の海渡が好きな場所を全部まわり、大好きなラーメンのあるコーナーも探しましたが、いません。

 海渡を見失ってから1時間たったところで、自力で探すことをあきらめて1階のお客様センターに行き、迷子のアナウンスをしてもらいました。

 すると、5分もしないうちにどこからか連絡が入り、海渡の名前を確認されました。そして

「お子さんは店の外へ出てしまったらしく、今○○警察署で保護されているそうです」

 はい?警察?!
 店から出ていたということにも驚きましたが、外(多分出入り口のあたり)にいて、何でお客様センターじゃなくて、遠くの○○警察署に保護されてるの? なんで???
 とにかく夫と車で警察へ向かいました。

 警察署の受付で名前を言うと、その奥のついたての向こうに海渡の頭が見えました。パパが中へ入って行き、私も入ろうとしたら書類を書かなくてはならず引き止められました。そのときに、受付に座っているおまわりさんが

「※※さんて、知ってる?」

と言いました。一瞬、何のことか分からなかったのですが、私の知ってる※※さんと言えば、ガイドヘルパーの※※※さんしかいません。

「ヘルパーの・・・※※さん・・・ですか?」

おまわりさんは頷いて

「その※※さんが、見つけて連れてきてくれたの」

と言いました。※※さんがあのショッピングセンターに買物に来ているのは不思議じゃありません。じゃあ、偶然買物に来て、海渡を店の外で見つけてくれたのか、でもそうしたら普通「お客様センター」じゃない?なんでわざわざ警察なんだろう??私の頭の中は?マークだらけ・・・

 何が何だか分からずボーっとしていたら目の前にその※※さんが現れました。開口一番、 

「ものすごい偶然なんです」

 聞いてみると、店の外は外でも、出口あたりじゃなくてず〜っと遠く、雨のなかひとりで歩いていたそうです。ショッピングセンターを出て、信号を3つ渡り、大きな川にかかる橋を越えてさらにその先です。

 たまたま、急用で警察に行くために車を運転していた※※さん、向こうから歩いてくる海渡を見つけてびっくり。すぐに車に乗せて、私の携帯に電話をかけたけれど出ず(この日に限って忘れてきた)、家にも電話したけれど誰も出ない、どうしても時間までに警察に行かないといけなかったので、もしかしたら、警察に私たちから何か連絡が入っているかもしれないと思って連れて行ったということだったのです。

 店から出て、そんな離れた場所を雨の中一人で歩いていたということにびっくりしました。方角的には間違いなく家の方ですが、なんで外へ出て行こうと思ったのか・・・・
 車で来たんだし、私にここで待っててと言ってあるのに、どうして外へ出たんだろう?????? 一人で歩いて家へ帰るつもりだったんだろうか。車で30分かかるのに・・・・?

 警察の方、連絡を受けて心配してきてくれた友人、そしてヘルパーさんに何度もお礼を言い、海渡にもヘルパーさんに深々と頭を下げさせてお礼を言わせ(素直に頭を下げてお礼を言いました)やっと帰路に着きました。

 車の中で「海渡、パパを探しに行ったの?」と聞くと、きっぱりと

「そだよ」と言いました。

「どうして外に出たの?」

「・・・・・・・」

「信号あったでしょう?」

「あお わたったもん」

 あああ、冷や汗が・・・・

 結局、なぜ外に出てしまったのか、なぜ一人で歩いて行ったのかは答えてくれませんでした。どうして外に出たのか叱りたいところですが、もとはと言えば、1階まで行くはずがないという油断と、きちんと跡を追わなかった私が悪いのです。あぁ、神様、これからは絶対に眼を離しません。

 神様といえば、※※さんが海渡を見つけてくれたことに、たくさんの偶然が重なっていました。普通なら絶対にこうならないようなことが今日の※※さんにいくつかあって、その結果、海渡を見つけることになったのです。

 それを考えると、どこかで神様が見ていたのかなという気持ちにすらなります。海渡を見つけるために、※※さんをあの場所へ行かせたとしか考えられない偶然。心配してくれた友人にこのことをメールすると

「(海ちゃん)生かされてるって感じがするね」

と返事が来ました。

 そういえば、生後1ヶ月のとき、寝返りも打てない海渡が夜中にベビーベッドから落ちて、下にあった布団の上に顔を真下にしてうつぶせになっていたことがあって、それをたまたま眼を覚ました長男(当時小2)が見つけてくれたことがありました。落ちた場所にちょうど布団があったのと、偶然長男が音もしないのになぜか眼が覚めて「ママ、海ちゃん、落ちてる」と見つけてくれたから良かったけれど、あのまま布団にうつぶせになっていたら、筋力の弱いダウン症の海渡は顔を上げることができず窒息していたかもしれません。

 私はクリスチャンではないけれど、まさに、海渡は守られて、生かされているということを感じさせてくれるような出来事でした。

 それでも、やっぱり親は子どもから眼を離してはいけません・・・・。反省。


■ ヘルパーさんといっしょ 土曜子ども広場へ参加編 その1 2005年05月21日(土)
 地域の公民館で開催される講座「土曜子どもひろば」のうちのひとつ「作って遊ぼうリサイクル工作」にヘルパーさんと参加してもらった。
 この講座は、基本的に小学生の子どもだけが参加するのだけれど、海渡のようなしょうがいのある子どもは一人で参加は難しい。そこでヘルパーさんと一緒に参加してもらって、補助や助言などをお手伝いしてもらうことにした。同じ町内に住む海渡と同じダウン症のユウタ君もヘルパーさんと参加することになり、ふたりとも大喜び。

 当日、海渡の担当に初めて若い男のヘルパーさんがつくことになった。お兄さんと呼びたいくらい若い! できれば工作ではなく、スポーツの相手をしていただきたいほどだ。
 実は、夏休みに向けてダウン症の子どもばかりで活動する計画があり、それが男の子ばかりなので、一人は同性のヘルパーさんが着替えやトイレ介助に必要だということから、男性ヘルパーとの顔合わせの意味もあった。

 今日の男性ヘルパーさんは普段は知的しょうがい者の作業所で指導員をされている方で、児童についても勉強したいということで海渡たちがちょうどいい対象となったようだ。もう、どんどん海渡たちと遊びまくり、観察しまくり、関わりまくって研究してください! そして、海渡たちの将来のために頑張ってください!と口に出して言わないけどそんな気持ち(笑)

 普段は、どちらかと言うと年配の女性ヘルパーばかりだったので、今日は海渡もちょっと照れ気味(なぜ?)

 さて、工作はコマを作ったとかで、ヘルパーさんのお話によると、きちんと先生の説明も聞き、ボクの言うことも真剣に聞いていましたということでどうやらおりこうさんに参加していたらしい。出来上がったコマをユウタ君と楽しそうに回して嬉しそうな笑顔を見せていたとか。

 家に戻ってからも自信満々、得意げに自分で作ったコマを見せてくれた。
 人の話をきちんと聞き、ヘルパーさんの言うことにも耳を傾け、そして自分で作ったという満足感、充実感、とても収穫の多い、充実した一日だった。

 ヘルパーさん、ありがとうございます。

■ 教えて〜〜 2005年05月19日(木)
 17日に小学校から愛・地球博に行った海渡。
 あの広い広い会場で、みんなと一緒に歩けるのか不安だったが、予想的中で途中からは個別学級の先生と別行動になってしまったらしい。

 で、そのときの様子を海渡の口から聞きたくて「○○先生と何したの?どこ行ったの?」と聞くと、返ってきた答えが・・・・

 「ひ・み・ちゅ(はあと)」

だった・・・・

 そんなこと言わずに教えて、ねえ、どこ見たの?何見たの? とあの手この手で聞き出そうとするが、ニヤニヤしているだけ。まあ、連絡帳にある程度のことは書いてあったのだけれど、普通学級の先生が言うには連絡帳に書いてあること以外のこともあれやこれやあったそうで・・・


 その個別学級の先生が今日は出張で留守だった。なので、他の先生方数人が海渡の勉強にかかわってくださった。(ありがとうございます!)
 一日の様子は、普通学級の先生がだいたい書いてくださったのだが、他の先生との様子もいろいろ書いてくださっているなか、最後に「海渡君からも聞いてください」と書いてあったので、本人に「今日、※※先生と何したの〜??」と聞いてみた。そしたら、返ってきたセリフが

 「ひ・み・ちゅ(はあと)」

だった・・・・・

 だからぁ、秘密にしないで教えてよ〜。そっと、教えて。ママだけにちょっとだけ教えて。少しでいいから・・・・あれこれ試してみるが、ニヤニヤ意味ありげに笑っているだけ・・・

 もともと、学校の様子は滅多に自分から話さない(話せない)し、こちらから聞いてもトンチンカンだったり知らんぷりが多いのだが、この「ひ・み・ちゅ」には参った。

 以前から、私の目の前でつまみ食いして注意されると「ひ・み・ちゅ」と言うことがあって「海ちゃん、『ひみつ』の使い方が違うよ」と言っていた。使い方としては今回は正しいような気はするけれど・・・。

 でもでも、秘密にしないで教えてくれ〜〜と母は真剣に思う・・・・。

■ kiss10個 2005年05月17日(火)
 夜、8時を回ったのになかなかお風呂に入ろうとしない海渡。

 「みゅうちゅう みてからぁ おふろ」
 (訳:ポケモンビデオの「ミュウーツーの逆襲」を見てからお風呂はいる)

などと、ふざけたことを言う(怒)

私  「ダメです! お風呂はいってから みゅうちゅう!」

海渡 「みゅうちゅう みてからぁ お・ふ・ろ」

私  「ダーーメ! みゅうちゅうは お風呂入ってからです!」

海渡 「みゅうちゅうぅぅ」

私  「ダメ!!!」

と、ここまで来たら、すでに海渡の眼はウルウル状態で下唇を突き出している。今にも涙がこぼれそうだ。そして、

「かあさん おこってだめ おくち ちゃっく」

と私の口を両手でふさぎにきた。可哀相だけど、何だか面白い(苦笑)
海渡はやっと観念したのか、立ち上がると洗面所にゆっくりと歩いて行った。


 その後、布団に入り「ミュウツーの逆襲」を見ることができた海渡はにこにこごきげん。そして、いきなり隣にいた私のほっぺにちゅっ。さっきあんなに怒ったからご機嫌取りに来たのかな?と思ったら

「い〜ち」

と数えだして、またほっぺにちゅ、「にぃ」でちゅ、「さあん」でちゅ・・・・・とうとう「じゅう!」と10回kissしてくれた。そして

「まま だいすき」

と。

 ちょっと照れる・・・・・て言うか、今ちゃんと「10」までしっかり数えていたじゃない? 意外なところで、海渡の成長を垣間見た。

 「すごいね、海ちゃん」と横を見ると、あんなに見たがっていた「みゅうちゅう」なのに、オープニングの歌が終わらないうちに寝息をたてていた。

■ 家庭訪問 2005年05月13日(金)
 特殊学級の先生と、普通学級の先生と順番に家庭訪問があった。
 普段から連絡帳で学校の中の様子は聞いているので、改めて何かについて話し合うということはないのだけれど、やはり「座り込み」が多発しているようで・・・・(苦笑)

 海渡は、時々座り込んで動かなくなることがある。
 たいてい、海渡なりに原因がある。この間の水族館で言えば、もう一回イルカショーが見たかったというような・・・・

 そういえば、今朝も張り切って朝家を出たのに、ベランダから見たらブランコの下で座り込んでいた。多分、さっきまで他の子が乗っていて、さあ今度は自分の番、というところで出発の時間になってしまったのだと思う。学校では、長い放課のあとなどによく動かなくなるらしい。

 これは、理解が進んで、気持ちの切り替えがスムーズになれば改善されていくのか、言葉がもっと自由にしゃべれるようになったら無くなるのか、私にはさっぱりわからない。大人のダウン症の人にもこういうところはあるらしいので、もしかしたらずっと続くのかなぁと不安になることもある。

 もしかしたら、私の今までの育て方のせいかと思うこともある。
 年の離れたきょうだいの末っ子なので、どうしても甘やかしてしまい、それで頑固さにも磨きが掛かったとか・・・・

 言葉かけや、何かの拍子にさっと立ち上がることもあるので、ただただ頑固だとか、わがままだとか、それだけで片付けたくはないけれど、それでもやっぱり悩みの種だなぁ・・・・・・

 家庭訪問のあいだ、当の海渡はずいぶん居心地が悪かったらしく、私や先生の呼びかけも知らん顔。どうも、海渡は先生が家に来るのは、自分が学校でしてきた悪さを私に言いにきたのだと思っているフシがあるらしく、ゲームするフリをしてしっかり話を聞いている。多分、身に覚えがあるのかもしれない。いや、あるはず。

 それにしても、いろいろ手を煩わせているはずなのに、可愛がってくださっている二人の先生には本当に感謝しています。これからもよろしくお願いします。



 

■ ポケモンパーク 2005年05月11日(水)
 父さんが、突然代休になったので、午後から海渡を早退させてポケモンパークに行って来た。

 愛・地球博の地元でもあり、毎日のようにテレビで地球博とポケパークの様子が流れていて、地球博には興味のない海渡もポケパークだけは「行きたい行きたい」とうるさかった。土日はアトラクション一つ乗るのに1時間、2時間待ちだというのを見て、行くなら平日と考えていたら、たまたま代休で休みになったので、行くなら今日しかない!と(笑)

 ネットで調べて、まずコンビニでEdyカードを購入。実はEdyカードは初めてなのでよく分からなかったのだが、ポケモンバージョンはお金がチャージしてないもので2000円だという! 迷わず普通の300円のを選んだ。それに3000円分チャージしてもらう。なんか、最初の300円ってなんなのよ?て感じだけど・・・・

 ササシマサテライトはさすがに平日だけあって、とても空いていた。が、人影がないとういこともなく、ちょうどいい混み具合・・・というか空き具合。
 人気の「わくわくサファリ」だけは30分近く並んだけれど、そのほかのアトラクションは待ち時間無し!! 乗りたいものにすぐ乗れた。

 海渡が選んだのは「わくわくサファリ」「ピカチュウの森」「ミズゴロウのスプラッシュアドベンチャー」の3つ。「わくわくサファリ」だけは私と入り、あとは一人で乗った。この3つで3000円分のチャージが無くなった(泣)

 いたるところ(トイレの中にまで)にポケモンのキャラが描かれているパーク内はそれだけで楽しくて、海渡もずっとニコニコ大興奮。アトラクションにはもう乗らずにパーク内のトイざらすでおもちゃを買って、すんなり帰ることになった。帰りぎわにピカチュウにも遭遇して大喜び。ピカチュウに抱きつく小さい子たちの後ろから、そっとピカチュウに触っていた(笑)

 どうだった?と訊くと

「ぴかちゅう ふわふわ」

と嬉しそうだった。良かったね、ピカチュウに逢えて。

 ニャースの大観覧車やミュウの3Dアドベンチャーや、もっともっと乗りたがる遊びたがるかなと思ったけれど、意外と見ているだけで満足して、すんなりと帰る気になってくれて良かった。

 ポケパークだけに朝から一日いるのは親は辛いけど(お金もかかる。なんせアトラクションは500円〜900円)ササシマサテライト全体はとても面白いところで、個人的には「手塚治虫のプラネタリウムシアター」や「スターウォーズ展」なんかも見てみたかった。

 明日は、海渡は学校で先生に一生懸命今日のことを話すんだろうな。
 がんばって、お話してね。

■ たったひとつのたからものからの旅立ち 2005年05月10日(火)
 昨夜、「たったひとつのたからもの」に出演していた杉森翼君の番組を見た。

 番組の詳しい内容は下のURLからどうぞ。

スーパーテレビ情報最前線 たったひとつのたからものからの旅立ち

  翼君は、海渡と同じダウン症で、海渡同様合併症がない。はいはいや歩き始めは、海渡より半年ほど早い。ちなみに、誕生の翌日にダウン症であるという告知を受けたのも同じ。

 同じダウン症だけれども、当然のことながら持って生まれた能力や性格は全く異なっている。番組を見て感じたのは、翼君のしっかりした発育、そしてお母さんの強さ。

 ナンセンスだとわかっていながら、つい自分の子供と比べてしまい、うーーーん、この差はなに??と凹んだりして(笑)

 例えば

 他のきょうだいより早く(しかも6時半!)起きて、さっさと自分の服を着ている
 就学前からひらがなが読めて、書ける
 筋力が弱いと言いつつ、あんなに激しいダンスが踊れる
 プールでの着替え、着替えたものの後始末も一人でやっている

 もう、唖然としながら見ていた。もちろん、翼君自身の能力の高さもあるし、普段からきょうだい(年の近いお兄ちゃんと弟がいる)と競い合っているうちに培った結果もあるんだろう。お母さんの育て方や教育の賜物でもあるのだろう。

 比べても仕方が無いし、海渡にあれだけのことを求めるのもどうかと思うのだけれど、やはりダウン症でも出来る子は出来るんだなぁと・・・・・。

 しかし、しょうがいを持ちつつあれだけのことができてもやはり、小学校就学への道は険しかったのだと思うと、現実は本当に厳しいものがあると実感する。多分、翼君の場合は障害児学級ではなく、普通学級への入学だから教育委員会との話し合いが何度も行われたのだろう。翼君の小学校に障害児学級があったのかなかったのかは番組からはわからないけれど、あるのに普通学級へ希望していたのなら相当大変だったろうなと思う。松田聖子のナレーションで「小学校がダウン症を受け入れるのはまれなこと」と言っていたのは、普通学級への受け入れのことではないかと思う。

 就学許可のハガキが来て、嬉しそうに笑いながらもキッチンでそっと涙を拭くお母さんの姿は、3年前の自分とだぶってみえた。普通の子なら、就学通知のハガキが来るのは当たり前のことなのに、たったハガキ一枚で子どもの将来さえ変わるように思ったものだった。

 厳しそうに見えるお母さんの姿は、翼君の将来を思う愛情の裏返しで、それはしょうがいのある子供にだけあてはまるわけではない。どの子にも必要なことなんだと思う。

 海渡は悪いことをして叱ると、石になり岩になってしまうタイプなので、どこまで理解してくれたのか分かりにくいが、翼君は反応がしっかりしているなと思った。そのあとの、お母さんへの気の使いようは海渡も同じで笑ってしまった(笑)

 エンディングで、小学校での様子が流れていたけれど、え?一人で傘持たせて大丈夫なの?ていうか、一人で学校行けるの? 授業中、補助の先生はいないの? トイレや着替えはどうしてるの???と テレビに向かってしゃべっているうちに、終わってしまった。
 やっぱり、お母さんの手記を読むしかないかも。


■ コピー 2005年05月09日(月)
 海渡が「コピー」と言う言葉を覚えたのは、テレビゲームからだった。
 海渡はRPGゲームをしても、ゲームのストーリーなどは全く理解できない。だから、いつも同じところを行ったり来たりしている。それはそれで楽しんでいたんだけれど、お兄ちゃんがどんどん先へ進むのを見てお兄ちゃんが進んだところまでやりたがった。それで、海渡のメモリーカードにお兄ちゃんのをコピーさせてもらった。

 ある日、海渡はメモリーカードの中を間違って「消去」してしまった。「また、お兄ちゃんにコピーしてもらおうね」と言って、コピーしてもらううちに、「コピー」がどういう意味かわかってきたらしい。

 ある日、鏡に写る自分の顔を見て

「こぴーだ」

と言った。鏡の自分を「コピー」と言う、その発想にびっくりした。考えて見れば確かにコピーだ。

 そうかと思えば、面白いテレビ番組があると

「これ こぴー して」

と言う、そう、ダビングのこと(笑)

 そして、海渡用のパソコンを掃除しているうちにブラウザを削除してしまい「海渡タブ」(IEではなくタブブラウザを使っていて「かいと」というタブが作ってあり、いろんなWebサイトが登録してある)がなくなったときも、

「海ちゃんの ない! こぴーしてよ」

と言った。元通りにしてという意味。

 海渡にとっては「コピー」は「同じもの」とか「同じにする」という意味らしい。
 ちゃんとそれなりに意味がわかって「コピー」という言葉を使っている。

 ひとつの言葉を覚えて、それを自分なりに応用している。
 言葉が海渡の中で、ちゃんと生きているんだなと思う。

 普通の8歳の子どもに比べたら海渡の中の語彙は圧倒的に少ないけれども、でも知っている言葉を海渡なりに考えて使って表現している。

 それって、すごいことだなと思う。

■ 母の日 2005年05月08日(日)
 母の日なのに、母は腹痛で寝込んでおりました。
 昨日の夕食後からお腹が痛くなり、正露丸を飲んできっと明日はよくなると眠ったのですが・・・ダメでした。以前やった胃腸炎に似た症状で、とにかく痛い・・・・・

 腹痛に加えて、めまいと動悸でクラクラふらふら・・・・

 父さんはどうしても抜けられない仕事で夕方までいない、長男も夕方までバイト、長女は午後から友達と約束があるというので午前中だけ海渡をみてもらい、私はひたすら寝るネルねる・・・・・・

 いつまでも起きてこない私に海渡が

「おひさま ぴかぴか もう あさだよ」

と言い、布団をはがそうとします。

「かあさん、おなか いたいの」

と言うと、びっくりした顔になったかと思ったら、今度は哀しそうな顔で

「おなか だいじょぶ? いたい? 」

と心配してくれます。あんまり哀しそうなので

「大丈夫だよ。海ちゃん、お姉ちゃんと遊んでてね」

と言うと、「はい!」とびっきり良いお返事。今度は父さんが

 「海渡、父さん仕事だから 行って来るね。おりこうにしてるんだぞ」

と言うと

「いってっしゃい! 気をつけてね! くるま!」

と珍しく大きな声で父さんを見送っていました。

 とうさんは仕事だし、かあさんは病気で寝てるしで、海渡なりにただならぬ雰囲気を感じ取ったような様子と言葉でした。



 午後になるとだいぶよくなりました。私が起き上がると

「まま おなか だいじょぶ? くすり 飲んでね」

と心配そうに言います。ああ、こんなに心配してくれるのね(泣)

 長女はゲームをしたりはさみ遊びをしたり、海渡とよく遊んでくれました。夕方になって、帰ってきた父さんは夕食を作ってくれるし、バイトに行っていた長男は、母の日だからと私にお寿司を買って来てくれました。

 寝込んでしまったけれど、なんだかとっても幸せな「母の日」でした。

 ありがとう。

■ おしまいおしまいおしまい 2005年05月06日(金)
 海渡にはわかりにくいゴールデンウィーク。
 今年は3連休あって登校、また3連休あって登校、そして2連休となる。

 海渡には最初の3連休の前の日に

 「海ちゃん、あしたからね学校おやすみおやすみおやすみ」

と指を3本折って、お休みが3回あることを教えた。

 「そしたら、学校行って、またおやすみおやすみおやすみ・・・だよ」

とまた指を3本折って教える。6日は学校へ行くので前の日に

 「あしたまた、学校だよ」

と言うと、海渡は

 「じゃあつぎ、おやすみおやすみおやすみ」

と、指を折りながら言った。

 「うーん、今度はおやすみは2回だよ。おやすみおやすみ」

 海渡はちょっと不満そうな顔をした(笑)
 決して、学校が嫌いなわけではないんだけれど、やっぱりお休みは嬉しいらしい。

 そして、

 「かあさん、すぽこん(パソコン)おしごと、おしまいおしまいおしまい」

と言った。

 そこで初めて、海渡が学校がお休みの日は、私の仕事もお終いにしてほしいと思っているんだと気づいた。多分、

「海ちゃんは、ユウタ君とヘルパーさんとボーリング行って、水族館行って来てね。かあさんはおうちでお仕事するからね」

と言ったのを覚えていたのだろう。

 ちょっと、胸が痛くなった・・・・・


■ 父と子 2005年05月05日(木)
 海渡はタバコの臭いが大嫌い。
 父さんが、タバコを吸いだすと飛んできて、ベランダを指差す。
 ベランダで吸って・・・ということらしい(笑)

 父さんは「はいはい」と、灰皿を持ってベランダへ退散する。
 でも、海渡は父さんをベランダに追い出したままにはしない。

 自分もベランダに出て、座っている父さんの横に腰を下ろす。
 そして、父さんがタバコを吸い終わるまで、お月様やお星様を指差しながらおしゃべりしてお付き合い。

 父と子の、貴重なひととき。


 このあいだ、何を思ったのか、灰皿とタバコを持ってきて父さんに差し出し、ベランダを指差した。ベランダでタバコをどうぞということらしい・・・。

 父さんは、今度は嬉しそうに「はいはい」と海渡からタバコを受け取ってベランダへ出る。
 すると、海渡もいそいそと後をついていって、父さんの横に座りお月様やお星様を指差して、またあれこれとお話している。

 海渡は、父さんと話しがしたくってベランダに誘ったのかもしれない。


■ ヘルパーさんといっしょ 水族館編 2005年05月04日(水)
 ガイドヘルプ二日目の4日は、水族館。
 今日はお弁当だったので昨日よりも楽しみが増え、満面の笑顔で出発した。

 しかし、出発したのが朝10時で、水族館へ到着したとメールが入ったのが、12時。片道2時間もかかるとは想定の範囲外・・・ちょっと時間設定が甘かった? 4時に帰って来ようと思うと、2時には水族館を出ないといけない。館内に居られるのは正味2時間。お弁当を食べていたら1時間ちょっとしかない???

 ヘルパー派遣の時間帯を10時から4時までという設定じゃなく、9時から4時とか、10時から5時、6時とか、もう少し必要な時間を計算するべきだったなと反省。昨日のボーリングはバス1本で行けるところだったのでちょうど良い時間だったけれど、今日は昨日より長いバスに加えて、地下鉄にもかなり乗っていないといけないのでもう少しよ〜く考えればよかった。実は、あまり早いと主婦であるヘルパーさんも大変かなとか、夕方にかかると迷惑かなとかあれこれ考えてしまった結果だった。

 しかし、結局、帰る時間を遅らせてもらうことになって、それなりに楽しめたようだった。
 ついてすぐ、お目当てのイルカショーを見て、お弁当、その後館内を見学して、大好きなペンギンの水槽の前でおおはしゃぎだったそうだ。

 この水族館のペンギンの水槽は本物の雪が降る。夏場に行くと本当に涼しそうだし、何より真夏の動物園の暑そうなぐったりとしたペンギンと比べてその動きが全く違う。ものすごいスピードで泳ぎ回るペンギンを見て、ふたりでキャっきゃと声を出していたそうだ。

 ずっと機嫌よく過ごした二人らしいが、海渡が一度だけ動かなかったことがあったらしい。 イルカショーを見て、その後お弁当を食べたのだが、食べ終わったあと座り込んで動かなくなってしまったらしい。ヘルパーさんもどうしてなのかわからなかったらしい。お弁当が足らなかったとは考えにくいし、お茶を飲んでいるはずだから、喉が渇いていたわけでもない。
うーーーん、イルカショーを見て、その後お弁当を食べたんだから、まだ水族館の中は見ていないはずなのに、動かなくなってしまったということは・・・・ヘルパーさんが帰ったあとに海渡に

「もしかして、もう一回、イルカショー見たかったの?」

と聞いてみると、あっさり

「そだよ」

との答え。そうかぁ、大歓声をあげて見ていたとヘルパーさんが言っていたから、もしかしてと思ったのだが、ヘルパーさんもそこまでは気づかなかったらしい。そりゃ、見終わって座り込んだのなら、もう一回見たいと分かるけど、その後お弁当食べたあとじゃさすがに分からないよ。時間的にも、次のショーは見れなかったので、どうにか立ち上がってくれて良かった。

 結局、時間がなくてお土産を買うことができなかったらしいけれど、二人は大満足だったとか。初めての地下鉄にも大興奮していたらしい。地下鉄の様子は

「まっくら でんき ピカピカ」と言いながら、地下鉄の中の揺れる様を体で表現してくれた。大好きなトンネルを走る電車に感動したようだった(笑)

 初めての、ガイドヘルプを使った遠出だったけれど、小さな冒険に二人は大満足だったらしい。これを機会にもっといろんなところへ友達やヘルパーさんといっしょに出かけられるといいなと思った。

 また、これから思春期を向かえて大人になって、親がどこまでも付き添わなくても、こうしてヘルパーさんに助けてもらうことで、普通の男の子たちのように、友達と映画やボーリングやカラオケを楽しむことができるんじゃないかと思うとちょっとワクワクしてくる。やっぱり、いつまでも親が付き添うのも子どもも嫌じゃないかなと思うし、いつまでも親が元気でいるわけじゃない。

 親の知らないところで、自分たちだけの青春を楽しむこともいいんじゃないかな・・・・
 空になったお弁当を赤いデイパックから出しながら、そんなことをふと考えた。


■ ヘルパーさんといっしょ ボーリング編 2005年05月03日(火)
 ゴールデンウィーク真っ只中。
 飛び石とはいえ、たくさんある休みのうちの二日間、ガイドヘルプをお願いすることにした。海渡と同じダウン症で、幼なじみのユウタ君とそれぞれガイドヘルパーさんをつけて、4人で今日はボーリング、明日は水族館というスケジュール。

  海渡は、ユウタ君とボーリング、水族館に行けると聞いて大喜び。
 交通費や行った先でかかる入場料などはすべて利用者負担ということと(飲食代だけはヘルパーさん自身が支払う)、水族館でお小遣いの中からお土産を買うという体験をさせることになったので、海渡に初めてお財布を買った。

 ついでに、保育園の頃からのミッキーマウスのリュックサックが小さくなったので、デイパックも新調。海渡が選んだのは、赤いデイパックとグリーンのお財布だった。

 今日のボーリング場は、バス停まで歩いて15分ほど、バスに乗って30分ほどかかる。田舎なので、どこへ行くにも車ばかりで、バスにはほとんど乗ったことがないので、これが一番不安だった。

 朝、10時。海渡は買ったばかりの赤いデイパックを背負って、マンション前でヘルパーさんの到着を待っていた。ヘルパーさんを見つけると走り出した(笑)
 細かいスケジュールの確認、お金の入ったお財布の確認、手帳の確認をしていよいよ出発。海渡はもうニコニコ嬉しそうにヘルパーさんと手をつないで歩きだした。しばらく見送って、マンションに入り、5階のベランダからまた見送る。

 赤いデイパックが楽しそうに揺れながら、どんどん小さくなっていく。

 予定としては、2ゲームして、そのあとはファミリーレストランでゆっくりと食事をして、その後またバスで帰るということになっている。

 帰ってきたのは、4時頃だった。
 満足そうな笑顔で、思っていたより元気いっぱい。まだまだ遊べる余力がありそうな感じだった。実は、海渡にとっては、初めてのボーリング。様子をヘルパーさんに聞いてみると、右で投げたり、左で投げたり、抱えて投げたり、海渡なりに試行錯誤しながら、それでも楽しそうだったそうだ。

 ぐずったり、すねたり、わがままを言うこともなく、機嫌よくユウタ君と楽しい時間を過ごしたらしい。ファミレスの帰りには公園で遊ぶというオマケつきだったとか(笑)

 明日は、さらに遠出の水族館。バスと地下鉄を乗り継いで行く。どうなるかなぁ・・・
 


■ 音楽療法にて 2005年05月02日(月)
 海渡は月1回、音楽療法に通っている。
 ダウン症の子どもばかり6人ほどの集まりだ。

 音楽を通じて、発語を促したり、言葉を覚えたり、先生や友達とのコミュニケーションのとり方を学んだりする。もちろん、体を使った遊びもあるので、リズム感を養ったり、音楽そのものを楽しんだりもできる。ダウン症の子どもたちはたいていの子が音楽大好きだ。

 普段は子どもの後ろにそれぞれのお母さんがついていたけれど、前回、初めて母子分離・・・つまり子どもたちと先生と補助のお母さん一人だけで受けることにして、お母さん方は「退場!」ということになった。

 大丈夫かな?と、母たちはみな半信半疑・・・でも、突然もらえた貴重な時間、積もる話もあるのでみんなでいそいそと喫茶店へ。話すことはもっぱら、子どもたちのこと。小学校のこと、養護学校のこと、支援費のこと、そして将来のこと・・・・話しても話しても、話は尽きないのだ(笑)

 ここで2人のお母さんを新たに支援費を使って活動するグループに勧誘成功。まあ、ただ単にこの事業所がいいよということなんだけど。小さな力も集まれば大きい。お母さんどうし集まって、子どもたちの将来のために支援費を上手に使って行こうと意気投合。

 さて、時間になって音楽療法の部屋に戻ると・・・・・私の姿が見えたとたん、先生の言うことを聞かないで海渡が床に寝そべっている。うわぁ、やっぱりダメだったのかな?と先生に聞いてみると・・・・・

「お母さん方がいないほうが、良いです!」

 どうやら、親がそばにいると甘えたり、恥ずかしがったりで、なかなか自分を出せないけれど、いなくなったらとてものびのび、生き生きしていたということらしい。私から見るとどう見てもモジモジ君の海渡がオリジナルダンスを披露したり、初めて自分の名前も言えたというのだ!そういえば、小学校の授業参観も練習ではできるのに、私が見ていると全然発表できない。先生はいつも「練習ではちゃんとできるんですよ」とおっしゃっていたっけ。

 他の子どもたちも、お母さんたちのプレッシャーから解放されるせいか親がそばについていないほうのびのびしているらしい。そこで、これからはお母さん抜きでいきましょうということになった。

 不安に思っていたのは、親だけだったのね。
 子どもは親が思っている以上に、成長しているということだろうか。



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