リトル・リチャードが亡くなられた、とのニュースを聞いた。本当に残念だ。彼がいなかったら、ビートルズも存在していなかったかもしれないんだよな。 彼のシャウト唱法や、叩きつけるような激しくエモーショナルなピアノのタッチ、もうカッコよすぎるし、ポール・マッカートニーが憧れたのもムリないよなと思うよ。 俺にとっても、憧れであり続けたなあ。さすがに嫉妬するほどの身の程知らずではないんだよ、俺だって。 憧れと嫉妬には、決定的な差がある。自分の手の届かない存在に憧れはしても、嫉妬はしないものだ。自分の手に届きそうな存在に嫉妬をするんだよね。例えば、俺がリトル・リチャードに嫉妬してたら、周りから笑われるよね。
で、これから嫉妬について語ろうと思うんだ。最初に断っておくけど、あくまでもアマチュアのミュージシャンとしてシノギを削りあう仲間との間の話。名古屋に住んでた時の話だけど、現在進行形の話でもあると思ってる。 俺にも嫉妬を覚える存在がいる。アイツのことをいつも意識してると言ってもいい。ステージに立ってるアイツ、本当にカッコいいんだよな。 アイツとデュオを組んでるギタリストYさんもまたカッコいいというか、たぶん世間一般的にはアイツ以上にカッコいい。けど、俺はYさんには嫉妬を覚えない。何故なら、Yさんはギタリストであって、ボーカリストではないから。 俺は、ギターも一応弾くけど、へたくそだし、自分のことをギタリストとは思ってないから、ギターがうまい人がどんどん出てきても、単純に「スゲエなあ」って思うだけだね。 ところが、実力あるボーカリストのパフォーマンスを見ると、冷静でいられなくなる。ボーカルでは誰にも負けたくないって意識がどこかにあるんだね。 アイツのボーカルには本当に痺れるし、ブルースハープもアイツには敵わない。アイツとYさんの演奏、いつまでも聴いていたいと思う。それでまた、アイツ、MCもうまいんだ。俺もボーカリストだから、MCを担当することが多いけど、なかなかセンスよくできないんだよね。 俺も、ソロ、バンドの他に、デュオを組んでたけど、俺のデュオ・パートナーのNさん、俺のボーカルよりもアイツのボーカルのほうが好きなんだよな。ある時Nさんに「俺のボーカルよりアイツのボーカルのほうが好きだよね」って聞いたら、「わかる? ゴメンね」って返ってきた。悔しいけど、アイツならしょうがないよな、とも思う。俺も、アイツのボーカル、大好きだし。 何年か前に、アイツのバンドと対バンでライブをやったけど、夢のようだった。アンコールでは二つのバンドが即席で『スイートホーム・シカゴ』を演奏して、アイツと俺が交互にボーカルやブルースハープで競演したんだけど、アイツの実力のスゴさを思い知ったな。その時、アイツと並んでも見劣りしないようになりたいと強く思ったよ。 1年半ほど前に、事情あって、名古屋を離れ、山梨にUターンしてきた。名古屋を離れる前、アイツとYさんのデュオのライブにゲスト出演させてもらったんだけど、アイツ、俺のことをテーマにした曲を作ってくれてて、あんなに嬉しいことはなかったよなあ。思い出すたびに泣けてくるよ。 アイツが俺のことをどう思ってるのか知らないけど、俺はアイツの永遠のライバルであり続けたいと思ってる。アイツたちの演奏に嫉妬しながらも喝采を送り、俺自身の糧にしたい。俺も負けないから、お前も絶対に負けるなよ。口にこそ出さないけど、俺はずっとそう思っているんだ。
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