くじら浜
夢使い
刻んでいく
2012年06月22日(金)
この道は果てしなく遠く
深く痛く
その先に何があるのか
盲目のぼくは君の背を追い
壊れた言葉を探しながら君は歩く
ゆっくりと
その歩みは
また増えたおじいちゃんの皺に
深く刻まれてゆく
手
2012年06月20日(水)
ちいさなサッカーボールが
海を越えて帰ってきた
潮をたっぷり吸い光を浴びて少年の手へ
たくさんの手が
また増えたおばあちゃんの顔の皺をなでた
また咲いてくれた桜の木の下
君の手のひらに桜が舞った
見つける
2012年06月18日(月)
小さな手をとって
ここだよと
君は言葉をひろった
さくら
2012年06月17日(日)
少しの想いが桜を咲かせる
どうか咲いてくださいと
跡
2012年06月15日(金)
その歴史も
その臭いも
その染みさえも
蝉の声
2012年06月14日(木)
お母さんをさがしています
母の名前を書いた紙をぶら下げて
少年は毎日避難所めぐりをしていた
ガレキの山から
たった一枚だけ見つけたと
写真を手におばあちゃんは微笑んだ
今年はセミが鳴かない
傷
2012年06月13日(水)
壊れたのは具象ではなく
言葉だったのかもしれない
平坦になった大地の前に
君たちはただ立ちつくし
画面の前でぼくたちは
息を呑むしかできず
たとえ君が言葉を失っても
ぼくは同情はしない
ぼくも言葉を失ったから
消失
2012年06月10日(日)
その日を境にすべての光が消えた
家路
2012年06月07日(木)
ドスンッと音がして
地面がゆれ空がゆれ人がゆれ
そしてすべてがゆれた
後部座席では母さんが
やっと繋がったとケイタイを握りしめ
泣かないでひろしちゃんと
電話をきったあと自分が泣きだした
目のまえの信号はすべて消え
真っ暗な交差点に難民たちは足跡だけをのこして
たとえ明日が途絶えても
必ずおうちに帰るんだと。
スローモーション
2012年06月05日(火)
遠くからおしよせる
白い塊
しずかに
せまり
ぼくはのまれた
染まる空
2012年06月02日(土)
久しぶりに空が焼けた
見上げる少年の
右頬もまっかに焼けた
きのうタロが死んだ
タロもまっかに焼けるのかな
少年の
左もだんだん焼けた
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