くじら浜
 夢使い







かくれが   2010年01月20日(水)

あの頃ぼくたちにはたくさんの隠れ処があった


防波堤にそびえる大きなガジュマルの樹
その樹の核にベニヤ板をおいた秘密基地

ススキの生い茂る中に獣道をつくり
敵をあざむくために作った迷路や落とし穴

刈ったあとのサトウキビの抜け殻を
ドーム状に積みあげて中をくりぬきゴザを敷く

岩に叩きつけられた波の音がひびく海辺の洞窟

雨がふると木造のおんぼろバス停小屋にかけこみ
雨戸を閉め、電気を消し、
トタン屋根に激しくおちる雨の音をきく


あの頃ぼくたちにはたくさんの隠れ処があった
そのひとつひとつが夢の跡だった







すべて風にゆれている   2010年01月17日(日)

風が吹きぬける
この街のざわめきをかき消すように
あおい風が吹きぬける

聴こえるのはゆれる樹々の擦れる声と
あおく染まる街におちた枯葉をふむ音

風の角度がかわるたびに
街はまたべつの色に染まり
立体のキャンパスは
風を追いかけなぞった冬の色があらたに塗られる

風は色を追い
軌跡がゆれている

この街は風に塗られた
冬の街








下町の路地裏   2010年01月07日(木)

でこぼこのアスファルトには
こどもたちが描いたケンケンパーのチョークの跡が
木造のこわれかけたアパートの入り口に置かれた
もう何年も使ってないだろうほこりまみれの洗濯機
それでも物干し竿にはしっかりと靴下が干されている

迷路のように入りくんだ路地裏

突きあたりまであるいていくと
「このさき自転車は通れません」の看板
4段ある石階段をあがると
古ぼけた木造のベンチと小さい砂場があるだけの
およそ誰もこないだろう薄暗い公園

パレットの積まれた町工場の前を
起用にフォークリフトを操作しながら
ひげづらのオヤジが買い物帰りのおばちゃんと世間話をしている

「いまだけ特価80円」の貼りがみのあるコーヒーの自販機

近くの小学校から時間を知らせるチャイムがひびく

たぶん車は通れないと思われるせまい道をすすむと
四つ角にとつぜんあられた車3台分の駐車場
とうぜん駐車している車はありません


どこまでもつづく不思議な迷路






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