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台風と濁流 2007年07月10日(火)
家の脇には川が流れていた。
ふだんは水量も少なく、その川っぺりでよく遊んでいたものだ。タナガ獲りをしたり、山へと続く上流をのぼり探検に行ったり。
その川が、台風が去った後に一変するのだ。
水嵩は当然ながら何倍にも増し、山の土砂を含んでドス茶に変色した川の水が、上流から折れた木の枝や、もぎとられた草や、飛ばされた屋根のトタンや、それらを一気にけたたましい轟音と一緒に流していく。 その様は恐怖すらおぼえるようだった。
台風一過後の照りつける太陽の下、その濁流は家の脇からバス道りに沿って蛇行しながら、やや幅を広くした本流へ流れ込み、そして龍郷湾へと辿りつく。 その間も濁流の勢いは衰えることなく蛇行を繰りかえし、もう・・この川は壊れるな・・ と思うくらいに、激しく流れ続ける。
濁流はある意味台風の象徴だと思う。
破壊的な活動の後、そのエネルギーは確実に川を再生させるのだ。
流れ込んだ土砂は川底に沈殿し、上流から流された砕けた石や草木がその上に重なり、削られた土手には新しい斜面が顔を出し、そこにはまた新たなイノチが宿る。 やがて、水嵩も流れも元に戻ったとき、台風の前とは明らかに変わった川が出来あがっているのだ。
あの濁流をみていた少年たちは 一瞬の絶望と永遠の奇跡を感じていた。
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