白日の独白
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2006年01月31日(火) 潜んでいるような

四方からの妙な圧力で変形しても誰も文句は言わない。
足を踏み締めることなどせずにゆらゆらと流れに身を任す。
いランプと警告音
大きな箱から次々と駆け出して天地を繋ぐ機械仕掛けに乗り移る。
誰かを押せば誰かに押される。誰かに押されるから誰かを押す。
全ては無言の内に行われるひとつのシステム。

フと、想う。
正気の沙汰ではない・・・・と。

けれど一体僕が誰に何を言えるというのだろう。
疑問が脳裏を掠める程度に鈍感で正常な僕は既に組み込まれている。
此処でしか生きていけないのだ。


2006年01月30日(月) 壁との会話

僕には情緒がないとN先生は言いました。
そういう所が可愛くて大好きだと壁を見ながら言いました。
立場上言うべきではない言葉だということを自覚した上で。

結局この人は壊れたがっていて、壊れた振りをしていたいだけ。
先生は僕が何もしないことを知っているから、安心して僕を求める。
じゃあ、じゃあさ。
僕が壊されたがっていることは知っているのかな。
僕は先生が何もしれくれないことを知っているから、先生なんかいらない。

「貴方変ですよ」

知ってるけどそんなこともないよと照れ笑いをする横顔。
目尻の小さな皺を眺めてこの人も年を取ったんだなと想う。


2006年01月27日(金) 決定事項

好きになろうかと思った人が怪我をした。
ここぞとばかりに「仕方が無いですよね」と中止にさせた。
お出掛けをしないで済んだ。
密に狂喜乱舞する僕。
全然好きじゃないし好きになる見込みもない。


2006年01月24日(火) 箱舟に棲む鼠の話

煌びやかな箱舟は想ったよりも早く沈みつつあるようだ。
箱舟なんてものは無いことは周知の事実。
無いからこそ在りえるということ。
そして賢い鼠は沈む船からは逃げ出すもの。
何故ハイエナは最初に逃げ出した鼠に噛み付かないのだろう。
箱舟の振りした船を沈めている間に鼠は別の船の搭乗記録を捨てている。
沈む船から逃げ出した鼠は一体何処へ逃げるのだろう。
海に逃げ道なんてないのに鼠は箱舟と同じように道に似た何かを作っている。


2006年01月23日(月) 聞こえたのは呼吸する音

箱の底にコインロッカーの鍵。
パパと彼は鍵に気付いていない。
鍵を拾い上げてポケットに突っ込む。
パパと彼はもう走り出していた。
僕はふたりの後を追い駆けた。

僕達は追い駆けていた。
誰かを。何かを。
だけど僕は逃げていた。
誰かから。何かから。

僕はふたりからわざと逸れた。
そうしない訳にはいかなかった。
鍵を持っているのは僕だから。

走れば走る程に一歩も前に進めなくなる。
目に見えない圧力が僕の足を絡め取る。
それでも僕は前へ進まなければならない。
何処へ行くのか知らなくても。
道端を這うしかないとしても。
僕は逃げ切らないといけない。


2006年01月20日(金) 戯言

最近はこんなことをよく考えています。

ある日僕は町で攫われて、小さな箱に詰め込まれます。
眼を開けていても閉じていても、同じように暗い箱の中。
僕は出来る限り眠り続けて次第に人形に近づいていきます。
その人は時々僕の箱を開けてみて、僕が中に居るのを確認するのです。


そういうのって素敵です。
僕を攫ってくれる人がいればいいのですが。


2006年01月19日(木) 恐らく、無意味

僕は人間として駄目です。
昔はそれなりにきちんとしていました。
マトモだったんです。
何時から駄目になっちゃったんだろう。
わからないな。
一番問題なのはきっと
駄目であることが自由であることに繋がる
そんな甘い勘違いをしたいからかもしれません。
だから僕は自由ではありません。


2006年01月15日(日) ステンレス

他人の吐瀉物を無理矢理口に捻じ込まれたとしても僕は平気な顔をしてのみこむ。
寧ろ喜んでいるように装うことさえある。
本当は凄く気持ちが悪い。
相手が二度と口を開けないように、首を捻じ切ってしまいたい。
でも出来ない。
僕が我慢をすれば済むんだ。
だから僕の身体は入口はあるが出口はない清潔な金属製の立方体だと想う。
意味なんて知らない。


2006年01月10日(火) 時間。

沈黙。

音も無く零れ頬に滲む涙。

呟き。
「前に泣いたのは3年半前でした」

無言。
頷く、僕。

あと少しだけ。
あと少しだけ。


2006年01月08日(日) 風俟ち。

頬を撫でるよりも強く髪を後ろへ流す程度の向かい風を待っていた。
彎曲した足場を一歩進む毎に、滑り落ちる白日夢。
僕は奈落を無感覚に堕ちて行く。
違う。それは夜に見る夢の話のはずだ。

眼鏡の隙間から砂が入り込んで涙が出た。
早く終りにしたい。疲弊しているのがわかるから。
終わらないままでいたい。失いたくないなんて身勝手。

風が強くて眼が開けられない。
風が強いんだ・・・・


2006年01月06日(金) 憧憬。

僕は彼を見ている。
だけど彼には僕が見えない。

集中する視線と漂揺する視線。
それは意識と意思。
そしてそこに介在する数の問題。

「この人生きてる」

日向みたいな高揚感は割りとすぐに絶望に変る。
虚像は虚像であるべきなのだ。


2006年01月04日(水) 醜い手。

僕が居るのは此方側 (僕は夢を失った人間)
君達が居るのはあちら側 (君達の夢なんて知らない)
全部終わってしまったことなんだ (もう僕には関係ないこと)
だから僕を探さないでよ。
お願いだから僕を見付けないでよ。

 C U T

嬉しそうな笑顔と素敵な言葉は滑らかに出てくる。
だって僕が始めたんじゃないか。
いつだってそうだよ。
僕の首を絞める手は僕自身。


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