ある漫画家の池袋線日記...ばて

 

 

今の力は? - 2003年09月30日(火)

どうしても連載まで持っていきたい。

もう去年ボツになった時のような力ではない筈だ。

あれからずいぶん力をつけてきたはずだ。


ストーリーを動かしてくれる女の子のキャラが動いてくれればなんとでもなる。

女の子の特徴を更に深く掘り下げなくてはいけない。

桃色村のレイジを描いた時に、偶然に人の心の奥底を描くことができたのが1本だけある。

それは偶然出てきたアイデアをストーリーに沿って展開させていくうちにできたんだけど、今度もそううまく行くかどうか?

単純で、後ろめたくなるような気持ちにさせるラインを考えよう。






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弱弱しいが、ここぞという時にだけ引かないキャラにするか?


迷っている。


単純に売れることを考えると、女の子は強いキャラがいいが、主人公の男のキャラがそうすると弱いキャラにしなくてはいけなくなる。

女の子が弱い、と主人公の男は強いキャラになる。

要するに主人公は男で、物語を動かしてくれるキャラが女なんだけれど・・・

しばし考えよう。






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泥をすする。 - 2003年09月26日(金)

あァいけない。

ちょっと今日は嬉しかった。

何が嬉しかったって、大出版社の編集者が、これは面白いので一緒に練り直しましょうと言ってくれたからだ。

書き直しましょうというのはこの編集者にとってはかなりなオッケーだったりする。

ダメならば「ダメですね」と言い。

良ければどんな巨匠でも「たいへん面白いので書き直しましょう」と言うのがこの人の特徴。
一発でオッケーと言うのは無い話なのだった。

もう一度、この人で大出版社に挑戦できる。


タイトルは「顔のない生活」

自分が自分でなくなることの恐怖を描こうと思って、ネーム(絵コンテ)を描いて見てもらったのだった。


しかし、家に帰ってきて目を細めて喜んでいる自分に気がついた。
これは大変いけない。
いけてない。





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大出版社の、今まで何本もヒットを出している編集者にほめられ、うきうきしながら描き直したものは全て「全然ダメですね」と言われ、敗北していったのでは。

やはり自分は、泥でもすすりながら描くような状態が一番いいものが出来ることを、今まで痛いほど思い知ったのではなかったのか。

多分また今日から、自分を地面に叩きつけるような心の作業が必要になってくる様な気がする。



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病の兆候。 - 2003年09月24日(水)



前書いた日記で、間違ったことを書いているらしい。

林真理子氏は、19歳で小説の賞で大賞を取り、ヨーロッパ旅行をプレゼントされたらしい。

名物編集にその後「あなたは直木賞を取れる」と言われたのはその後のことらしい。

どこで間違った記憶を植え付けられたのか、自分で勝手に妄想しているうちにそう思い込んでしまったのか、全くわからない。

僕はそこまで分裂病ではなかった様な気がするんだけれど、一体どういうことなんだろう?



最近は貧乏だけど、バリバリと動き回っているので寝つきもいいし、精神的におかしくなっているような兆候は無い様な気がするんだけど・・・



そういえば1年ぶりに、○学館の名物編集者がうちに来て漫画のネーム(絵コンテ)を見てくれるらしい。
1年ぶりに巡ってきたチャンスなので、妙に張り切っている。
物語の色んな部分が、グリグリとめぐりうごめいている頭の中も、すっかりおかしなことになっていることだろう。

多分一般人と会話すると、かなりな変人か変態なんじゃないかと思われるような、ビビッドな会話をしてしまうだろう。





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どうなんだろう?


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脳が沸騰して。 - 2003年09月20日(土)


この前会ったその大作家は、デビューしたばかりのまだ新人の頃、浦沢氏の漫画の原作を書かれたそうだ。

浦沢氏は今では『モンスター』『20世紀少年』『YAWARA』のヒットを出し、押しも押されもしない巨匠にまで成り上がっているが、大作家が原作を書かれた頃、浦沢氏は短編を出してもなかなか人気が取れず、もう売れる見込みもなくなってきていたので田舎に帰ろうかどうしようか迷っていた。
そこで大作家が取り上げ、それがきっかけで少しずつ人気が取れ始めたようだ。

やっぱり崖ップチにいた人が、一躍大作家になるようなことは沢山あるのだと思った。




林真理子氏も、全く小説を書いたことも無い頃、編集者見城氏が、あなたは直木賞を取れると言ったらしい。
「わたし小説を書いたことも無いですよ」と林真理子氏。
そこから、二人格闘の日々が7年も8年もあってやっと直木賞にたどり着く。

コピーライターをやっていた林氏が小説の文章を書けるようになるには、ずいぶん苦労があっただろうと思う。

一度染み付いた文章の形を別のものにしたりするのは、初めから初心者が小説の文章を覚えて書き始めるよりも、かなり難しい作業になるからだ。

若くして賞を取ったというのは遠目に見た人が言う話で、実際は長い長い格闘の日々があったのだった。





昨日まで東京は暑かった。
一日中エアコンをつけて、それでも暑かったのに、今日になってから気候は一転、秋になってしまった。
8月は涼しく、9月に入ってから暑い夏がやってきていた。
連日の30度以上で33度という日が何日も続いた。
おかげで脳が沸騰していて、ちゃんと頭が働いているのかどうか不安なまま仕事をしていた。

毎年のことだけれど、夏に描いた漫画は質がガクッと落ちる。

そして今日から秋。

朝起きてからしばらくしてだんだんに頭が冴えてきた。

昨日まで書いていたものを頭の中で再検討し始めた。

いけない!

やばい!

ちょっと質を落としたものを描いているかもしれない。

後で書き直しにかかろう。






いくら頑張ってもうまくいかない。

力が無いのなら頑張ってもうまくいかない。

頑張れば何でも出来るというのは素人の世界でのこと。

プロの世界ではそうはいかない。

小説家は大手の出版社で出している新人賞をとっても、本当に力がついてくるまでたいていは10年くらいはかかってしまうようだ。

賞を取るような人の中で才能が無いなんて人はおそらくいない。

大手の賞を取る人はみんな才能はあるのだった。




ボクは小説家ではなく、漫画家で、編集者はことあるごとに僕の才能を解説する。

編集者に言わせると、僕は才能があるのだそうだ。

でも当の本人はいくら解説されても、じゃあどうやってその才能を、自分のいい所を出すのか?
結構自分には自分自身が見えないもので、それはいろいろやってみて相手の、そして読者の反応を見て、一つずつ自分の才能に近づいて行くしかないのだろうか?

描ける人はもっと初めから自分のいい所を丸出しにした状態で新人賞を取り、デビューしてくる。

でもそんな人は10年に1人だったりする。





この前、大作家に会って気がついたことがある。

いろいろ才能を解説されるのも、自分の才能に近づく一つの方法だけれど、こちらの抱えているジレンマや、もっている病理についてうんうんと頭を縦に振って神のような大きなふところで聞いてくれることが、遠くにある自分の才能への道を一番大きく縮めてくれるものなんだなと思った。

大作家は繰り返し何回も言われた。
あなたはそのうち大物になる。
それは、大作家な優しさだったのかもしれないし、哀れみだったのかもしれないけど、とにかくボクにはその言葉を信じるしかないのだった。
信じる立場にしか自分を置けないのだった。




この大作家に原作を書いてもらい、その後、力をつけて巨匠になった人は何人もいる。
そして、一旦漫画家が有名にになってしまうと、その大作家は興味を無くし、もうその漫画家には見向きもしないのだった。
こんなに有名であるにもかかわらず、サイン会などやると、2時間待ちの行列が出来るほどの人気があるにもかかわらず、大金持ちでないのは、おそらくその辺の所が起因しているのだろう。



今、大作家の神通力で、もしかしたら一気に才能に近づいているのかもしれない。





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妄想なのか?啓示なのか? - 2003年09月18日(木)

大物漫画原作者と酒を飲んだ。

その、傑作が生まれるその部屋で、編集者と3人で飲んだ。

その作品の中から感じ取れる恐ろしさを感じる所も合ったけれど、とても理解があっておおらかでその上謙虚で驚いた。





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話しているうちに、5年の付き合いのある編集者にも話したことのないことを、次々に話し出す自分にも驚いた。

身が引き締まるようなというようなことは全くなかった、リラックスして、こちらの力をゆっくりと引き出し広げていかれたような感じ。

催眠効果でもあったんだろうか?




感じがするだけなのか?
ただ妄想に取り付かれ始めただけなのか?
ただ自信過剰なだけといわれるかもしれないけれど、何か自分がこれからとてつもない作品を書き出しそうな、そんな感覚に襲われている。







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眠れない夜。 - 2003年09月17日(水)

明日。

おおもの漫画原作者に会う。


何を持っていこう。


でっかい鯛でも煮てぶら下げて行こうか。

ワクワク・・・・

考えてみれば、ボクが漫画家を目指し始めた頃、その原作者は飛ぶ鳥を落としていた。

その漫画を血走った目で読みふけっていた。

流行らせた言葉は「灰色のサラリーマン生活」

やっぱり、漫画に描いてあるとーりサラリーマンにはならずに、死ぬまで自由業でいたいと思った。

その漫画を読み終わった後は、こんな漫画なら抱いて寝てもいいと思った。

多分、寝る前にも、眠くなるまで繰り返して読み続け、抱いて寝ていたと思う。


今年の夏にはその原作者に4話分原作をいただいて、短期集中連載もやった。

原作者はその有名な名前を使わずに、今は連載する漫画ごとに好きなペンネームをつけていらっしゃるようだ。
でもそんなことはどちらでもいい。
前からわかっていたつもりだったけれど、その原作を読んで、とんでもない、とてつもない実力だということがはっきりとわかったから。

自分のオリジナルの物語で漫画を描きたいのはもちろんあるけれど、この原作者のものは多分別物だと思う。

原作が来たら渾身の力をこめてバリバリと描こう。

さあ、あすはどうしよう。

多分ボクは、将来この原作者で、ヒット作を描くような気がしている。
(ほんとかい!?)





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おむすびと青木雄二。 - 2003年09月15日(月)

今日は朝からおむすびを作った。

料理の中で一番苦手なもの。

包丁でジャガイモなどの皮をむくこと。

その次はおむすびをにぎること。

どうしても真ん丸いおむすびしかにぎれない。

どうして三角のおむすびなんかにぎれるんだろう?

どうにぎっても丸くしかならないんだけどな・・・



食べてみた。

美味しいことは美味しいんだけど、ポロポロはじから崩れていって、食べるのに一苦労だった。

これはやっぱり誰かににぎってもらうしかないのかもしれない。





それから余談ですが『桃色村のレイジ』第7話が9月16日(火)発売の漫画アクションに掲載されます。
よかったら読んでいただければ嬉しいです。

今回は水中でのバイオレンスアクションになりました。





今日、アシスタントの人と話をしていて「ナニワ金融道」という漫画の話になった。

そういえば作者の青木雄二氏は先週ガンで亡くなられましたね、と突然びっくりすることを言われた。

青木氏は、記憶に間違いがなければ43歳でデビュー。
あっという間に単行本を2千万部も売って大金持ちになった。

しかし、それから15年後に、この世からいなくなってしまわれるとは。

青木氏は、漫画界の輝ける星だった。

30歳を過ぎれば漫画家になんかなれないという変な常識のようなものが、かつてはあった。

しかしここ数年そんな言葉はだんだんに言われなくなってきている。
それはおそらく青木氏の功績が大きい。

青木氏が講談社の新人漫画賞に作品を応募し、賞を取り、表彰式のあったその日。

その年齢を聞いた編集者や、そこに居合わせた人は、冷たい視線で青木氏が表彰状と賞金を貰い受ける所を見ていた。

それも大賞でも準大賞でもなく、もっともっと下の小さい賞である。

この人の姿を漫画界で見かけることは、もう金輪際ないだろうと、みんなが思ったことだろう。

しかし、43歳の漫画家志望に声をかけた一人の編集者がいた。

そして集中連載。

人気をかっさらい、飛ぶ鳥を落とす勢いで、一躍、漫画界の寵児へと登りつめていったのだった。

年齢がかなり行ってしまっても、いつまでも漫画家を目指し、アシスタントをしている人たちがここ東京には五万といる。

才能がありながら、なかなか見つけてもらえないで、年齢を重ねている人も沢山いる。





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青木氏は売れに売れ、凝縮した人生をここ数年送っていかれたのかもしれない。
しかしこれだけの業績を残してくれた人なんだから、数十億というせっかく稼いだお金で、楽しい人生を長々と送ってほしかった。


偉大な漫画家、青木雄二氏に、心からのご冥福をお祈りいたします。









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おそらく単純に、自律神経失調症。 - 2003年09月13日(土)

歩くと、つま先を、地面に引っ掛けてしまい、転びそうになる。

文字を書こうとしても、少し集中しないとちゃんと書けない。

集中力がなくなり、論理的に物事を考えることが出来ない。

便秘も治っていない。

体がだるく、特に朝起きてしばらくは、ほとんど動けない。

それに、まだめまいは続いているが、多分自律神経がいかれているんだろうと思うようになった。

コーヒーを飲むと、少し回復する。

朝はすごく調子が悪いが、夜になるにしたがって、どんどん調子が良くなってくる。

夜になって調子が良くなってくるのは、自律神経失調症の典型的な症状なので、やっぱりこれかと思った。

しかし手に汗をかくので、絵を描きにくいし、パソコンも打ちにくい。

ここの所、寝る時間が一定していなくて、夜中の2時に寝たり、朝の6時に寝たりとかなり荒れていた。

しばらくは、かなり体がもっているなと思っていたが、やっぱりここで一気に調子が悪くなってきたようだ。

自律神経失調症は簡単には治らない。

あまりこれを長く続けていると、精神的にも調子を落とし鬱状態になることも良く知っている。

規則正しい就寝時間。

後は、食事の時間を固定すること。

以前は、かなり守っていたんだけど、少しづつが、だんだんに大きくなり今の状態になってしまった。

少し精神的には落ち込んでいたほうが、漫画の仕事は内容が充実してくるんだけど。

と言うより、不健康であったからこそ、漫画家になったっと思っているけれど。

でもこの状態も、ほどほどにしておかなくては。





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しかし、その割には、入ってくるこまごまとした仕事や、その他の作業は意外に進んでいるのは不思議な状態。

仕事をするにはどんな状態がベストかそんなことはわからないと思える今日この頃。

そういえば、精神的に健康すぎるときって、アイデアが何も頭に浮かんでこなくて困っていたな・・・





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めまい。 - 2003年09月12日(金)

昨日、読みきりの漫画を一本上げたのだけれど、なんだかめまいがする中で、それでも、何をやっていても締め切りが迫ってくる中で書いた。

ここんとこ、ひどい便秘に悩まされている。

何だろう?
以前は時々頭痛がするということがあったけど、最近はめまいがはじめに襲ってきて、だんだんに頭痛が始まるようになる。

コーラックの飲みすぎなんだろうか?





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手に汗もかくようになった。

手先が震えながらでの漫画の作画作業だった。
担当編集者はずいぶん褒めてくれたが、いいのが描けているのかどうかさっぱりわからない。
手先が震えていても、疲れて目がかすんでも、元々新人くさい下手な絵を書くことで、個性を出してきたんだから、線が震えていてもそれは味になってくれて、かえっていい絵が描けると言う利点はある。

でも他の病気なんじゃないのか?

何か症状が変だ。

便秘だけでこんなふうになるのかな?

それでもさあこれから仕事をはじめよう。

食いっぱぐれないように。


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