えすぱっ子
清水エスパルスユース紹介サイト

2003年10月25日(土) Jユース杯 予選リーグ 柏レイソル戦(A)

03年10月25日14:00開始 柏の葉公園総合競技場
 第11回Jユースカップ2003 Jリーグユース選手権大会
 対 柏レイソルユース ※45分ハーフ
 天候:曇、風:弱風、気温:16.3℃、湿度:71%

▼布陣
−−−−−阿部− 篠田悠 −−−−

−真司−−−−−−−−−−谷野−

−−−−−大瀧−−枝村−−−−−

−篠田大−村越−−石垣−−森安−

−−−−−−−海人−−−−−−−

控え:前田、高柳、高野美、岡村、柴田、獅子内、八木
交代:後半12分:谷野 →高野美(真司を右MF、大瀧を左MF、森安をボランチ、高野美を右SBへ)
   後半26分:篠田悠→八木 (そのままFWに)

柏レイソルユース:

−−−−−菅沼−−小森−−−−−

−−−船山−−大峡−−柳澤−−−

−−−−−−−福地−−−−−−−

−須賀−−柴田−−石川−−石田−

−−−−−−−根本−−−−−−−

交代:後半36分:福地→中臺、後半41分:小森→桜井


▼試合展開

 Jユースカップは、関東の試合が多くて楽だなあ、と。十分にゆとりをもって家を出て、地下鉄改札前。…あれ? あれ、あれれ? そんな財布を忘れて愉快な朝でした。いやあ、めっちゃ走りましたよ、ホント。
 さて、サッカーボールがドリブルしているレイソルロードを通って、久々の葉っぱである。徒歩25分、意外に遠いよ。前に来たのは、3年前、Jユースカップで鹿島ユース相手に素敵な快勝劇を演じた時であった。しかし、今日はまだ予選リーグ、トップは日立台で、ユースは柏の葉というのは、何とも悩みの根は深い…。確かにピッチは遠いが、なかなか良いスタジアムだと思いますよ? とはいえ、日立台に慣れてしまうとねえ。


(葉っぱスタジアム。良芝。この後、デジカメの電池が切れてしまったので、写真はこれだけ(涙))

 清水は、スペイン帰りの篠田悠輔が遂に登場。チーム合流して約1ヶ月半。環境の変化もあって苦労もしただろうが、元気な姿を見られて嬉しい限りだ。これまでセカンド・トップを張っていた真司が左MFに下がり、左MFの大瀧が真希の抜けたボランチに入った。他では、石垣が高柳に代わって最終ラインに抜擢。フランス遠征で真希を欠くものの、谷野も含めて1年生3人がスタメンに並ぶ(ベンチにも4人)、フレッシュな顔ぶれとなった。能力に疑いはないものの、真司の左MFや大瀧のボランチは、春先に試されてバランスを乱す場面が多く、そのあたりが修正できるかがポイントとなる。
 一方の柏は、更に若く1年生4人(石田、福地、柳澤、船山)。とはいえ、石田以外はU-16代表を経験する期待のエリートである。一方、レイソル青梅から今年秋から移籍してきた(らしい)185cmのCB柴田に、トップから戻ってきた菅沼を前線に配備し、3年生6人を並べたあたりが、去年の磐田ユースとは違う強さ。石原こそいないものの、Jユースカップでは多くの3年生が引退していた過去に比べると、大きな違いだ。かなり強力な面子といってよいだろう。前線にテクニックとスピードに長ける選手がいるだけに、柳澤・福地の1年生がいかにバランスを崩さず、攻撃姿勢を保てるかが鍵となるか。

[前半]
 オープニングシュートは柏。村越が出し所に迷ってから出したパスを、大峡がカットして右に流れた菅沼へ。角度のない位置から狙ったが、海人が問題なくキャッチする。しかし、5分も過ぎると新布陣故の硬さも徐々に解けてゆき、6分にはスローインのボールを追った悠輔が、抜け目なく左CKを奪う。枝村がファーに合わせたボールを石垣が折り返すが、これは柏DFがクリア。しかし、素早くカバーした大輔が、右へと展開する。7分、谷野が上げたアーリークロスをCB柴田がかぶると、裏にいた阿部の元へ。悠輔と2人、フリーだったが、エースの阿部は当然、自らシュートを選択。GK手前でワンバウンドする、低く重いシュートだったが、GK根本、慌てずに抑えた。
 その後、清水は流れを掴む。枝村を軸とした中盤と連動した高いDFラインでプレスを仕掛けて、柏の高速2トップを封じ込めた。真司の位置取りの悪さから、何度も清水の左サイドに起点を作られるが、村越・石垣が制空権を完全に掌握、破局を招かなかった。鋭い突破を持つ船山を走らせなかった谷野・森安は、隠れた貢献者であっただろう。だが、清水の方もMFに下がった真司が周囲との連携を欠き、支配率で上回って押し込みながら、要所でミスが出て押し切ることができない。
 14分にこそ、悠輔が奪った右CK、大瀧の蹴ったボールに密集地から離れて近寄った悠輔が頭を捻って、テクニカルなバックヘッドがファーに外れるチャンスがあった。だが、流れの中では、10分、柏の左CKを森安が跳ね返した速攻から、谷野がチェンジサイドを真司がダイレクトで更に折り返そうとして失敗するなど、好機を掴めない。とはいえ、柏も19分に船山がミドルを放つぐらいで、好機は20分に右サイド(清水の左)から須賀が蹴ったFKをファーで折り返した場面ぐらいで、それもGK海人に遅れて石川が衝突し、清水ベンチが激昂するだけで終わった(結局、カードはなし)。

 それでも中盤で優位を保つ清水は、徐々に押し込む時間が長くなり、21分には悠輔のポストを真司が再び前へクサビを入れて、阿部が右にチェンジサイド。サイドに張った谷野が受けると、その内側を追い越した森安に渡って25Mミドルを狙ったが、枠の上に外れる。続いて22分、枝村のダイアゴナルフィードを真司が大輔に戻したところで、石田がファウル。PA左横の位置から枝村のFK、ファーポスト付近で石垣が叩き落としたが、コースはなくGK正面。そして27分、中盤左サイドから篠田がスローインを入れると、受けた枝村が真司に戻し、それを下がってきた阿部へとクサビ、阿部が体勢を崩しながらも再び戻したボールを、受けた真司が軽く横に叩いて?、枝村?が左サイドラインを沿わせるスルーパス。以上、5つ(4つ?)のパスが全てダイレクト。あまりに速すぎて観客席の筆者すら追い切れず(苦笑)。当然、フィールド内の柏選手が追い切れずはずもなく、いつの間にか俊足を飛ばしていた大輔が完全フリーで抜け出して、左クロスを送った。だが、中央には弟の悠輔が待つだけでファーに流れると、谷野がそれに詰めたが、交錯してファウルを犯してしまう。
 この後は清水も攻め疲れ、時間も30分を過ぎて中盤にスペースができたため、柏の高速アタックも少しずつ脅威の片鱗を見せたことで、暫く膠着した展開が続いた。だが、再び流れを掴んだのは清水。39分、中盤左サイド、乱れたパスを大瀧がスライディングして繋ぐと、クサビに入った阿部が反転してゆっくりと溜めながら、サイドライン際にスルーパスを送る。そこに真司が抜け出してPA左角まで持ち込むと、対応した石川の虚を突く股抜き左クロス。そこに悠輔が走り込み、GKと1対1に。素早く低く重いシュートを放ったが、同様に素早く距離を詰めていたGK根本が正面。だが、ここまでで、最大の決定機であった。

 その後、互いにファウルの多い時間帯が続くが、やはり先に清水が好機を掴む。43分、左に張った真司から、中央へ40M級ダイアゴナルフィード。悠輔が巧くDFの前に体を入れ、戻りながら受けるが、パスが厳しくてポストが乱れる。が、すぐさま大瀧がフォローし、今度は逆サイドの右に展開。そこに流れた阿部、向き直して縦に突破し、悠輔を目掛けてクロスを入れると、柴田のクリアが乱れてオウンゴールかとヒヤッとしたが、CKに逃れる。
 44分、枝村の左CK。またも競り勝った石垣がファーで折り返すが、DFが跳ね返して柏の速攻。清水陣内中央で菅沼が谷野と大輔に囲まれながら受けると、いち早く大峡が飛び出し、2対2に。大峡には大輔が付き、菅沼は一気に40Mを突破する。しかし、谷野も最後まで追い縋って、左サイドに開かせながらゴールライン際で間合いを詰めた、かに見えたが、菅沼は半身ズラしてループ性の左クロスを送る。すると、大峡がいつの間にか大輔のマークを外しており、振られた海人は反応が追いつかず、軽くジャンプして頭で押し込んだ。0−1。前半は柏に全く決定機を作らせず、シュートも菅沼のオープニングシュートと船山のミドルが2本だけでだっただけに、CK崩れからの、非常に悔やまれる時間帯での失点となった。
 その後、もう一度、大瀧の右CKがあったが、簡単にニアで跳ね返され、前半終了。7度のCKを生かせなかったのも、痛かった。

柏         清水エスパルス
4(2) シュート 5(3) ○阿部、×悠輔、×森安、○石垣、○悠輔
6(1) 右クロス 5(2) ○谷野、○森安、×森安、×大瀧、×阿部
2(1) 左クロス 3(1) ×真司、×大輔、○真司
0(0) 右側CK 4(1) ×大瀧、○大瀧、×大瀧、×大瀧
2(0) 左側CK 3(2) ○枝村、×枝村、○枝村
1(−)  犯OS  1(−) 阿部
10(−) ファウル 9(−) 村越、谷野、村越、悠輔、谷野、枝村、阿部、枝村、森安


[後半]
 後半は東福岡戦同様、追う清水がいきなり決定機。1分、右に開いた谷野を再び森安が内側から追い越し、そのままPA内へ侵入を図るが、これは柏の包囲網に跳ね返される。だが、フォローしていた枝村が、ルーズボールに足を伸ばして粘ると、谷野がそれを拾ってアーリークロス。PAややニアで悠輔が頭で合わせるが、僅かに合わず。だが、それが上手くスルーとなり、阿部がフリーになる。10Mもない至近距離でワントラップボレーを放ったが、咄嗟に距離を詰めたGK根本がコースを完全に塞ぎ、ゴールを許さない。
 その後、またも潰し合いになり、柏の攻勢は許さないものの、阿部のミドルや、枝村の2人抜き20M突破など、清水の攻撃も単発。ここで築館監督は思いきった手を打つ。谷野に代えて高野美臣を入れると、ボランチに森安を上げ、右は真司−美臣のコンビに。枝村をより攻めに絡ませること、大瀧を使ってサイドに起点を作ることを狙った采配だと思うが、真司のポジションチェンジに伴って、今度は右サイドに柏の起点を作られることになる。
 それでも暫くは破綻するには至らず、特に悠輔は次第に連携を深め、攻撃に絡む。18分、中央に入った大瀧が戻したボールを、入れ替わって左に位置した悠輔がまずトラップでマーク1人を交わすと、急にスピードを上げて更に1人を抜き、いつの間にかシュートエリアに入って強烈に低いシュート。GK根本の好守に阻まれたが、全くフカす気配がないのが、なんだかとってもエスパニョーラ。

 だが、23分、バイタルエリアから大峡が叩いたボール、左スペースにフリーで走り込んできた船山がシュートを放ち、ニアに外れる。これが後半初シュートだった柏だが、シュートを契機に船山が復活し、清水の右サイドは破綻を迎える。しかし、築館監督はその修繕には動かず、篠田悠輔をベンチに下げる。恐らく、試合前から予定していた交代だと思うが、阿部と共に前線で起点を作っていた悠輔がいなくなり、破綻は拡大することになる。MFとしては独善的な連携が目立っていた真司をFWに上げ、中盤に岡村か獅子内、柴田を入れた方が良かったと思うのだが…。
 26分、須賀のファウルで右サイド角度60度、距離40MほどからFK。大瀧は直接PA内に合わせるが、跳ね返されると、またもセットプレー崩れから柏の速攻。チェンジサイドしたボールを船山が受けて、左から斜めに突破を仕掛けると、それを追い掛けた大瀧が後ろから手を掛けて、主審の笛。船山が倒れたのはPA内だったが、ファウルの反則時点はPAのギリギリ外という判定に、会場からはブーイング。左75度、清水は全員で壁を作るが、小森の狙った低いFKに脆くもすり抜けられて、ボールはゴール右隅に。だが、守護神海人が超反応を示し、キャッチに成功する。
 しかし、清水の組織的なプレスは右サイドの破綻が波及、全体に散漫なものになる。29分には菅沼に左サイド(清水の右)から突破され、クロスは石垣が跳ね返すが、スローインから今度は須賀が左クロス。ファーに流れると、大峡が大輔を抜いて右から折り返すが、村越が際どく競り合って跳ね返す。更に32分、清水陣内左(清水の右)に捌かれたボールを船山が受けると、一気にスピードを上げて真司の軽いチェックを振り切り、突破。PA内へ侵入するが、後追いになった美臣が後ろからスライディングを仕掛ける。ボールを狙ってはいたが、バックチャージで倒れた選手に非があるはずもなく、主審は今度こそPKを指示。船山が縦に抜けた位置は角度がなく、わざわざバックチャージの危険を冒したのは、焦りがあったとしか思えなかった。船山一度ボールをセットしたが、ベンチの指示でキッカーは菅沼。海人の逆の右のサイドネットにキッチリと決めて、大きな追加点を奪った。0−2。

 その後は気落ちした清水(トップの悪い癖が伝染してしまった…)を海人が怒りのコーチングをするが、甲斐なく一方的な柏の攻勢が続く。余りあるスペースに柏の高速アタックが炸裂し、35分に小森が(ハンドで清水のFKに)、36分に菅沼が(シュートも海人がキャッチ)DFラインの裏に抜ける好機を得た。37分にも、左に流れた菅沼に美臣が釣られ、その裏に中台が走り込んで小さく中に戻したボールを、再び菅沼が合わせたが、ゴールを横切ってファーに外れる。
 40分、清水は最終ラインで組み立て直し、村越が低く速いボールを中央から縦に入れると、ポジションを変えていた大瀧が戻りながら左に叩く。入れ替わっていた八木が受けるが、厳しく囲まれて振り向けず、下がりながらも粘って何とか枝村へと渡す。中盤でフリーの枝村、タイミングを図ると左足で30Mスルーパス。両CBの左から抜け出した阿部が追う石川をものともせず、角度30度15Mから左足一閃。これが完成された阿部の得点の形。鮮烈に右サイドネットに決まり、1−2。全く声もなく、静まりかえる会場。阿部は決まることがさも当然と、すぐに転がるボールに走り寄って拾い、センターサークルへと戻した。

 そこからの時間帯は、素早く清水陣内コーナー付近にボールを運んで時間稼ぎする柏と、素早くPA内に放り込んでパワープレイを試みる清水という構図に。42分に枝村のスルーパスに篠田がオーバーラップ、左クロスに阿部と競り合いながら石川がCKに逃げた場面以外では特に好機もなく、柏が逃げ切るように思われた。しかし、ロスタイムも2分を過ぎた頃、柏が中盤センターサークルでファウルを犯して、FK。これが最後とばかり、清水は全員が上がって捨て身の攻撃を仕掛ける。大事なキッカーを任せられたのは、枝村。角度は正面で、合わせるボールを蹴るには非常に難しい位置だったが、50Mキックは低く、しかし柔らかい軌跡を描いて、PA内やや左寄りで誰よりも高かった石垣にピタリ。巧みに頭ですらして狙った同点シュートは、だが僅かに枠上に外れた。
 その後、やや時間はあったが動きなく、タイムアップ。今年のJユースカップは2位抜けを狙えない(2位となった7チーム中、成績上位の5チームのみが決勝トーナメントに進めるのだが、激戦区であるグループDでは潰し合いになる可能性が高い)ことを考えると、既に横浜相手に1勝1分と勝ち越した柏に負けたことで、早くも厳しい状況に追い込まれてしまった。

柏         清水エスパルス
8(5) シュート 8(3) ○阿部、×阿部、×阿部、○悠輔、×阿部、◎阿部、×阿部、×石垣
3(1) 右クロス 2(1) ○谷野、×美臣
4(1) 左クロス 6(0) ×大瀧、×大瀧、×大瀧、×大輔、×枝村、×大瀧
1(1) 右側CK 1(0) △大瀧
1(0) 左側CK 3(0) ×枝村、×枝村、×枝村
1(−)  犯OS  0(−)
8(−) ファウル 9(−) 谷野、阿部、石垣、村越、大輔、大瀧、美臣、村越、真司


▼試合結果
清水エスパルスユース 1−2 柏レイソルユース
 得点:前半44分:柏 ・大峡 浩 (菅沼実 ・左クロス)
    後半32分:柏 ・菅沼 実 (PK)
    後半40分:清水・阿部文一朗(枝村匠馬・スルーパス)
 警告:後半23分:清水・篠田大輔 (ラフプレイ)
    後半31分:柏 ・柴田慎吾 (反スポーツ的行為)
    後半32分:清水・高野美臣 (反スポーツ的行為)
    後半38分:清水・村越大三 (反スポーツ的行為)


▼選手寸評

[私撰MVP]
●枝村匠馬 90分出場:クロス1(左1)
 春先の好調以来、久々に良い枝村を見た。まだ潜在能力60%ぐらいだが。大瀧と組んだため、守備の負担から低い位置取りになったが、少しぐらい負荷過剰の方が、持てる力を出し切れる気がする。最終ラインのカバーから中盤のフィルター役と守備を怠ることなく、左右への捌きも視野・精度共に水準以上だった。

[私撰MIP]
●石垣勝矢 90分出場:シュート2(枠内1)
 展望記事で「チームで空中戦最強」と煽ってみたが、その通りに両ゴール前で制空権を握ってみせた。連携面でぎこちなく、細かいパスミスや無駄にスペースを作ってしまう場面もあったが、個人で見れば地上戦1対1でも柏の高速ドリブラーを抑えている。継続して起用してほしい人材。

●阿部文一朗 90分出場:シュート7(枠内3、得点1)、クロス1(右1)
 まだできるとは思うが、菅沼同様にこのレベルでは別格。本来の高さや裏に抜ける速さだけでなく、サイドに開いてドリブル突破で起点を作り、下がってクサビを受ければスルーパスやチェンジサイドにセンスを見せた。北嶋に裏を狙わせるぐらいなら、トップでも阿部を使った方がマシ(浩太との相性も良いし)。

[番外]
●篠田悠輔 71分出場:シュート3(枠内2)
 大いに注目された篠田悠輔だが、結果だけ見れば平凡な内容。185cmの柴田と181cmの石川相手に、コンタクトに弱さも見せた。何かが特に優れているわけではないのだが、要所を見ると、ピタリと足下に収める的確なトラップ、ドリブルの独特な間合い、動きながらのタッチの柔らかさ、小さな振りから低くて重いシュートと、実に面白い。プレーに緩急があり、サボるところはサボって要所でキレを増しすこと、全てのプレーがゴールに向かっていることなど、日本人では珍しいとってもストライカー。なんだかんだで悠輔がベンチに退いた後は、流れは柏のものになっている。

[個人的好印象選手(相手方)]
 菅沼実(3年):このレベルでは別次元のスピードを持った選手。まあ、当然だが。
 大峡浩(3年):前半は目立たなかったが、得点後はキレキレに。気持ちよさそうにプレーしてた。



2003年10月12日(日) サテ:サテライトリーグ 横浜F・マリノス戦(A)

03年10月12日14:00開始 横浜F・マリノス戸塚トレーニングセンター
 2003Jサテライトリーグ Bグループ
 対 横浜F・マリノスサテライト(A) ※45分ハーフ

▼布陣
−−−−−北嶋− 久保山 −−−−

−隼人−−−−−−−−−−太田−

−−−−−平松−−浩太−−−−−

−純平−−鶴見−−高林−−市川−

−−−−−−−真田−−−−−−−

控え:羽田、津田、村松、田中、塩澤
交代:後半00分:高林→津田(鶴見を右CB、津田を左CBへ)
   後半22分:北嶋→塩澤(そのままFWに)
        平松→村松(純平を左MF、村松を左SBへ)



(スキャナーではなく、メンバー表は配布してなかったので、会場で張り出したのを撮影したもの。真田がいながら、平均年齢が横浜と変わらない!)


横浜F・マリノスサテライト:

−−−−−清水−−飯田−−−−−

−山瀬−−−−−−−−−−大橋−

−−−−−本橋−−金子−−−−−

−三上−−尾本−−小原−−佐藤一

−−−−−−−下川−−−−−−−

交代:後半00分:清水→ハーフナー、下川→佐藤浩、後半30分:山瀬→加藤広、後半39分:飯田→加藤健



(ベンチにはユース勢の下級生3人。ハーフナー親子見参)


▼試合展開
 調子に乗って湘南新宿ラインを乗り過ごしてしまい、戸塚で下車(最寄り駅は東戸塚)。先週の駒場といい、どうも行き慣れた場所への油断があるようだ。時間もなくて仕方なく、タクシーを使う。ところが、運転手のオバちゃん、こちらは地図まで見せて説明しているのに、どうも要領を得ない。そして、不安は的中。見事に迷う。結局、こちらがナビしながら、30分以上も掛けて到着。2820円。正しい道で行けば、5kmもない距離なのだが…。こちらは時間がないので、不服ながらも支払う。
 その戸塚グラウンドは、J1のない週末ということで、なかなかの観衆。一応、公式記録によると300人。トップに満足してるホームのマリノスと違い、不満たらたらのアウェイ・エスパサポの方が多くを占めた。普段のサテの試合にあるほのぼのした雰囲気はなく、なんだか妙に盛り上がっていた。
 その清水のスタメンは、なんだかサテとは思えない面子。確かに退場になった鶴見を除けば、前の試合であるナビスコではスタメンから外れたメンバーばっかりだが…。とはいえ、CBだけは本来ボランチの筑波先輩後輩コンビ。また、敢えて平松と隼人を本来のポジションとは逆で、起用してきた。一方のマリノスは、坂田と阿部がU-20代表のアメリカ遠征で抜けてしまい、控えの少ないメンバー。まあ、サテだから、これで良いと思うが。とはいえ、新人といえるのは山瀬と尾本だけであり、勝負の年である3年目以上の選手で固めた、相応の選手たちである。勿論、勝負の年であるのは、清水の選手にとっても同じ。
 なお、前回の対戦は、こちらを参照方。

[前半]
前半15分:横浜、敵陣左サイドに流れた飯田がPA手前の本橋に戻すと、再び左サイドへと流す。飯田を追い越す3人目の動きで山瀬がフリーになり、上げた左クロスに2列目から飛び込んだ金子がPA内中央でヘッド、0−1。

前半31分:横浜、速攻で敵陣左サイド、市川の裏に流れた清水のドリブルを高林が止められず、たまらずファウル。大橋のFK、ニアで小原が競り合って軌跡を変えると、中央に飛び込んだ尾本を止められず右足で押し込まれ、0−2。

(このあたりで平松と隼人のポジションを入れ替える)

前半38分:清水、中盤右サイドで浩太が巧妙に体を入れて奪い取ると、共にプレスに入っていた久保山が、もたつきながらも強引にスイッチ、前に抜け出しながら左スペースに攻め上がりを引き出す、鮮やかな横パスを送る。平松が走り込んでスピードに乗ってPA内に侵入、小原を交わしてスピードを急に落とすと、誘われた小原が後ろから押し倒し、PK。久保山がゴール角にキッチリと決める。1−2。

前半45分:横浜、速攻。敵陣左サイドで受けた三上が、市川のチェックを交わして裏に抜け、高林のカバーの前に上げた左クロスを、2列目から今度は本橋が飛び込みヘッド、止められず。1−3。

短評:サテと思えない豪華メンバーが序盤を優勢に進めたが、徐々にチームとしての機能不全を晒す。特に平松はボランチのはずがバイタルエリアのカバーリングを殆ど放棄しており、浩太が最終ラインの前に釘付けとなって、展開力の点で横浜のダブルボランチに遅れをとる。清水は市川にボールを集め、右サイドから強引な攻めを展開したが、PA内の制空権を横浜両CBに握られたまま。すると、市川の裏をカバーしていた高林が脆さを見せ、初シュートで失点すると、同じようなパターンで3失点した。

横浜M       清水エスパルス
8(5) シュート 9(5) ×久保、○太田、○北嶋、×鶴見、×北嶋、◎久保、○北嶋、○純平
               ×隼人
1(0) 右クロス 6(2) ×太田、×市川、○浩太、×太田、×市川、○太田
9(3) 左クロス 5(2) ○隼人、○北嶋、×純平、×隼人、○北嶋
0(0) 右側CK 1(0) ×隼人
0(0) 左側CK 3(1) ×平松、○平松、×平松
2(−)  犯OS  3(−) 久保、隼人、隼人
5(−) ファウル 5(−) 純平、北嶋、??、久保、高林

[後半]
短評:前半途中から組み直した隼人と浩太の両ボランチが機能し、主導権を握る。また、両SB(特に市川)の位置が下がり気味に修正し、クロスを上げられても両CB+逆サイドのSBで十分に競り合えるようになった。22分、村松と塩沢が投入されると、3期生の鮮やかなダイレクトパスが随所に見られるようになり、塩沢がドリブルで小原を退場に追い込む。しかし、ユース2年、193cmの加藤広を投入し、PA内を固めた横浜に対し、168cmの塩沢と171cmの久保山にクロスを送り込む単調な展開が続き、遂にゴールは奪えなかった。右サイドにも、左サイドのような工夫された崩しがあれば…。

横浜M       清水エスパルス
1(0) シュート 8(5) ○太田、×平松、×北嶋、○北嶋、○久保、○塩沢、×浩太、○隼人
4(1) 右クロス 10(1) ×太田、×浩太、○太田、×塩沢、×隼人、×久保、×市川、×太田
               ×市川、×市川
5(0) 左クロス 5(0) ×平松、×平松、×村松、×純平、×津田
0(0) 右側CK 7(0) ×隼人、×隼人、×隼人、×隼人、×隼人、×久保、×隼人
0(0) 左側CK 3(0) ×平松、△純平、×久保
1(−)  犯OS  8(−) 平松、久保、北嶋、久保、北嶋、久保、??、久保
7(−) ファウル 5(−) 鶴見、鶴見、隼人、村松、隼人


▼試合結果
清水エスパルスサテライト 1−3 横浜F・マリノスサテライト
 得点:前半15分:横浜・金子勇樹 (山瀬幸宏・左クロス)
    前半31分:横浜・尾本敬  (大橋正博・FK)
    前半38分:清水・久保山由清(PK)
    前半44分:横浜・本橋卓巳 (三上和良・左クロス)
 警告:前半38分:横浜・小原章吾 (ラフプレイ)
    後半12分:横浜・佐藤 浩 (遅延行為)
    後半24分:横浜・三上和良 (ラフプレイ)
    後半27分:横浜・小原章吾 (ラフプレイ)
    後半40分:清水・久保山由清(反スポーツ的行為)
 退場:後半27分:横浜・小原章吾 (警告2回)




▼選手寸評

●真田雅則 (GK、90分間出場、35歳・清水商業高出身) 被シュート9(被枠内5、失点3)
 5.0:枠内5本で3失点とは…、簡単なシュートではなかったがもう少し止めてほしい。コーチング・フィードもいまいち。

●市川大祐 (右SB、90分間出場、23歳・ユース1期生) クロス5(成功0、右5)
 5.0:安定した守備から意表を突いた攻撃参加が持ち味の男が、焦りからか、無謀な攻撃から後追いの守備をしていた。後半は本分を思い出したが、退場で相手が少なくなった終盤には、中に切れ込むなど工夫がほしいところ。このレベルでは、コンタクトは屈強そのもの。

●高林佑樹 (CB、45分間出場、23歳・筑波大出身)
 4.5:SBが攻めた裏は、最終ラインが横にずれる約束事になっていたが、相手のドリブルを全く止められず。3失点の要因に。

●鶴見智美 (CB、90分間出場、24歳・筑波大出身) シュート1(枠内0)、
 5.0:本日誕生日。素材の良さは感じるが、4バックのCBとしては奔放で独善的に過ぎる。上では許されないミスもチラホラ。

●高木純平 (左SB→左MF、90分間出場、21歳・ユース3期生) シュート1(枠内1)、クロス1(成功0、左2)
 6.5:前半、市川が上がり気味のため、中に絞って守備をする機会が多かったが、純平とは思えないコンタクトの強さを見せた。対面の大橋にも皆目仕事をさせず。攻撃面では、相変わらず判断と縦に抜ける速さが冴えていたが、そろそろもう一つ上を要求する時期だろう。

●太田圭輔 (右MF、90分間出場、22歳・ユース2期生) シュート3(枠内2)、クロス6(成功2、右6)、
 5.0:個人の局面打開能力は高い。ドリブルだけでなく、ミドルにも良いものを見せた。だが、攻め上がる市川を有効に使う場面が殆どなく、結果として右サイドの守備を薄くしてしまった。その守備では、散々サイドを崩されながら、どこにいたのか行方不明。

●杉山浩太 (ボランチ、90分間出場、18歳・ユース5期生) シュート1(枠内0)、クロス2(成功1、右2)、
 5.5:実質1ボランチの前半途中まではカバーリングは良かったが、バイタルエリアでのフィルター役に失敗。隼人と組んでからは、確実な展開力で中盤を支配した。味方の動く一歩先に出すパスは唸らされるが、まだスルーパスを多発するほど味方の特徴を掴めてない様子。

●平松康平 (ボランチ→左MF、67分間出場、23歳・ユース1期生) シュート1(枠内0)、クロス2(成功0、左2)
 5.5:PKを誘ったドリブルだけでなく、純平や太田を使って決定機を演出したパスなど、ボールを持っても出しても特別な選手で、加点式ならMVP。だが、なぜ途中から動きが限定される左MFに回ったのか、理解できなければ「大人のチーム」では起用されまい。

●鈴木隼人 (左MF→ボランチ、90分間出場、21歳・ユース3期生) シュート2(枠内1)、クロス3(成功1、右1左2)
 6.0:先日、リーグデビューを果たした充実感からか、積極的な動きを見せた。守備で体を張ってフィルター役になり、浩太の展開をよくサポートしている。だが、この日はキックが全く不正確で、数多あったセットプレーの好機を潰し、得意の大きな展開もなかった。

●久保山由清 (FW、90分間出場、27歳・静岡学園高出身) シュート3(枠内2、得点1)、クロス1(成功0、右1)
 5.5:中盤で前を向く機会も多く、味方を動かすセンスフルなパスも見せたが、FWとして肝心なPA内での勝負ができていない。

●北嶋秀朗 (FW、67分間出場、25歳・市立船橋高出身) シュート5(枠内3)、クロス2(成功2、左2)、
 5.0:このレベルでポストできるのは当然。むしろ、妙に裏への飛び出しの意識が高く、北嶋らしさを失ってるのが気になった。

●津田和樹 (CB、45分間出場、21歳・國學院久我山高出身) クロス1(成功0、左1)
 6.0:守備の時間が短く、ハーフナーに競り負ける場面はあったが、破綻なし。攻守に印象は薄い。

●村松潤 (左SB、23分間出場、21歳・ユース3期生) クロス1(成功0、左1)
 5.5:純平に殆ど抑えられてた大橋に突破を許したのは気になるが、怪我明けを考慮すれば及第点か。純平との連携は素晴らしい。

●塩沢達也 (FW、23分間出場、20歳・ユース3期生) シュート1(枠内1)、クロス1(成功0、右1)
 5.5:投入直後、3期生とのダイレクトプレーで襲い掛かり、遂には小原を退場に追い込む。だが、それだけ。持続性が足りない。

個人的好印象選手:尾本敬(19歳)、山瀬幸宏(19歳)



2003年10月05日(日) 高円宮杯 東福岡高校戦

03年10月05日14:15開始 さいたま市浦和駒場スタジアム
 高円宮杯 第14回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会
 対 東福岡高校 ※45分ハーフ

▼布陣
−−−−−真司−−阿部−−−−−

−大瀧−−−−−−−−−−柴田−

−−−−−真希−−枝村−−−−−

−篠田−−高柳−−村越−−森安−

−−−−−−−海人−−−−−−−

控え:前田、石垣、高野、上埜、岡村、谷野、獅子内
交代:後半20分:柴田→獅子内(そのまま右MFに)
   後半39分:篠田→高野 (そのまま左SBに)

東福岡高校:

−−−−−−− 角 −−−−−−−

−菰田−−野内−−新内−−香川−

−−−−−−− 堤 −−−−−−−

−清水−−近藤−− 原 −−砂田−

−−−−−−−坂本−−−−−−−

交代:後半11分:野内→花田、後半41分:堤→葛城


▼試合展開

 筆者にとっては、藤枝までは片道3時間掛かるが、駒場までは片道1時間、楽なものである。…と思ってたら、埼京線と京浜東北の乗換を怠って、中浦和から歩くことになったが。しかし、清水の選手にとっては逆に、片道3時間掛けて駒場に向かわねばならない(前泊はしなかったそうだ)。国見との激戦の翌日に、この移動は楽ではない。そんなことを思いながら、今大会3つ目の高円宮杯ストラップを入口で頂戴する。観客席は、昨日の藤枝の盛り上がりと比べると、やや寂しい入り。一応、発表によると1534人とのことだが、広島−国見戦後に帰った観客も多かったので、清水の試合ではそれほどいなかったと思う。

 清水は、遂にスタメンを弄った。谷野→柴田だけだが(笑)。今大会、好調が光っていた谷野だが、国見戦では相手の超高校生級の圧力を受けて、後半は完全にグロッキーになっていただけに、仕方あるまい。とはいえ、グロッキーになっていたのは何も谷野だけではない。築館監督としては、連携面や経験値も考えて、あまり手を加えない選択をしたのだろうが(何しろ、大きくスタメンを変化したクラセン浦和戦では大敗を喫している)、選手交代が一つ、鍵を握りそうだ。
 一方の東福岡は、緒戦の星稜戦に大苦戦(3−2)、二戦目の広島ユースには0−5の完敗と調子に乗れないでいたが、引き分けでは勝ち進めない帝京戦で4−0と爆発。今や勢いがある。本山の時代に三冠を達成した全国有数の実力高だが、一時代を築いた4−1−4−1システムは、志波前監督が謹慎した今年も健在。1トップと1ボランチの間に配置された4人のMFは、伝統的にキレで勝負するドリブラーが多く、得点力も高い。4−4−2を採用する清水としては、4バックと2ボランチが守備に終われるような展開だけは避けたいところ。枝村・真希の攻守における切替の速さが、勝敗を分けると見たが、果たして。

 
(試合開始前。集合写真は後列が左から海人、枝村、高柳、阿部、真希、森安。前列が村越、篠田、柴田、真司、大瀧)

[前半]
 試合は前日の大勝の勢いそのままに、圧倒的な東福岡ペースで始まる。いきなり2分、サイドに開いた篠田への海人のパスがずれてトラップが乱れたのを見逃さず、香川がカット。香川はボールと篠田の間に体を張って譲らず、縦に抜けて右クロスを送る。これは高柳が弾き、だが運悪く軌跡を変えたボールは2列目からフリーで入った野内の下へ。ダイレクトで押し込んだが、海人が国見戦から続く超反応を示し、片手一本でシュートを弾き出した。
 その後は清水が持ち直し、8分、相手にクリアさせたボールを狡猾に拾った真司がチェンジサイド、森安→枝村→真希→柴田→真希と渡る清水らしい展開に、最後真希のドリブルは跳ね返されるが、森安が拾って枝村を経由し、大瀧がミドル。一度ブロックされたボールを再度ダイレクトで狙ったが、枠の上に外れる。12分、今度は東福岡。村越のクリアを角が遮り、左クロスを菰田がPA手前でフリーで合わせたが、枠上におつきあい。13分、またも狡猾にクリアを拾った真司からスルーパス、大瀧がダイレクトで左クロスを送ると、165cm柴田のヘッドはファーに外す。続いて14分、真司が粘ってキープすると、真希が大瀧とのワンツーから抜け出す。最後のシュートはDFに当たったが、そこに柴田が飛び込むも、僅かに合わず。

 ここまでは一進一退。だが、ここから一方的に押し込まれる。清水は肉体的に消耗戦後の疲労、精神的には激戦を終えた達成感に加え、戦術面でも東福岡の4−1−4−1に無策であった。アウトサイドMFを共にライン際に張らせる特徴的な相手戦術に対し、両SBは普段と変わらず中に絞りがち。無策の理由は不明だが、フィールドの中の選手達が自ら対応することを望んでのことだろうか? チェンジサイドの度に、左右MFがフリーになっている場面が目立った。
 まずは16分、菰田の左突破から香川の左CK。これを原が合わせるが、目の前にいたGK海人が咄嗟に弾く。こぼれ球を菰田が角度のない位置から詰めたが、一直線にファーへと抜けた。18分、またも菰田の突破、森安を交わして上げた左クロスにファーで角が完璧に合わせたが、シュートは完璧ではなく、コースを外す。
 19分、今度は右から。スローインを砂田が投げ入れると、角は高柳を背負いながらPA内で体を張り、ボールを浮かせながら強引に反転して切れ込もうとする。高柳も体を張って角の突破を許さないが、動けない二人の隙に、2列目から野内が突っ込み、至近距離からシュートを放つ。だが、コースを予め埋めていた海人が、何事でもないように正面で「キャッチ」した。25分にも右から。香川のクロスを新内が後ろ向きで胸トラップ、落としてヒールで裏に流すが、篠田がリターンを受けに来た香川の前に入り、CKに逃げる。菰田の右CK、ファーで堤が折り返し、角がヘッドで狙うが、これも枠上。元来、セットプレーに脆さがある清水だが、昨日の集中力とは及びもつかない。
 その後、33分に奪った枝村がそのまま、50Mロングシュート。枠外に外すが、13分から20分ぶりのシュートと考えれば、これも「あり」だろう。34分、今度は森安がパスミス、拾った左SB・清水がロングフィードを送ると、角が村越を背負いながら巧く頭で左に流し、そこにまたも菰田。だが、ミスをした森安が自らカバーした。36分、久々に前でボールを受けた枝村から、スルーパスで篠田が攻め上がり、大瀧のボレー…はDFブロック、こぼれて更に阿部のボレー…もDFブロック、なおも真司がバイシクルで狙うが、GK坂本が機敏に前に出てこれをキャッチした。

 この時間帯になって東福岡、前の5人によるフォアプレスが緩み出し、引きこもっていた清水も前に出てくる。だが、試合というのは、圧倒的な攻勢(守勢)よりも、こういう時にこそ動くのはサッカーの道理。事実、40分には3対4の大ピンチを迎えるが、菰田の左クロスに新内のヘッドは当たり損ねて、難を逃れた。すると41分、柴田のスルーパスに右へ流れた阿部が2人に囲まれながら粘ると、戻して柴田の右クロスに枝村がフリーで頭が合わせたが、ファー。続けざまに42分、枝村のダイアゴナルフィードが大きく開いた大瀧へと綺麗に渡ると、PA内左端まで持ち上がってグラウンダーでマイナスのクロス。ファーで待つエースの阿部が、左足ボレーで合わせる動作、しかし、咄嗟の判断で左足アウトサイドで、ちょこんとしたパスに切り替える。東福岡DFは完全に振られ、左60度で待つ真司がフリーで15Mシュート! だが、枠の上に外してしまう。
 決めるべき時に決めないと、相手に決められるというのも、サッカーの道理。43分、香川が奪われたボールを砂田がフォロー、ハーフライン付近から一気にPA右角まで攻め上がり、強引に突破を仕掛けるが、粘る清水DFに引っ掛かり、ボールだけが前に転がる。しかし、ワントップの角が受けて突破を続行、10Mもない至近距離、だが角度は殆ど無かったが、ならばと上に角度を付けたシュート。それは海人のニアを抜けて豪快にゴールの「天井」に突き刺さり、東福岡が先制する。0−1。
 清水も44分、大瀧が相手の懐に体を入れて奪うと、相手を背負った状態からヒールスルーパス。シンクロ率100%の阿部が受けて返すと、再び大瀧。だが、当たり損ねて枠を捉えられない。
 ロスタイムは殆どなく、前半終了。このチーム状態では、1点差も重い。


(前半30分頃、スローインから清水の攻撃。1トップを残して全員が戻っている東福岡に対し、速攻でもないのに清水の攻め手は僅か4人。これでは勝負にならない)

東福岡       清水エスパルス
12(6) シュート 7(2) ×大瀧、○真希、×枝村、○真司、×枝村、×真司、×大瀧
5(2) 右クロス 2(1) ×柴田、○柴田
8(3) 左クロス 3(2) ×大瀧、○篠田、○大瀧
1(1) 右側CK 2(0) ×大瀧、×大瀧
1(1) 左側CK 0(0)
0(−)  犯OS  1(−) 真司
3(−) ファウル 9(−) 阿部、??、柴田、??、阿部、村越、阿部、阿部、森安


[後半]
 後半は清水がキーを入れ直す。追う展開となって、体力の残量を考えずに第三の動きを徹底。第四、第五まである普段のサッカーからは物足りないが、それでも随分と持ち直す。また、守備面でサイドに張る左右サイドMFをキッチリと両SBが付き、「ヒガシらしい」攻撃を停滞させることに成功する。1トップの下のスペース(バイタルエリア)は両ボランチが見ることになる。
 試合に目を移すと、開始直後、センターサークルから村越のFKを、低い弾道に合わせて阿部がバックヘッド。前に出ていたGK坂本がキャッチするが、機先を制す。すると1分、中盤中央で真司がスライディングタックルで奪取。一瞬、周囲がボールを見失う間があり、真司が両足の間に挟んでいたボールをポンと叩くと、横で枝村が受けてドリブル開始。虚を突いて一気に中央を持ち上がり、右に叩くと立ち上がって追い掛けていた真司へ。真司はPA手前、第三の動きの阿部にリターンを返すが、マークの付いていた阿部はこのパスをスルー気味にヒールで軌跡を変えて左に流す。そこに第二の動きの枝村が駆け込み、フリーでシュート。GK坂本、横っ飛びで反応したが、勢いを殺せずに後逸し、シュートはネットに吸い込まれた。1−1。
 体力の残る間に逆転したい清水は、サイドの守備から解放された大瀧を軸に攻めた。11分、左で真司と篠田が絡んだ攻撃は跳ね返されるが、真希が奪い返してチェンジサイド。森安がフリーになり、一気に40M近くを攻め上がって、たまらずファウル。PA右角からのFK、大瀧の蹴ったボールは壁×5のニアを抜けて、ゴールの右下隅に突き進むが、GK坂本反応し、こぼしたボールはDFがクリアする。
 なおも15分、真希が突破から篠田とのワンツーでPA内に侵入し、大瀧にラストパスを送るが、シュートに威力なくGK。続けて真司のポストから右に流し、柴田の右クロスはDFにクリアされるが、森安が拾って枝村のPA手前からのミドル、しかし枠上に外れる。どちらも決定的な場面で決まらないのは、足腰の疲労で踏ん張りが利かなかったからかもしれない。この間、東福岡の攻撃は新内や香川、角らの散発的な突破に抑えていたが、徐々に魔法の解ける時間は迫っていた。21分、村越のパスを受けた森安が裏に走らせるパスを出し、獅子内が受けて角度のない位置からシュートを放つも上。

 27分、篠田が自らスローインを入れると、阿部のポストを経てPA内に切れ込み、左45度で待つ大瀧に「どうぞ」といった感じのパスを差し出すが、またも枠外。この時間まで、シュート数が8対3と圧倒していた清水だが、これを最後に辛い時間が始まる。続いて28分、東福岡・新内が菰田とのワンツーでサイドを抉り、左クロスに村越が食いつくもクリアしきれず、最後、角のボレーは上。すると、この久々の東福岡の攻撃を契機に、足を攣る選手が続出。枝村が担架で外に運ばれたのを皮切りに、大瀧、阿部、篠田が次々と痛み、清水にとっては切ない場面が続く。特に枝村は再入場した後も殆ど動けず(動かず)、大瀧は動いてはいるが信じられないトラップミスをしたりする。実質、9人対11人に近いものがあったが、清水ベンチに動きなし。辛い。
 当然、流れは「人数の多い」東福岡に。35分、香川が奪って角にクサビ、叩いて花田が高柳を抜いて裏のスペース40Mを踏破、最後に右から折り返そうとするが、高柳がここで追いつき、右CKに変わる。すると、キッカー菰田の選択はショートコーナー。香川が受けて戻し、再び菰田が右クロスを送ると混戦に。そこから堤が抜け出てシュート、が、至近距離には滅法強いGK海人、それすらもキャッチする超反応を示す。
 防戦一方の清水だったが、前日に帝京と決勝トーナメント進出を賭けた試合を行っている東福岡も、余力があるわけではない。スペースが空き始め、徐々に運動量で劣る清水も技術で繋げる場面が出てくる。39分、殆ど立っていただけの枝村からスルーパス。阿部が受けてサイドに流すと、獅子内が右サイドを抜け、送ったクロスを更にファーで大瀧が折り返して、混戦となる。阿部が強引に突っ込んで押し込んだが、DFがブロックし惜しくもCKへ。ここで遂に、遂に清水ベンチが動く。だが、交代は枝村でも大瀧でもなく、篠田(→高野)。確かに篠田も痛んではいたが…。
 大瀧の左CKはニアで東福岡・清水が跳ね返し、2本目。41分、今度はGK坂本が掴むと、低弾道フィードが前に残る花田へとピタリ。対応するは真希と高野。途中投入で余力ある花田、だが対応した真希は、巧妙に縦を切って右(東福岡にとって左)に追い込んでいく。しかし花田は、そこで大きくサイドチェンジすると、一人残る高野の前に広大な右スペースがあった。引き出されるように菰田が駆け上がり、スピードの乗って1対1。高野も縦を切ったが、菰田は本来「左」MF、そう、利き足は左である。中に切れ込み、PA内シュートを遮るものはなく、鮮やかにゴールに突き刺さった。1−2。前半のサッカーの道理は、後半も通用した。そして、選手交代は完全に裏目に出た。

 だが、清水にも意地がある。43分、真希のクサビを阿部がPA内から戻ってポスト、右の獅子内に戻す。獅子内は粘って横に叩くと、そこで茫と立っていた枝村が一瞬輝き、左にサイドチェンジ。動けなくても、パスは正確。スペースで待っていた真司が受け、中に切れ込みながら上げた左クロスに、ニアで飛び込んだのは真希。この最後の局面で、相手DFと交錯しながらも競り勝ったヘッドは、ループ気味にGK坂本の腕を抜けたが、ライン上で東福岡CB原が奇跡的なバイシクルクリア。だが、それで終わらない。真希と東福岡DFが起き上がれないPA内、興奮と失望と安堵感、それらが綯い交ぜになって刹那、生まれた虚を突いて、クリアボールを拾った森安が得意の右45度ミドル。しかし、立ち上がろうとしていたGK坂本が、反射的な横っ飛びでキャッチし、リードを死守した。
 2度の超決定機を失った清水は、ロスタイムにも速攻を許し、右寄りで中央突破する香川が、中に切れ込みながらスルーパスを送る。清水最終ラインは裏をカバーしようにも、肉体的にも精神的にも限界。みすみす葛城に抜け出され、PA内1対1から放ったシュートは、GK海人の逆を突いて右隅に吸い込まれた。1−3。勝負は決した。
 その後、枝村のスルーパスを強引に阿部が突っ込んでシュートまで行くが、コースも殆どない状態で飛び出したGKの逆を突くこともできず、枠外。表示されたロスタイム1分は既に過ぎており、これで試合終了。力尽きた。

東福岡       清水エスパルス
10(6) シュート 12(6) ○阿部、◎枝村、×大瀧、○大瀧、○大瀧、×枝村、×獅子
               ×大瀧、×真司、○真希、○森安、×阿部
6(2) 右クロス 3(1) ×真司、×柴田、○獅子
4(0) 左クロス 4(1) ×枝村、×篠田、×大瀧、○真司
4(0) 右側CK 3(0) ×大瀧、×大瀧、×大瀧
1(0) 左側CK 0(0)
0(−)  犯OS  0(−)
3(−) ファウル 5(−) 阿部、村越、獅子、村越、森安



(戻ってくる選手一人一人に、握手して迎える築館監督)


(戦い敗れて…)


▼試合結果
清水エスパルスユース 1−3 東福岡高校
 得点:前半43分:東福岡・角廣介 (砂田純希 ・スルーパス)
    後半01分:清水 ・枝村匠馬(阿部文一郎・ポストプレー)
    後半41分:東福岡・菰田恭己(花田卓也 ・サイドチェンジ)
    後半44分:東福岡・葛城侑樹(香川毅志 ・スルーパス)


▼選手寸評

●山本真希 90分出場:シュート2(枠内2)、
 国見との消耗戦の翌日で、ここまで走り回れる1年生がいるだろうか? 後半、枝村のいなくなったバイタルエリアを一人でカバーした運動量と競り合いの強さは驚異的。枝村のようなクリエィティブなパス回しはないが、ドリブルの破壊力は終盤に掛けて威力は増した。

●山本海人 90分出場:被シュート22(被枠内12、失点3)
 3失点はしたものの、海人がいなければ前半の時点で一方的な試合になっていただろう。読みの良さを示した滝二戦、競り合いに力強さを見せた国見戦に加え、この日は至近距離での超反応が冴え渡った。大会を通して、最も安定してパフォーマンスを見せた選手(札幌戦は出番なし)。

●鈴木真司 90分出場:シュート3(枠内1)、クロス2(成功1、右1左1)
 「壊れた玩具」の尊称に加えて、某N氏より「愛すべき馬鹿野郎」の尊名を受けた(笑)。対する相手が強く、大きくなるにつれ、小柄な自分との関係でそれを利用し、巧みに騙す工夫が活きる、望月副本部長の好むタイプ。このまま「ズルい森島」として大成できるか?

個人的好印象選手:菰田恭己(3年)、花田卓也(3年)



2003年10月04日(土) 高円宮杯 国見高校戦

03年10月04日12:00開始 藤枝市総合運動公園サッカー場
 高円宮杯 第14回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会
 対 国見高校 ※45分ハーフ

▼布陣
−−−−−真司−−阿部−−−−−

−大瀧−−−−−−−−−−谷野−

−−−−−真希−−枝村−−−−−

−篠田−−高柳−−村越−−森安−

−−−−−−−海人−−−−−−−

控え:前田、石垣、高野、上埜、岡村、柴田、獅子内
交代:後半33分:森安→高野(そのまま右SBに)
   後半40分:篠田→岡村(そのまま左SBに)

国見高校:

−−−−−兵藤−−城後−−−−−

−−−−−−−渡邊−−−−−−−

−藤田−−地崎−−中村−−川口−

−−−益永−−坂上−−深浦−−−

−−−−−−− 関 −−−−−−−

交代:なし


▼試合展開

 1週間ぶりの藤枝。先週より一つ早い新幹線で来てみたが、結局バスは5分ほど時間が合わず、30分待ち。ふう。タクシーでスタジアムに向かうが、運ちゃんの話だと先週、それほど客は乗らなかったようだ。入口で今日も高円宮杯ストラップをもらって観客席に行けば、やはり閑散としている。ま、こんなもんだなと試合開始を待っていると、来るわ来るわ。地元クラブが高校王者に挑む、その構図に刺激された人は多く、最終的には3000人に近かった。こりゃ、今日はストラップも不足しただろうて。タクシーの運ちゃんも、少しは忙しくなったかな?

 さて、Dグループは既に清水と国見が、共に2連勝で勝ち抜きを決めた。しかしながら、2位はBグループで圧倒的な得失点差で1位通過をほぼ手中に収めている広島ユースとの対戦が確実であり、これは避けたいところ。一方、既に勝ち抜きを決めているのだから、この試合を捨て、翌日の決勝トーナメント初戦に賭けるという考えもある。勿論、主力を休ませた上で広島ユースを避けられればベストだが、そうは問屋が卸すまい。なお、清水は得失点差で上回るため、事実上、0.5点リードした状態での試合となる。
 果たして、国見が大会緒戦で痛めた平山を外した他は、両チーム共にベストメンバーを揃えてきた。清水は「勝った時は弄るな」の法則そのままに、三戦連続して同じスタメン、スタベンである。この大会、国見のマンマークを意識したポジションチェンジの多用が顕著であり、その戦術で来るだろう。一方の国見は、試合序盤はスイーパーの坂上が1枚余った上で、そのまま対面する相手、即ち益永−阿部、深浦−真司、藤田−谷口、川口−大瀧、地崎−枝村、中村−真希とマンマークに付いた。上記では3−5−2になっているが、マークに付いたら地の果てまでも追う国見に、数字上の配列はナンセンスである。


(試合前に挨拶。さりげなく個性が出ていて面白い。あえて名前は書かないので、誰か想像してみては?)


(記念撮影の気合の入った面々。前列中央に位置取るのは1年生の山本真希!)

[前半]
 国見の圧力なのか、慣れない大観衆のせいか、試合は序盤、0分と7分に高柳のクリアミスからそれぞれ渡邊のミドル、藤田の右クロスを許す、落ち着かない展開となる。だが、流れの中では大瀧を中心に清水が流れを掴み、3分には真希が空中戦で競り勝ち、枝村→森安の右クロスから大瀧がPA内に侵入する好機もあった(DFシュートブロック)。
 11分、枝村のクサビを戻って受けた真司が、巧く体を入れ替えてマークの深浦を外し、裏に突破。右を抉って戻したボールを枝村が左にチェンジサイドすると、PA手前のスペースに上がってきた篠田が更に左に展開、大瀧が折り返しはは当たり損ねたが、それが幸いして誰も反応できずにコロコロ転がると、走り込んだ篠田が後ろに戻す。受けた真希から細かいワンツーリターンに対し、篠田のマーク担当が定まらないまま裏への飛び出しを許し、篠田がPA内10Mでシュート。だが、フリーマンの坂上が最後に反応し、軌跡を変えてCKに逃れる。枝村の左CK、速く鋭いボールを、ニアに飛び込んだ村越が屈強な漢達を吹っ飛ばしてヘッド。これがGK関の逆を突いてファーサイドに決まり、清水が先制する。1−0。これで清水は1.5点のリードを得、非常に有利に試合を進めることになった。
 清水は15分にも、速攻から阿部が左サイドを単独突破、早いタイミングで入れたクロスを大瀧が戻して真司がシュート。ブロックされて前にこぼれると、至近距離で大瀧が拾ってシュートしたが、枠を外すという、惜しい場面を作っている。

 だが、国見は繋げずとも、セットプレーで強引に流れを引き寄せる。17分、中村のロングスロー(国見にとってはロングスローもセットプレーだ)の跳ね返しを中村が自ら拾ってチェンジサイド、藤田が右から折り返すと混戦から城後?がシュートするが、高柳ブロック。21分、阿部のファウルで得たFKを兵藤がPA内に蹴り込み、再び混戦になるが、何とかクリア。だが、それも坂上?が拾って再度放り込み、今度は混戦からシュートまでいくが、枠外。くどいようだが、まだ国見のセットプレーは続く。24分の左CKは、海人が片手一本でフィスティングしたが、そのスローインでまたも中村のロングスロー、大瀧がクリアミスを犯し、中村の右クロスをファーで藤田が合わせたが、GK。この間、清水は23分に阿部の25M突破から20Mミドル、26分には真希が相手タックルを突破して30Mミドルを放つが、ゴールに結びつかなかった。
 実は国見のセットプレーはさほど精度が高いものではなく、この時間帯は清水DF陣の集中力が上回っていた。だが、例え得点に結びつかなくとも、相手に集中を強い、ジャンプやタックルといった爆発的アクションを強いることで、消耗戦に持ち込む効果がある。体力勝負になったら、国見は負けない。
 29分、国見は中盤左サイドからスローインを得るが、距離もあって藤田が普通に投げ込む。が、オフサイドに走り込んだ城後を森安が離してしまう。当然、スローインからはオフサイドの反則はない。村越のカバーを城後の足の速さが上回り、PA直近から速い左クロス。大きく右外から駆け込んだ川口が、ダイレクトで右足を合わせた。強烈だったが、ポストの左に僅かに外す。31分、高柳が本日3度目のクリアミスを犯すが、川口のクロスは精度がなかった。

 しかし、さすがの国見も攻め疲れか、32分、森安のスローインに中村が飛びつくも、空振り。するとマークが外れた真希が持ち上がり、戻して枝村が攻め上がりを誘う回転のパスを左に捌く。走る篠田は大瀧に当てて左スペースにリターンをもらい、左クロスを送るが、合わずにファーへ。だがカバーに入った益永がクリアミス。すかざずマークの離れた阿部が拾い、右から折り返すと、PA内中央フリーで165cmの大瀧が頭で合わせたが、威力無く、GKの反応が間に合う。
 これで流れは清水に。PA内に押し込められてた選手達は、溌剌と動き回り、34分には相手パスをカットした枝村、右に流れたボールを足に吸い付く神トラップで我が物にし、右クロスに大瀧が飛び込むが、GKの飛び出しが一歩早かった。38分、枝村が右に捌いたボールを真希が巧みにスルー、森安が持ち上がってクロスを送ると、PA手前から阿部がワントラップ反転ミドルを狙ったが、難しすぎたようで宇宙開発。
 39分、中盤右から森安のスローイン、受ける真司は得意のトリック、股の下で受けたボールをインサイドで逆に流す(今回は、右からのボールを前を向いて股の下に収め、右足インサイドで左へ)プレーで深浦を翻弄、枝村が受けて持ち上がると右スペースにスルーパスを送る。そこに真司が走り込むがトラップをミスしてボールを置き去りに、だが何とか戻って左足で右クロスを入れる。ボールはファーに流れるが、阿部が粘って後ろに戻すと、篠田が上がって真希にクサビ、それをダイレクトで中央に流して枝村が25Mミドル。しかし、威力は十分ではなく、GK関が抑えた。
 その後は特に動きはなく、前半終了。清水にとってはセットプレー以外に殆ど好機を作らせず、1.5点リードしての後半戦は悪くない。国見にも、終盤の劣勢を凌ぎ、体力的な有利が期待できる後半に逆転は十分可能との、目論見があっただろう。

国見        清水エスパルス
7(2) シュート 8(5) ○篠田、◎村越、×大瀧、○阿部、×真希、○大瀧、×阿部
               ○枝村
5(2) 右クロス 7(3) ○森安、×森安、○阿部、×枝村、○森安、×真司、×枝村
4(1) 左クロス 2(1) ○阿部、×篠田
3(1) 右側CK 0(0)
1(0) 左側CK 2(1) ◎枝村、×枝村
2(−)  犯OS  0(−)
3(−) ファウル 5(−) 村越、阿部、阿部、谷野、大瀧


[後半]
 後半の出だしは、篠田のクリアから大瀧→枝村サイドチェンジ→森安→真希→大瀧に渡って30Mミドルは枠外と、前半終盤の勢いのままに始まる。しかし、さすがは歴戦の小嶺総監督、前半、縦突破以外の汎用性に欠ける川口が、自由に動き回る大瀧を掴みきれなかった点を反省し、大瀧のマークを地崎に修正していた。渡邊が下がり気味に枝村を見ることになり、川口は上がり目に篠田と縦と長いスペースで走り合うことになる。敵味方の選手個々の特徴を見極めた、見事な用兵術であった。
 しかし、清水がリズムを崩したのは、体力面でも戦術面からでもなかった。4分、清水がクリアしたボールを川口があれよあれよと20M近く前進してスローイン。しかし、審判団はこれを咎めず、受けた兵藤が単独右サイドを走り、高柳のカバーを見て右の川口に返すと、フリーで右クロスが上がるが、森安が中に絞ってクリアする。
 6分、左に流れた兵藤に森安が付くが、藤田(谷野がマーク)とのワンツーで振り切られ、兵藤はゴール至近距離に高速クロス。城後らが飛び込むが、GK海人が負けじと飛び込み、交錯しながらもフィスティングで跳ね返す。真希が大きく蹴り出したところで、体を張った篠田が痛んだのを見て、主審が試合を止める。篠田が一旦外に出た後、レフェリーボールで再開するが、クリアした自分たちに返されるものと思ってたのは清水だけ、国見はなりふり構わずスルーパスに兵藤を走らせ、スペースの空きまくった清水陣内に攻めに出る。大半がエスパ贔屓の会場、過去最悪の記憶である2000年の天皇杯を思い出され、騒然。しかも、その後、治療を終えた篠田の再入場のアピールを主審が無視し(清水サポには沢登が再入場を咎められて退場になった嫌な記憶もあるのだ)、騒然は徐々に昂奮に。結局、この時間帯の国見の攻撃に精度はなく、藤田と川口のクロスは共にファーに流れ、最後は国見のファウルで試合が止まり、漸く篠田は入場を許される。
 だが、更に8分、右に開いてポストに入った城後から高柳が奪ったまでは良かったが、GK海人へのバックパスが弱すぎ、猛然と飛び込む兵藤に奪われる。だが、同じくらい猛然と突っ込んだ海人が、恐れずに突進をブロック、国見の右CKへと変わる。兵藤のキックはファーで森安がクリアしたが、遅れて益永が足を上げて交錯。ファウルにはなるが、激昂する森安をよそにカードはなし。完全に歯車が狂った清水は、黙々と任務を遂行する国見に対し、9分に兵藤が潰れて地崎の右クロス、10分に兵藤のFKから中村のボレー(枠上)というピンチを許した。その後、川口の右クロスがファーに流れたのを、海人がボールボーイに任せずに自ら取りに行って時間を作ると、村越が「落ち着こう!」と叫んだことで、どうにか国見の攻撃は一段落する。しかし、これで清水が肉体面のみならず、精神面にも負ったダメージは甚大なものがあった。

 その後は暫く一進一退。15分、篠田が自らのクリアミスを奪い返し、阿部ポスト、受けた枝村が40Mを持ち上がり、切り返してミドル…と思わせてスルーパスが裏の大瀧に渡るが、トラップミス。16分、その枝村のクサビを読んで奪った国見、逆にクサビのパスを入れると、城後が村越に競り勝ち、川口のクロスに渡邊が飛び込むが、ニアに外す。17分、前半から藤田のマークに追われて殆ど消えていた谷野が、スラロームの動きで幻惑して右クロス、阿部が戻りながら合わせたが、体勢悪くて枠の上。
 19分、一進一退よろしく、今度は国見。得意のロングボールがPA内に放り込まれると、清水DFがエリア外へとクリアするが、押し込まれたDFラインと戻りきらないボランチの間のスペース(バイタルエリア)に入り込んだ中村が、ダイレクトで再びPA内に放り込む。城後が左ポスト手前で潰れつつDFを押し込み、頭で落としたボールに頭から突っ込んだのは渡邊。GK海人はそれを見切って進路を塞いだが、強烈なヘッドがその腕を弾き、更にカバーに入った高柳が上空に蹴り上げようとするも、蹴った先は無情にもゴールネット。1−1。国見が十分な時間を残して、同点に追いつく。焦点は、疲労の色濃い清水が「0.5点」のリードを凌げるかとなった。
 24分、中村が捌いて川口がスペースに抜け、右クロスを送るが、GK海人が飛び出してPA外に逃れる。だが、二次攻撃も国見、拾った藤田が逆サイドに展開、兵藤が巧くDFラインの裏で待ち構え、小さく戻したボールに中央から渡邊! 距離15M弱、強烈なシュートだったが、海人の超反応が上回り、ディフレクトしてCKに待避する。渡邊の左CK、ファーで益永が競り落とし、中央で城後が強力なボレーを放ったが、強力に打ち上げてしまう。だが、国見は得点にも繋がった、クロス→ファーで競り落とす→中央飛び込むというパターンを、強情なまでに徹底。いよいよ大攻勢が始まった。
 28分、阿部が益永に競り勝ち、落としたボールを大瀧がトラップで地崎を交わして突破、マイナスのクロスに阿部がPA手前からミドルで狙うが、威力なくGK。この後はもう、一方的な時間が続く。29分、川口の右クロスをファーで兵藤が戻し、渡邊のミドルのパターンは、見切った海人の正面。大瀧のマーク役から解放された後半の川口は、正に解放されたという表現がピッタリだ。34分、高柳4度目のクリアミスは村越が素早くカバー、しかし今度は篠田がクリアミス、混戦に国見は冷静に後ろに戻して狙いをミドルに切り替えたが、これも村越がブロック。35分、兵藤が森安に代わった高野を強引に抜き去り、ニアの城後が受けて後ろに戻すと、藤田が走り込んでミドル。ゴール左角を寸分違わず狙ったが、GK海人が「片手パンチ」でクリアする、規格外のセーヴを見せ、ゴールを許さない。

 39分、限界の近づいてきた篠田のタックルを意にも介さず、川口が体勢を立て直して突破、右クロスをファーで兵藤が頭で落とし、中央に渡邊が走り込む定型パターン。5Mもない至近距離からのシュートは、機敏な飛び出しで体ごとコースを塞いだGK海人に弾かれながらゴールネットに吸い込まれるが、今度は高柳のカバーが間に合い、万死に一生を得る。なおも阿部のポストのミスから41分に3対3で城後が突破、その直後にも城後の右クロスを途中後退の岡村がカブって混戦になるが、共に神懸かり村越がクリアする。
 ここまで来ると、広大なスペースを国見の運動量も埋めきれず、技術で優位に立つ清水にも有用となる。上記、村越のクリアの後、大瀧チェンジサイド→谷野→真希→谷野→阿部と渡ってミドルはGK。試合終了間際にも、岡村のカットから真希がマークを交わして突破、枝村に戻してチェンジサイドは大きかったが、阿部が必死に追いついて谷野に戻すと、再び枝村がミドルの気配を漂わせつつ横に動いて、最後横パスから左45度大瀧のシュート。DFに当たって軌跡が変わるが、GK関が落ち着いて処理した。
 その後、互いに動きなく、試合終了。清水は当初のプラン通り、1位抜けを達成したわけだが、ここまでの消耗戦は完全に想定外だっただろう。一方の国見もエース平山を温存したためか、終盤の大攻勢で最後の一押しに欠けた。共に肉体のみならず、精神の最後の力まで絞り尽くした激戦であり、賞賛すべきではあるが、翌日の試合には大きなハンデを負ってしまったのも事実である。

国見        清水エスパルス
14(5) シュート 5(3) ×大瀧、×阿部、○阿部、○阿部、○大瀧
14(4) 右クロス 4(1) ×森安、○谷野、×森安、×高野
3(0) 左クロス 4(2) ×篠田、×阿部、○真希、○大瀧
1(0) 右側CK 0(0)
4(2) 左側CK 2(0) ×枝村、△枝村
1(−)  犯OS  0(−)
11(−) ファウル 4(−) 森安、阿部、枝村、村越


(試合終了。海人がいないが、U-18で一緒になった兵藤・中村らと親交を深めてたのか?)


(満場の観客席に挨拶を終えて。疲労と落胆と達成感と)


▼試合結果
清水エスパルスユース 1−1 国見高校
 得点:前半11分:清水・村越大三(枝村匠馬・左コーナーキック)
    後半19分:国見・渡邊千真(城後寿 ・ポストプレー)


▼選手寸評

●山本海人 90分出場:被シュート21(被枠内7、失点1)
 集中している時の海人は、本当に凄い。滝二戦でも示した、シュートやクロスのコースを見切る判断の良さも光ったが、この日は国見の屈強な漢たちに競り負けない力強さを見せた。接触プレーを恐れずに挑んだ海人がいなければ、清水ゴール前の制空権は早々に奪われていたことだろう。

●村越大三 90分出場:シュート1(枠内1、得点1)
 殊勲の先制点を挙げた村越は、守備でも大活躍。終盤でも疲れを見せず、ボール際で最後の一歩が出せる選手で、DFに最も大切な物を持っている。国見で最も特別な選手である兵藤を、地上戦・空中戦で五分以上に渡り合った経験は、今後、非常に大きな財産になるだろう。

●大瀧義史 90分出場:シュート4(枠内2)、クロス1(成功1、左1)
 清水のムービング・フットボールの核として、前半の優勢を導いた。左サイドからトップ下、FWと次々と入れ替わり、篠田や真希、阿部らが連動して好機を作った。前半の川口はひたすら守備に追われており、小嶺総監督が地崎にマーク役を切り替えたのは、さすがの采配である。

個人的好印象選手:中村北斗(3年)、兵藤慎剛(3年)


 < 前  目次  後 >


ひかる。 @H.P. [MAIL]

My追加