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2000年12月29日(金) Jユース杯 総括(ガンバ大阪戦)

00年12月29日11:00開始 長居スタジアム
 第8回Jユースカップ2000 Jリーグユース選手権大会 決勝
 対 ガンバ大阪ユース ※45分ハーフ
 天候:晴のち曇、観客数1234人

▼布陣
−−−−−−−長沼−−−−−−−

−仁科−−−−−−−−−−深澤−

−−−村松− 鈴木隼−杉山浩 −−

−森山−−高山−−渡邊−−高木−

−−−−−−−浅山−−−−−−−

控え:鶴田、天野、篠田、河合、枝村、杉山拓、日高
交代:後半00分:深澤→日高、後半34分:長沼→天野、後半39分:仁科→枝村

ガンバ大阪ユース:

−−−−−浅野−−羽畑−−−−−

−−−−−西村−− 榊 −−−−−

− 寿 −−−−古家−−−−阿部−

−−−児玉−−江本−−井川−−−

−−−−−−−日野−−−−−−−

控え:木村、山本、寺田、美村、高橋、長峯、島川
交代:後半39分:羽畑→島川


▼ここまでのあらすじ

 Jユースカップは、9月上旬から11月末にかけて行われるH&Aのリーグ予選を経て、12月中旬に決勝トーナメントを行う、クラブユースにとっての集大成的な大会。清水は大宮、東京、V川崎、川崎Fと予選リーグを戦った。しかし、緒戦のホーム東京戦で長沼、途中に行われた国体選抜の練習で塩澤・村松、国体で高木・深澤が負傷。特に塩澤は、全治4ヶ月の大怪我(その後、怪我の回復が悪く、塩澤はプロ1年目を棒に振る)であった。全員でも18人(3年5人、2年6人、1年7人)と、極端に少数精鋭主義を採る清水ユースにとって、主力選手の離脱は致命傷になりかねなかったが、この人がいれば何ら問題はなかった。
 キャプテンでボランチの8番、鈴木隼人。彼が、確実なキープから繰り出す、球足の速いロングパスは、正確に相手の急所と突き、攻守にわたって圧倒的な存在感で、試合を支配。下級生たちは彼によって牛耳られたフィールドで、生き生きとプレイすることができた。チーム事情から年間を通じて起用されてきた1年生CB、渡邊優希と高山純一は急成長を見せ、とりわけ高山は、U-16代表でも不動の存在になった。途中から怪我が回復した長沼圭は、着実なポストとゴール前の積極性がチーム戦術に消化され、復帰後の8試合で11得点という見事な結果を残す。清水は、予選8試合を35得点10失点で堂々と1位通過する。

 決勝トーナメントでは、トップの監督に昇格したゼムノビッチ監督に代わり、深澤コーチが指揮したが、それまでの4−4−2(中盤フラット)から、5ヶ月の怪我から復活した杉山浩太を軸とした特殊な4−3−2−1システムを採用する。システムに戸惑いが見え隠れしていたが、それでも福岡に5−0、鹿島にも5−0と完膚なきまでに粉砕し、宿敵横浜ユースとの準決勝を迎えた。
 この試合、怪我で鈴木隼人がベンチ、穴を埋めるべき深沢も風邪で体調不良。一時、清水は0−3という絶望的な数字を叩きつけられる。しかし、後半、深澤と交代で出場した鈴木隼人は、ピッチ内でシステムの修正を図る。自らはトップ下に移動、他のポジションにも微調整を施し、本来の4−4−2に近い形(4−2−3−1)に変更したことで、隼人の試合支配力が回復し、主導権を奪取に成功する。結果、4−3の大逆転で夏の雪辱を晴らすことができた。
 そして、12月29日のガンバ大阪戦を迎える。


▼試合展開

 もはや、鈴木隼人の実効支配地域を縮小させ、高木純平のオーバーラップのスペースを消し、また突破力のない長沼圭に1トップを強いるなど、多くの問題点を抱えた新システムは、限界を迎えていた。前半はシュート1本に抑え込まれる瀕死の状態。長沼が完全に井川に封じ込まれ、風邪気味の深澤がプレスに慌ててミスを連発、突破口の日高は怪我で先発を外れ、4−3−2−1システムの核を担う選手が機能不全に陥ったのが大きかった。
 両サイドのダイナミックな攻め上がりが持ち味だったゼムノビッチ時代のサッカーと違い、足下のテクニックに特長のある5人のMFが細かい繋ぎを試みるが、それはガンバの強力なプレスに食い物にされる。中盤のミスから、榊を軸とするガンバの速い攻撃を許して、シュートを雨霰と放たれるが、浅山が機敏なステップや高山の素早いカバーで前半を凌ぎきった。前半のシュート数は、ガンバの12本に対し、清水は僅かに1である。

 後半、不調の深澤に代えて日高を投入。これでシステムに必須なウィングプレーヤーを得て(仁科も悪くはなかったが)、漸く攻撃が活性化する。日高の突破で最終ラインを脅かし、そのズレを利用して隼人・村松から仁科・村松が裏へ飛び出すが(両方の役割を担った村松は素晴らしかった)、井川に率いられる最終ラインは破綻を来さない。逆に最終ラインが位置を上げて、徐々に攻撃の圧力を増し始めた。
 再び流れはガンバのものになり、前半同様に鋭い縦へのミドルパスで裏を脅かされる。GK浅山のスーパーセーブで防ぐが、22分、左サイド児玉のクロスはポスト直撃。ゴールラインに逃れるも直後23分の古屋のCK、ファーの児玉に折り返されると、井川が体の捻りだけでボールに飛びついて、中近距離からボレー。難しい姿勢から放たれたコントロールショットで、ついに浅山の牙城が崩れる。
 最後は天野や中2の枝村を投入し必死に攻め立てるが、守備組織を整えたガンバを前に有効的な攻撃に繋ぐことなく、スコアこそ0−1ながら、完敗した。

ガンバ      清水エスパルス
 22 シュート  6
  9 左右CK  2
 16 ファウル 14
  5  犯OS   3

 だが、12試合平均得点4.08、守備にリスクを抱えながら、個性を生かす超攻撃的スタイルは、史上最強の呼び名に相応しいものがあったと、誇りに思う。最後の試合、塩澤は怪我でベンチを外れ、隼人も完調にほど遠かったが、黄金世代3期生の今後を楽しみに待っています。


▼試合結果
清水エスパルスユース 0−1 ガンバ大阪ユース
 得点:後半23分:ガンバ・井川祐輔(児玉新・ショートパス)


▼大会通算得点(予選リーグ・決勝トーナメント)
 長沼11、日高7、塩澤5、高木5、仁科5、村松3、高山3、鈴木2、杉山浩2、深沢、森山、河合
 阿部、枝村



2000年12月27日(水) Jユース杯 決勝トーナメント 横浜F・マリノス戦

00年12月27日(水)11:00開始 長居第2陸上競技場
 第8回Jユースカップ2000 Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント準決勝
 対 横浜Fマリノスユース戦

▼布陣
−−−−−−−長沼−−−−−−−

−仁科−−−−−−−−−−日高−

−−−村松−−浩太−−深澤−−−

−森山−−高山−−渡邉−−高木−

−−−−−−−浅山−−−−−−−

交代:後半00分:深澤→隼人(システム変更、後述)

横浜Fマリノスユース:

−−−−−坂田−−蒲谷−−−−−

−−鈴木−−−−−−−−片野−−

−−−−−金子−−田中−−−−−

−樋口−−小原−−数馬−−栗原−

−−−−−−−榎本−−−−−−−

交代:後半12分:鈴木→北野、後半22分:片野→飯田、後半39分:樋口→松井
   後半41分:蒲谷→甲


▼試合展開

 前の試合と同様に、左右のFWを大きくサイドに張らせる4−3−3を採る清水。だが、トレスボランチを敷きながら、守備面でも全く機能的でない。よくよく考えれば、後方中央の浩太・渡邊・高山と1年生であり、既にトップゲームを経験している相手ドイスボランチ(金子・田中)に対抗できるはずもない。中盤でボールを奪えない清水は、ボランチのラインが押し込まれて7人が常に守備に追われることになる。一方の前線にも下級生を孤立させる布陣で、押し込まれる展開で前線に単独でのキープを求めるのは、酷な注文だった。
 立ち上がり、いきなり強烈な金子の強烈なミドルを浴びるなど、横浜の誇るドイスボランチを自由にし続ける。清水も長沼の高さを利用した時には得点の臭いを漂わせていたが、横浜の優勢は揺るぎない。11分の金子からのスルーパスこそ、ゴールを揺らしながらオフサイドフラッグに救われたが、直後の15分には今度は田中からスルーパスを送られ、坂田が浅山を抜き去って先制点を奪った。0−1。
 失点後も流れは変わらず、森山がゴール寸前でクリアするなど危険な場面が続く。FWの単独突破に振り回されると、結局は19分、再び金子からのスルーパスが芸術的に決まり、蒲谷が流し込んで失点。0−2。その後もアウトサイドからの崩しを中心にサンドバック状態が続くが、ポストとバーに救われ、命辛々ハーフタイム。CBがラインをブレイクして潰しに行きながら交わされてドリブルで突破されたり、その隙にスルーパスを出されたりする場面が多かった。2失点で済んだのは、幸運だからでしかない。

 後半、いよいよ主将、鈴木隼人投入。隼人は完全に孤立していた長沼とMFの距離を埋めるべく、自らがトップ下に移動。ワイドに開いていた2列目・3列目を絞らせ、相手ボランチをケアさせると同時に、清水の生命線たる高木・森山が上がるスペースを作った。

−−−−−−−長沼−−−−−−−
−−−仁科−−隼人−−日高−−−
−−−−−村松−−浩太−−−−−
−森山−−高山−−渡邉−−高木−
−−−−−−−浅山−−−−−−−

 この監督の意向を無視した自らを軸とする配置変更で、反撃開始。後半6分、漸くオーバーラップに成功した森山がセンタリング、ボールは囮の長沼を飛び越してファーの日高に合わせるも決まらず。しかし、直後の8分、小原のFKから栗原に頭で決められ、絶望的な3点目。0−3。
 大声で鼓舞する隼人。曰く「同じ高校生にビビってんな!」。うむ。しぶとく試合の流れに抵抗すると、17分。隼人の速いFKは低い弾道を描き、クリアに行ったDFが逸らしてしまう。裏に走った高山が右足ボレーで押し込み、漸く1点。1−3。しかし、流れは変わった。
 31分。再び隼人のFK。低く速く送り込んだボールはクリアしきれずに混戦。殺到する清水の選手、何とかPA外にクリアするも弱く、…そこにいたのは杉山浩太。再度クリアしようと殺到するDFを嘲笑うように、ダイレクトシュートはゴールに吸い込まれる。2−3。
 さらに33分。隼人からその左側に攻め上がった村松へパス。その前に右から日高がクロスしてスイッチ、日高は突破ではなく再び左横に叩く。そこへ森山が猛然とオーバーラップ。相手DFが必死のタックル、しかし森山は倒れ込みながら、左足一閃。3−3、同点!
 もはや、勢いは止まることはない。最後の仕上げも、もちろん鈴木隼人によって成し遂げられる。37分。FKからPA内に送り込んだボールは相手DFに当たり、ゴールマウスへ。必死にGKが掻き出したが、そこには高山が待っていた。慎重にヘッドで、逆転!! 4−3。
 騒然とした最終盤を凌ぎきった清水は、見事にクラブユースの雪辱を晴らし、万に一つあるかという大逆転劇は、幕を閉じた。


▼試合結果
横浜Fマリノスユース 3−4 清水エスパルスユース
 得点:前半15分:横浜・坂田大輔(田中隼磨:スルーパス)
    前半19分:横浜・蒲谷広樹(金子勇樹:スルーパス)
    後半08分:横浜・栗原勇蔵(小原章吾:FK)
    後半17分:清水・高山純一(鈴木隼人:FK)
    後半31分:清水・杉山浩太(なし)
    後半33分:清水・森山勇希(日高琢磨:ショートパス)
    後半37分:清水・高山純一(なし)



2000年12月23日(土) Jユース杯 決勝トーナメント 鹿島アントラーズ戦

00年12月23日(土)13:30開始 千葉県立柏の葉公園総合競技場
 第8回Jユースカップ2000 Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント準々決勝
 対 鹿島アントラーズユース戦

▼布陣
−−−−−−−長沼−−−−−−−

−河合−−−−−−−−−−仁科−

−−−村松−−浩太−−深澤−−−

−森山−−高山−−渡邊−−高木−

−−−−−−−浅山−−−−−−−

交代:後半00分:河合→日高(日高を右サイド、仁科を左サイド)
   後半25分:森山→鈴木(鈴木を左ボランチ、村松を左SB)
   後半38分:村松→天野(天野を右SB、高木を左SB)

 フラットな4バックの前に、フラットなトレスボランチ、ワイドに開いた2列目。杉山浩太を中心に置いた4−3−2−1。

鹿島アントラーズユース:

−−−−−高品−−阿部−−−−−

−−−岡野−−−−− 鈴木勇 −−

−−−−−木戸−−加藤−−−−−

−境谷−−柳町−−青塚−−及川−

−−−−−−−園部−−−−−−−

交代:後半00分:鈴木勇→小谷野、後半15分:及川→大根、後半20分:岡野→藤木、
   後半31分:高品→粕谷


▼試合展開

 開始から優勢の清水だが、ゴールに嫌われる。キックオフ直後の深澤のFKはポスト、高木→長沼は僅かに上などなど…。抜群のキープ力でフィールドを支配する隼人がいない分、展開は速いのだが、どこか慌ただしさが拭えず、嫌な展開になっていたが、個人技で打開した。22分、センターライン付近のFK。高木が蹴ったボールは、ボランチと最終ラインの間に、ドライブ回転して鋭く落ちる。そこに相手ボランチを抑えて前に入った村松、数バウンドしたボールを胸でトラップすると、そのまま掬い上げるようにボレー。これも、見事のドライブ回転で相手DFとGKを越えて、ネットに突き刺さった。
 その後、再び膠着するも、先制点から余裕の出来た清水。後半に入って52分、日高が前線に入り前のスペースが空いたのを見て、高木が疾走。ポストの長沼からパスが出ると、一気にタッチライン付近まで抉り、センタリングは日高の頭。2−0。
 67分に深澤のCKを長沼が合わせて追加点を稼ぐと、69分。仁科との絡みでPA内に侵入した村松が、左足シザースフェイントでボールをDFの前を通し、自らはそのDFの後方をすり抜けて突破。センタリングの体勢から、慌てて飛び出したGKの鼻先を掠めるように左足アウトでニアに流し込み、4点目。その動きが素早く、あまりに流麗で、場内騒然となる。
 その後、80分、隼人のロングフィードを長沼が下がって受けると見せかけてバックヘッドで逸らし、日高がその後方に走り込んでフリー。PA内ノーマークから、冷静にミドルを突き刺し、5−0で勝負を決めた。

 トップ下を置かず、トレスボランチがフラットで押し上げて中盤支配を図る戦術。素早い展開に冴えを見せる浩太や、小気味良いパス回しを得意とする深澤には適切な戦術で、特に深澤は絶好調。緩やかに自分のポジションを動かしながら、ボールを受けると一気に逆サイドに対角線フィードを送り、村松の飛び出しを引き出すなど、攻撃に変化を付けていた。
 しかし、今年の中盤の核である隼人が、キープ力やワイドな展開を生かせず、消化不良で終わった点は、気懸かりである。また、アントラーズ名物の太鼓親父から「5番を上がらせるなーっ(怒)」というお褒めの言葉を頂いた高木だが(笑)、普段に比べると攻め上がりの回数が減っている。
 高山と渡邊の読みが冴え、浅山に出番すら与えずに快勝したが、今後に不安を抱く部分もあった。


▼試合結果
清水エスパルスユース 5−0 鹿島アントラーズユース
 得点:前半22分:村松潤 (高木純平:FK)
    後半05分:日高拓磨(高木純平:右クロス)
    後半22分:長沼圭 (深沢良輔:左CK)
    後半23分:村松潤 (なし)
    後半34分:日高拓磨(長沼圭 :スルーパス)


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ひかる。 @H.P. [MAIL]

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