2007年02月15日(木)
「で、+10トリプルブラッディチェインで二人ともマグナムブレイク食らって二人仲良く寝転がったというわけですのね。」
昨日、バレンタインということでクリスは手作りのチョコタルトをオッズに手渡した。そのことを予想だにしていなかったオッズは練気孔→爆裂波動をSPの持つ限りするほど狂喜乱舞、クリスは恥ずかしさのあまりモロク中にこだまするほどの大絶叫をし、通行人から白い目で見られていたところをギルドマスターであるメグミに強制的に黙らせられた二人。 そこへ通りかかったフローラと斬玖の夫婦に理由を説明してリザレクションで起こしてもらい、サンクチュアリで癒してもらっていた。
「うぅ、嬉しすぎて気配が読めなかったな・・・。」
面目ない、とぽりぽり頭をかくオッズ。 ギルド、そして同盟内でも最強を誇るチャンピオン。
「僕・・・マグナムブレイク一発で蒸発するほどヤワくないんですけどね・・・。」
がっくりと肩を落として自信喪失しているのはクリス。 彼はギルド攻城戦に秀でるために体力の修練を積んでいる。
「イチャコラするならコソコソとやらんかい、ホモ共。」 「・・・っ!メグミ様ぁぁぁあああん!!」
するりと舞い出でたギルドマスター・メグミ。 そしてそれに抱きつこうと突撃するフローラだったが、するりとかわされてしまう。フローラはそのまま、ギルドの溜まり場にあるヤシの木に突撃した。
「・・・斬玖、奥さん壊れてるよ?」 「・・・いつものことだ。」
オッズがその様子を冷ややかな目で見ながら夫に報告するが、当の斬玖は問題なさそうに答える。
「大体、オッズたんもクーちゃんもハイプリーストのあたしごときにノされるなんて、まだまだ修行がたりんということぞよ。」 「「「むしろあんたは本当にハイプリーストなのかッ!?」」」
メグミの言葉にクリス・オッズ・斬玖の3人が綺麗にハモって突っ込みを入れる。
「お黙りなさい、愚民共!メグミ様の力(STR)は補正込み120!世界最強の殴りハイプリースト、『ケイオスの殺意』と呼ばれるに相応しいお方でしてよっ!」 「フローラたん、復活おつ。でも、その異名を声高らかにプロンテラで呼ぶのは今後一切やめてね。・・・後生だから。」 「つーか、その愚民に旦那が含まれているのには突っ込みナシどころか、スルーですか。ギルマス・・・」 「あたしゃ関係ないね。」 「ヒドス」
ヤシの木から受けたダメージをご自慢のヒール連続がけで早々に癒し復活をとげたフローラが話をさらにややこしくする。
「いつもながらフローラさんの忠誠心というか・・・すごいね。」 「すごすぎて逆にヒくけど。」
3人のコントを尻目にオッズとクリスはこそこそと話す。 それをフローラが見逃すはずはない。
「そこっっ!先ほどメグミ様が仰ったようにイチャコラこくならこのような公共の場ではなく、コッソリとやってらっしゃいまし!ワープポータル!!」 「助太刀するぞよ!マグナムブレイク!!」 「「!!?」」
フローラとメグミの見事なコンビネーションでオッズとクリスはマグナムブレイクの爆風に吹き飛ばされ、フローラの展開したワープポータルへと放り込まれた。
「で、どこ行き?」 「今じゃ穴場のデートスポットですわv」 「なんだかんだで、フローラたん・・・あの二人のこと手助けしとるね。」 「あら、腐女子として当然ですわ。メグミ様こそ、意外ですわよ?」 「あたしゃ、あれでも『うちの子』。あたしの大切なギルメンだからねぇ。」 「バカな子ほど可愛い・・・ってことですか。」 「そゆこと。」
「・・・ててて・・・ちっくしょ、あいつら本当に聖職者なんk・・・!!」
ボスッ! 飛ばされた先で思いっきり叫んだら上からオッズを丸ごと飲み込むものが降ってきた。雪である。
「・・うぁ、さぶっ!!」
雪だと気づいた途端に寒気を感じて慌てふためくオッズ。暑いところで生まれ育った彼にはここは地獄だ。チャンピオンの正装であるノースリーブではこの雪の街はいくらなんでも寒すぎる。クリスモ同様だが、彼には狐毛のマフラーがあった。
「雪の街・ルティエ・・・ですか。成る程。クリスマスなら賑わっていますがバレンタインでは結構穴場なんだね、ここ。」
マフラーに素肌の腕をこすりつけて少しでも寒気を和らげさせならアタリをみやるクリス。それとは違ってまったくの薄着のオッズはこの寒気に降参を訴えた。
「クリス〜、寒いよ〜暖めてくれよ〜っ!」 「ちょ、人がいないからって言っても!あ、あそこに宿がありますから、とりあえずあそこに今夜は泊まらせて貰いましょう!!」
擦り寄ってきたオッズを両手でガードしながら必死に訴える。 説得が通じた、というか寒さが本気でダメだったらしく珍しくオッズが素直に言うことを聞き、速度増加の呪文を唱えて一目散に宿に走っていった。
「行っちゃった・・・。相変わらず寒さには弱いんですね、オッズ・・・ふふ。」
いつもの彼なら、一緒に宿に泊まるとなると情事ができるとか言ったりして僕を困らせてくるのに。今日はそれすらもない。
「・・・フローラさんの策略どおり、今夜はオッズの言うこと聞きましょうか、ね・・・。」
いつもは恥ずかしくてしょうがないから、かなり抵抗はしているけれど。 バレンタインがそうさせるのか。 いつもよりとても積極的になっている自分に少しドキドキしながらオッズの待つ宿屋へと歩みを進めた。
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2007年02月14日(水)
「えーっと、バターを常温で溶かし・・・小麦粉をふるいにかけ・・・」
ここはジュノーのとある建物の中。 チョコレートクエストを済ませてきたクリスがさっそくそのレシピを元にチョコタルトを作っていた。
「さすが教授、ですわね。手つきはおぼつかないながらもデータどおりに調理してますわ・・・。」
クリスは生まれて初めての料理だと言っていたので付き添って指導していたフローラ。だが、教授たる素質からかクリスは基本さえ教えれば感心するほどデータどおり正確な調理をするようになった。
「・・・わたくしより、上手ですわ・・・。」
がっくりと肩を落とし、頭を垂れるフローラ。 その言葉にクリスは驚いたが、調理は中断せず視線は調理中のソレへと向けたままえっと声だけ上げた。
「・・・おはずかしながらわたくし、15個作ったうち、5個失敗でしたの・・・」
ウフフ・・・と笑みをこぼすが、いつものやさしいものではなく完全にブルー入ったものだ。
「ま、全滅よりマシだよっ!」
気休めではあるが、フォローを入れる。 そうこうしているうちにチョコタルトは出来上がったようだ。
「うん、完成!」 「すばらしい出来ですわ!とても料理が初めてとは思えないくらいv・・・でも、チョコタルト1つだけでいいんですの?」 「まぁね。どうせアイツにしかあげ、ないし・・・。それに時間もあんまりないしね・・・あはは!」
今回はおふれが遅かった分、バレンタインイベント本番は今日、2/14. つまり、チョコクエをしていたら結構ギリギリの時間になってしまったわけだ。
「そうですわね・・・。あまりグズグズもしてられませんし。ポタで溜まり場まで飛ばしますわね。」 「ありがとう。・・・あれ、でもフローラさんは?斬玖さんも宿から出てきたみたいだけど。」 「わたくしは・・・これで呼び出しますから。」
フフッと笑ってダイヤの輝きがまぶしい結婚指輪をはめる。 ああ、結婚スキルか。便利そうでいいなぁ・・・。
「それでは、頑張ってらっしゃいませ。・・・ワープポータル!!」
出来立てのチョコタルトを手に、僕はポタへ飛び込んだ。
砂漠の都市・モロク。 常夏のこの都市に移動した瞬間、手に持っているチョコタルトの安否が心配になる。この暑さではチョコが解けてしまいそうで。
「オッズは・・・いたいた。」
溜まり場から少し北西にいったところにカプラビニットさんがオッズに頼まれて倉庫をあけているのが見えた。
「オッズ!こんにちわ。」 「あや、クリス。やっほー!」
倉庫をあけたまま僕に挨拶をしてくるオッズ。 倉庫をあけている間は、アイテムを盗まれるのを防ぐために倉庫の持ち主はそこから動けない規約になっているため、いつものような熱烈な抱擁はしてこなかった。
(倉庫あけてるなら・・・今渡しちゃったほうがいいよね・・・。ムダに誰かに見られるよりは・・・)
少し考えてオッズにもう少し近づき、取引要請を出す。 無言で要請したから、オッズは「?」マークを頭に飛ばしていた。
「こ、これ!いつものお礼!!受け取ったら何にも言わずに倉庫に放り込んでおいてね!」
そういいながら、僕は恥ずかしさ大爆発だったので自慢のとんがり帽子で顔をほとんど隠してさっき作ったチョコタルトをオッズに突き出す。 オッズは一瞬ナニを渡されたのかわからなくてなされるがままに受け取った。
「・・・ん?・・・もしかして、これ・・・」 「あー!あ゛ー!!確認なんかしなくていいから!今は倉庫に放り込んで、あとでコッソリ誰にも見つからないように食べてよ!!」 「やっぱり・・・チョk・・・」
「あ゛あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! 言わなくていいってばあああああああああああああああああああ!!!」 「やっぱり!やったね!!」
モロク中にこだまするんじゃないかって言うほどの僕の大絶叫と嬉しさのあまり早々に倉庫を閉めて練気孔→爆裂波動拳を繰り返すオッズの奇行はまたもや僕達のギルド『ドゥロー・オブ・ハート』の知名度を変な方向に高くするのに十分な、2/14の出来事だった。
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2007年02月13日(火)
2月13日。 ルーンミッドガッツ王国の首都・プロンテラはかつてないほどの賑わいを見せていた。 賑わいの原因は本日おふれ(パッチ)が降りた、「バレンタインイベント」の開始である。 ルーンミッドガッツではこの「バレンタインイベント」は女性が好きな男性に愛の告白をしても恥ずかしくない期間として定められているものだから、女性にとっては一年中で1,2を争うほど楽しみなイベントでもある。
「・・・で、クリスさんはいつになったらチョコ作成クエストに行かれるのですか?」
スッコーン。
とんがり帽子をかぶった銀髪の美人「男」教授が勢い良くコケる。
「いやっ!?僕、男だしっ!!」
そういって真っ赤になりながら慌てふためく様を見て問いかけたフローラはくすくすと笑みをこぼす。 一通り笑い終えたフローラが諭すように語ってきた。
「性別なんて関係ありませんわ。それに、シュバルツバルド共和国では男性から送るケースも普通にあったんですのよ?」 「いや、でも!別に恋人なんかいn・・・」 「・・・あらぁ?」
再び顔を真っ赤にして、慌てて否定しようとするクリスにフローラは意味深に片方の口の端だけ上げたアルカイックスマイルを見せた。
「そんなこと仰いますと、どこかのチャンピオンさんは悲しみますわねぇ。」
恥ずかしさ爆発なのか、クリスはとんがり帽子を深くかぶって顔を隠した。
「クリスさん、大切なのは日ごろの感謝の気持ちを伝えることですわ。毎日もらっている『幸せ』のお返しがチョコで喜ばれるんですのよ。」
そう言われてドキっとする。 いつも貰ってる、『幸せ』。 自分は恥ずかしくていつもそれに満足に答えてあげてはいないから・・・。
「・・・そだね。それくらいはしないと、だよね・・・。」
そろり、と目深にかぶったとんがり帽子から上目遣いに立っていたフローラを見やる。 そのなんとも愛らしい仕草にフローラは「可愛いですわ!」と叫びながらクリスに抱きついて、こそっと囁く。」
「それにね、・・・チョコぐらいで男って半年は飼いならせるものですのよ。」
その恐ろしい言葉にピキーンと固まってある人の顔が脳裏によぎる。 フローラの夫・斬玖。 アマツ出身で女性慣れしてない彼はおととしフローラから貰った「義理チョコ」を後生大事に持っているのをギルドの誰もが知っている。
「さ、じゃあクエストしにいきましょうか!手順はわたくしがお教えしますわv」
そういってルンルン気分で速度をかけてワープポータルの呪文を唱えるフローラを見てこの人には逆らっちゃいけないなと痛感したクリスだった。
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