皆様も(*´Д`)ハァハァできたらイイナ!
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2002年02月23日(土)

何故…(神×セレス)


君さえ泣かなければこんなところに落ちてこずに済んだのに…―――



「お前がセレスなのか?」
「…は、はいっ!よろしくおねがいします!!」
「ハハハ、そう硬くなるな。私たちは兄弟なんだから。」
「…でも…」
「…ん?」
「…でも、僕は今まで一度も貴方と会ったことがなかった。神様だからって。」
「…そうだな…。でも、これからはずっと一緒だ。何があろうとも。」
「はい。頑張ってお仕えします神様!!」
「……そう言うのはナシにしないか?」
「え?」
「私は、普通に接して欲しいんだ。…『神』ではなく。せめて二人のときだけでもいいから兄と呼んでくれ。」
「は、はい………あにうえ。」
「…うん、よろしく、セレス。」

そう言って微笑んだ彼の表情は何よりも神聖で綺麗だった。
…僕が彼を特別に想うようになるのは簡単なことだった。

「兄上、何を読んでるの?」
「花言葉の本さ。」
「はなことば?」
「そう、花にはそれぞれ言葉を持たされているんだよ。」
「へぇ〜…バラにも?」
「…何故バラが出てくるんだい?」
「だって、バラは綺麗じゃない?」
「確かにそうだけど…」
「バラの花言葉は何て言葉なの?」
「色によって違うんだがな…赤いバラは『真実の愛』、白いバラは…」
「黄色いバラは…嫉妬?」
「…ああ、そうだな。…この天上には…無縁とされる言葉だ…。…どうして…」
「…?あにうえ?」
「…どうしてこんなに取り繕った世界になってしまったんだろうか…」

その時の彼はとても悲しそうな瞳をしていて。当時の自分にはわかることが出来なかった。
心は幼く。…けれど確実に醜い独占欲に支配されていって。

「イヤだ――――――――――ッツ!!」
「…?」
「うるさい!!さっさと歩け!!」
「イヤだ!!堕ちたくなんてない!!」
「何を言っている!自業自得だろうが!!」
「…ねぇ?」
「は!せ、セレス様!!」
「どうしたの?さっきの人…。」
「いえ、不敬を働きまして…。御神以外に『一番』の好意を寄せていたんですよ。」
「…ふぅん。」

この世に神を、彼を愛せない人がいるなんて理解なんて出来なかった。
だって僕自身、彼を愛しているから。

でも、ある日…

「セレス…この世界を、どう思う?」
「え?綺麗なところだよ?!」
「…見た目だけは、な…」
「?」
「本当に愛しているものに『愛している』といえない世界は…綺麗なんかじゃないさ…」
「そう?僕は言えてるけど?『愛してる』って…」
「それは、私に対してだろう?本当に愛しているものでは…」
「僕は君が好きだよ?世界で一番…」
「…それはお前の本当の意思ではないよ…」
「そんなことない!!本当に…本当にッツ!!」
「…セレス…?」
「僕は君が好きだ!愛してる…独り占め、したいくらいに…」
「セレス…」

綺麗な君。美しい君。
他の人のことなんて考えないでよ。僕だけを見つめていてよ?

「私も…お前が好きだ…愛している…。でも…」
「でも、神は一人だけを愛しちゃいけないんだよね?」

判ってる。判ってる。

「そんなことは、ない…」
「え?」
「そんなことは…あいつ等が勝手に決めたことだ。」

七人の大天使たち。

「他の天使たちも…私が一番じゃなくてもいいんだ…あいつらが、勝手に決めたことだ。…操りやすくするために。そんなのは、民達が不幸になるだけなのに!」

貴方はいつだって心底では民のことばかり。
僕がいくら想っても。…貴方は『神様』だから…。

「…泣かないで…?」

僕に、僕の中にあの言葉が、あの感情が芽生えた。

「…僕だけは、本当に君のことが好きなんだから…泣いて欲しくない。」

…『嫉妬』…

「セレス……。」

そうして、彼の唇は僕の唇と重ねられた。
それは、たくさんの重罪の始まりだった。
神が一人だけを想うこと。
同性間での恋人意識。
兄弟間での性行為。

暫くは誰にも知られることがなかったけど…
だからと言って幸せなときが続いたわけじゃなかった。


「それは重罪ですよ?」
「判っている。」
「いくら貴方が絶対唯一の存在でも、…いや、だからこそ示しがつかないんです。民達に。」
「ああ、わかっているさ。」
「どう、なさるおつもりですか?」
「堕ちればいいんだろう?」
「…ほう?」
「堕ちてやるさ!こんな見た目ばかりの土地なんていらない!」
「…そして、繰り返されるのですな?」
「!?」
「『奈落』を第2の天上にするおつもりでしょう?…そしてここを滅ぼす。」
「…違う!」
「違わない。いずれ貴方は奈落を支配し、ここを滅ぼす。…それだけはね、避けなければならないんですよ。」
「違う!違う!!」
「堕ちなさい…『奈落』ではなく、『黄泉』へ!!」
「…!!」

…セレス…

「…?あれ?」
「どうかしたの?」
「ん…今、呼ばれたような気がして…」
「?私には何も聞こえませんでしたわ。」
「気のせい、かなぁ…」

「フローラ様!!」

「どうしたの?マゼンタ。」
「は!セレス様とフローラ様には辛い報になるけど…」
「?」
「先ほど御神がミカエル様方に…処刑、されたジャン…。」
「!!!!!」
「セレス様!逃げて!!じきにここにもミカエル様が貴方を処刑しにやっくるジャン!!」
「そ、そんな…」

「処刑なんてしませんよ。」

「…ミカエル!!」
「そう恐い顔をなさらずに、蛍石の花女神。安心して下さい。セレスは処刑しません。…だって彼は被害者なんですから。」
「どういう、こと?」
「彼はただ従順に『神』を愛していただけだ。罪を犯したのは御神の方…」
「違う!僕が…僕が!!僕は…!!」
「違わないよ。恐かっただろう?セレス…。君は偉いよ。その偉業に敬意を表して…君を次の『神』にしてあげよう。」

「セレス!!逃げなさい!!」
「…あね、うえ…?!」
「あの子と、…ルシファーと約束したんでしょう?…『本当に好きな人に愛を告白できる世界を作る』と!!こんな…こんなところでは無理よ!別の世界でその願いをかなえなさい!!…マゼンタ!」
「ハイ!!さ、セレス様!!」
「あねうえあねうあねうえー!!」
「…アタシが手引きします!!…一先ずは…奈落に。」


どうしてどうしてどうして?
僕はここに来たかったんじゃない!!
…君のいるところへ。
ルシファー…君さえ泣かなければ僕たち離れ離れなんてならなかったんじゃないの?



□□後書き□□

スミマセン…訳わからん。
ただ、なんとなーく、セレスの堕天してきた話を書きたかったの。
ちゅーか、もうルシファーとか、深く突っ込まないでね。色々と間違いまくってるのはすっごく判ってますので。天使の本とかいっぱい読んだけどどれもピンとくる名前がなかったのよ…

2002年02月18日(月)

キスの温度。(ひゆなさんからのキリリク・プラアレ)



本日は晴天なり。
あまりにもいい天気なので仕事も終わらせたプラチナは中庭の一番お気に入りの場所、大木の木陰で昼寝をすることに決めた。

「ぷーらーちーなーっ」

寝転んだところでアレクの声が聞こえてきた。
プラチナは上半身を起こして衝撃に備える。…アレクが自分の胸に飛び込んでくる時の。

ぼふっ。

予測どおり胸の中に飛び込み、収まる。

「えへへ〜vvプラチナあったかぁいvv」

まるで子猫のように擦り寄って甘えてくる。何とも愛らしいではないか。プラチナもまた子猫をあやすかのように頭を撫でて額にキスを施す。それに満足げに笑んでまたプラチナの胸に顔を埋めて擦り寄る。

「…兄上。」
「ん?」

この感覚はとても嬉しいのだが。

「…眠い。」

じつはもう半分くらい夢の中にあるのだ、プラチナの思考は。

「あ、ごめん!」

ぱっと離れるがすぐにプラチナの腕によって引き戻された。
そして反転する、視界。

「眠いんじゃないの〜?」

体勢的に見えないのだがクスクス笑っているのは確か。

「だからこうして寝ている…。」

ぎゅうっと抱きしめている腕に力を込める。

「俺も道連れ?」
「…い…っしんどう、たい…だからな…」

だんだんと薄れていってる意識。もう殆ど夢の中。

「ぷーらーちーなー」
「…なん、だ?」
「俺、今すっごくちゅーしたいの!」
「…してくれ。」
「いーの?勝手にしちゃうよー??」
「…あぁ。」

とても気だるげに。とにかく今は、眠い。
腕が移動させられてる気がする。
胸にあった暖かな体温が離れていく。
そして代わりにくっつく、唇の温度。

「もっかい、いーい?」
「…ん。」
「いっぱいしちゃうぞー?」
「…すきなよーに。」

何回も何回も。額と頬と瞼と唇に触れる温度。

「うー…つまんない!!俺はいっつもどきどきして寝れなくなるのに何でお前は簡単に寝ちゃうんだよー?!」
「……………」

今度は応えがなかった。…プラチナは完全に夢の中。

「むぅ。寝ちゃった…。ばかばかばかばか…俺のことどーでもいーんだな、きっと。眠いから!」

アレクはすっかりふてくされていまや思考は夢の中にいってしまったプラチナをぽかりと軽く叩いた。
すると薄く蒼い瞳が開かれる。

「そんなことは、ない…」

言葉にはならなかったがそのあとに唇は『大好きだから、安心して眠れるんだ』という容をなぞっていた。そしてすぐに夢の中に戻っていく。
そしてそれを聴いてすっかり気をよくしてしまったアレクは

「…しゅっけつだいさーびす!膝枕してやる♪」

と言ってプラチナの頭を浮かせて自分のお腹あたりに持ってくる。

「膝枕とはちょっと違うかな…?でも、足しびれちゃうし。コレでもいいよね?」

気に背を任せて足を広げてその空間にプラチナの体。枕はアレクのお腹。掛け布団はアレクの二つの細い腕。

「おやすみ、プラチナ♪」


そしてアレクも昼寝に入る。
暖かな陽だまりの中木陰で柔らかく微笑みながら昼寝をしている二人の奈落王がいましたとさ。


□□後書き□□

氷優菜様からのキリリクの『プラアレでバカップルな感じのお話』です。
…すみません、バカップルにはなれませんでした(死)
いや、なんつーか…最近頭の中がシリアスラブラブ一色でして。ほのぼのが限界ですぃた。マジですみません!!ば、バカップルは…バカップルだけは――――――――ッツ!!何せ3時間パソコンと向き合ったうちの2時間はこの小説、真っ白でしたので(泣)
因みに、二人の最後の体勢は判りやすく一言で言うと『サントラのブックレットのプラチナとアレク』です。アレですね、股枕v(←だからその表現ヤメロ)アレ、ラブですvv
それではキリ番ようやく消化しきれましたのでオリジナルプレミアムストーリーズの更新してくかー!…誰も待ってないだろーけど(泣)

2002年02月14日(木)

君が好き。(プラムロー、ルビカロ、ゼサヒ、プラアレ)


別にいいじゃないか。
チョコレートじゃなくたって。手作りじゃなくたって。
心が篭っていれば。

彼は甘いものが苦手なんだし、かと言って他の食べ物はと言えば料理を今まで一度もしたことのない自分にとっては絶対に無理な話だから。
だから皆はそう言うけど…

売ってる物をあげるのは嫌だ。何だか他にもあるのは嫌なんだ。
自分だけが彼にだけできること。ただ一つのこと。
ただそれだけのことなのにどうしてこんなにも難しいのだろうか?


今日の、バレンタインの贈り物。



「プラム、何作ってるの?」
「えへへ〜vチョコレートですぅ〜〜♪」

そう言って彼が一生懸命混ぜてるものは何だかピンク色のもの。…チョコレートって茶色とか黒色っぽくなかったっけ?

「あま〜いあま〜い、いちごあじーですぅ♪」

それを聞いてある程度は納得した。だが、

「…でも、溶けきってないって言うか…砂糖ばっかりじゃない?」

じゃりじゃりじゃりじゃり、と混ぜるたびに音がなっているのは気のせいではないはず。

「だからあまーくしてるんですってば〜!!もー、あれくはだまってくださーいー!!出てってくださーい!!」

とうとうキレて厨房から追い出されてしまった。
『アレ』を渡される相手が何だか気の毒に思えた。けれど、きっと残すことなく完食するのだろう。彼のおねだりモードに押し切られて。

「…頑張れ、ロード!!」

俺は奈落王だけど何もしてやれないよ、と付け足して。


コンコン。
「カロール入っていい〜?」
「あ、アレク様。どうぞ、散らかっておりますが…」
「お邪魔しま〜っす…」

散らかっていると言われてたが、そう気にするほどのものでもなかった。きっと床に転がっている3個の毛糸の玉を『散らかっている』と指したのだろう。

「何か作ってるの?」
「あ、はい…手袋とマフラーを…」
「バレンタインのプレゼント?」
「…え、…えぇ…」

そう言って見る見る内に顔を紅くしていった、カロール。…何か可愛い。

「いいなぁ〜…こんなの作れて。俺なんかぶきよーだから無理だよ。うらやまし〜な〜…」
「王子だって作れますよ。マフラーだけなら案外簡単ですから…」
「でも、時間がないよー。だって今日じゃん、バレンタイン。」

それだったらもっと早く気付いて教えて貰っておけばよかったな、と思った。…けどカロールが使ってる手なんだからどの道やらなかったか。誰も考え付かないこと、物を送りたいと思ってるから。

「……………ルビィに?」

余りにも幸せそうに毛糸を編んでいっているから少し腹が立って意地悪にそう訊いて見た。…案の定カロールは顔を真っ赤にさせてぽろりと編み棒を落とし、数秒後動揺しまくって弁解する様が見られた。
と、その時。

「ひゃ〜♪俺ってモテモテやねんな〜vvこんっなにぎょーさんのチョコ、城づとめと下町の女の子からもろてしもたわ〜♪」

と、プレゼントボックスを両手いっぱいに抱えたルビィが入室してきた。

「お?来てたんか、坊主。どや?坊主も一個食うか?!一人では食べ切れんからなぁ…協力したってや☆」

何とも無神経且つタイミングの悪い発言だった。もしかしたらルビィはアレクをしのぐ天然かもしれない。…背後のどす黒い電波を撒き散らすカロールに気付いていないのだから。

「…お・に・い・ちゃ・ん…vv?」
「…ん?おわぁ!!か、カロール…!!何や何やその思いっきり裏のありそうな微笑みあーんど、猫なで声はッツ!?」

ようやくカロールの異変に気付く。…だが、それだけだ。自分が悪い言動をとったことには気付かない。…恐らく、この後も。

「お、俺…お邪魔みたいだから出てくね♪じゃぁね☆;;」

この後繰り広げられる光景が何となく予想できていそいそと退室する。

「…えぇ、アレク様…なんのお構いも出来ませんで…v」
「ううん!!じゃ、じゃ〜なッツ!!」

バタン!

扉を閉めた次の瞬間から何とも表現しにくい擬音語の羅列が聞こえてきた…。



再び厨房に戻ってみるとプラムじゃない、別の歌声が聞こえてきた。

「…サフィ?」
「っうわッツ!!あああああああ、…あれく様??!」

普通に声をかけたつもりだったのに『わっ』って驚かしたときみたいにサフィはすっごくびっくりしていた。

「驚かしちゃった?ごめんね。…何作ってるの?」
「あ、いえ…あぁぁぁ…!!み、見ないでくださいぃぃ〜〜;;」

だが、時既に遅し。しっかり見えた。チョコレートケーキ。…特大の。

「も〜、またこんなにデカいの作っちゃって…。皆で食べても絶対残るぞ?」
「あ、えっとこれは皆さんに差し上げるものではなくてその〜…」

顔を真っ赤にさせてるところを見ると…誰か『特別な人』にあげるのか。

「もしかして俺じゃないよね…?;」
「…申し訳ありません、違います…」
「だよね。大穴狙いでジェイド?」
「…………」

真っ赤になって俯く。

(マジ…?)

カロールと言いこいつといい…何か長年の付き合いのお陰か結構わかりやすい反応をしてくれるとアレクは思った。

「ん、え〜っと…なーサフィ…。俺さ、プラチナにプレゼントあげたいんだけど何あげればいーのかわかんないんだよ。何か良い考え、ない?」

気まずくなって苦し紛れに出した話題だったがサフィも必死だったようですかさず乗ってきた。

「そ、そ〜ですね!『心が篭っているもの』と一口に言っても難しいものですし。…特にアレク様は『他の人がやってるようなことは絶対にしたくない!!』なんて思ってるでしょう?」
「うん。」
「では、助言を。アレク様は特別な存在です。『奈落王』という。奈落王は天候さえも操ると昔から言われてきましたが…これは本当のことなんですかね?」
「…え?」
「アレク様はアレク様でいいんですよ。…プラチナ様はそんなアレク様だから好きになられたんです…。」

あとは貴方の知恵次第ですよ、と。ニッコリと微笑むサフィはとても優しくて。本で読んだ『母上』みたいだった。

「ありがとう!サフィ!!」

そう言って溜まらず厨房から走って出て行く。

「廊下は走っちゃいけませんってば!!」
「判ってる〜!!」
「…じゃぁ、何で走ってるんですか?…はぁ。」

全然困った素振りではなく溜息をついて窓の外の空を見る。相変らず晴天だ。…けれど午後からは雪が降る。そして積もることだろう。

「…可愛らしい娘を持った母親の心境…ってトコですか。」

そうしてチョコレートケーキの作成が再開された。



「…寒いと思ったら、雪ですよ。プラチナ様。」
「何?!」

プラチナの執務室。ジェイドがにこやかに外の状況を説明するのに対してプラチナはそれを聞いて心中穏やかではなくなった。
それもそのはず。奈落は奈落王の全て。四季はあれども天候管理はできるため雨や風や雪吹雪あられ雹などの悪天候は全て『必要な時』のために予定されたスケジュールで奈落王によって行われる。もし、予定外の悪天候があった場合は奈落王の身に何かあった時なのだ。

「兄上が体調でも崩したのか…?!」

そう言って椅子から立ち上がって執務室から出ようとするプラチナに容赦なく圧力の魔法をかける。

「落ち着いてください。それなら真っ先にココに連絡が入るハズでしょう?…きっと今年は雪を積もらせられなかったから欲求不満で勝手に降らせてるんでしょう。」
「馬鹿な!無断で…」
「…それに今日はバレンタイン・ディですし?雪が降ったほうが盛り上がりますからね〜♪」
「…なるほど。…だから今日は訳の判らないプレゼントが届いているのだな。」

圧力の魔法を解呪し、再び部屋を出ようとする。

「何処へ?」
「今日の執務は終了だ。」
「御意…っと。」

目的地は…中庭。



「ん〜〜〜…蒼い木の実が中々ないんだよなぁ……あ、あったvv」

ぷすぷすと白い塊に二個、小さな蒼い木の実を埋め込む。

「で〜きた♪」

左右の二つの手のひらには白い塊が3個乗っていた。


「何をしている兄上。」

間もなくプラチナが到着する。

「あ、プラチナ…」

怒られると思って何となく身構えた。防寒はしっかりしているつもりだし、仕事も終わらせて来ている。怒られることと言えば予定外の雪を降らせたことくらいか。

「う、ゴメン…」
「…何故、謝る?」

怒られる前に先手を打って謝ったのだが帰ってきた言葉は怒声ではなくてとても優しい声だった。
そして、左手をとられる。

「な、何?」
「手袋を外すぞ?!」

するりと外されて薬指にはめられた物は、蒼い水晶で出来た指輪。そして間をおかずに手袋をつけられる。

「な、何今の…」

もう一度確認するために手袋を外そうとしたが、それはプラチナの手によって制止された。

「バレンタイン・ディ…だから、な…。あとで、俺のいないところで見てくれ。」

…恥ずかしいから。
もう一方の手で覆い隠した顔から除く赤色がそう物語っていた。

「うぅ〜…嬉しいけど、こんな凄いもの貰ったら俺からのプレゼントが何だかショボく思えるじゃん〜〜…」
「…?何だ?」
「コレ。」

白い雪兎。それぞれ瞳は赤いものと青いもの。そしてその真ん中にはハート型の雪の塊があった。

「いいアイデアだとおもったのにな〜…」
「そうか、…だから雪を降らせたんだな。」

2体の雪兎にそれぞれ口付ける。続いて、アレクに。

「兄上らしい。…俺は嬉しいぞ?それでも不服か?!」
「…ううん。プラチナが喜んでくれたんならいい。だってプラチナのためのプレゼントだもん♪」

アレクからも背伸びをしてキスをする。

そっと布伝いに感じる。あの蒼い水晶のリングはプラチナが自分の心をこれからも縛り、守ってくれているようだと嬉しく思った。


□□後書き□□

ちゅーか、長いんよ。私のSS。…すみません…。作文よりも論文の方が得意だったりそうじゃなかったり。(どっちよ)
ベリルとジルが出てきてませんがー…彼らはそーゆーお年でもないんで(笑)つーか、考えられます?あの二人がチョコとか渡しあってるシーンなんて(恐)
因みに一番書き表したかったシーンは意外にもルビカロでした。初ルビカロー♪イエーィ☆キングオブヘタレ攻めルビィばんざーい!!(笑)そうです、あれでも攻めなんです。因みにプラム×ロード、ルビイ×カロール、ジェイド×サフィルス、んで、プラチナ×アレクです。サフィルスの特大ケーキは全部ジェイドさんの胃の中に収まりました。私の中ではジェイドさんはフードファイター並の大喰らいと言う設定が出来上がってたり。だってサフィがあんなにもたくさん料理つくるのはきっとジェイドの食べる量が半端じゃなかったからだと思うのよ!!で、「あ〜、自分は以外にもカナリの小食なんだ」と勘違いして今に至る、と。…ハハハ、ドリー夢さね。
…プラム×ローといい、ルビカロといい、ジェサフィといい…これって乙夜ママが読んでくれたらもしかして喜んでくれるじゃなかろーか?…ハイ、実は私は椿●パパよりも乙夜ママの方がアポクリにおけるカップリングの趣味は合致してたりします。お母さん子だからーvv(死)
…なんにせよ。バレンタイン企画は完了です。お子様部屋の方はもちょっと後日談とか書いていきますが。

2002年02月13日(水)

第2話 : 操られない人形―マリオネット―前編(OPS)


 …光の鳥かごの中。私は彼女とお話をしていたわ。
彼女は特殊な体の持ち主。その鳥かごを自由自在に出入りできた。羽のある私たちには無理だけど。
私はそこに居なければいけなかった。…あの子達を見守っていきたかったから。

あの子達がいなくなったら私がそこにいる理由なんてない。
羽を切り捨てて、自由を得た。

…鳥は自由だなんて誰が言ったのかしら?

地に足を付けて、歩くこと。こんなにも自由なことなのに………

―――――――――――

「マゼンタ…。マゼンタ・ダル=オフホワイトよ…!」

光の世界の中、6枚羽の天使が少女の名前を呼ぶ。

「…ここに…」

その天使を前にひざまづく少女。

「私のフィアンセが堕天してしてしまったとか?」

幾分か含みの或る笑みを交えて話す、天使。
…嫌味、とでも呼ぶべきか。

「…申し訳ございません」

応える声は力なく。

「…全ッ然、申し訳なさそうじゃないか」
「………」

今度は応えなかった。…ただ、俯いたまま…。

「まあいいです。連れ戻してきたら…不問にして差し上げますよ?」
「…寛大なお心使いいたみいります」
「本当にそう思ってますか?」
「…」
「あぁ、もう。早く行きなさい」

天使は嫌味を言うのも飽きてしまったらしい。

「彼女は…私の愛しいフローラは、私にとっても天界にとっても…必要な存在なんですからね?」
「…御意」

(嘘ばっかり…)
心の中でそう思ったことは敢えて口には出さなかったが。

すぐに少女はその部屋から退出した。

「…何はともあれ…これでフローラ様に心置きなく逢えるってことジャン…!」

先程とは打って変わって明るい口調だった。
――少女の名前はマゼンタ・ダル=オフホワイト。天界と奈落を行き来できる術を持つ天界唯一の…マリオネット《意思を持つ人形》である。

―――――――一方、奈落城――――――

「何でなんだよッ!」

自分を着付けてくれている女官長・フローラに向かってアレクは声を荒げ、詰め寄る。

「あら?だって御忍びなんでしょう?」

いつもたたえている微笑とはまた違った楽しげな笑顔で平然と答える。横にいたプラチナはやはりこいつは只者ではないなとは思ってはいたが口には出さなかった。

「プラチナも怒れよ!」

急に話をふられてはっと我に返る。

「お忍びだからって、別にこんなカッコしなくてもいいだろ!?」

…こんなカッコ…今、アレクは…ぶっちゃけた表現をすると…女装していた(笑)

「…存外似合うと思うが…」
「なっとくするなーぁ!!」

でもプラチナとしてはかなりって言うか、当たり前に似合うと言いたかったのが本音だが。

「白いレースに白いリボン…白いフリルに白いフレアースカート…。ロマンですわーvv」
「悦るなぁー!!」

なんだか常では見られない程ツッコミ役に徹している奈落王サマ。
だが、格好が格好なだけにただ愛らしく見えてしまうだけだった。

「だいたい、お忍びなのは俺だけじゃないだろ?プラチナも女装すべきなんじゃないか?!」

びっと弟に右手の人差し指を向ける。

「あら?プラチナ様は正規のお休みですわ。アレク様は参謀様方に内緒での自主休養…つまりおサボリ。『ばれないように変装したい』と、仰ったのはアレク様ですわv」

しかしこれにも屈することなくふわりとかわす。やはり只者ではない。

「だからって何で!女装なんだよ―ぅ!!その理由を五百字以内で述べろ!!」

アレクはついにキレて訳のわからないことを言い出す。

「…似合うからv」
「…五文字…」

フローラの冷静、且つほののんとした返答にアレクはついにがっくりと肩を落として白旗を揚げた。
そして、今まで置いていけぼりを食らっていたプラチナが口を開いた。

「そう言えば…昔、ロードとプラムにもそう言う格好をさせられたことがあったな、兄上」

ぴくりとアレクの肩が動く。それからぎぎぎとでも言う音が鳴ってそうな動きで顔を上げてきた。

「よくそんな100年も昔のこと憶えてるなー…」

アレクがあまりにも恨みがましく睨んでくるものだからイジワル心がむくむくと頭をもたげてきて…

「クレア…と名乗っていたな?!」

結果:プラチナいじめっこ化(笑)

「まぁvvクレアですって?何て可愛らしいお名前でしょう♪」

アレクが非難の声を上げる前にフローラが感嘆の声を上げた。

「そうですわ、アレク様!これから御忍びをなさる際にはその『クレア』の格好をすることにしましょう?!」
「えぇぇッ!?で…でも!素性の知らない女の子なんかこの城簡単に出入りできないだろ!」

確かに。しかしそれに気にした様子も無く続ける。

「名前は『クレアシード=フロル・フローリア』可愛いでしょう?身分は…私の妹ということにすれば問題ないでしょう?」

恐るべき速さで何だか話が展開していっているのにアレクは眩暈を覚えた。
…何か、もう諦めた方がダメージは少ない。

「それに、どうせ手とか繋ぐのでしょう?男同士が手を繋ぐのは喩えご兄弟でもおやはり気味の悪いものですわ」

この言葉はプラチナに甘えることが大好きなアレクに改心の一撃を与え…結局、アレクはこれからも度々、『クレア』の姿で出歩くことになった…。


――――――――――所変わってここは奈落のとある平原――――――――――

心地よい風が吹き抜けていく。少女の――マゼンタの二つに分かれた長い後ろ髪がゆっくりとたなびいていた。

「…ここが、奈落…」

初めて見る奈落の地に色々な感情が沸き起こる。

「光だけのあの世界と全く違うジャン…」

大天使たちに聞かされていたものとは正反対だった。
大地の暖かな茶色や木々の優しげな緑、花や蝶の可愛らしいピンクに爽やかな空の蒼。命の息吹がとくとくと感じられる…美しい。素直にそう思えた。
すうと大きく深呼吸をしてにっこりと笑う。

「アタシ、ここ気に入ったジャン☆………いいカンジのヤヲイもありそうだしー♪」

るんるんとその場から離れて先ずは城下町を目指す。

「ここはまん●らけとありそうジャンね〜vvさぁて!どんなホ●達がいやがるのかなん♪」

…………彼女、マゼンタは同人娘でもあった(笑)

――――――――――アレク…いや、クレアは悪寒を感じてぶるりと身を震わせた。

「どうした?兄上」
「ん、何か狙われてるような気がして…」
「…!!殺し屋か?それとも変質者か!?」

すぐに警戒しはじめる。

「…えっと、多分そんな感じの物騒なヤツじゃないと思う…」

冷や汗だらだらになりながらも今にも誰彼構わず一般市民に切りかかりそうなプラチナを制止する。

「何か、こう…結構平和的なんだけどどすピンクなカンジの…(笑)」
「…どすピンク??」
「ゴメン、自分で言っててもわからない(汗)でも100%有害じゃないから」
「…そうか」

兄の言葉をとりあえず信じて剣を鞘に収める。
プラチナ達は今、城下町の市場でいわゆるデートをしていた。アレクは勿論クレアの姿。
初めは恥ずかしくて仕様が無かったけれど段々慣れて…と言うか開き直って堂々と腕なんか組んで歩いていたりした。
美男美少女のカップル。注目を受けない訳が無い。道行く人々から振り返られるのはかなり気恥ずかしいが、『プラチナは俺の物v』という普段主張できない行動が堂々と出来るため、結構爽快だったりする。そしてプラチナもいつものように剣を抜いて威嚇しなくてもアレクがべっとりとくっ付いてくれているので不埒な考えを持つ輩に要らぬ嫉妬や怒りを憶えなくて済んでいた。

「えへへ〜♪」

突然の笑み。

「…何をにやけている」

判ってはいるけれど。

「だって〜」

答えにはなっていない。

「何がだってだ」

判ってる。

(…幸せ、だね)

同じ事を考えているのは。


□□中書き□□

無闇に長い話になりますので前後編に分けました。
すみません…話まとめるの下手なヤツで…

2002年02月12日(火)

第1話 : 蛍石の姫(OPS)


ずっとずっと見守っていきたかった。彼らの幸せが私の楽しみだった。
…けれど、もうとうの昔に彼らはここにはいない…。

…私も堕ちよう…。

彼らはどこにも居ないけれど。
彼らのもう一つの容(かたち)なら見ることができるから…

―――――――――――― 

「…?」

呼ばれたような気がして振り返ってはみるけれど声の主はいない。少し首を傾げる。

「どうした?兄上」

不思議そうな顔をして見つめてくる蒼い、瞳。

「ん、なんでもない。気のせい…」

心配をかけないように笑顔で応える。そうして視線を握っていた書類に戻すが考える事は仕事のことではなくて。
優しく自分を呼ぶ女性の声。…酷く懐かしい…。 

―――――――――――――――

「ふぅ。やはりどの方もステキな方ですね。」

と、サフィルス。

「当たり前ですよ。大事な役職なんです。いい加減なスキルで臨もうとするならば大恥をかきますからね」

と、ジェイド。 彼らは今、新しい女官長を決めるための面接をしていた。なぜなら現女官長が今月で定年を迎えるからである。

「…あ。次が最後の方ですよ、ジェイド。お城勤めは初めての方ですね。けれど今まで城で働いていた女官達を大きく引き離した優秀な成績で貴方の作ったひねくれまくった筆記試験を突破しています」

同僚に対する嫌味を露に含ませている。が、当の本人は全く気にもした様子もなく、いけしゃぁしゃぁと

「きっと私と相性がバツグンなんですよv」

などとほざく。
結果、サフィルスはしてやるつもりがしてやられてしまったのである。一瞬、目の端をきりりと吊り上げたが大事な面接中、との事をすぐに思い出し笑顔に戻る。

「…コホン、それでは、次の方入ってきてください」

サフィルスの声が響いてから間もなくしてコンコンとしっかりしたノックの音が聞こえてきた。サフィルスの「どうぞ」と言う声に一拍置いてからカチャリとドアが開かれる。
入ってきたのは、少女とも大人の女性とも言える不思議な美しさを称えた、ひと。

「失礼致します」

凛とした声が部屋に響く。再びドアがカチャリと音をならして閉じられた。

「初めてお目にかかります。私はフローライト=フローラル・フローリアと申すものでございます」

女性が深々と、けれど流れるように優雅な振る舞いでお辞儀をする。年相応にはとても見えないとても落ち着いた雰囲気を漂わせて。
一瞬、そのあまりにも麗しい姿に言葉を失ったサフィルスであったがすぐに我に帰って質問用紙に目を向けると言葉を発した。

「…えぇと、フローライトさんは…」
「…蛍石の…」

唐突にジェイドがサフィルスの質問を遮る。

「…蛍石の、花女神…?」

その言葉ににこりとフローライトが微笑む。
そこには珍しく驚いた表情を見せたジェイドが存在した。

――――――――――――――

「新しい女官長?」

おいしそうにお茶(砂糖4個必須)を飲む奈落王・アレクが訊き返す。
時刻は午後3時。一般的に『おやつの時間』と定められているアレである。

「あぁ、先程ジェイドとサフィルスが候補達との面接を終えてきたらしい」

問題提起をしたプラチナが愛しい兄の為に2杯目のお茶を入れてやりながら応えた。

「それでそれで?誰になるのか決まったの??」

結果が気になって仕方がないという風の兄。苦笑を向けて応える。

「もうすぐジェイドたちが連れてきてくれるだろう。新しい女官長を、な」
「と、言うかもうつれて来ちゃいましたけどねv」

プラチナの言葉に間髪入れずに発言しながら登場するジェイドにアレクとプラチナはかなり驚いて飲みかけていたお茶を噴出しそうになった。

「じぇ、じぇいど!?」
「ハイv」

びびりまくってるアレクの呼びかけに笑顔で返事をするジェイド。
その人を食ったような態度にぶち切れた人物がいた。

プラチナ。

するりと愛用の剣を鞘から抜こうとした。
が、

「プ、プラチナ様!!気持ちは痛いほどわかりますが止めてください!!」

意外にもそれをサフィルスに止められる。

「おぉ、怖い。客人の前だというのに容赦のないお方ですねー♪」

しかし懲りずに火に油を注ぐような発言を続ける。

「やっぱり殺す…(怒)」

再び剣に手をかけようとした丁度その時にジェイドの後ろから女性の堪えた笑い声が聴こえてくる。

「「…?」」
「だから新しい女官長を連れてきたって言ったでしょう?」

首を傾げるアレクとプラチナに突っ込む。

「どうぞ、奈落王と副官にご挨拶なさってください」
「はい」

入ってきた女性にアレクとプラチナは驚きの表情を見せる。

「お初にお目にかかります。私はフローライト=フローラル・フローリア。…お会いできて光栄ですわ、奈落王様、副官様v」

華麗にお辞儀をする女性に二人は思わず見惚れる。
そして先に我に帰ったのはアレクの方だった。

「うわぁ――!!想像してたのよりずっと若いや!初めまして、俺アレク♪えーと、ふろーらいとふろーらるふろー…」
「フローラで結構ですのよ?」

フル・ネームで呼ぼうとする可愛らしい奈落王に柔らかな笑顔で応える。
その優しい笑顔にすっかりアレクは好意を抱いてフローラに懐いていた。
一方プラチナは実は既に我に帰ってはいたのだが、兄の笑顔をいとも簡単に得ることが出来たフローラに嫉妬していた。
つまり、表情は仏頂面。
ソレを見てフローラはくすりと笑みを零してプラチナの方へ歩み寄っていった。

「以後、よろしくお願いいたしますわ、プラチナ様」

プラチナの手をやんわりと取り、手の甲に口付ける。
そのあまりにも突飛な行動にプラチナは耳まで紅くして動揺しまくる。
それを見て、腹を抱えて笑うもの、おろおろするもの、そして怒り出すものまでいる。
「あー!!ダメだぞ、フローラ!プラチナは俺のなんだからッ!!」(←怒り出す人)

それにすぐ反応してフローラは

「あら?ごめんあそばせv」

と素直ににっこりと謝罪の言葉をアレクに向けた。
しかし、その表情はすぐに変わった。今まで全く見せなかった『悲哀』といったものに。

「…本当に…あのころのあの子達にそっくりで…」

悲しいくらいですわね、と。アレクの頬をそっと撫でて辛そうに微笑む。
今まで怒っていたアレクと、固まっていたプラチナはその言葉とフローラの悲しげな表情の意味を察することが出来ない。

「似てる?」
「…ええ」

アレクの質問に静かに答える。瞳を伏せて、今度は間をおかずに。

「私はセレスと神であった『彼』の姉ですわ」
「「!!」」

一変してアレクとプラチナの表情が最上級の驚きのものに変わった。
しかしフローラはそれを気にとめず、話を続ける。

「私は太古の昔に天上を君臨していらっしゃった『御父』の第一子ですの…。でも、女性であるが為に最近になるまで隔離されていました。…『彼』が天上を支配するようになって、『彼』が私を解放してくれたのですわ…」

まるでその時のことを思い出すかのように目を閉じながら語る。アレクも、プラチナも、そしてジェイドもサフィルスも静かに耳を傾けていた。

「そして間もなく、セレスが生まれて…。姉弟3人、とても幸せだった。例え周りから女性と蔑まされて『御父の第一子』ではなく、低級な『蛍石の花女神』という地位しか与えられなくても…。いいえ、地位なんて関係なかった。あの子達の幸せを見守っていけたのなら…」

語りは途中で悲痛なものに変わっていく。けれど、誰も止めることはなかった。

「でも…」

不意にジェイドが口を開いた。

「幸せは長くは続かなかった。俺が貴女にお逢いした時には既にセレス様と『あの方』は存在していませんでしたからね」

もっとも、あの時は『あの方』が居なかったなんて確認取れませんでしたが。と付け足す。
その言葉にプラチナは目を丸くして訊く。 

「お前達…知り合いだったのか…?」
「ええ。ジェイド様は男女差別に反対してらっしゃったお方ですのよ!?天上での女性の扱いはこの奈落よりも遥かに酷いの。ただ、子孫をなす為だけの卑しいもの…。その中で女性を差別しなかったのは私の知ってる限りではあの子達とジェイド様だけ…」

プラチナの表情がさらに驚いたものとなる。

「ただの女好きじゃなかったのか!!」
「プラチナ様はそーいう目で俺を見てたんですね…」

ジェイドの背中が少し哀愁が漂ったものとなった。
その親子漫才(?)を見て柔らかな笑みに戻る。

「まぁ、私の生い立ちはおいおい話していきますわv今わかっていて欲しいことは私は天使ですがあなた達の敵ではないこと、むしろ味方であること、そして、誰よりもあなたたちの幸せを願っていることの3つですわ」

さっきとはうって変わって幸せそうに微笑む。
その時、アレクが当然の質問を投げかけてきた。

「ねぇ、フローラはどうして天上からこっちにきたの?サフィ達みたいに落とされたの?羽だってないし…」

プラチナ達がはっと驚いた表情になる。
確かにここにいるということは何らかの理由があり、そして天使のはずのフローラの背中には羽が無かった。

「羽なんて無くても生きていけますわ…。ここへは自分の意思で来たの…。あの子達のもう一つの容である、あなたたちを見守るために…」

…願って止まないのもう一度、あの幸せを…。

「フローラはセレス達が本当に好きだったんだねv」

警戒心もなく無邪気な笑顔付きでそんなことを言われてしまっては…嬉しくて仕方なくなってくる。

「えぇ、大好きでしたわ…。ごめんなさい、私ったらあなたたちをあの子達の代わりとしてみようとしてた…でも、今ここにはっきりと言えます、誓えるわ…」

言って、跪く。

「アレク様、プラチナ様…。私はもう貴方達の虜ですわ。貴方達のことが大好きですの。…どうかお傍にいさせて下さいましね?」
「うん!俺もフローラ大好き♪ずっと一緒にいてねv」
「有難き幸せでございますわv」
「兄上!そんな簡単に…」
「プラチナは嫌?フローラが傍にいてくれるの」

うっと言葉につまる。
それは超絶可愛いアレクのおねだりモードの潤んだ瞳だけではなかった。プラチナもフローラを気に入っていたのだ。彼女の持つ姉のような、母のような暖かさが心地良くて。

「ねー、ダメ?」

そこに大好きな兄のおねだりが加わったのでは否定することなんて出来る訳がない。

「…宜しくなフローラ」
「はいvv」

ついには白旗を上げた。そしてジェイドとサフィルスはと言うと

「私は無条件で賛成ですよ。フローラ様の事はよく知ってますし」
「えぇ。私はジェイドみたいに直接お逢いした事はないのですがフローラ様の人となりはいつも聞かせて戴いておりましたから」

と、快く承諾してくれた。

新しい奈落の物語の始まりである。


□□後書き□□

やっとプロローグ完成です。10P以上も使っちゃった―――☆(死)ずーっと頭の中で暖めてきたネタなのでようやく日の目に晒し始めれて嬉しいですvv  この後も2,3人ほど私の作ったオリジナルキャラが出てきます。一応、大体の設定は『オリジナルプレミアムストーリーズ設定資料集』に書かれてありますのでそちらの方を参考にして下さい(笑)  今回はあまりプラ×アレ感が出ませんでしたが、次回は嫌でもイチャイチャさせるのでご安心くださいませvv(死)


2002年02月11日(月)

オリジナルプレミアムストーリーズ!(序章)


ようこそいらっしゃいませ。ここはアレク王が治める平和な奈落の国でございます。
…けれど、貴女のよく知っている奈落の国とは少しばかり違うのですよ。

ここは今は深い絆で結ばれているアレク王とその弟・プラチナ副官との間で繰り広げられた『継承戦争』から約100年の歳月が経った『奈落の国』。王と副官、そしてお二人の参謀様方は未だ健在ですが、希少種族・アプラサスの少年、プラムと初代奈落王であらせられたベリル様以外の継承戦争で活躍されたお仲間は既に他界しておいでございます。そして彼ら二人も時々しか王と副官の住まう奈落城に訪れないのです。そして、天使である為、外見は年をとらない参謀のお二人にもそろそろ寿命が迫っておいでです…。

平穏な日々。退屈な日々。…もうすぐ来る別れの日…。


…けれどそんなある日に王を取り巻く環境は或る人々によって急激に騒がしくも楽しい日々が訪れるのでした…。


2002年02月09日(土)

『愛してる』って言えなくて。


とても、愛しくてたまらない。
どれくらいかなんて表現できない。
自分の全存在をかけても全然足りない。ちっぽけに思えるくらい。

愛しい。

けれどこの唇からようやく彼につむいであげられるのは…

『心配』と言う名の罵声ばかり。

これじゃない。
こんな言葉じゃない。
こんなつもりじゃない。

もっともっと伝えたいと思うのに。
優しい、『好き』というコトバ。



「兄上!!」
ほら、また。
「ひゃ…ご、ごめん!プラチナ…」
自分の怒声にすっかり萎縮してしまってるではないか。
「そんな薄着でこの雪の中を出かけていたらまた風邪を引くじゃないか!…大体、執務はどうした?」

違うんだ。風邪を引いてお前が苦しそうにうなされるのを見ているのが辛いだけで…。執務だってサボってもいい。俺がいくらでもフォローしてやれるから。…でも、心無い家臣たちがお前の悪口を言うのを黙って見過ごすことが出来ないんだ。

「…う…え〜っと…」

おずおずと兄が両手に持って差し出されたそれは雪兎と言う雪の塊。

が、二つ。

紅い目をしたのと蒼い目をしているのだった。

はぁ、と大きくため息をつく。
嬉しいやら、呆れ返るやらのものが交じっている、ため息。

「…気は済んだか?」
わずかに怒気を含んで言い放つ。

なんて不器用な自分。
素直に言えればいいのに。
優しく、「寒くはないか?」と。「嬉しい」と…。



「…出来の悪い兄を持ってしまったな…」

帰り道。すっかり体の冷えてしまった兄を少しでも温めるために無理矢理抱き上げて歩きながらぽそりとわざとらしく聴こえるように呟いた。
この兄のことだから顔を真っ赤にして怒ってくることだろうと思ったのに…

以外にもその可愛らしい顔には小憎らしいまでの笑みが浮かんであった。

そして…



「…できのわるい、おとーと☆」


などと、かくも楽しそうに言うではないか。

…出来の、悪い?自分が…?
確かに継承戦争は彼の勝利で終わったが、少なくとも今でも頭脳も戦闘能力も自分の方が勝ってると思われるのに…?!

「…なんだと…?」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をするとは、正に今のプラチナの表情のこと。
プラス、怒りが混ざってはいるが。

しかし、アレクは怯む様子もなく、意地悪に可愛らしく微笑むばかり。

「えへへ〜♪」

両腕を自分の首に回して擦り寄ってこられては怒る気など失せてしまうではないか。

全く、適わない。
彼は自分が彼にぞっこんだという事を見抜いてるのだから。

もしかしたら今までもこれからも自分の本当に言いたかった言葉を見抜いているのかもしれない。
だから、俺は出来が悪いのか?

…人間関係には、酷く不器用だから。


□□ 呟き □□

実は、一部実話から抜粋してたり…(爆)
…ブフウ…(吐血)



      

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