アスファルトの乾いた匂いを意識が遠退くなかでかんじ、気が付くと午後の斜光に照らされた廃ビルの一室にいる、古びた布製のソファーに長い黒髪の女子高生が一人座ってこちらをじっと見ている、女子高生と認識したのは制服を着ているからで本当にそうなのかを知るすべは今はない上にそれ以前に解決しなければいけない幾つかの事柄もあり、この状況において自分自身の身の安全は果たしてあるのかさえ分かってはいないのだから。 ミネラルウォーターのボトルを手渡され、相当喉は渇いていてそれが安全かどうかなどと考える余裕なんて少しもないまま、一気に飲み干して落ち着くと黙ったまま彼女はじっと空いたボトルを見つめているのにちょっと怖くなり、当然潤った喉以外には変化はとくになく、単に無言でいるのは辛いというだけなのだと、理解するくらいは余裕も出来、彼女は美形だというのを確実に網膜に焼き付けたのも水のおかげだった。
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