冒険記録日誌
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2021年09月19日(日) |
都会のトム&ソーヤ ゲーム・ブック ぼくたちの映画祭(はやみね かおる・藤波智之/講談社) |
大人気児童向け小説の「都会のトム&ソーヤ」シリーズから、ゲームブック第3弾がでました! ちなみに、第1弾「都会のトム&ソーヤ ゲームブック 修学旅行においで」は、2013年06月16日の冒険記録日誌で、第2弾「都会のトム&ソーヤ ゲームブック 館からの脱出」は、2015年03月28日の冒険記録日誌で紹介しています。第2弾から今回まで間があったので、もう第3弾は出ないのかと、諦めかけていただけに素直に嬉しい。 ゲームブックそのもののファンである山口プリンとしては、少数のコアファン向けに企画されたものより、多くの一般の人に読んでもらえるであろう、今回の発売の方が、数段喜ばしい気分ですね。 そして、この「都会のトム&ソーヤ」ゲームブックシリーズの魅力は、なんといっても、原作者のはやみねかおる先生その人が書いていること。ゲームブック版も本編の一部と言って過言ではないのです。そう思いつつ買ったら、本には、藤波智之先生の名前もあって驚きました。つまり、はやみねかおる先生と共著ということです。まあ、驚いたものの、第1・2弾でもパラグラフ14がゲームオーバーだったり、主人公がまるでモブキャラのような立ち位置だったり、パズル要素があったりとか、藤波作品と共通点が多かったので、共著になっても違和感はないですな。 今回の物語は、学校のクラスのメンバーで映画を作ろうというものです。本の帯によりますと、「都会のトム&ソーヤ」が映画化されるそうで、そのタイアップ的な意味もあるようです。第1弾の「修学旅行」、第2弾の「脱出ゲーム」とは違って、この題材でよくゲームブックにできたな、と変なところで感心しました。 ゲームブック版の主人公は今作も内人ではなく、原作では登場しないクラスメイトの一人という立場で、男子生徒か女子生徒かは自由に選べるらしい。 実際に遊ぶと、最初の選択肢で、作ろうと目指す映画の方向が大きく3つに分かれ、それぞれ独立したゲーム展開となっています。早い話が、実質3本の短編ゲームブックが収録されているという事です。 あと、この本がページをくる度に、裏表紙あたりでキュッキュッと紙が擦れる音がしてうるさかった。これが小説だと問題ないのですが、ゲームブックはページをくる回数が多いうえ、そのモーションも大きいので、音が発生してしまうのです。第1・2弾の時も音はしたものの、ここまで気にならなかったので、買った本によって当たり外れがあるのだろうか?どちらにせよ、内容とは関係ない装丁の問題なのですけど。 それで3つのルートの紹介は以下の通り。ネタバレはなるべく避けますが、事前知識なしで遊びたい人は、本書を遊んでから読んでください。
自分が最初に挑戦して最初にクリアできたルートは、恋愛映画を撮りたい女子達と、ホラー映画を撮りたい男子達が派閥を作って対立する中で映画を撮影するというもの。 間に挟まれた主人公は、片方に肩入れすると、もう片方がやる気をなくして、映画の製作は失敗するので、双方なだめつつ、ひたすら気苦労する役でした。ゲーム的には一本道を綱渡りで渡ることを強いられるような感じです。こんなノリで映画とか撮影してんじゃねーよ。と、思わずつっこみを入れて読まずにはいられません。 撮影現場の雰囲気そのものは明るいのですけどね。今作は、14に行ってもすぐ直前のパラグラフまで戻ってやり直せるし。
2つ目のルートは、学校の校舎を無理やり宇宙船に見立てて、SF映画を撮影しようとするもの。夜の学校に忍び込むと、お馴染みの栗井栄太の連中が、安定のウザさで絡んできます。栗井栄太の謎解きさえ解けば、簡単にクリアは出来るのですが、自分はその謎解きがなかなか解けなくて、結果的にクリアが一番難しかった。栗井栄太、やっぱりうぜー。 完成する映画は、「宇宙船の空気が足りなくなった。生き残るためには、乗組員の誰かを犠牲にして宇宙へ放逐しなくてはならない」という、いわゆる方程式もののストーリーです。方程式ものとか、めちゃ懐かしい。SFファンにはお馴染みかもしれないけど、「都会のトム&ソーヤ」の読者層にわかる人いないだろう、とか思ってしまった。けど、ゲームブック同様、この本をキッカケにSFファンになる人がいたらいいかもね。
最後のルートは、それこそいろんな映画の撮影に次々に挑戦していくもので、殺人事件のミステリーものから、冒険ファンタジー、ゾンビが登場したり果てには足の生えたサメが襲ってくるようなC級ホラー(恋愛映画を撮りたい派閥は反対しなかったの?)まで何でもありな内容。クリア自体はとっても簡単です。滅茶苦茶やってもいい感じで進めても最後は夢オチ扱いされるのは不満でしたが、びっくり箱のような過程そのものを楽しむルートなんでしょうね。 自分的には、パラグラフ11の、主人公が映画のヒロイン役になって、内人に衣装のほつれを直してもらったり、手を引かれたり、お姫様抱っこされたりして、胸キュンしているところがお気に入り。どうせ最後は夢オチなら、内人とくっつくハッピーエンドくらい作ればいいのに。(できれば、ここは女性主人公でお願いします。)
どのルートも最後は、完成した映画の上映会を見て(映画のノベライズみたいな短編小説を読んで)終了という演出です。3ルートなので、完成した映画ももちろん3本あります。 自分的には、映画として一番面白かったのは「解けない方程式」でした。SF小説の金字塔をベースにしているから当然か?「ばれんたいん・かぁず」もバラバラに収録された映像を、編集でなんとか辻褄を合わせて1本の映画にした創也達の力業がすごい。でも、「日常」はなにか釈然としなかったけどね。創也に対する女子達の異常な人気ぶりが怖いのは自分だけでしょうか。 謎解き以外のゲームのルールはないので、原作ファンだけどゲームブックは知らないという人も楽しめますし、マニアックなネタは影を潜めているので、原作は知らないけどゲームブックファンだから読みたいという人でも大丈夫です。もちろん両方好きな方が一番楽しめるのは当たり前ですけどね。 どこかノー天気な雰囲気が漂うノリなので、遊ぶなら気楽にどうぞな作品でした。
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