冒険記録日誌
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2017年01月02日(月) 剣士対妖怪 魔境の秘薬(上泉章吾/朝日ソノラマ)

 ハローチャレンジャーシリーズの一作で、正月といえば、和風!という安直な発想により新年最初にプレイしたのがこの作品です。本作のように江戸時代を舞台にしたゲームブックは意外と少ないんですよね。
 主人公は大藩の家臣、高山家の次男坊。重い病に倒れた妹の為、唯一の治療薬があるという妖怪が跋扈する魔境に、刀を携え旅立つというストーリーです。
 まず、ページを開くと作中の妖怪が総登場する見開きのイラストが目を引きます。九尾の狐、一反木綿、大入道といった有名なものから、朱の盤、三目八鬼、沼女郎といった珍しいものまでバリエーション豊かです。天女とか妖怪のカテゴリに入れてよいのかわからない奴まで混ざっています。
 なんとなく「悪夢の妖怪村」を思い出しました。ちなみに本作のイラストは木村直巳さんという漫画家が描かれているのですが、世界観に合っている絵で、実にいいです。

 最終盤の洞窟のシーン以外は一方向システムでして、ゲームを開始すると主人公は人気の少ない魔境の野道をひたすら前進していきます。道中、いろんな妖怪がバラバラと遭遇するので、それをあしらっていくのが基本展開でシンプルです。中には砂かけの練習をしている砂かけ婆を、遠目に発見して通り過ぎるみたいな、ただ登場するだけの妖怪もいるのはご愛敬でしょうか。
 魔王的な存在はいないので、ラスボスは強いもののちょっと地味。

 ゲームルールの話しですが、管理するのは、体力ポイントと技術ポイント、所持品、小判の枚数、経過日数の5点。
 ハローチャレンジャーシリーズの作品では珍しく、サイコロの使用を必須としているものの、本の端にサイコロの印刷がないのは、ゲームブックブーム初期の作品であることが伺わせます。(追記:ハローチャレンジャーシリーズ前作「魔法使いナシアン 双頭の竜」の初版本にはサイコロの印字がありました。なんでこっちにはないのだ? )
 妖怪との戦闘は、各ラウンド毎に攻撃力を競って、傷を負った方が体力点を2点(素手なら1点)減らすという、FFシリーズに近いルールを採用しています。
 戦闘で独特なのは、半分くらいの妖怪は体力ポイントの設定がなく、そういった敵との戦闘では、一撃当てれば敵が逃げ出して勝利になる点でしょうか。確かに日本の昔話でも、「正体を見破り一太刀あびせると、妖怪は逃げ出した」ってパターンが多いからわかる気がします。実際にプレイしてみると、戦闘に時間がかからない分、ゲームのテンポが良いですし、たまに体力点のある敵に遭遇すると、敵がガチで殺しにきた感が出ていたので、いい感じでした。
 戦闘バランスはそんなに厳しくなく、取りこぼすとクリアできないというアイテムもない(最終ダンションの3つの鍵は除く)のですが、歩いていた女に話しかけただけでゲームオーバーになるなど、ひっかかりやすい凶悪な即死トラップが時々あって、2・3回くらいのプレイではクリアはちょっとキツイかも。判断のつきにくい選択で失敗した場合は、アイテムの有無やランダムで救済できるよう配慮してほしかった。
 それでも能力が高い主人公はある程度力押しが可能で、低能力値の主人公なら最小限の危険で進めるルート(いわゆる真の道)を探すことでクリア可能という、FFシリーズで本来やってほしかったゲームバランスが、こちらではちゃんとできていたのは良かったですけどね。

 遊んだ印象としては、日本版「火吹山の魔法使い」でした。野外とダンジョンの違いはありますが、あっちもストーリーは単純で、言ってしまえばミノタウロスやゾンビやコブリンが、無節操に登場しているだけだしね。クリア後に読んだ作者後書きでも「剣と魔法の世界をそのまま日本に移しかえることができないか」という考えで書いたそうで、まあ当たっていたかな。
 ゲームブックが登場した頃は、まだ西洋ファンタジーに馴染みのない日本人にとって「火吹山の魔法使い」の世界観は新鮮だったものですが、もしかして海外の読者が「火吹山の魔法使い」を遊ぶ時の感覚って、日本人がこの「剣士対妖怪 魔境の秘薬」を遊んだときの感覚に近かったのかな?


(追記)
 プレイ中にいくつかバグを発見したので、正誤表を書いておきます。

パラグラフ34
 誤 3・4・5なら →141へ
 正 3・4・5なら →144へ

パラグラフ48
 誤 土蜘蛛 技術ポイント14 体力ポイント41
 正 土蜘蛛 技術ポイント14 体力ポイント14

パラグラフ240
 誤 泊まる →32へ
 正 泊まる →206へ


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