ぐっどないとみゅうじっく
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2002年07月30日(火) |
ててなしごの唄〜矢野顕子@赤坂ACTシアター〜 |
フジロック熱も冷めぬまま矢野顕子@赤坂ACTシアターへ。広いステージにグランドピアノがひとつ。イベントでは何度か観たことあるものの、ワンマンは初めて。今回はヤノ・ラボと題し、色んな唄を実験的に披露する企画。
開演の鐘が鳴る。ピアノの前にすっと座り歌い始めたのは奥田民生の『さすらい』。矢野が歌うと詞が本当に生きている言葉かどうか試されている気がする。もちろん歌っている本人はそんな気サラサラないのだろうけど。そして言葉は確かに生きていた、民生が歌っている以上に。 何曲か歌った後、友部正人の『愛について』。聴きたかった唄のひとつ。父のいない子と母が愛について考えることで結ばれている、と淡々と語る様に歌うのが切なさを増す。ちょっとだけテンポが速く歌われた分、後からゆっくり心に沁みてゆくのが分かる。今年正式に坂本龍一と離婚した彼女と唄の中の親子を勝手に重ねてしまう。友部は何を想い、この唄を作ったのだろうか。 この時期、ここぞとばかりに披露された『夏なんです』。ピアノの低音の音が夏の風が凪いだ時の静けさのようにいつまでも響く。はっぴいえんどの唄を多くカヴァーしている中、ふと大滝詠一の曲がないのに気付く。何故だろう。
「一緒に歌うのが夢でした」と紹介され、ゲストで森山良子登場。意外な組み合わせだが歌っていても、話していてもふたりの息はぴったり。なんとリハーサルは一回だけらしい。それでも唄を離れると井戸端会議みたいに話は盛り上がる。まるで隣近所のおばさんみたいに。森山の知り合いのおぎやはぎ(お笑いコンビ)から矢野は差し入れにに2.3kgの重量のある糠どこをプレゼントされたらしい。そんな話とは全く無関係なC.S.N&Yの『OUR HOUSE』を歌う。まさかこのふたりからこの唄を聴けると思っていなかったので、無言で嬉しい悲鳴を挙げる。森山の歌の上手さと発音の良さには驚いた。それと日本語の唄も英語のような発音に聴こえる。ザワワザワワと歌う『さとうきび畑』。今、密かにヒットしているらしい。父を知らない子供の消えない悲しみの唄。先ほど歌った『愛について』同様、考えさせられるものがある。
アンコールで『ひとつだけ』。この唄は僕の中でもやっぱりはずせない。矢野の唄を一曲挙げるとすれば、この唄を選ぶだろう。本当に欲しいものなんて、たったひとつだけなんだよなぁと、何時でも多くを求めすぎる自分に気が付く。 「世の中には様々な唄とか唄のようなものとか、唄い手とか唄い手のような人とか色々いますけれど、こんなに素晴らしい唄い手はいないです」と再び森山を呼ぶ。スティーブン・フォスターが死の直前に書いたと言う『Beautiful Dreamer』(多分、こんなタイトル。♪たまごか〜らプロテア〜とCMソングにもなった)をアカペラで歌う。マイクなしでも充分通るふたりの声が会場を包む。他では味わうことの出来ぬ心地よさに酔い痴れた。
今日は演奏中いつも以上に色んな事を思い出したり、考えさせられた。唄のフレーズやピアノの響きが、遠い過去や身近な想いへ誘ってくれた。あまりにも遠くへ行ってしまった自分がもう帰ってこれないんじゃないかと、もう一人の自分が心配するくらいに。それは僕の集中力がない所為だけではなく、唄が与えてくれた力だと思う。ステージ上の矢野が唄を軸にどこまでも飛んでゆくように。
1.さすらい 2.GIRLFRIENDS FOREVER 3.いつか王子様が 4.夏なんです 5.いつのまにか晴れ 6.You Are What You Eat 7.* Someone to Watch Over Me 8.* 愛はたくさん 9.* Our House(Crosby, Stills, Nash & Young) 10.* さとうきび畑 11.トランスワールド 12.愛について 13.M.oney Song 14.Dreaming Girl
アンコール 15.ひとつだけ 16.* Beautiful Dreamer(Stephen Fosterの作品)
* は、森山良子と共演。
『やのコレ』の木本さんには色々教えていただきました。 ありがとうございます。
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