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2002年06月10日(月) ギターを持った渡り鳥〜友部正人@スターパインズカフェ〜

 夕べは友部正人@スターパインズカフェ。イベントで何度か観たことがあるけど、ワンマンでは初めて。しかも、今回はリクエスト大会。各々が友部の好きな唄を3つ選び、投票する。でも、上位の唄が選ばれるわけでもなく、歌うかどうかは本人の気分次第なのだ。スターパインズカフェも初めて。どこから観ても割とステージが観易いが、客席が狭い。そう思っていたら、後ろの席で飲み物をこぼしていた。一日一回は誰かしらやるのだろう。

 オレンジ色のシャツを着て登場。めずらしくエレキギターを抱え『渡り鳥』で始まる。このギターは貰い物らしいが、なんとヘビメタ用らしい。見た所フェンダーの普通のストラトキャスター(アームあり)だけど、そんなものなのかしら。しかしヘビメタって言葉久し振りに聞いたなぁ。今年は去年とは反対に投票数が少ないのから歌っていた。何曲か続くけど、全然知らない唄ばかり。それでも友部の口から次々と歌いだされる言葉に酔い痴れていた。MCでポツリポツリと話す言葉もまるで彼の詩のよう。
 その中でもゆっくりとした3フィンガーで歌われた『乾杯』には風貌からは思いもよらない猛々しさがあった。

誰かさんが誰かさんの鼻を切り落とす
鼻は床の上で「はなしい」と言って泣く
誰かさんが誰かさんの耳を切り落とす
耳はテーブルの上で「みみしい」と言って泣く
誰かさんが誰かさんの口を切り落とす
靴は他人の靴の上で「くちおしい」と言って泣く

ぼくは戸を横に開けて表へ出たんだ
するとそこには鼻も耳も口もないきれいな人間たちが
右手に箸、左手に茶碗を持って新宿駅に向かって行進しているのを見た

おお切なやポッポー500円分の切符を下せえ

 初めて聴いたはずなのに、この詩には聴き覚えがあった。それもそのはず、以前矢ちゃんが素敵な詩だと電話越しに朗読してくれたのだった。はじめて逢った人が実は共通の友達がいて、どこかで出会っていたようなそんな気持ちになる。何でもすぐに忘れてしまう僕だけど、頭の片隅にしっかりとこびり付いていた。物事をひとつの方向だけからしか捕らえないことを嫌うような、そんな友部の意思が激しく伝わってくる。
 続いて『愛について』。これは僕がリクエストした内のひとつ。矢野顕子が歌っているのを聴いたことあるが、友部のは初めて聴く。ギターの音量が大きめで唄が聴こえづらい部分もあったが、次第に胸の奥に沁みてゆく。続けて歌われたこの2曲は、とてもひとりの唄うたいから出てきた言葉とは思えないほど、落差が激しい。その幅が友部の唄の魅力でもあると僕は思う。

 しばし休憩を挟み後半。紫のシャツに着替え再登場。何曲か歌った後聴いた『びっこのポーの最期』。これも矢ちゃんがよく大袈裟に真似をしていているのを聴いたことがあったけど、ちゃんと聴くのは初めて。もちろん本物の方が良かったのは言うまでもない(笑)。
 『大坂へやってきた』今年は全部歌ってくれた。去年のリクエスト大会では「長いし、疲れちゃう」とのことで途中で止めたそうだ。デビューアルバムの1曲目を飾るこの唄は、代表曲でもあると同時に彼の中ではめずらしい曲調でもある。出るか出ないかのギリギリのかすれ声と、休む間もなくかき鳴らされるギターのストロークでで8分間を直走る。

 2度のアンコールを含め全25曲。途中休憩を挟んだものの、3時間強は歌い続けた。弾き語りでこれだけ息の抜けない長丁場のライブをやれる人を僕は他に知らない。しかし僕のリクエストした残り『私の踊り子』『反復』は最後までやってもらえなかった。特に『私の踊り子』は去年に引き続き、上位にランキングされたにもかかわらず、最後まで歌われることはなかった。それでも普段のライブで聴く機会のない、票があまり集まらなかった唄たちが聴けたのは幸せなことなのかもしれない。
 MCで「日比谷野音かどこか野外の会場で、夕暮れから夜に掛けてずっと歌い続けるライブをやるのが夢」と話していた。すぐにでも実現しそうだが、夏は暑いので出来ればパスして、10月くらいまたは来年の5月くらいに是非観てみたいと言うのが僕の贅沢な望み。もちろん炎天下でも、ビール片手に観に行くのだけれど。

 『ギターを持った渡り鳥』とは小林旭の唄。しかし僕は友部のことだと僕は勝手に思う。実際に彼の日記を読むと色々な所を旅している。街や国だけでなく現在、過去、未来と何処へでも行ける渡り鳥のような気がしてならない。ライブ中迷っていた7月10日のライブも終わってすぐ行くことを決めた。ニューヨーク帰りの渡り鳥に逢いに。

1.渡り鳥
2.絵はがき
3.ボロ船で
4.亡霊と天使
5.顔
6.屋上のブルース
7.乾杯
8.愛について
9.熱くならない魂を持つ人はかわいそうだ
10.朝は詩人
11.傘の行方

〜休憩〜

12.ふあ先生
13.大道芸人
14.ゴールデントライアングルのラブソング
15.水門
16.びっこのポーの最期
17.眠り姫
18.ふーさん
19.大阪へやってきた
20.一本道
21.ロックンロール

アンコール
22.あれは忘れ物
23.夢のカルフォルニア
24.ゼロ

再アンコール
25.遠来

友部正人オフィシャルホームページ

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